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「珍しいとこで油売ってんだな」 猫のようにしなやかな動作で背後から音もたてずに近寄ったポプランがコーネフの隣に立つ。 ちらりと視線だけ投げかけ返事もせずにいたが、それを気にしたふうもなくコーネフと同じように手すりに凭れかかり下を覗き込む。 「しっかし、ほーんと派手にやったよな。あれちゃんとなおんのか?」 あれとは言わずもがな無残にも被弾したコーネフの愛機のことだ。 素人目にはこのまま廃棄されてもおかしくないように見えるが、メカニック達から見ればまだまだ再生可能な範囲らしい。機体の心臓部が無事なら外装だけ交換すればそれですむはなしだ、とチーフメカニックが笑いながら報告してきたのはほんの数十分前のことだ。 ポプランの心配事など杞憂にすぎないのだが、それを払拭することも億劫で無言を貫き通す。 「そーいや今度新型機が投入されるって話あるじゃん。それ回してもらえば?」 ぱちんと指を鳴らしていいこと思いついたとにかっと笑う。 ケチがついた機体とおさらばして新しい機体でやり直せといいたいらしい。 どうやら無言を貫き通したせいで、ボコボコにやられて落ち込んでると思われたようだとおぼろげに理解する。訂正する気もおきないが、そのまま話を進められるのも癪だ。 まだ実戦配備もされてない新型機の性能の予想をつらつらと語るポプランに強引に言葉をかぶせる。 「で、お前さんはなにしにここに来たんだ」 ポプランは予想外のことを言われたように驚いた顔をした後、ぽりぽりと指で頬を掻いた。 「えーと、そうだ。コールドウェルが探してたんだ。なんか司令部に提出しなきゃならないもんがあるとかで」 お前が見つからないから困ってたぞ。 非難するような響きだったが、コーネフは意にかいさない。 左腕の通信機は一度も鳴っていない。本当に必要なときはコールドウェルは遠慮なく呼び出しをかけてくるし、またコーネフ自身もそうするように言ってある。
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No.6 2012/06/19(Tue) 23:33:17
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