2008.08.30.Sat
「君のことが時々わからなくなるんだ」彼は深夜の電話越しにそう言った。当たり前じゃない、芸術は独りよがりなものなのよ。あたしは溜息混じりに呟く。「じゃあ僕なんていらないってことかい?」いつまでたっても公式通りで本心を言えない彼の下手なジョーク。独りよがりは他人がいるからこそ成立するんじゃない。受話器に噛み付きたくなる。インターフォーンを押してくれなきゃドアは開かないのに。


 2008.07.21.Mon
自分を数値化して、座標に表して、定規で測って、確率を求めて、リスクを量って、現実と向き合わなくていいということに気づいたら、なんか急に怖くなって、そうやって短針は長針から逃げ続ける、時刻は何時だって24時。


 2008.06.13.Fri
君にだけ、僕の消息を知らせるよ。僕が君に出合ってから死ぬまでの、一年に一度、君の誕生日に必ず。


 2008.05.05.Mon
ビニール傘、100本入りのヘアピン、リップクリーム、自動販売機、ファッション誌、あまり気に入らなかったマスカラ、新発売のお菓子、電子メール、コンビニエンスストア、100円ライター、一年前のレシート、使い物にならなくなったら捨てられる、必要になったらまた新しいものを買ってしまう、生きるために消費してばかりいる。


 2008.04.30.Wed
演技がどんどん上手くなっていったあたしと、演技がどんどん下手になっていったあたしが、同じ舞台上に立っていて双子の役を演じている。お互いに素顔を見ようと計算した台本を読みあっていたら、まるで玉ねぎの皮を何時までも剥くような作業になってしまい、結局読み終わった頃には舞台上に誰も残らなかった。

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