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○06-00735-01:むつき・萩野・ドラケン:レンジャー連邦 ○「名前の無い海の物語」 ○1989文字 #今回文族に限らずという事でしたので、応募してみました。 技族の拙い文章ですが、少しでも何かの力になれます様に。 #カウンターツール使わせてもらいました、お手数をおかけします。 キー1234 (以下、テキスト本文) 「遠い未来に前と会えるのなら、幸せな事だろうなあ。」 年老いた一人の男が腰まで海水に漬かり、水面から頭を出したこれまた年老いた一頭のイルカの頭を優しくなでる。 「俺はもう長く無い、こうやっているのも体に堪える様になってしまったよ。」 深い皺が刻まれた顔をくしゃりと笑みの形にし、顔を上げるといつもと変わらぬ太陽と、照りつける光を反射し輝く海を忘れじと目に焼きつけた。 「…イルカよ、お前に貰ったものだが、これを預ってもらえないか?」 男は海を見据えたまま懐に大事にしまっていた小袋を取り出すと、その中味をイルカくわえさせる。 「我が子には預けられぬ…悲しい事だが欲にとり憑かれてしまってな…、残るものなどさほど無いというのに」 日々争う声、荒む空気、大切なものを無くしてしまった子供達の醜い姿に彼はため息をつく。 「これはお前の子供達が受け継ぐのがいい…いつか大切な友が出来た時に渡す事ができればそれは幸いだ。」 イルカは寄り添う様に体を彼に預けていたが、その言葉に 「ピイ」 と一つ鳴くとゆっくりと周囲を回ってから沖へと泳ぎ出す。 男は笑むとその姿をいつまでも見送り、生涯最後となる涙を皺深い頬から海へと落としたのだった。 …彼が亡くなったのはそれからすぐの事、子供達は必死に彼の持っていた大粒の真珠を探したが、とうとう見つかる事が無かったという。 主人のいなくなった家の外、彼の孫達が庭先の砂で遊びながら無邪気に話していた事を大人達は気付かない。 「おじいちゃんは、うみにかえすんだっていってたの」 「しってる、おじいちゃんのいるかさんにでしょ」 二つの可愛い声の主は、男から不思議なイルカとの友情の物語を一緒に口ずさむ。何度もねだって聞いたのですっかり憶えていた。 『むかしむかし、ひとりの若い漁師がいました…』 漁師はある日、晴れた海へと小舟を出していた。しかしその日は天気が良いにも関わらず魚がちっとも捕れず、不思議に思っていると小舟の側に一頭のイルカが泳いでいるのに気付いた。 漁師は退屈紛れにイルカに話す。 「イルカよ、今日の海はどうしたというのだ、こんなにも晴れているのに魚がいない、いったいどういう事なのか?」 エサに使う小魚をその口先へと持って行けば、イルカは口をあけ魚をぱくり。それから水面から顔を出すと紛れも無く人の声で漁師に話し始めたのだ。 「二本足の者よ、これより海は大きく揺さぶられる、我の仲間はこれより沖に皆移動した、そなたもここから離れることだ」 イルカはそれだけ言うと驚く漁師を置いて沖へと泳いでいってしまった。 我に返った漁師は、ありったけの力を振り絞り舟を漕ぎ陸へと向かう。途中仲間に声をかけ陸に戻る事を話したが、信じる者は少なく戻ったのはほんの何艘かだけだった。 半信半疑の皆と共に舟を陸に上げ、疲れた体を休めようとした時、にわかに激しい突風が吹き、浜辺の砂を巻き上げそれがその身を叩きだした。 「何事だ!」 仲間達も驚き沖の方を見やれば、今までに無いほどの巨大な黒い雲がみるみる内に空一面に広がり、先ほどの穏やかさが嘘の様な強風と豪雨、そして高波が彼らを襲ったのだ。 それは3日3晩続き、そして漁師の言う事を信じず海に残った仲間は誰一人戻る事は無かったという。 漁師は嵐の去った後、イルカと出会った場所へと向かう。波間を覗き込めば魚の姿、あの時はそれも無かったのだと思い出す。 「イルカよ、いるだろうか?この間の漁師だ!そなたに感謝を、お陰で俺は礼を言う事ができる!」 いるだろうか、いないかもしれない、それでも漁師は声を大にして感謝の心をイルカへ海へと伝えた。 穏やかに戻った海を見つめ、漁師は余りにも近くに有り過ぎて見えなかった海の恵み、太陽の恵みに思いを馳せる。あの嵐が終り日の光を見た時、どれだけ感謝しただろうか、海に繰り出し釣り上げた魚を手にした時の喜びを噛み締める。 「二本足の者よ、生きたか」 ふと声をかけられ驚きそちらを向けば、波間につるりとした丸い頭黒い瞳。 「…イルカよ」 漁師は日に焼けた顔を破顔させると、恩人の元へと舟をよせたのだった。 「…それから漁師は何度もイルカの元へ、そうして二人は仲の良い友人になったそうだ。で、漁師はイルカに大きな真珠を友情の証に貰うんだけど、それはその人が亡くなったとたん消えてしまったって不思議な話」 一人の青年が最後におしまい、と言葉を切ると、隣に座る自分の友人に向かい笑顔を向けた。 「これ、俺の家に代々伝わる話な、あんまり信じてる奴いないんだけど、アリなんじゃないかなと思うよ、お前さんと出会えたし」 青年は腕を組むと視線を隣に向けた。そこには人の言葉を話すイルカ知類の姿。 「奇遇だな二本足の友よ、その話なら我らも良く知っている」 イルカは懐かしそうに目を細めると、大切にしまっていた宝物を長い時を超えて返えせるという喜びを、口を開く事で表わしたのだった。 [No.26] 2008/06/10(Tue) 16:30:14 |