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○05-00141-01:銀内 ユウ:鍋の国 ○「可愛い子には鍋をさせよ」 ○1933文字 以下本文 「兄ちゃん、ちょうだい!」 「いやだ!」 メガネを曇らせていると、そんな言葉が聞こえてきた。 「なんだ……?」 声のした方を見てみると小学生……ぐらいの男の子と幼稚園ぐらいの男の子が言い合いをしていた。 「にい……」 今にも泣きそうな弟くん。 「いやだ。だいたいこれは僕のお小遣いで買ったんだぞ。お前はヌイグルミ買ったんだからいいじゃんか」 「でもぉ」 兄の手にはおでんアイスが二つある。弟君は手に……ああ、王猫様ヌイグルミを持っている。 「それにしても……」 兄は両手に持ったおでんアイスを美味しそうに食べている。まぁ自分の小遣いで買ったのならかまわないだろうが……それでも食べ方というのがあるのではないだろうか? 「あー、そこの少年。弟にはやさしくするもんじゃないかね?」 なんとなく見つけてしまったからかついお節介的に声をかけてしまった。 「!」 すると唐突にそれまで泣きそうだった弟君だけでなく兄の方も涙目になった。 「え、ええーっと、ど、どうしたのかなぁ」 い、いかん。この構図はなんか、子供を泣かしているお兄さんではないか。 「お、おっさんまでカイの味方すんのかよぉ」 お、おっさん!? 失敬な私は28歳と42ヶ月でおっさん呼ばわりされる歳ではないと……普段なら言うのだが、泣きそうだよボウズ。 「あ、あー。までって事はなんかあったのか?」 カイってのは弟の名前だろうと予測できた私は相手の話を聞く事にした。理由がわからんと対処できん。 「……さっき、店で王猫様買おうとしたら一個しかなかったんだよ……」 兄はそう言うと思い出したのかえぐえぐと泣き始めた。 「あー、それはそれは……」 いわゆるお兄さんなんだから我慢しなさいというヤツか……なんとなく状況を察した俺はこれは言葉で言ってもわからんというか納得しないだろうなぁっと思いつつも横に置いていたクーラーボックスから鍋を取り出した。 「ボウズ、そういう時もあるさ。どうだ? おにいさんと弟と一緒にこれ食って仲直りしないか?」 おにいさんを強調しつつも私が取り出したのは食後のデザートのつもりで用意していたパフェ鍋である。アイスリームにバナナ、たっぷりの生クリームとチョコレートがこれでもかと鍋の中につまっている私のオリジナルデザート鍋である。 「「!」」 鍋の中身を見た兄弟はビックリ顔で私を見つめた。涙チョロチョロだった顔にはひそかな期待感が出ている。同じ様な顔が二つ並んでいる事に心の中で苦笑しつつも私はスプーンを三つ取り出した。 「仲直りするなら分けてやってもいいぞ?」 「「うん!」」 これまた良いお返事である。まぁ本来なら食後のデザートで食べたかったのだが、まぁこれぞ道端鍋である。ひょんな事で知りあった人と食べるという事が楽しいのであり、本来の予定なんぞあんまり関係ないのである。 「「美味しい!」」 まぁ、仲良く食べる兄弟の顔ってのは癒されるじゃないかい、ボーイ&ボーイ。 私は最近の食事は道端でするようになっている。それは今日のような子供との出会いもあればおばちゃん達の井戸端会議に参加したりすることがある。これは中々に面白い。「鍋は鍋友の始まり」ということわざを実行しているつもりはないが、かなりの友人が出来たのは事実である。 /*/ 今日は幸運であった。肉屋で余った豚骨をもらったのである。これで豚骨ベースの出汁を作ってラーメン鍋ってのもいいかもねぇ 「今日はいい天気だねぇ」 呟きつつも鍋の準備にとりかかる。 「ねぇ、おじちゃん」 そんな私を後ろから呼び止めたのは昨日の弟君であった。 「おう、ボウズ。元気か?」 「うん。おじちゃん、昨日はありがとうございまちた」 弟君はそう言うとペコリとお辞儀をした。わざわざ礼に来るとは親のしつけがなってるねぇ。 「ん? ボウズ、にいちゃんはどうした?」 私の言葉に弟君は顔を曇らせた。 「あのね、にいちゃん昨日冷たいの食べ過ぎてピーピーになっちったの」 ……そういえば、パフェ鍋食べる前におでんアイス二個食ってたっけかあのボウズ……。 「……そうだ。ちょっといいか、ボウズ」 /*/ 「にいちゃん、にいちゃん」 カイがドタバタと帰ってきた。腹に響くから走るのはやめてほしいよ。 「……カイ。走り回るのはやめてよ」 「にいちゃん、これおじさんから」 「? おじさん?」 カイが持っていた紙を広げるとそこには紙いっぱいの文字がかかれてあった。 "兄貴はツライだろうけどガンバレ! おでんアイス一個弟にやってたら腹こわさなかったかもな。あとグチならいくらでも聞いてやるよ" 「昨日のおっさんか……」 「あ、にいちゃん」 「ん、なんだ?」 「あのね、おじさんが「今度会った時はお兄さんと呼ぶように」って言ってたよ」 [No.101] 2008/06/20(Fri) 23:29:37 |