![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
○14-00288-01:深夜:後ほねっこ男爵領 ○「冬を追い払った男の子の話」 ○1998文字 これはどこか遠くの、ずっと昔のお話。 冬は長く雪が降り、春と共に小川は流れ、夏の日差しはすぐに消え去り、秋が訪れる頃には山は冬支度を始める。 そんな、北の国のお話。 その国の冬は長く、そして、毎日のように雪が降りました。 お日様が照る日は少ないのに、雪はあとからあとから降ってきます。 ですから、その国に住む人たちは、冬の間、ずっと肩を寄せ合って、暮らしていました。 だけど、そんな暮らしがどうしても嫌になった一人の男の子がいました。 だって、雪が降っている間は、外で遊べませんし、友達にも会えません。 雪が降らない日は、色々な用事を、急いで済ませてしまわなければいけません。 男の子は思います。 あんまりにものんびりやってくる春がいけないんだ。 すぐに何処かに行ってしまう夏がいけないんだ。 せっかちに冬を招く秋がいけないんだ。 だけど、何よりも悪いのは、間違いなく冬です。 何一つ楽しいことの無い、長くて暗い季節。 男の子は、冬にしては珍しく晴れた日に、旅へ出ました。 冬を追い払うための旅です。 引き止めるみんなの腕を振り払い、後ろも振り返らずに。 雪の上に残る男の子の足跡だけが、てんてんとその後を追いかけていきました。 男の子は、真っ直ぐに冬のいる北には向かわず、夏のいる南を目指しました。 なぜなら、男の子の住んでいる国より北は、あまりにも寒く、そして、沢山雪が降るため、とても歩いていける場所ではないからです。 男の子は、夏の力を借りようと、思ったのです。 北の国の人たちが一番待ち望むのは、春の訪れですが、一番楽しむのは、夏の強い日差しだからです。 優しい夏ならば、きっと、男の子を助けてくれると、そう、思ったからでした。 雪が降っても、山があっても、気にせず男の子は南を目指します。 やがて、雪は雨になり、はっきりとわかるほどに暖かくなっていきます。 どんどん暖かくなり、やがて、服が必要ないほど暑くなった頃、男の子は太陽が降り注ぐ海辺にたどり着きました。 そこが、夏のすみかでした。 夏に会って、男の子は言います。 「夏さんにお願いがあります。 僕の国は、冬にいじめられています。助けてください」 夏は言いました。 「君たちを助けるといっても、冬は私の友達だ。 どういうわけがあるにしても、冬の邪魔は出来ない」 男の子は困ってしまいました。 まさか、夏と冬が友達だとは思わなかったのです。 それを見かねた夏は言いました。 「私には、冬が君たちをいじめるとは、とても思えない。 きっと、何かの間違いだと思う。 会って話せば、誤解も解けるかもしれない。 私の力を分けてあげるから、冬と直接話してきなさい」 そう言うと、夏は男の子に、自分のかけらを分けてあげました。 男の子の身体は、ポカポカと温かくなり、それだけで冬の寒さを遠ざけました。 その温かさに、力をもらい、男の子は、今度は北に向かって歩き始めました。 来た道と、同じように、山があり、やがて雪が降り始めましたが、今度はへいちゃらです。 なぜなら、男の子から伝わってくる夏の力を恐れて、一歩進むごとに、雪と寒さは男の子の周りから逃げだしてしまったのですから。 簡単に男の子は、北の国に帰りつき、そして、更に北の、冬のすみかを目指します。 雪と風はドンドン強くなり、寒さも厳しくなっていきます。 気が付けば、周りは、降り続ける雪で真っ白な壁に囲まれたようになり、吐く息さえ凍って、男の子の邪魔をするようになりました。 しかし、ここで帰ってしまっては、今までの苦労も全て水の泡です。 男の子は、歯を食いしばって歩き続けました。 とうとう男の子は、冬のすみかにたどり着きました。 男の子は、冬に言いました。 「お前のせいで、僕の国は迷惑してるんだ。 お前なんか、どこかに行ってしまえ」 冬はビックリして言いました。 「まさか、そんな風に思われているとは、思いもしなかった。 知らぬまに人を苦しめていたなんて、私はなんておろかだったのだろう」 ごめんよ、ごめんよ、と泣きながら、冬は何処かに行ってしまいました。 ひときわ寂しい場所に住んでいた冬は、誰かに面と向かって怒られた事がなかったのです。 こうして、冬はいなくなりました。 いきようようと男の子は北の国に帰りました。 そして、一年、二年と、年は過ぎていきました。 男の子は、すぐに自分の間違いに気が付きました。 春の訪れの喜びは、ぼんやりとしたものになりました。 夏の日差しは、ただ暑いだけになりました。 秋の実りは、前よりも美味しくなくなったような気がしました。 そして、冬に肩を寄せ合って分け合った暖かさは、もうどこにもありません。 なくしたものを元に戻すため、男の子は、再び旅に出ました。 もう一度、冬を見つけて、今度は謝るために。 これで、このお話はおしまいです。 え? 男の子が冬を見つけられたかって? もちろんです。だって、あなたの家にも、ちゃんと冬がくるでしょう? それが、男の子が冬と仲直りできた証拠です。 [No.35] 2008/06/11(Wed) 02:39:37 |