賢治の書いた擬音が舞台に登場する、と事前に聞いて「???」と思っていたのですが、舞台が始まってオノマトペ達がゾロゾロはいでてくると一気に場がにぎやかになって、楽しげな様子に期待が高まりました。 途中、オリザの苗になったり、乗り物になったり、(人間になりすまして)クーボー博士の弟子になっていたりと、色々な場面で登場するのですが、舞台に統一感を与えるとともに、賢治の綴った言葉たちが森羅万象の中に解き放たれて伸びやかに息づいているような、不思議な生気とユーモアをもたらしていたように思います。
今回の音楽、いつものこんにゃく座の音楽よりももう少し硬質な音色を志向して書かれているようで、耳が慣れるまでは少し戸惑いもありましたが、馴染むにしたがって、背筋が伸びたような程良い緊張感を持った音が心地よいと感じるようになりました。時々挿入される澄んだ女声の重唱や(「高くうたったり~~」と引きのばす部分などなど)、ブドリが煙の形状を説明する場面で鳴らされる美しい音、最後、カルボナード島にやぐらを建て電線をつなぐ場面のメカニカルに突き進む圧倒的な音楽などが印象に残っています。
行方知れずだった妹ネリがブドリに面会に来る場面も、「ここは盛り上げて泣かせにくるのか?」と思っていたら、そういった方向にはあまり深入りせずむしろユーモラスに進行する感じで肩すかしをくらったように一瞬感じましたが、考えてみれば、それぞれの人生を前向きに生きている兄妹に似つかわしい音楽でしたし、長い間離れ離れになっていた身内との再会というのは、実際にもあんな感じかもしれません。 (それでも、ネリの幸せそうな様子には、何か本当に胸を打つものがありました…。)
ブドリのはにかんだようにうれしそうな表情、オリザの苗を植える場面の楽しげな動き、赤ひげの男ととなりの沼ばたけの主人のやりとり、「絶景」を前にペンネンナーム技師とブドリがお茶を飲む場面、決意を告げるブドリとそれを見ているオノマトペ達の表情、あるいは舞台上で役者たちによって組み合わされて巧みに変化する舞台装置、でかでかと文字が書かれた楽しい衣装、などなど、好きな要素がいくつもあって、改めて、本当に内容の豊かな舞台だったと思います。 再演の機会があれば、また是非観てみたいものです。ありがとうございました。 (長々とすみません…。)
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No.3027 2016/09/24(Sat) 12:09:55
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