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○国民番号:PC名:藩国 00-00565-01:那限逢真・三影:天領 ○「作品タイトル」 「今、傍にいない君へ」 ○テキスト文字数 1539文字(スペース含) /*/ 窓辺の机の上に手帳が置いてある。 手帳には詩とも手紙ともつかない言葉が書かれていた。 私は宛てたいけれども宛てられることのない言葉を読み進める。 『故郷が無くなるとはどういう気分だろう? 君は言った。「故郷は胸の中にあるから」と。 確かにそれは正しいし、君ならそう言うだろう。 でも、本当にそれだけなのか? 私も故郷を離れて久しいのは同じ。 私は自分で故郷を発った。 自分の住まいを離れ、友人たちと別れを告げた。 そこには後悔も未練もないし、私の故郷の風景は変わっていない。 でも、君は自分から故郷を出たわけではない。 自分の意思とは関係なく故郷と友人から離された。 それがようやく戻ってみれば故郷は見る影もない。 私には推し量るしかできないが、きっとショックだったろう。 頭で納得したとしていても、心が哀しいことに変わりはないはずだ。 私は君と君の故郷を語った時の事を思い出す。 初めて故郷の話をした時、君は胸ポケットで顔を輝かせて笑っていた。 百円ショップに行った時、君は「今は妖精の服を作ってくれる人がいないから」とピーターパンの服を探してきた。 迎賓館で改めて君の故郷に行きたいと言った時、君は元気に返事を返してくれた。 慰労会に参加した時、君は自分の水のみ場に案内してくれた。 どれも思い出しても、私は君が嬉しそうに見えた。 私はそれがなんだか嬉しかった。 だから、君と一緒に君の故郷を見てみたかった。 君が嬉しそうに故郷を案内してくれるところを見たかった。 そんな君と一緒に、君の故郷を回ってみたかった。 ……そして、当日、君の案内で故郷へ行った。 君が見せてくれた過去の世界で、君は楽しそうに友達と会話をしていた。 あれだけ嬉しそうだったのに。 あれだけ楽しそうだったのに。 それが無くなってしまった。 君は胸の中に故郷があるからもういいと言うけれど、それでいいはずがない。 私は君と話をしたかった。 でも、目覚めてみたら私は一人きりだった。 今、私は君のことが心配だ。 君に会って話がしたい。 あんな事があった後、何も言えずに別れてしまったからいつもよりも心配になる。 君は今どこにいるのだろう? 君はまだ、ウェールズにいるのだろうか? 故郷の友達を心配して悲しい思いをいないだろうか? それを隠して元気そうに振る舞っていないだろうか? 私の見えないところで君が泣いていたら私は悲しいから。 私と話して君の心が少しでも軽くなるのなら私は嬉しいから。 何より、私は君に話したいことがあるから。 私は君としたいくつもの約束を果たしたいから。 故郷を離れた私にも親友が一人いる。 どんなに遠く離れても、変わらぬ友情を与えてくれる親友が。 きっと君にもいただろう。 でも、今は行方がわからない。 なら、一緒に探したい。 たとえ故郷は無くなっても、友達全てが消える事はないだろう。 君を私が助けたように、君の友達も誰かに助けられているかもしれない。 だから私は君と一緒に探したい。 故郷を無くした君の故郷を。 それで君がまた笑えるのなら。 そんな君を見て、私がまた笑えるのなら。 そして、一緒に見つけたい。 君が安らげるような場所を。 君の新たな故郷となる場所を。 君とともに歩める場所を』 私は詩とも手紙ともつかないメッセージを読み終える。 おそらく、この言葉がそのまま相手に届くことはないだろう。 私はそれが少し哀しくなった。 だから私は誰も読む事がないであろうこの言葉に、小さく言葉を書き加える。 『これを君が読むことはできないかもしれない。 でも、『想いが伝わる』事が本質のこの世界なら、君に想いが届くだろう。 ――今、傍にいない君へ、この想いが届きますように……』 /*/ [No.98] 2008/06/20(Fri) 23:23:46 |