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○14-00798-01:たらすじ:後ほねっこ男爵領 ○「なんにもできない女の子」 ○テキスト文字数:1773字 ある小さな村に、いつも物影に隠れている女の子が居ました。 友達が遊んでいるのを見ているだけ。 誰かが遊ぼうと誘えば、 「私、なんにもできないもん」 と言って物陰に隠れてしまいます。 輪に入らない女の子は、最初のうちは熱心に誘われましたが何が何でも加わらないのでそのうち誰も誘わなくなってしまいました。 物陰から、ただ皆が遊んでいるのを見ているだけです。 女の子は、自分が一緒に遊んでも何も出来ないから皆の迷惑になると思っていました。だから、女の子はただ見ているだけで十分だったのです。 見ているだけでも一緒に遊んでいる空想を何度も繰り返しながら、それでいいのだと思っていました。 その日はいつもと同じように、女の子は物陰から楽しそうに遊ぶみんなを見ています。 今日は皆で鬼ごっこ。ほかの子供たちは山の中を駆け巡っています。 そんな時でした。 子供たちが突然、足を止め騒ぎ始めました。 女の子が物陰から見ると、子供たちの1人が突然倒れた木の下になっていたのです。子供たちは、その木を除けようとしていますが子供の力では木は中々動きません。女の子は怖くなって、物陰で震えていました。 「おい、お前も手を貸せ」 怖くて目を瞑ってうずくまっていたいた女の子の頭の上から声が降ってきました。 恐る恐る目を開けると、その声は、いつも子供たちの中心になっていた男の子のものでした。 「私、なんにもできないもん」 女の子は震えながら、いつものように答えます。 男の子は、そんな言葉に気もとめず女の子の腕をぐいっと掴みました。 「私がいたら皆の邪魔になるよ」 男の子は何も言わず女の子を引っ張って歩きます。掴まれた腕が痛いです。 あまりの痛さに、涙も鼻水もぐちゃぐちゃに流れています。それでも男の子は腕を離そうとしません。 「はなしてー」 「うるさい!!」 男の子は怒鳴るとようやく足を止めて女の子の方を振り向きました。 「『なんにもできない』、って言うな!!」 男の子はそういうと、また女の子の腕を引っ張って他の子供たちの方へ向かっていきました。子供たちは、木の下になっていた子を助けようと必死です。 「俺は、誰かを呼んでくる。お前はみんなと一緒に木をどかせ」 そう言うと、男の子はふもとの村の方へ駆け出していきました。 どかせ、と言われてもどうすればいいかわかりません。女の子はただそこに黙って立っているしかありません。 子供たちは一生懸命に木の下の子供を助けようと必死でした。 ある子供は、声をかけ続けました。またある子供は木を持ち上げようとしました。 皆が皆、それぞれに必死でした。 木の下の子供もそれを知っているので、心配かけないように涙をこらえています。 何もできない女の子にはいったい何が出来るのでしょう。 だけど、この時女の子はこの子を助けたいと思いました。 何もできないけれど、何かがしたいと思いました。 「この子の周りの土を掘って、その隙間から出せないかな?」 皆が一斉に女の子の方を見ます。 その言葉が自分の口から出てきたことに、女の子が一番驚きました。 「やろう!!」 子供たちの誰かがそう言ったのきっかけに、皆が子供たちの周りの土を掘って穴を掘り始めました。手で掘ったり、枝で掘ったり。女の子も皆と一緒に穴を掘り始めました。幸いにも、雨が降っていて土が軟らかく掘りやすかったのです。 そして、木の下の子供が動けるぐらいの穴が出来ると力持ちの子供が2人で横から引っ張り出しました。 その後、男の子が呼んで来た大人がやってきました。木の下になった子は村の診療所へと運ばれ、皆は村に戻ったのです。 帰り道、男の子は女の子にこういいました。 「お前、『できる』じゃん」 「ううん、私ひとりじゃ何にもできなかった」 女の子はまたうつむきます。 男の子そんな女の子の様子を見て、また腕を掴みました。 「俺だって、一人じゃ何にも『できない』さ」 女の子が驚いて顔を上げます。男の子は女の子の腕を引いて先を歩き始めました。 さっきと違って、掴まれた腕は痛くありません。 女の子は、男の子の背を見ながらにっこりと微笑んで。そうして後ろを歩き始めました。 今日は広場で鬼ごっこ。 元気に村で子供たちが遊んでいます。 その中にはあの女の子の姿も見えました。 女の子は、もう「なんにもできない」なんて言いません。 友達と遊ぶ楽しさを知り、自分も何かができることを知ったのですから。 [No.90] 2008/06/20(Fri) 21:30:27 |