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all 結城博士の物語 - Tony - 2007/08/06(Mon) 02:57:03 [No.11503]
Re: 結城博士の物語 - 三枝 - 2007/08/07(Tue) 23:37:40 [No.11506]
感想ありがとうございます - Tony - 2007/08/08(Wed) 20:32:52 [No.11507]
Re: 結城博士の物語 - すげー人 - 2007/08/07(Tue) 18:07:19 [No.11505]
Re: 結城博士の物語2 - sososososo - 2007/11/10(Sat) 17:51:50 [No.11524]


結城博士の物語 - Tony

Lie Thunder −偽りの雷−

ピピ・・ピピ・・ピピ・・

机の上のデジタル時計が時刻を告げる。時刻は午前2時。
「もう、そんな時間か・・・・・」
彼は薄暗い研究室にいた。室内には最新鋭の電子顕微鏡や遠心分離機、冷凍保存機などが所狭しと並んでいる。一見すれば何かの研究室に深夜まで残っている熱心な科学者。そう見える彼だが、この室内にある異質な物体、いや、一体があるためにここは異様な雰囲気に包まれていた。
 室内の壁際に並べられた標本類とその一角を占める黒い塊、それはあまりに巨大な昆虫の死骸であった。通常ではありえない大きさのその物体は蟻と呼ぶにはふさわしくないのだが、しかし蟻としかいえない形をしている。全長は10Mにもなるだろうか。普通こんなものを見た者は驚愕するであろう。しかし、彼の生きる世界でこれを知らない者はいない。これは2年前、地球全土をおそった悲劇の執行者。侵略者の送り込んだ生物兵器の死骸だからだ。
 当時、誰もが信じようとせず、しかし誰もが信じざるを得なかった現実。突如として出現し、人類のもつ兵力をものの数日で消し去った謎の飛行物体と巨大生物兵器郡。抵抗する戦力をそがれ、何が起こったのかすら理解できず死に絶えていく人々。それはあまりに突然であっけない人類の最期かと思われた。しかし、人類は生き抜いた。たった一人の英雄の活躍で敵の母船は撃墜され、残った敵戦力も一掃されたのだ。
それから人類は復興と繁栄を取り戻し、世界は再建されていった。二度と帰ってくることのない者たちへの哀悼も、敵母船とともに姿を消した英雄のことも一時も忘れることはない・・・。

・・・・・そう、信じていた・・・・・

 だが世界は変わった。侵略者のもたらしたテクノロジーは皮肉にも人類の復興と発展に寄与することとなり、人類はそれまで以上の文明の繁栄に心酔した。そして、いつしかそれらの技術は国と国との争いに発展した。どこが技術を占有しパワーバランスを取るのか。大戦以前に繰り返した無駄な争いを人類は再開した。技術を求めて争い、技術を用いた兵器によって争いを収め、また新たな技術が火種を作り・・・・・・

 大戦を終結させた英雄の所属した機関、EDF(連合地球軍)ですらその争いの一端を担っていた。暗躍する死の商人、兵器ブローカー達は最新鋭の装備を開発、実地運用するEDFにも目を付けていた。大戦以前のEDFは国際的な枠組みを越えた正義の執行者としてその存在を律してきた。だが大戦によって失った人材の穴はあまりに大きく、組織を揺るがし、ブローカーに付け入る隙を与え、そして終わることのない輪廻のなかに堕ちていった。


連合地球軍トライデント合同戦略兵器開発局 対生物兵器部 主任科学者
これが今の彼の肩書きだった。EDFは現在、世界最大の兵器ディーラーであるトライデントと実質上の協力体制をとっており、EDF生物科学者であった彼もまたその中に取り込まれていた。彼の研究室に掲げられたプレートを見るたびに彼は自分を笑い、世界を笑い、人間を笑った。
ほんの2年前に危機に陥った人類はまた争いを始め、自分はその片棒を担いでいる。なのに誰もそれを攻めない。それが当たり前のごとく振る舞い、そして過去を忘れてゆく・・・。
 彼は生き延びた2年の時間を研究に打ち込んできた。開発していたのは大戦中に敵が送り込んだ巨大生物に対するための物だった。研究を始めた1年8ヶ月前の当時、周囲の人間は驚き、悲しみと同情をもって彼を引きとめようとした。
「もうあいつらは来ないよ・・・」「家族のことは残念だったけど・・・」
そんな言葉が彼を取り巻いたが彼の心は変わらなかった。以前所属していたEDFの生物化学研究所に頼み込み、兵器開発局に異動すると彼はすぐに対巨大生物兵器の開発に打ち込んだ。
研究成果が対人用の兵器に転用されたが無視した。トライデントのディーラーが研究室にやってきて札束を置いていったのも無視した。周囲の人間が自分から離れていくのも無視してきた。

それも今日で終わる・・・
そうつぶやき、目の前のディスプレイに目をやる。数式、グラフ、設計図・・・・そして一つの音声再生ソフトが起動している。その再生ボタンをクリックするとスピーカーからは戦場の音が流れ出す。戦場の音、恐怖の音、絶望の音・・・

・・ザザ・ザ・・・数が・・多すぎるっ・・・ザー・・

激しいノイズ、後ろではライフルの射撃音、絶叫、爆発音、何かの噛み砕かれる音。

・・・ザ・ザザ・・駄目だっ・・ザー・・囲まれた・・・・

巨大な何かが周りを取り巻き、うごめく気配。そして・・・
わずか数秒の通信、これが一人の兵士の、彼の弟の最期だった。
彼は再生ソフトを閉じるとそのファイルを消去した、そのファイルの痕跡すら残さないように注意深く。本来ならば自分が閲覧できるレベルのものではなかったのだから。
彼は自らの研究成果として完成した兵器の全ての資料をまとめると、信用できる科学者の元に宛てて送った。この兵器が運用されれば戦局は変わるはずだ、あいつもそれを望むだろう・・・
「なぁ、そうだろう」 彼は一枚の写真に向かって語りかけた。
写真には幼い二人の少年とその両親が写っている。虫取り網を持っている少年は彼だった、その兄の後ろに隠れるように写っている彼の弟は、仮面ライダーの人形を大事そうに抱えている。
彼はふっと微笑み、思い出していた。あいつはこの人形をいつも大切そうにしてたな。たしか仮面ライダーストロンガーだっけ・・・。昔からヒーローに憧れてたな、私の反対を押し切ってEDFに入隊したときには驚いたよ・・・・・・。

「そろそろ行くか・・・・・」
彼はその写真を胸ポケットにしまい、傍らにある大きな鞄を持って立ち上がった。部屋の隅にあるテレビには研究室にある巨大生物のサンプルと同じモノが大量に映し出されている。ただ違うのは、それが生きていて人を襲っているということだった。
 今から2週間前、前大戦で撃退したはずの巨大生物群がロンドンに突如として出現。同日、世界各地で同じ現象が確認された。奴らは撤退したんじゃない。おそらくは地下で増殖し・・・
生物学者であった彼はその可能性を予期していた、その警告もしてきた。だが目先の利益と繁栄を優先した人類はその報いを受けることとなったのだ。
 生物はただ生きるために活動し、他の生物を捕食する。そして生態系のバランスは生物の意思を超えた所に存在し均衡を保っている。彼にはそれが見えていた。地球、いや宇宙全体を一つの生態系と考えるのならば、我々も生態系の一部でしかないと。だがしかし・・・

 彼の鞄には自ら開発した新型兵器、サンダーボウ30の試作品と飛行ユニットをはずしプラズマエネルギーユニットの容量を強化したものが納まっている。報道によると敵は廃墟となった東京に集結しているようだ。だが、以前と比べ物にならない敵の母船がある以上、あれを何とかしなければこの戦いは終わらない。ハッキングした情報から予想される母船の次の出現地点は・・・・


やつらへの復讐心はない。人類への嘲笑も、もうない。
ただ、やらなければならない。あいつがそうしたように・・・
彼は湿ったアスファルトを踏みしめ歩き始める。
その足跡は血の色。後悔の色。
誰も、彼のことは知らない・・・・


数週間後、新たな英雄によって敵母船、皇帝都市は撃墜された。
その弱点であった中央部分は、まるで雷撃のように鮮やかなブルーであったという。

End



初めての投稿です。
こちらで読ませていただいた物語に触発され、自分も書いてみようと思い挑戦してみました。
主人公として描いたのは結城博士です。
自分が望んでいるのかも分からない復讐心と人類への絶望を抱き、それでも何かに突き動かされるように死地に向かう男として描いたつもりです。

あんなでかい皇帝都市がライフルで堕ちるわけないじゃん!きっと何か他のダメージがあったに違いない・・・
という妄想からスタートした物語でした。
感想や批評などをいただけるとうれしいです。
それでは。


[No.11503] 2007/08/06(Mon) 02:57:03
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