「うたのステージ」 最初の登場の仕方から楽しかったし、同時に何か懐かしいものが近づいてきたようにも感じて客席で密かに胸を熱くして聞いていました。
一つ一つの歌が短いながら、歌のアンサンブルのみならず曲によっては相当複雑な動きもこなしていて(特に「ロンドン橋」など)、丁寧につくられた寸劇、あるいはバレエの舞台をみているよう。
歌の順番も、テンポ含めた雰囲気や、歌う人数(ソロだったりだったり、四人全員だったり)なども変化をつけていて楽しかったです。
「せんねんまんねん」 まどみちおの歌詞、どうぶつがいっぱい登場して楽しいのですが、「はる なつ あき ふゆ せんねん まんねん」と歌われるあたりで、今、この場でこの歌を聴いている瞬間がそのまま何か永遠というものに連なってゆくかのような感慨を覚えました。
「てんとう虫」 ソロで歌われたシューマンの曲。悪童めいた雰囲気を漂わせるA組、子供のあどけなさがそのまま歌の形をとったようなB組と、好対照でしたし、どちらも「子供ってこうだよね 。」と思わせるものでした。
オペラ「タング」 「妖精」といえば、ひらひらして可憐で儚げなもの、と相場が決まっているはずだが、あの風体でぬけぬけと妖精を名乗っているあたりがそもそも怪しい。 しかも妙に張りのある声で朗々と歌ったりしているのが怪しさを助長していてよい。
通行人が二人登場するのだが、本題のレストランに入る前の掛け合い(入ってからも)が単なるストーリーのつなぎとは言えないくらいよく練られていたと思います。 スケジュール帖の話から、レストランの(英語に由来する)店名の説明につなぐ構成が秀逸なA組、トリビア的な知識をテンポよく繰り出してくるB組と、全然違った雰囲気を持っていました。
A組とB組の違いといえば、ついつい勢いでレストランを継ぐことを決意してしまったがやっぱりダメダメ、といった感をにじませているA組、最初の登場の時の精気がことごとく吸い取られたような表情だけでもう十分可笑しかったB組と、どちらも「少年」もそれぞれ個性があって見比べるのも楽しかったです。
少年がカレーを一匙口に含んだときに鳴らされるピアノの印象派風の響きが、どこか身体の奥深くに沈んでいた記憶に触れるような音だったり、唐突に歌が始まる前に「これはオペラなんだから」と注釈(言い訳?)が挿入されることにオペラというジャンル自体を相対化するような視点を感じて新鮮だったり、「少年」が決意を固めたとき背後にいるコロス二人が表情を輝かせるのが見ている方としても嬉しかったり、フィナーレに突入するときのピアノの右手高音の細かいパッセージが輝かしかったり、「ベロベロベー」の二重唱がきれいだったり、繊細な照明だったり、色々な箇所が記憶に残っています。
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No.3106 2017/04/30(Sun) 22:55:39
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