戦士たちの一日 - エア - 2005/10/08(Sat) 09:45:55 [No.8479] |
└ ショートストーリーまとめてみました - フェアリー - 2007/06/21(Thu) 17:16:03 [No.11486] |
└ Re: ショートストーリーまとめてみました - ヘリ兵士 - 2007/07/05(Thu) 21:45:10 [No.11489] |
└ Re: ショートストーリーまとめてみました - フェアリー - 2007/07/06(Fri) 10:20:08 [No.11490] |
└ Re: ショートストーリーまとめてみました - 三枝 - 2007/07/07(Sat) 12:43:51 [No.11498] |
└ 三枝さんへの返信 - フェアリー - 2007/08/14(Tue) 20:34:47 [No.11509] |
└ ケタの戦い - フェアリー - 2007/06/27(Wed) 14:24:55 [No.11487] |
└ 第51遊撃隊 - フェアリー - 2007/07/06(Fri) 11:09:50 [No.11491] |
└ 作戦会議 - フェアリー - 2007/07/11(Wed) 18:20:18 [No.11499] |
└ 英雄たちの初対面 - フェアリー - 2007/07/25(Wed) 21:52:26 [No.11500] |
└ 魔塔 - フェアリー - 2007/08/02(Thu) 12:57:47 [No.11501] |
└ シェルター防衛戦 - フェアリー - 2007/08/12(Sun) 13:25:43 [No.11508] |
└ 巨大生物の巣窟 - フェアリー - 2007/08/19(Sun) 10:06:05 [No.11511] |
└ 巨獣・ソラス - フェアリー - 2007/08/29(Wed) 23:09:16 [No.11512] |
└ Re: 巨獣・ソラス - フェアリー - 2007/09/06(Thu) 22:07:40 [No.11515] |
└ 戦士の休息 - フェアリー - 2007/10/08(Mon) 23:02:36 [No.11519] |
ロンドンの戦いから数日。 ロンドンに出現した巨大生物とEDFとの戦いは機甲師団とペイルウイングの登場で人類の勝利に終わった。 しかし巨大生物がどこから現れたかなど詳しい事はまだなにもわかっていない。 EDFはロンドン市街地の中央の広場に仮設基地を建設し、対巨大生物の前線基地にした。 また、巨大生物がいつ出現してもいいようにロンドン市街地には完全武装したEDF兵士が配備され、装備の強化のため封印されていた陸戦兵の武器、(ライサンダーZ・ボルケーノ6A・AS−100)などの解禁、EDFなどの基地から離れたところでも補給を行えるように大型の施設などに設置された、通称「兵器蔵」のセキュリティを、 一部解除した。 市民は一時的な避難所から、誘導され、そのままシェルターで生活することになった。 しかし住み慣れた場所を出たくないと町に残ろうとする市民や、 なれない避難所生活から早く逃れたいという市民が勝手にシェルターから出て、町中で警官隊やレスキュー隊、EDF兵士と口論になっていた。 仮設基地の中で第51遊撃隊は再び全員集合した。 ヘリが奇襲を食らって大火傷を負った以外に大きな被害もなく、 ヘリの火傷も最先端医療によりほとんど完治した。 「いいしらせと悪いしらせがある」 ヘリが部下についさっき本部から届いた命令を読み上げる。 「まずいいしらせからだ、我々に増員が来てくれた。」 ヘリの隣に立つ二人のペイルウイング兵の紹介を始めた。 「まず許深隊員、階級は2等兵、副隊長をやってもらう。」 許深隊員は軽く礼をした。 長い栗色の髪をしていて、意志の強そうな目をしている。 「許深です、よろしく。フルネームは許深 素華(このみ もとか)と言います。」 それだけいうと 「でこっちがフェンナ隊員、階級はお前らと同じ3等兵だ。偵察と 陣地確保を担当してもらう。」 フェンナ隊員はおどおどとして許深のほうを見る。 許深はそれに気づくと 「とりあえず礼をしろ」 と小声で言った。フェンナはあわてて礼をして自己紹介を始める。 「フェ、フェンナ、フェンナ・スミスです、その・・よろしくおねがいします。」 フェンナは童顔で、身長も許深より低いため子供っぽく見える。 「あー仲良くするように。」 ヘリは話を切り替えた。 「次に悪いしらせだ、日本にも巨大生物が出現した、数はここで戦ったのの10倍だそうだ。」 増員が女性で二人とも美人だったことに喜んでいた隊員達の顔が一気に引き締まる。 「明日までには転戦命令がくだるだろう。各員移動の準備をしておくように。以上、解散。」 そう言うとヘリは仮設基地をでて、市街の一角に向かった。 町にはまだかたずけられていない蟻の死骸が散乱しているが、人の死体は見当たらない。 おそらく業者がすぐに片付けたのだろう。 あるところにつくとヘリは足を止めた。 ヒロはもう二度と来れないかもしれないから、と観光をすると言い出して外へ出ていた。その手に握られていた武器を見れば私的にパトロールをするための外出とわかる。 ヒロは第51遊撃隊を離れ他の隊へと所属することになっていた。 「お前がいないと戦力が足りなくなるかもな。」 「なに、お前らよりも俺を必要としてる人たちがいるってことよ。」 「同じ場所では戦えなくとも一緒に戦ってると思うことにするわ。」 「クサッ・・・まあそれもいいかな。」 「ヘリ隊長。」 佐原の呼ぶ声が聞こえた。 「本部より転戦命令が出ました。場所は福岡です。」 「わかった、すぐ行く。」 ヘリは佐原にそう言うと、もう一度ヒロの方を向く。 「また会おうぜ。」 ヘリは笑っていった。 「ああ、必ずまた会おう。」 ヒロも笑って返す。 こうして新たな仲間を得た第51遊撃隊はロンドンを後にした。 ・・・・・・・・ EDF基地福岡第三陸戦部隊待機室 巨大生物再出現から10日後。 第三陸戦部隊はもうすでに3回出撃を経験している。 しかし、出撃のたび仲間は減り、巨大生物の群れは増える一方であり、疲れは隠せなかった・・。 そんな中、竹下 慶治(たけした けいじ)、通称ケタ伍長は愛用のショットガンの手入れをしている。 エイリアンの技術を盛り込んだ最新の重火器にくらべ、 ポンプアクション式の強化ショットガンはいかにも古臭く、頼りない。 だが、シンプルゆえに誤作動の少ないこの銃でケタは前大戦を乗り切った。前大戦で戦死した隊長の形見であるこの銃を持つと、 「生きて帰れる」という気がしてくるのだ。 「・・・ふう」 それが気休めに過ぎないこともわかっていた。 ケタ伍長を含むEDF第三陸戦部隊は輸送ヘリで戦場に向かった。 そして、これが第三陸戦部隊の最後の出撃となるのである・・・。 われわれEDFの優勢、勝利は決定的と思われた戦いの中で、 <罠です!敵は後ろに!> ・・・この通信の声だけはいやに耳に残っている・・・。 その後自分がどう戦い、どう逃げ回ったか覚えていない・・・。 とにかく、ケタはまだ生きていた。 福岡 博多地下街 17:40 「しばらくは大丈夫か・・・」 ケタは地下街へ逃げ込んでいた。 巨大生物はその大きさゆえに人間用の小さな通路は通れないのだ。とはいえヤツらは穴を掘ることができるため、確実に安全な訳ではないが、しばらくは時間を稼ぐことはできるだろう。 しかし、時間を稼いでなにになるというのだろう。 この地域に生きている仲間は、もういないのだから。 ケタはふと今朝のことを思いだしていた・・・。 天気のいい朝だった。 第三陸戦部隊はペイルウイング隊「アカネ」と共に福岡の巨大生物を駆逐するために出撃した。しかし・・・ <罠です!敵は後ろに!!> 突然通信機から慌てたオペレーターの叫び声が聞こえてきた。 ケタは振り返り・・・そしてわが目を疑った。 地面が異常に盛り上がり、そして弾けた! 地面には大穴が空き、中から巨大生物が次々に出てくる! そしてその「穴」は1つや2つではないのだ。 ・・・その後はまるで地獄のような光景だった・・・。 ペイルウイング隊は体重の軽い女性がメインに構成されていて、 しかも実践経験は皆無、この状況に対応しきれずパニックを起こし、とても戦える状況ではなかった。 そして体勢を崩された仲間達は次々に断末魔の通信とともに死んでいった。 ピピピ・・・ 通信を知らせる音にケタはハっと我にかえった。 急いで通信機に耳を近づける。 ・・ザ・・・ザザ・・・ さっきの戦闘でイカれたのか、いやにノイズが入り、聞き取りにくいが、なんとか理解できた。 「<生存者はB−50−C32地点へ・・・> 生きてそこへたどり着く自身はなかったが、このまま死ぬ気もなかった。 ケタは愛用のショットガンを掴み走り出した。 もう日は暮れ始めていた。 脱出地点B−50−C32にはここから車でも数時間はかかる。 福岡の制空権は完全にUFOのものであり、地上は巨大生物であふれているのだ、 B−50−C32まで救助にくるのが精一杯なのだろう。 だがケタは、わずかな希望にすがり脱出地点へむかうことを決意した。 自分を救おうとしてくれる仲間がそこで待っているはずだから・・・。 地下街から地上にでる・・・不気味なくらい静かだ。 ビルの残骸に身を隠しつつ、移動する。いま巨大生物に囲まれれば命はないだろう。 ショットガンをもつ手は汗ばみ、緊張からか常に耳鳴りが聞こえる。 いつ目の前に巨大生物が現れてもおかしくはない・・・だが・・ 「これは・・」 ケタの目にとびこんできたのは戦車ギガンテスだった・・・。 少々ダメージは受けているが十分に動けるだろう、ケタは急いでドアを開けた。戦車の中に小柄な女性がうずくまっている。 死んでいるのか・・・?一瞬考えたが息はしている・・・ どうやら生きているらしい。 服装からしてペイルウィング隊の生き残りであることはすぐに理解できた。しかし、彼女の飛行ユニットは酸で大きく腐食し、 完全に壊れていた。 「こいつも地獄を見たのか・・・」 ケタは気絶している女性を少し見ていたが、やがてギガンテスのエンジンをかけた。ケタは不思議と力がみなぎってくるのを感た・・・。 (死ねない・・・・。) この女には、もはや戦闘能力はない、ケタが死ねば共倒れになるだろう。いままでもケタは死にたくないとは思っていた。 だが今は「生きなければならない理由」を見つけてしまった・・・。 ケタはギガンテスのアクセルを力強く踏み込んだ・・・。 ギガンテスは廃墟となった福岡を走り抜けていた。 福岡に現れた巨大生物の数は他の地域と比較にならないような数だ、おそらく避難用シェルターも破壊されてしまっているだろう。 もしかしたら福岡で生きている人間は俺達だけなのでは・・? そんな気さえしてくる。 「う・・・」 気絶していた女性隊員が目をさましたようだ。 そしてキョロキョロと見回して、嬉しそうな顔になり 「私・・助かったの!?」 と歓喜の声を上げた・・・が、 「いや・・実はいまから助けてもらいに行く所」 ケタは現状を説明し、女性隊員はまた落ち込んでしまった。 女性隊員の名前は酒井 若菜(さかい わかな)といった。 敵に罠にはめられたあと、飛行ユニットも破損し、逃げ回っていたときに目の前にあったギガンテスに乗り込み、震えていたらしい。 しかし、これが幸いしたのだろう。 巨大生物はおもに匂いと、空気の振動、目で人間を探知する。 早々に鉄の塊の中で小さくなっていたので発見されなかったのだ。 「そのヘルメット・・・通信装置は生きてる?」 ケタはワカ隊員のヘルメットを指差した。 実は彼女が寝ている間に動かそうとしたのだが、新型だったため、 いまいち使い方がわからなかったのだ。 ワカは手首のスイッチを操作して・・・ 「うん、大丈夫みたい」と微笑んだ。 「じゃ、救助ポイントにむかっているってことを伝えてて(・・)」 「ラジャw・・・・・あー、あー、こちらペイル「アカネ」の・・・」 ワカはそういって通信をしだした。 これでこちらがまだ生きていることと伝えることができる。 救助か・・・。 ケタはふとEDF隊ビーチバレーボール大会で挨拶を交わした「あの人」を思い出していた。 たしか、救助活動や戦闘補助では定評のある部隊のリーダー格だったな・・・。この戦闘にも参加しているらしいが・・・ 元オペレーターとかいっていたので特に印象に残っていた。 ・・・・・・ その、「あの人」の名は市原 ナミ(いちはら なみ)といった。 彼女は、ケタの記憶どおりこの戦闘に参加していた。 福岡 博多市街シェルター内 18:00 <罠です!敵は後ろに!> 懐かしい響きだ。刹那、私は場違いな感慨に浸る。前大戦ではオペレーターの私には耳慣れた、もとい口慣れたセリフだった。 「皆、無事ね?」 ナミは振り返り、男女入り交じる部下達の顔を確かめる。 先の報告を機に、召集された部隊の大半が散り散りになってしまっていた。私達救護小隊は運良く(というか常のことなのだが)先遣部隊からかなり離れた位置に待機していたため、 まとまった退避が可能であったが、前方の陸戦小隊は・・・。 「別隊の隊員達を助けに行きたいところだけど、状況がまだよく分かってないの。外が大分静かになったから敵はあらかた片付けられたんだろうけど、油断は出来ないわ。次の命令があるまでここで待機。いいわね?」 ナミの言葉に一もなくニもなく頷く隊員達。どこの小隊にも必ず1人か2人はいる熱血クンや戦闘狂がいないのが我が隊の特徴だ。 無理もない。救出、看護においては秀でた技術を持つ彼らだが、 戦闘力は無きに等しいのだ。戦闘部隊が側にいない今、 むやみに動くのは危険だ。これはこれで押さえ付ける手間が省けて楽かな、とナミは苦笑した。とそこへ、 「生存者はB-50-C-32地点へと急行し、部隊と合流して下さい。速やかに撤退します。繰り替えします・・・」 通信が入った。再び振り返り、口を開く。 「ここまでね。さ、皆急ぐわよ。負傷兵は見かけ次第回収。手当ては本部に戻ってから。ペリ子ちゃん達、よろしくね。りっくんたちは周囲の警戒を怠らないように。」 私は立ち上がり、腕に装着したレーザーランスを確かめる。 扉に備え付けられたコンピュータに指を走らせ、ロックを解除した。 「皆、待っててね・・・!」 救護小隊は外へと歩み始めた。 ナミ達は負傷者を見つけては応急処置だけを済ませ、肩に担いでB-50-C-32地点へ向かっていた。 「さ、陣地まであと少しよ。皆頑張って!」 私は肩にのしかかる仲間の重さに耐えながら叫んだ。後ろからついてくる部下達を見やると、彼らもナミと同じように負傷した兵に肩を貸し、歩みを進めていた。 リペアスプレーで応急処置は施したものの、重傷の彼らに自力で立たせるのは難しい。一刻も早く防衛ラインまで辿り着き、ちゃんとした治療をしないと・・・。 「敵襲っ!!」 叫びと同時にアサルトの掃射音が響く。横手だ。ビル影から数匹の黒アリが出現し、間髪入れず酸をまき散らし始める。 道路脇のひっくり返った車に当たり、じゅう、と音を立てる。 煙を発して表面は無残に溶かされていた。 「怪我人抱えた人は下がって瓦礫の影へ!他の隊員たちは散開して攻撃開始!正面には回らないで!」 肩の負傷兵を部下に預け、言いながらナミも攻撃を開始する。 手近にいた2匹をレーザーランスで瞬時に貫き、 倒れるところも確認せずに応戦する隊員達の元へと向かう。 すでにいくらかのダメージを与えられたらしく、アリ達はただやみくもに酸を放っているだけだった。 「この程度なら私たちの部隊でも何とかなるわね。」 ほっと声をもらしながら残りの3匹も血祭りに挙げる。 頭部から噴出した体液がびちゃびちゃとアスファルトを叩き、 巨体が音を立てて崩れ落ちた。 「負傷者は・・・いないようね。さ、皆出発よ。あと少しの辛抱だからね!頑張りましょう!」 それからさらに10分程歩き、私達はようやく防衛ラインまで辿りつくことが出来た。あちこちで銃声が響き、戦う様が目に入る。 途中敵と遭遇しなかったのは僥倖だった。負傷こそしていないものの、仲間を背負いっぱなしで部下達はくたくただ。 あれ以上の戦闘は危険だったろう。 無事にこれたのはライン前方で戦っていたあの小隊のおかげだ。少人数だがかなりの手練のようだった。彼らならあのまま囮兼防御役を演じ切れるだろう。 私達は陣のテントに向かうと衛生兵に負傷者を引き渡し、隊員達はその場に腰を下ろすと思い思いに身体を休め始めた。 「皆よく頑張ったわね。お疲れさま。輸送ヘリが到着するまでまだ時間があるから、しばらく休むといいわ。体力に余裕がある人はできれば彼ら衛生兵と一緒に負傷兵の手当てを。」 そう言いながらナミは腕のレーザーランスに新たに補充されたエネルギーをチェックする。・・・よし。 はっ!と慌てて敬礼する声に微笑みながら顔を上げると、隊員達の数名はもうすでに立ち上がり、衛生兵と共に負傷者達の搬送、治療に当たり始めていた。座り込んでいた隊員達もそれに習う。 疲労を押し隠して衛生キットを手にし、彼らはに散り始めた。 その様子を目にしてナミは満足そうな笑みを浮かべる。すっくと立ち上がると、彼女はウィングを再び背負った。 (まだ負傷者はいるはず・・・) 「さ、わたしももうひと頑張りかな。」 その足は隊員達の向かう治療室ではなく、テントの外へと向いている。彼女は音を立てずに入り口を抜けると、再び薄闇の中へと姿を消していった・・・。 ・・・・・・ ケタは我に返る。いつ死ぬかもわからない状況でビーチバレーで出会った人のことなんかを考える自分に、 (われながらノンキだなぁ。)と、ケタは少し表情がやわらいだ。 「!」 走るギガンテスの前方をなにかが上昇していく。 回転する頭にに4本の脚がついた青い機体。 ケタにはすぐに理解した。 (こいつはエイリアンの侵略兵器・・・ダロガだ)。 巨大な触角のような兵器がまばゆく光った。 「・・・・!! 」 「キャっ!」 ケタが大きく操縦桿を動かし、ワカが悲鳴をあげた。 巨大兵器から放たれた光は地面をえぐりながら、ギガンテスの装甲を削っていく。 「光弾か! 」 ギガンテスの中に警報が鳴る! かすめただけだったが、敵の光弾はギガンテスの装甲を大きく破壊していた。 そしてまた、敵が光り始める・・・! ケタは安全装置をはずし、トリガーを握り締めた。 「ぬおおおお!!!」 ケタの叫びと同時にギガンテスの主砲が火を噴いた! ・・・・ ・・・ ・・ 5分後。 ケタはもうもうを煙を上げている侵略兵器をみつめていた。 ケタが咄嗟に放った戦車砲は敵の動力部に命中、完全に破壊したのだ。 だが・・。 「これじゃもう走れないね・・・いちおうB−50−C32地点は歩いて行けない距離じゃないけど・・・」 ワカが途方にくれた顔をしている。 その視線の先にはギガンテスが無残な姿となっていた。 敵の光球をかわしきれず、キャタピラを直撃したのだ、 修復不可能なのは一目瞭然だった。 ここから救助地点まではまだだいぶ距離がある。 しかも、こいつを撃破したおかげでここに自分達がいることが敵に 知られただろう・・・。 ペイルウイングでもあれば飛んでいけるのだが、1人分しかなく、 しかも壊れている。 ケタとワカは再び絶望の中に取り残されてしまった・・・。 「どうする?確か近くの大型店舗に補給用の『兵器蔵』があるけど。陸戦兵の武器は慣れてないだろうけど、武器も持たずにいるよりはいいだろう?」 「はい、そうしましょう・・・・」 すっかりうつむいてしまったワカがそういう。 だがそれは無理だった。2人に追い討ちをかけるように、山のむこうに敵のUFOの大群が現れた。 「武器は・・・・・使ないんだよね?」 「はい・・・・」 ペイルウイング隊は超小型化した空気中の水素を用いた核融合装置により、空を飛びエネルギー兵器をあやつる。 小型化したために、エネルギー消費に比べ補充がおいつかず、 空を飛び続けることはできないが、理論的には永遠にエネルギーを使うことができる・・・。 だが、その永久機関も飛行ユニットが壊れた際にイカれたらしかった。 ケタは愛用のショットガンと、背中にかついでいるスナイパーライフルを見比べてみたが・・・。 (だめだ・・とても女性には扱えない・・・) その間にもUFOは迫っている。 ワカは泣きそうな顔をしているが、黙って立っていた。 (・・・どうしたら・・・・) 「!・・・あれだ!あの中に!」 ケタの視線の先にはマンホールが口を開けていた。 下水道を通れば少なくともUFOからは攻撃されないはず! まずはワカが下水道に降りていった、次はケタが・・・ ドウ! 「キャー!」 だが、UFOの接近が早かった。 UFOのビームはケタに当たらなかったものの、マンホールを破壊していた。 その衝撃でハシゴを降りていたワカは落下し、気絶してしまった。 そしてケタは・・・・・。 UFOが空を覆い尽くす地上に取り残されてしまっていた・・・。 ――――――― 一方、空を飛びつつ残された兵を探していたナミ。 「やっぱりもう誰も残ってはいないか・・・」 きょろきょろと首を巡らしながらナミは呟いた。とりあえず陣地を飛び出しては来たものの、当てがある訳でも無く、先ほどからただやみくもに走り回っているだけである。 しかし何となく胸騒ぎがするのだ。長年のカンとでも言うのだろうか。誰かがまだ戦っている、助けを求めて逃げ回っている、そんなような気がしてならない。私にはそのカンを無視することが出来なかった。とそこへ、 <・・・こちら・・ル・・アカネ・・・> ナミには知る由もないが、先ほどのワカの通信である。 雑音混じりに通信が入った。ひどく不明瞭で内容は理解できなかったが、これは・・・救難信号!?カンがあたったことに複雑な思いを抱きつつ、私は発信位置を確認するとすぐさま通信を送り返した。しかし、 「・・・だめね。あちらさんの受信機、壊れてるみたい。」 ち、と舌打ちを漏らす。どうやら敵のまっただ中にいるという訳ではなさそうだが、かなり切迫した状況にはあるのだろう。詳しい情報が得られぬまま向かうのは危険だが、この際仕方あるまい。 「・・・・・・っ!」 僅かだが確かに音が響く。 ・・・敵襲!? だがこちらではないようだ。音から察するに離れた場所だ。振り返ると、広がる瓦礫の山の向こうにゆるゆると黒煙が立ちのぼっているのが目に入った。 ・・・先ほど通信が入ったのと同じ方角だ。ということは・・・。 ナミは残弾を確かめるとすぐさまその場を飛び出した。 ―――――――― その方向にいたのは、もちろんケタである。 (なぜ・・・なぜなんだ・・・?) ケタはさっきから同じことを考え続けていた。 膨大な数のUFOからビームが発射される・・まるで光の雨のようだ。ケタは無人となったビルの隙間に転がり込むが、 光の雨は大地を砕き、ケタが逃げ込んだビルをもじわじわ砕いてケタを追い詰めていく。 (巨大生物が再出現したのは、前大戦時の生き残りが繁殖したから・・) ショットガンを空に向けて乱射しながらケタは次のビルの隙間に走る。狙いなどあってないようなものだが、その散弾のいくつかはUFOに命中し、爆発した。 (では、このUFOやさっきの機動兵器はどうなんだ!?) 腰のバックからショットシェルと取り出し、銃に装填していく。 ショットガンの扱いには自身があった、数秒でリロードを終えて再び走り出す。 (敵の母艦は・・マザーUFOは破壊したはずだ・・・!!) UFOのビームがケタの頭をかすめ、ヘルメットが弾けとんだ。 ナミもそちらへ向かっていた。 轟音がどんどん迫る。一気にブーストをかけて瓦礫の群れを抜けると、目の前を幾条ものレーザーが掠め過ぎていった。UFOか! やや開けたその場所は元は交差点だったのだろうか、そこには十数機の円盤群が四方八方に飛び回り、熱線の雨が降り注がれていた。 ナミの気配に気がついたのか、円盤群の動きが一瞬止まり、数機がこちらに向かってきた。刹那、一機のUFOが突然火を噴いて爆発する。 誰かいる!?群れの中心では一人の隊員がショットガンを手に戦闘を繰り広げているところだった。瓦礫を遮蔽物にしながら巧みに動き回り、隙を見ては円盤を破壊している。かなり熟練した兵のようだったが、やはり数の多さにかなり苦戦しているようだ。 「大丈夫!?今加勢するわ!」 ナミは意識を集中させ、背中のウィングに猛烈なブーストをかける。急速なGに身体がきしむが、無理矢理意識の外に閉め出す。 一瞬の内に円盤の群れへ飛び込んだ私は、手の平に収束させたグレネードを周囲にばらまいた。無数のきらめきが中を舞い、強固な円盤の装甲触れるや否やそれは白光を伴いながら炸裂した。 周辺すべての機体を巻き込み、UFOの包囲網を完全に崩す。 「今よ!援護して!」 白煙を噴いてよろめく機体に、私達はありったけのエネルギーと銃弾を叩き込む。爆発するUFOをかわしつつ、レーザーランスとショットガンのコンビネーションは次々に敵を撃ち抜いていった。2人の火力がかなりのものということもあり、UFO群はろくな反撃もできないまま数秒の内に火の海へと沈んだ。 「・・・ふぅ。なんとか片付いたわね・・・。」 ナミは空中から地上へと降り立ち、服を軽く払うと安堵の息を漏らした。背中のウィングがしゅうしゅうと冷却音をあげている。彼女は振り返りながら、先ほどの隊員に声をかけた。 「あなた、いい腕してるわね。助かったわ。怪我は無い?・・・ってあら、あなた・・・。」 「・・・久しぶり、バレーん時はどうも。できればこんな場所で 会いたくはなかったよ。」 彼は苦笑いしながら手にしたショットガンを下ろし、握手を求めてくる。私はそれに応じながら同様に苦笑した。 「ほんとね。えっと、確か竹下さん・・・だったわよね。」 「ケタでいいよ。皆そう呼んでる。そっちはナミさんだったよな。来てくれてほんと助かったよ、ありがとう。戦車が途中でおシャカんなってさ、外に飛び出した途端UFOちゃんたちと御対面だよ。」 ケタ隊員は壊れた戦車を指差しながら肩をすくめる。と、そこで突然何かを思い出したような顔になり、すぐさまこちらへと向き直った。 「そうだ!俺の連れがまだ・・・!」 「え、救難信号を出したのはあなただけじゃなかったの!?その人はいったいどこに・・・。」 ナミは慌てて瓦礫だらけの周囲を見回す。墜落した円盤が転がるばかりで、人の気配は感じられなかった。 「地下だ。UFOに襲われた時、俺達は地下へ逃げ込もうとしたんだが俺だけが逃げ遅れてしまってな。彼女はそこのマンホールから地下道に入ったはずだ。無事だといいんだが・・・。」 ケタの言葉にナミはすぐさま反応する。 「私達で助けに行きましょう。友軍は朝には撤退を開始するわ。このまま救助部隊を待ちたいところだけど、それじゃ間に合わないかもしれない。少数の方が動きやすいわ。」 ナミは既にやる気だ。腕に装着されたレーザーランスを確認し、ウィングを背負い直す。 「賛成だ。幸い弾だけは十分にある。大軍相手でも大丈夫だ。・・・あまり考えたくないけどな。」 「ふふ、頼りにしてるわよ。さ、急ぎましょう!」 次第に夜が街並を支配していく中、2人はさらに暗い闇の淵へと飛び込んでいった。 捜索をはじめ数十分。 「あなたの探してた人は救助されたそうよ」 通信をとっていたナミが明るい表情でケタに伝える。 ケタは体の力が抜けたのか座り込み、 「・・・よかった」とだけ、呟いた。骨折り損でもこういう結果なら大歓迎だ。 今日まで多くの仲間の命を失ってきた・・・、 だからこそ少数とはいえ仲間の生存はなによりも嬉しいのである。 「さて・・・これからどうするか・・・」 「本部からは撤退命令がでているわ、早く撤退しましょう」 ナミはまだいるかもしれない仲間を残して撤退する気はなかったが、とりあえずそう答えた。 なにしろケタの消耗が激しかったのだ、この激戦の中では仕方ないことだろう。 仲間の知らせを聞いて張っていた気が抜けたのか、いまにも倒れそうだ。 まずはこの隊員を脱出させないといけない。ナミはそう判断した。 ケタは疲れきった顔で戦闘中のことを思い出す。 溢れ返った巨大生物、再出現したUFO、新型の侵略兵器・・・そして撤退命令。これらがケタの中で1つの考えに至る・・・。 (エイリアンの再来か・・・。) 「ケガでもしてるの?」 ナミが心配そうに声をかける。 ケタが妙な顔をしているので、どこか負傷したのかと思ったらしい。 「いや、なんでもない(^^;」 ケタはやたらひきつっていたが微笑んで答えた。 ナミは不思議そうな顔をしていたが、それ以上特に聞かなかった。 福岡 「B−50−C32」地点 ケタは無事に救助用のヘリに乗り込んでいた。 ナミは仲間の隊と合流するために、途中でわかれていたのだ。 ヘリの中は負傷した隊員であふれかえっている。 見渡してみたが、第三陸戦隊のメンバーもワカとかいう隊員もいない。救助用のヘリはこれを含めて3機程ある・・・ このヘリにはいなくても救助されている可能性はある。 「そうさ・・必ず救助されているはずだ・・通信も入ったじゃないか。」 ケタはそう信じるしかなかった・・・。 ヘリが離陸する・・・。 福岡の街が小さくなっていく、ほとんどのビルは倒壊しまるで地獄だ。不意に体が重くなった・・・異常に眠たい・・・ ケタは腰につけてあるバックに手をそえた。中には出撃前に買った からし明太子が入っている。 「さよならだ・・福岡・・・」 寂しそうにそう呟くとケタはそのまま深い眠りに入っていった…… ――――――――――――――――――――――――――――― 7月2日 目を覚ましたらもう昼……(゚Д゚)夏場だからか、明太子も腐ってるし(TωT)……もう富士山が真横に来ているからここは静岡か…… 結局ワカはどうなったか、とても心配だ。戦場ではいちいち気にかけちゃいけないのかも知れんが。 それより重要なことはUFOだ、もしかしてインベーダーがまたきやがったのか?もしそうだとしたら今回はどんな作戦だというのだろう。 わざわざ福岡にマザーシップが来るなんて。 しかも福岡にはマザーがいるせいで俺は東京へ行かなければならない。故郷を離れて東京か……うまくやってけるだろうか。 一度も行ったことないけどち 「うう……」 (気持ち悪……) ヘリに揺られながら日記を書いていたケタは吐き気を催してしまった。あと数時間、到着するまで耐えられるかどうかわからないほどに…… (降りるまで日記はやめとこう……) 輸送ヘリは、青い空をただひたすら目的地へと飛んでいた。 まとめてみたので読みやすくなってるとは思いますが、ケタや若菜のフルネームを勝手に決めてしまいました。先ほども言いましたがおおらかな対応をお願いします。 [No.11487] 2007/06/27(Wed) 14:24:55 124-144-194-229.rev.home.ne.jp |
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