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○10-00040-01:ソーニャ/ヴァラ/モウン艦氏族/スターチス:世界忍者国 ○「りゅうじんさまのおはなし」 ○2070字 /*/ 日本の竜は、水と関わりの深い存在で、河や泉を守る守護神として、あるいは雨を呼ぶ神様としてあがめられていました。 これから話すお話もそんな中の一つ 熊本の人里離れた山奥にその竜は水源を守ってひっそりと暮らしていました。 かつては、人と共に暮らし川を守っていたのですが、時の政府の命令で、神仏を敬う事を禁じられてしまい、人里を追われてしまったのです。 それから何年も、何十年も時が過ぎ。人は神と共に暮らしていた日々を次第に忘れて行きました。 そんなある日のこと。 道なき道を歩き通して一人の男が竜のもとを訪ねてやってきました。 男は、この山から流れる川の支流で、田畑を耕す農夫でした。 男の村はここ数年で川が干上がってしまい、水不足に悩まされ、村人達は途方にくれていたのです。 男は、どぎゃんかせんといかん(どうにかしなくちゃいけない)と思いながら日々を考えを巡らせていました。 ある日、村の長老は、『かつて竜や神様を追い出した報いが来たのだ』と頭を垂れてつぶやいた。それを聞いた男は、『それなら俺が呼び戻しに行こうか?』 といって、男は竜の住処へと向かったのです。 しかし、人里離れた竜の住処までの道なんてないから何度も山で足を踏み外しそうになっては、命からがらやっとの思いでそこまでたどりつきました。 話を聞いた竜は怒った、『人間たちの都合で追い出しておいて、今度もまたそなたたちの都合で私を連れ戻そうというのか?』 まったくそのとおりで、返す言葉もなく男はがっくりと肩を落として、帰って行きました。 ところが、その翌日 男は再びやってきて、村で採れた作物を持って竜に献上しようとしたのです。 それでも竜は動じなかった、むしろ聞く耳すら持ちませんでした さらに翌日、また男はやってきました。竜はよくまぁこんな辺鄙な場所まで何日も通おうとするものだと半ば感心したものの、無視していました。 どうせ何時かはあきらめるだろう………と ですが、男は翌日も、その翌日も翌々日もやってきた。気がつけば一月のあいだ毎日欠かさず男は竜のもとを訪ねたのです。竜は無視していたけれど、男は、竜の住む祠の前に座り毎日他愛もない話をしていきました。 ある時は長老達から聞いた竜と人が一緒に暮らしていた頃の話 ある時は村の祭の話、ある時は自分の子供が生まれた話 時には、独楽を回して披露したり、旬のものが手に入れば上機嫌に竜の祠に供えて、また明日と言って帰って行く そうして男は雨の日も、嵐の日も一日と欠かすことなく竜の前に姿を見せにやってきました。 気がつけば季節が一回りしていました。 それまでだんまりを決め込んでいた竜は男にこう言いました『何故こんな事を続けるのか』と 男は答えました、『昔は、竜や神様がごく身近にいて近所のお隣さんのごつしとったて、そんなら、おる(俺)も、ご近所さんとして付き合わなんて思うたとです』 竜は、しばらく考えた後、大声で楽しそうに笑いました、こんなに遠くにいるのにご近所さんとは、なんともおかしなものだと。 それからというもの竜は男と話をするようになりました、時には竜も自身の分身たる竜達の物語を語りました。日照りがあった村を救う為に命を投げ出し三つに裂かれた竜の話、欲深い兄弟を戒める為に木に宿った竜の話、あるいは人々と共にあった日々の思い出。 そして月日は更に流れて、男は孫が出来る年になっていました。髪は白髪が増え、顔や手はしわくちゃでしたが、毎日竜の元を訪ねては、楽しそうに会話をしていました。 しかし、孫が生まれたという話を聞いた翌日、男は何時になっても現れませんでした竜は不安にかられながら一夜を過ごしました、翌日も、その翌日も男は現れません。 三日三晩待っても来ない男が気になるあまり、とうとう竜は祠を飛び出して人里に下り始めました。 そこで竜は驚きました、人を寄せ付けぬかのようにうっそうと茂っていた森には、男が長い月日をかけて踏み固めて作った道が出来ていたのです、どんな時も迷わぬ様に標や塚が立てられ、所々に休む場所も作られていました。 男の作った道のお陰で竜は迷わず男の家にたどり着きました、竜が軒先から顔をのぞかせると、そこには病に伏した男が床についていました。 竜の姿を見た男は、見舞いに来てくれたことを大層喜ぶと、自分はあの祠まで行く事が出来ない体になった事を詫びました 竜は言いました。 「もう二度と、人里には下るまいと思っていたのに、そなたと過ごした日々に負けた、そなたの願い事を叶えようぞ」 するとどうでしょう、竜が這って来た道から水がこんこんと流れ出し一つの小川が生まれたのです、小川の水は、乾いてひび割れた田畑を潤しました。 男は、もう一つだけ竜に願い事を言いました、『我が家の隣の林を切り開いて、社を建てました。もしよければ、そちらにお住み頂けないだろうか、もう一度私達とご近所付き合いは出来ないでしょうか』と、竜はその願いを真摯に受け止め、社に身を置き再び人と共に暮らす事になりました。 やがて、男が息絶えたその日、なきがらを背にのせて竜は天高く舞い上がって行きました。 /*/ http://soniaidress.blog103.fc2.com/blog-entry-96.html こちらのログで使用したおはなしの完全版です。 [No.56] 2008/06/15(Sun) 22:51:56 |