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No.8479に関するツリー

   戦士たちの一日 - エア - 2005/10/08(Sat) 09:45:55 [No.8479]
ショートストーリーまとめてみました - フェアリー - 2007/06/21(Thu) 17:16:03 [No.11486]
Re: ショートストーリーまとめてみました - ヘリ兵士 - 2007/07/05(Thu) 21:45:10 [No.11489]
Re: ショートストーリーまとめてみました - フェアリー - 2007/07/06(Fri) 10:20:08 [No.11490]
Re: ショートストーリーまとめてみました - 三枝 - 2007/07/07(Sat) 12:43:51 [No.11498]
三枝さんへの返信 - フェアリー - 2007/08/14(Tue) 20:34:47 [No.11509]
ケタの戦い - フェアリー - 2007/06/27(Wed) 14:24:55 [No.11487]
第51遊撃隊 - フェアリー - 2007/07/06(Fri) 11:09:50 [No.11491]
作戦会議 - フェアリー - 2007/07/11(Wed) 18:20:18 [No.11499]
英雄たちの初対面 - フェアリー - 2007/07/25(Wed) 21:52:26 [No.11500]
魔塔 - フェアリー - 2007/08/02(Thu) 12:57:47 [No.11501]
シェルター防衛戦 - フェアリー - 2007/08/12(Sun) 13:25:43 [No.11508]
巨大生物の巣窟 - フェアリー - 2007/08/19(Sun) 10:06:05 [No.11511]
巨獣・ソラス - フェアリー - 2007/08/29(Wed) 23:09:16 [No.11512]
Re: 巨獣・ソラス - フェアリー - 2007/09/06(Thu) 22:07:40 [No.11515]
戦士の休息 - フェアリー - 2007/10/08(Mon) 23:02:36 [No.11519]



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戦士たちの一日 (親記事) - エア

ある日俺が、散歩(もちろん秘密で)にいってるときに偶然敵に見つかった。偵察隊だっだのか、逃げたのであった。もちろん俺の持ってた、コンパクト式ガトリング砲台で倒した。この時に、何か(宇宙人)が飛び出した。円盤を見てみると、何と、ロボがはいっていた。調べてもらうために、円盤にのっていった。

[No.8479] 2005/10/08(Sat) 09:45:55
dhcp-ubr2-1058.csf.ne.jp
ショートストーリーまとめてみました (No.8479への返信 / 1階層) - フェアリー

序章:前大戦から二年。
焼け野原となった街は驚くべき速さで復興をはじめ、人類は、再び秩序と統制を取り戻していた。
大戦の傷跡はあまりにも大きかったが、しかし、皮肉にも侵略者がもたらしたテクノロジーが文明復興に寄与することとなったのである。

壊滅状態となったEDFは再度編成され、高度な権限を持つ組織へと生まれ変わりつつあった。
さらに特殊部隊ペイルウイングが結成され、戦力強化が図られている。

人類は2年の平和を謳歌し、文明の復興に努めていた。
だが・・・地の底深く・・・異変は進行していた。

2019年緊急事態発生

英国より緊急連絡。
ロンドンに巨大生物、多数出現。
悪夢がいま、蘇ろうとしていた。

 第一章:ロンドンの災厄


ロンドンにて、前触れもなく発生した巨大生物の出現。普通、海の向こうで起こったことなど他人ごと

でしかないが、こればかりはどんなに時代が移り変わろうとこれは他人事でなくなる。ロンドンに出現

するということは、地球上のどこに出現してもおかしくないということである。

 人類も前大戦を受け、装備の強化・人員の大幅な増加、および新たな戦力であるペイルウイングとい

う兵種を生み出し、全大戦にて世界を救った組織であるEDF(Earth Dfence Force

)は格段に強化されていたが、このように前触れもなく出現するということはまったくの想定外の事態

であった。かつて世界を蹂躙した訪問者の再来が意味するのは、避けられぬ悲劇である。



2019年・昼ごろの、ロンドン郊外にて

最も早く異変に気づいたのは仲の良い三人の家族であった。二人は町から少し離れたところで食事の準備をしていた。
「おい、あれは何だ?黒い何かが見えるるけど。」と言って妻の肩をたたき「お前目いいだろ。何があるか見てくれよ」
父親は遠くに見えた何かに気づいた。
「ん?どれどれ・・・・・・嘘でしょ・・・・」
母親は表情が一瞬で凍りつき早くも気が動転した様子である。
「なんだ?どうしたんだよ。」
「母さん、なにかあったの?」
と、二人が言う二人に母親は乱暴な声で、
「逃げるの!!速く!!蟻よ、巨大生物が現れたのよ。早く警察に連絡して!!」

言われてみれば、あれが巨大生物であることは疑いようもなかった。さっき問いかけた時は黒い点だったが、今は黒い波となっている。

父親はすぐに携帯を取り出し警察へ連絡した。

「警察、警察すぐ助けにきてくれ!」

「落ち着いてください。いったいどこで、何が、どうしたのかを落ち着いて教えてください」 と問いかけると、

「巨大生物だ! あいつら一匹残らず死んだんじゃなかったのか?こっちに向かってきている。」

「それは本当に巨大生物で間違いないですか?」

「当たり前だ見ればわかるだろう!!あんな黒い塊が押し寄せてくるなんてほかにあるのか!!」」
と、父親は言った。だがテレビ電話にしていないから見れるわけはない。
それもわからないほどに動転していたのだ。

「と、とにかく正確な場所と向かっている方向を教えてください。」

「町の北だ!!どっちに向かっているってこっちに決まっているだろ!!」

あまりに気が動転していて話していても全くわからない。しかし逆探知により位置がわかるため向かっている方向さえわかれば良いことになる。

「向かっている方向に太陽はありますか?」

「あるけどそれが何の関係があるんだ!!馬鹿なこと言ってないで早く助けてくれ。

今は昼時太陽は南にある。巨大生物の出現場所・及び向かっている方向が分かった。オペレーターはそのまま電話応対を続け、その他の者は、警察ではどうしようもない事態をEDFへと報告した。

この報はEDFのほか各テレビ局ラジオ局に知らされた。

ロンドン市内に巨大生物出現の旨を伝える放送が鳴り響き、テレビ・ラジオの番組はすべてがニュースへと変わった。その内容は、

「現在この地域に巨大生物が多数確認されています。ロンドン近郊に避難勧告が発令されました。市民
の皆様は、誘導に従って避難を開始してください。避難指定置は**スポーツセンター・**大学・ロ
ンドン市役所および図書館・国会議事堂・EDFロンドン支部となっています。最寄の避難所に速やかに避難してください。なお、車での避難は御遠慮ください。繰り返します・・・」というものである。

突然の巨大生物の来襲、状況はまったく訳もわからないといった感じで、市民は蜘蛛の子を散らしたよ

うに家から出て。避難所を目指す。巨大生物を発見した場所は町から離れているとはいえ、巨大生物の足は60

q/hは出ている。車を使わなければ競輪選手でもない限り逃げることはできないしすぐに追いつかれ

る。黒い影が見える≒死を意味していた。


「巨大生物だ!!」
「助けて!!」

そういった声がいたるところから聞こえては、断末魔の声すらあげる間もなく消えていく。

「ロンドン市内はパニック状態です。」

などとEDFのオペレーターの無線が届く。この異常事態の中で正常でいられるほうがどうかしている。

そのパニック状態の民衆をなだめる役割として、スピーカーを積んだ車が、避難を呼びかける放送を続

けていた。


我先にと逃げ惑う民衆の中には、転んでしまい後から来る者たちに踏み潰される者。人の流れからはず

れ違う道に逃げるもの。放送を無視して車で逃げる者など様々だ。まるでサバンナの草食動物が川を渡

るような混乱振りで、巨大生物とは関係のない死者も相当数に上った。


そして市民たちが避難をはじめどれぐらい経っただろう?ようやくEDFが現地に到着した。武器と着替

えをすべてヘリに持ち込み、狭いヘリの中で着替えと武器の手入れを行う程急いで向かった十数分の時

間。待つものに対してはまさに『死ぬほど待った』というイメージである。逃げ遅れた市民を奴等がひたすら襲っていたため、遠くに逃げた者たちは無傷であるが。いつここまで来るかわからないという恐怖には、吐き気すら覚える者もいた。

現地に着く前に隊員たちは、
「いいか、奴らは我々にすでに気づいている。現地に到着したら指示を待たず発見しだい奴等を射殺し

ろ。ヘリから降りるときに安全装置をはずしておけ。」と命令を受けていた。

到着したEDF隊員の第一声は

「なんて数なんだ! 一体何処から出てきやがった!?」
「突然現れたんだ!! 前ブレも無く、気が付いたら町中が巨大生物だらけだ!!」

と言うもので、やはり状況は飲み込みきれない。ただ判るのは悪い状況と言うことだけである


「日本から助っ人が来てる! 時計台付近は任せよう! 我々は中心部の市民を救出しに行く!」
ロンドンの隊員が言う助っ人とは、たまたまロンドンに来ていた日本の隊員であり、半ば無理やりに戦闘に参加させられたものである。

時計台付近、つまり国会議事堂付近は一時的な避難場所に指定されていたが。そこにはもう巨大生物が到着しており敵がお祭り騒ぎを繰り広げていた。建物は丈夫にできているが巨大生物にかかれば、いつまで持つかもわからない。

ロンドン:時計台付近上空にて

「くそ、ついてねえな。ヘリの操縦の特別講師として来たらこのありさまかよ。」

福島 吉太郎(ふくしま よしたろう)。EDFに入隊する前からヘリが大好きでヘリと呼ばれているこの男。ラジコンでも実物でもヘリの操縦がやたらうまく、独り言の通りヘリの操縦の特別講師としてロンドンに来たら、このような事件が起こった不幸な人間である。

同じく日本から来た隊員は
通訳として付いてきた、   佐原 健一 (さはら けんいち)
同じくヘリの講師としてきた、ヒロこと               芝原 勇(しばはら ゆう)
最後に、日本で開発された新兵器のプレゼンのために訪れた。     須川 武雄(すがわ たけお)の三人
ヘリ兵士を入れて四人である。この四人の内ヒロを除いて第51遊撃対のメンバーである。

「四人でこの数かよ。はん、よっぽど頼りにされているようだな。」
と、ヒロのボヤキが聞こえる

輸送ヘリは後続部隊の輸送に使うからといわれ得意のヘリを使えずに放り出されたヘリ。彼は前大戦に参加して生き残った隊員であるため、そこそこ信用出来る戦闘能力を持っている。それでもこれは無茶な大群であるが、ほかのところも似たり寄ったりの状況である。贅沢は言えない。

隊長であるヘリは「見つけ次第奴らをたたけ。そして殺すことより生きることを考えろ。」

と、半ばありきたりともいえる指示を出す。

「イエッサー」と仲間が答え、戦場へと降下した。巨大生物との戦いでは敵によって戦い方が違い、一般的に蟻と呼ばれている黒色甲殻虫は散開し包囲することが最適といわれている。ただし、この作戦は人数が多く必要であり四人ではどうしようもない。結局四人はまとまっていくこととなった。



「やれやれ、ハーキュリーのプレゼンが実戦形式になるとは夢にも思わなかったな。」
須川隊員はぼやく。須川は遠距離攻撃担当なのだ。

ハーキュリーの引き金を引けば黒蟻はあっけなく息絶える。その上意外と速射も聞くために、実践での価値は高い。

ほかの三人も負けてはいなかった。黒蟻と相性のいいペイルウイングならまだしも、いきなりの大群に少ない人員で送り込まれたため、明らかな戦力不足。特にヘリ達は最も敵の多いところへ乗り込んだのだが、どう避けどう攻撃するかを知っている者は強いのだ。

ヘリ達の前には大量の敵。レーダーを見ている隙はない。後ろに敵がいないことを気配だけを頼りに確認して前方の敵をただひたすら倒していた。奴らは自分に一番近い物を攻撃する習性がある。ゆえに不謹慎極まりないが、逃げ惑う市民が生き残っている今が最高のチャンスであり、市民という救うべきものを救えなければ、防衛軍の名折れであるため、速攻で決めなくてはいけない。

蟻が酸を飛ばしてきたので、車の陰に隠れ、市民がいないのを確認し、手りゅう弾を投げ飛ばす。隠れている間に即座に銃のリロードを終えると、車の窓を貫通させるように撃つ。こうすることの意義は車の屋根が酸をあらかた防いでくれるからである。

佐原・ヒロの二人も遮蔽物をうまく使い攻撃を防いでは反撃していた。特にヒロは服屋からかっぱらったと思われる鏡を盾にして酸を防ぐというやんちゃぶりである。

市民があらかた殺され、もしくは避難し終わると、少し離れた位置にいる蟻も目先の獲物を求めてこちらに向かってきた。

「ちぃ!来やがったか・・・」ヒロは舌打ちをする。

こうなると手数がどうしても足りなくなるため、ヘリは片手でアサルトライフルを撃ちながら、もう片手と口を行使して手りゅう弾を投げるという無茶をする。狙いなど有ったものではないが、何せ「的」がでかいため結構当たるものなのだ。

 しかしそれは集中力を失わせる結果となった。佐原・ヒロはそのまま普通に戦っていて、ちゃんと後ろにも気を配ることができた。

「ヘリ隊長!!」須川が叫ぶ。集中を失っていたヘリは後ろに音もなく迫っていた蟻に、まともに一撃をくらってしまった。須川はその蟻を急いで倒す。近くにいた佐原はすぐさま中和スプレーをヘリの体に吹きかけ、どこか隠れる場所はないかと探した。佐原は手りゅう弾で穴のあいたマンホールをみると(あそこが良さそうだ。)と思い、ヘリを引きづって下水道に降りて行った。

その間も戦いを続けていたヒロは、逃げ回っているうちに二人が入って行ったマンホールから遠ざかっていた。一瞬「おい待て!!俺も・・・」と言いかけたが、蟻に行く手をふさがれ、もはや下水道に逃げることは出来なくなっていた。

スーツにはアリの内臓を使った、酸にとにかく強いインナー素材を使っていたが、肌の露出した部分やしみ込んだ分はどうにもならない。ヘリは中和スプレーで酸のこれ以上の腐食は抑えたものの、痛みで意識がもうろうとしているようだ。


「ヘリ隊長」

トンネルの中で寝ていた
「隊長しっかりしてください」
佐原・・・?
そうか、確かロンドンに出現した巨大生物と戦うために出撃して。
「佐原、戦況は・・・須川は・・・ヒロはどうした!!」
「須川は今、上で戦ってます。動き回っているようなので死んではいないでしょう。だが、ヒロは・・・動いていません。救難信号が出ているわけではないですが、恐らく・・・とりあえず戦況は膠着状態です。」
「ここは?」
「ロンドンの下水道ですよ、とりあえずここに隠れてるんです」
「そうか・・・。」
ヘリは傍らのアサルトライフルを取ると、梯子に手をかける。
全身に激痛が走ってその場に崩れる。
慌てて佐原が駆け寄る。
「動かないでください、体中に大火傷おってるんですから。」
「しかし須川が・・・。」(それにヒロのかたきもとらねばならない。)
「須川より自分のことを心配してください、指揮を執る人間がいなくなったら部隊は崩壊ですよ。」
「だが・・・」
昔、入隊するときに言った、あの言葉がよみがえる。
「俺は地球人すべてを守るために戦うって誓ったんだ」
そう言って激痛に耐えて梯子を登った。
マンホールの近くには何もいないようである。
念のためレーダーを見る。
!!すでに自分の周りは敵を示すマーカーに囲まれていた。
屋根の上に蟻が現れ、こちらに酸をかけてくる。
間一髪穴に入ってよける。
反撃しようとアサルトライフルを構えた時、背後に蟻の気配を感じた。
回避は間に合わない。
ここまでか。
すまん、ヒロ。
その時だった。
ドン・・・
後ろの蟻が崩れる。
!?
ドン
今度はヘリの斜め右にいた蟻が崩れる。
ライサンダーF(威力重視のスナイパーライフル)だ。
誰かがライサンダーFで狙撃しているんだ。
このチャンスを逃せるか。
アサルトライフルを目の前の蟻に向けて撃ちまくる。
1匹やった。
「隊長、大丈夫ですか?」
佐原がマンホールから顔を出した。
「!」
あわてて佐原は顔を引っ込める。
蟻の酸が今佐原がいたところにかかった。
その隙にヘリは物陰に隠れる。
レーダーを見る。
自分の周囲の敵の数は8匹。
傷は痛むが、この位の数ならやれそうだ。
物陰から出ると、アサルトライフルを撃ちまくった。
1匹撃破。
敵の酸を蟻の死体に隠れてかわし、酸がやんだあと再度攻撃。
2匹目撃破。
いつの間にか、佐原も体を出していて。ピンを外しタイミングを見計らって手りゅう弾を蹴り飛ばし蟻の足元で爆発させ、2匹を同時に倒していた。
近づいてくる敵から距離をとりつつ攻撃。
2匹を仕留めるも1匹に横を取られる。
ドン
その1匹がライサンダーに貫かれた。
最後の一匹は佐原が倒していた。
レーダーを見る。
遠くに敵はいるが、周囲に敵はいない。
代わりに味方を示すマーカーが一つ存在していた。
その方向を向くと、そこにいたのは・・・。
「ひさしぶりだな、ヘリ。」
「ヒロ・・・、生きてたのか、だが・・、どうやって・・・。」と、言い終わる前にその臭いと、体についた野菜くずに気づいた。ゴミ捨て場に隠れていたのか・・・
「それより陣地に戻ってその傷を手当しろよ。」
「・・・いやそれは・・だめだ、部下がまだ一人戦ってるんだ。
俺が逃げるわけにはいかない。」
「お前のやりたいことはわかった、だがそのことは俺に任せろ、お前は陣地にもどれ。」
と、ヒロ
「俺も一緒に・・・。」
と、ヘリは言ったが、
「その怪我で何ができるんです!!、犬死したいんですか?」
と佐原に注意された。
「・・・。」
「お前の気持ちはわかる、だが今の自分でも足を引っ張るのはわかるだろ、陣地にもどれ、これは命令だ。」

「・・・了解、・・・信じるぞ。」
「まかしておけ。」
そう言うとヒロは敵の群れに向かって走っていった。佐原はヘリを陣地へと運ぶため肩を貸した。

第51遊撃隊 現在総員4名
戦死者なし

ヒロは信頼に答え須川とともに生還した。




現在巨大生物が確認された都市は、ロンドン・ニューヨーク・東京。該当地域、 および近郊に避難勧告が発令されていた。


―――――――――――――――――――――――――――――
日本に伝えられた巨大生物のニュース。日本にはまだ巨大生物の出現は確認されていないが、当然のこと、緊急集会が開かれた。

そしてその夜、ソバカスのある顔に茶色がかった髪の青年が日記をつけていた。


6月20日
夜のニュースにはビビったね。あの黒蟻がまた出やがったとか。世界中がパニックで、もちろんこの福岡もパニックだよ(・ω・)
おれたちEDFはもう訓練の終わった夜だって言うのに、
集合して奴らの襲撃に備えろってさ(-△-)。
できればこのショットガンを役立てる時は来てほしくなかったよ。
このまま日本は何もなければいいんだけど・・・

「ふう……こんなもんかな。それじゃあ、おやすみなさい、シーリウ隊長」

眼鏡をはずして電気を消し、もうしばらくないであろう、
まともな睡眠の最後の夜が過ぎって言った。


長くなりました。結構加筆修正していますが、作者の皆さんおおらかにお願いします。全部完成したら、小説投稿サイトに登校しようかと思ってます。


[No.11486] 2007/06/21(Thu) 17:16:03
124-144-194-229.rev.home.ne.jp
ケタの戦い (No.11486への返信 / 2階層) - フェアリー

ロンドンの戦いから数日。
ロンドンに出現した巨大生物とEDFとの戦いは機甲師団とペイルウイングの登場で人類の勝利に終わった。
しかし巨大生物がどこから現れたかなど詳しい事はまだなにもわかっていない。
EDFはロンドン市街地の中央の広場に仮設基地を建設し、対巨大生物の前線基地にした。
また、巨大生物がいつ出現してもいいようにロンドン市街地には完全武装したEDF兵士が配備され、装備の強化のため封印されていた陸戦兵の武器、(ライサンダーZ・ボルケーノ6A・AS−100)などの解禁、EDFなどの基地から離れたところでも補給を行えるように大型の施設などに設置された、通称「兵器蔵」のセキュリティを、
一部解除した。

市民は一時的な避難所から、誘導され、そのままシェルターで生活することになった。
しかし住み慣れた場所を出たくないと町に残ろうとする市民や、
なれない避難所生活から早く逃れたいという市民が勝手にシェルターから出て、町中で警官隊やレスキュー隊、EDF兵士と口論になっていた。

仮設基地の中で第51遊撃隊は再び全員集合した。
ヘリが奇襲を食らって大火傷を負った以外に大きな被害もなく、
ヘリの火傷も最先端医療によりほとんど完治した。
「いいしらせと悪いしらせがある」
ヘリが部下についさっき本部から届いた命令を読み上げる。

「まずいいしらせからだ、我々に増員が来てくれた。」
ヘリの隣に立つ二人のペイルウイング兵の紹介を始めた。

「まず許深隊員、階級は2等兵、副隊長をやってもらう。」
許深隊員は軽く礼をした。
長い栗色の髪をしていて、意志の強そうな目をしている。

「許深です、よろしく。フルネームは許深 素華(このみ もとか)と言います。」
それだけいうと

「でこっちがフェンナ隊員、階級はお前らと同じ3等兵だ。偵察と
陣地確保を担当してもらう。」
フェンナ隊員はおどおどとして許深のほうを見る。
許深はそれに気づくと

「とりあえず礼をしろ」
と小声で言った。フェンナはあわてて礼をして自己紹介を始める。

「フェ、フェンナ、フェンナ・スミスです、その・・よろしくおねがいします。」
フェンナは童顔で、身長も許深より低いため子供っぽく見える。

「あー仲良くするように。」
ヘリは話を切り替えた。

「次に悪いしらせだ、日本にも巨大生物が出現した、数はここで戦ったのの10倍だそうだ。」
増員が女性で二人とも美人だったことに喜んでいた隊員達の顔が一気に引き締まる。

「明日までには転戦命令がくだるだろう。各員移動の準備をしておくように。以上、解散。」

そう言うとヘリは仮設基地をでて、市街の一角に向かった。
町にはまだかたずけられていない蟻の死骸が散乱しているが、人の死体は見当たらない。
おそらく業者がすぐに片付けたのだろう。
あるところにつくとヘリは足を止めた。
ヒロはもう二度と来れないかもしれないから、と観光をすると言い出して外へ出ていた。その手に握られていた武器を見れば私的にパトロールをするための外出とわかる。
ヒロは第51遊撃隊を離れ他の隊へと所属することになっていた。

「お前がいないと戦力が足りなくなるかもな。」

「なに、お前らよりも俺を必要としてる人たちがいるってことよ。」

「同じ場所では戦えなくとも一緒に戦ってると思うことにするわ。」

「クサッ・・・まあそれもいいかな。」

「ヘリ隊長。」
佐原の呼ぶ声が聞こえた。

「本部より転戦命令が出ました。場所は福岡です。」

「わかった、すぐ行く。」
ヘリは佐原にそう言うと、もう一度ヒロの方を向く。

「また会おうぜ。」
ヘリは笑っていった。

「ああ、必ずまた会おう。」
ヒロも笑って返す。

こうして新たな仲間を得た第51遊撃隊はロンドンを後にした。



・・・・・・・・
EDF基地福岡第三陸戦部隊待機室

巨大生物再出現から10日後。
第三陸戦部隊はもうすでに3回出撃を経験している。
しかし、出撃のたび仲間は減り、巨大生物の群れは増える一方であり、疲れは隠せなかった・・。

そんな中、竹下 慶治(たけした けいじ)、通称ケタ伍長は愛用のショットガンの手入れをしている。
エイリアンの技術を盛り込んだ最新の重火器にくらべ、
ポンプアクション式の強化ショットガンはいかにも古臭く、頼りない。
だが、シンプルゆえに誤作動の少ないこの銃でケタは前大戦を乗り切った。前大戦で戦死した隊長の形見であるこの銃を持つと、
「生きて帰れる」という気がしてくるのだ。

「・・・ふう」

それが気休めに過ぎないこともわかっていた。
ケタ伍長を含むEDF第三陸戦部隊は輸送ヘリで戦場に向かった。
そして、これが第三陸戦部隊の最後の出撃となるのである・・・。

われわれEDFの優勢、勝利は決定的と思われた戦いの中で、

<罠です!敵は後ろに!>
・・・この通信の声だけはいやに耳に残っている・・・。
その後自分がどう戦い、どう逃げ回ったか覚えていない・・・。
とにかく、ケタはまだ生きていた。

福岡 博多地下街 17:40

「しばらくは大丈夫か・・・」

ケタは地下街へ逃げ込んでいた。
巨大生物はその大きさゆえに人間用の小さな通路は通れないのだ。とはいえヤツらは穴を掘ることができるため、確実に安全な訳ではないが、しばらくは時間を稼ぐことはできるだろう。

しかし、時間を稼いでなにになるというのだろう。
この地域に生きている仲間は、もういないのだから。
ケタはふと今朝のことを思いだしていた・・・。

天気のいい朝だった。
第三陸戦部隊はペイルウイング隊「アカネ」と共に福岡の巨大生物を駆逐するために出撃した。しかし・・・

<罠です!敵は後ろに!!>

突然通信機から慌てたオペレーターの叫び声が聞こえてきた。
ケタは振り返り・・・そしてわが目を疑った。
地面が異常に盛り上がり、そして弾けた!
地面には大穴が空き、中から巨大生物が次々に出てくる!
そしてその「穴」は1つや2つではないのだ。

・・・その後はまるで地獄のような光景だった・・・。
ペイルウイング隊は体重の軽い女性がメインに構成されていて、
しかも実践経験は皆無、この状況に対応しきれずパニックを起こし、とても戦える状況ではなかった。
そして体勢を崩された仲間達は次々に断末魔の通信とともに死んでいった。

ピピピ・・・

通信を知らせる音にケタはハっと我にかえった。
急いで通信機に耳を近づける。
・・ザ・・・ザザ・・・
さっきの戦闘でイカれたのか、いやにノイズが入り、聞き取りにくいが、なんとか理解できた。

「<生存者はB−50−C32地点へ・・・>

生きてそこへたどり着く自身はなかったが、このまま死ぬ気もなかった。
ケタは愛用のショットガンを掴み走り出した。

もう日は暮れ始めていた。
脱出地点B−50−C32にはここから車でも数時間はかかる。
福岡の制空権は完全にUFOのものであり、地上は巨大生物であふれているのだ、
B−50−C32まで救助にくるのが精一杯なのだろう。

だがケタは、わずかな希望にすがり脱出地点へむかうことを決意した。
自分を救おうとしてくれる仲間がそこで待っているはずだから・・・。

地下街から地上にでる・・・不気味なくらい静かだ。
ビルの残骸に身を隠しつつ、移動する。いま巨大生物に囲まれれば命はないだろう。
ショットガンをもつ手は汗ばみ、緊張からか常に耳鳴りが聞こえる。
いつ目の前に巨大生物が現れてもおかしくはない・・・だが・・

「これは・・」

ケタの目にとびこんできたのは戦車ギガンテスだった・・・。
少々ダメージは受けているが十分に動けるだろう、ケタは急いでドアを開けた。戦車の中に小柄な女性がうずくまっている。

死んでいるのか・・・?一瞬考えたが息はしている・・・
どうやら生きているらしい。
服装からしてペイルウィング隊の生き残りであることはすぐに理解できた。しかし、彼女の飛行ユニットは酸で大きく腐食し、
完全に壊れていた。

「こいつも地獄を見たのか・・・」

ケタは気絶している女性を少し見ていたが、やがてギガンテスのエンジンをかけた。ケタは不思議と力がみなぎってくるのを感た・・・。

(死ねない・・・・。)

この女には、もはや戦闘能力はない、ケタが死ねば共倒れになるだろう。いままでもケタは死にたくないとは思っていた。
だが今は「生きなければならない理由」を見つけてしまった・・・。

ケタはギガンテスのアクセルを力強く踏み込んだ・・・。

ギガンテスは廃墟となった福岡を走り抜けていた。
福岡に現れた巨大生物の数は他の地域と比較にならないような数だ、おそらく避難用シェルターも破壊されてしまっているだろう。

もしかしたら福岡で生きている人間は俺達だけなのでは・・?
そんな気さえしてくる。

「う・・・」
気絶していた女性隊員が目をさましたようだ。
そしてキョロキョロと見回して、嬉しそうな顔になり

「私・・助かったの!?」
と歓喜の声を上げた・・・が、

「いや・・実はいまから助けてもらいに行く所」
ケタは現状を説明し、女性隊員はまた落ち込んでしまった。
女性隊員の名前は酒井 若菜(さかい わかな)といった。
敵に罠にはめられたあと、飛行ユニットも破損し、逃げ回っていたときに目の前にあったギガンテスに乗り込み、震えていたらしい。

しかし、これが幸いしたのだろう。
巨大生物はおもに匂いと、空気の振動、目で人間を探知する。
早々に鉄の塊の中で小さくなっていたので発見されなかったのだ。

「そのヘルメット・・・通信装置は生きてる?」
ケタはワカ隊員のヘルメットを指差した。
実は彼女が寝ている間に動かそうとしたのだが、新型だったため、
いまいち使い方がわからなかったのだ。
ワカは手首のスイッチを操作して・・・
「うん、大丈夫みたい」と微笑んだ。

「じゃ、救助ポイントにむかっているってことを伝えてて(・・)」
「ラジャw・・・・・あー、あー、こちらペイル「アカネ」の・・・」

ワカはそういって通信をしだした。
これでこちらがまだ生きていることと伝えることができる。

救助か・・・。
ケタはふとEDF隊ビーチバレーボール大会で挨拶を交わした「あの人」を思い出していた。
たしか、救助活動や戦闘補助では定評のある部隊のリーダー格だったな・・・。この戦闘にも参加しているらしいが・・・
元オペレーターとかいっていたので特に印象に残っていた。


・・・・・・
その、「あの人」の名は市原 ナミ(いちはら なみ)といった。
彼女は、ケタの記憶どおりこの戦闘に参加していた。

福岡 博多市街シェルター内 18:00

<罠です!敵は後ろに!>
 懐かしい響きだ。刹那、私は場違いな感慨に浸る。前大戦ではオペレーターの私には耳慣れた、もとい口慣れたセリフだった。
「皆、無事ね?」
 ナミは振り返り、男女入り交じる部下達の顔を確かめる。
先の報告を機に、召集された部隊の大半が散り散りになってしまっていた。私達救護小隊は運良く(というか常のことなのだが)先遣部隊からかなり離れた位置に待機していたため、
まとまった退避が可能であったが、前方の陸戦小隊は・・・。

「別隊の隊員達を助けに行きたいところだけど、状況がまだよく分かってないの。外が大分静かになったから敵はあらかた片付けられたんだろうけど、油断は出来ないわ。次の命令があるまでここで待機。いいわね?」
ナミの言葉に一もなくニもなく頷く隊員達。どこの小隊にも必ず1人か2人はいる熱血クンや戦闘狂がいないのが我が隊の特徴だ。
無理もない。救出、看護においては秀でた技術を持つ彼らだが、
戦闘力は無きに等しいのだ。戦闘部隊が側にいない今、
むやみに動くのは危険だ。これはこれで押さえ付ける手間が省けて楽かな、とナミは苦笑した。とそこへ、

「生存者はB-50-C-32地点へと急行し、部隊と合流して下さい。速やかに撤退します。繰り替えします・・・」
 通信が入った。再び振り返り、口を開く。

「ここまでね。さ、皆急ぐわよ。負傷兵は見かけ次第回収。手当ては本部に戻ってから。ペリ子ちゃん達、よろしくね。りっくんたちは周囲の警戒を怠らないように。」

私は立ち上がり、腕に装着したレーザーランスを確かめる。
扉に備え付けられたコンピュータに指を走らせ、ロックを解除した。
「皆、待っててね・・・!」
救護小隊は外へと歩み始めた。


ナミ達は負傷者を見つけては応急処置だけを済ませ、肩に担いでB-50-C-32地点へ向かっていた。
「さ、陣地まであと少しよ。皆頑張って!」
私は肩にのしかかる仲間の重さに耐えながら叫んだ。後ろからついてくる部下達を見やると、彼らもナミと同じように負傷した兵に肩を貸し、歩みを進めていた。
リペアスプレーで応急処置は施したものの、重傷の彼らに自力で立たせるのは難しい。一刻も早く防衛ラインまで辿り着き、ちゃんとした治療をしないと・・・。

「敵襲っ!!」
叫びと同時にアサルトの掃射音が響く。横手だ。ビル影から数匹の黒アリが出現し、間髪入れず酸をまき散らし始める。
道路脇のひっくり返った車に当たり、じゅう、と音を立てる。
煙を発して表面は無残に溶かされていた。
「怪我人抱えた人は下がって瓦礫の影へ!他の隊員たちは散開して攻撃開始!正面には回らないで!」
肩の負傷兵を部下に預け、言いながらナミも攻撃を開始する。
手近にいた2匹をレーザーランスで瞬時に貫き、
倒れるところも確認せずに応戦する隊員達の元へと向かう。
すでにいくらかのダメージを与えられたらしく、アリ達はただやみくもに酸を放っているだけだった。

「この程度なら私たちの部隊でも何とかなるわね。」
 ほっと声をもらしながら残りの3匹も血祭りに挙げる。
頭部から噴出した体液がびちゃびちゃとアスファルトを叩き、
巨体が音を立てて崩れ落ちた。

「負傷者は・・・いないようね。さ、皆出発よ。あと少しの辛抱だからね!頑張りましょう!」

それからさらに10分程歩き、私達はようやく防衛ラインまで辿りつくことが出来た。あちこちで銃声が響き、戦う様が目に入る。
途中敵と遭遇しなかったのは僥倖だった。負傷こそしていないものの、仲間を背負いっぱなしで部下達はくたくただ。
あれ以上の戦闘は危険だったろう。

無事にこれたのはライン前方で戦っていたあの小隊のおかげだ。少人数だがかなりの手練のようだった。彼らならあのまま囮兼防御役を演じ切れるだろう。
私達は陣のテントに向かうと衛生兵に負傷者を引き渡し、隊員達はその場に腰を下ろすと思い思いに身体を休め始めた。

「皆よく頑張ったわね。お疲れさま。輸送ヘリが到着するまでまだ時間があるから、しばらく休むといいわ。体力に余裕がある人はできれば彼ら衛生兵と一緒に負傷兵の手当てを。」
そう言いながらナミは腕のレーザーランスに新たに補充されたエネルギーをチェックする。・・・よし。
はっ!と慌てて敬礼する声に微笑みながら顔を上げると、隊員達の数名はもうすでに立ち上がり、衛生兵と共に負傷者達の搬送、治療に当たり始めていた。座り込んでいた隊員達もそれに習う。
疲労を押し隠して衛生キットを手にし、彼らはに散り始めた。
 その様子を目にしてナミは満足そうな笑みを浮かべる。すっくと立ち上がると、彼女はウィングを再び背負った。

(まだ負傷者はいるはず・・・)

「さ、わたしももうひと頑張りかな。」
 その足は隊員達の向かう治療室ではなく、テントの外へと向いている。彼女は音を立てずに入り口を抜けると、再び薄闇の中へと姿を消していった・・・。


・・・・・・
ケタは我に返る。いつ死ぬかもわからない状況でビーチバレーで出会った人のことなんかを考える自分に、
(われながらノンキだなぁ。)と、ケタは少し表情がやわらいだ。

「!」
走るギガンテスの前方をなにかが上昇していく。
回転する頭にに4本の脚がついた青い機体。
ケタにはすぐに理解した。
(こいつはエイリアンの侵略兵器・・・ダロガだ)。

巨大な触角のような兵器がまばゆく光った。

「・・・・!! 」
「キャっ!」

ケタが大きく操縦桿を動かし、ワカが悲鳴をあげた。
巨大兵器から放たれた光は地面をえぐりながら、ギガンテスの装甲を削っていく。

「光弾か! 」

ギガンテスの中に警報が鳴る!
かすめただけだったが、敵の光弾はギガンテスの装甲を大きく破壊していた。

そしてまた、敵が光り始める・・・!
ケタは安全装置をはずし、トリガーを握り締めた。

「ぬおおおお!!!」

ケタの叫びと同時にギガンテスの主砲が火を噴いた!

・・・・

・・・

・・

5分後。

ケタはもうもうを煙を上げている侵略兵器をみつめていた。
ケタが咄嗟に放った戦車砲は敵の動力部に命中、完全に破壊したのだ。

だが・・。

「これじゃもう走れないね・・・いちおうB−50−C32地点は歩いて行けない距離じゃないけど・・・」

ワカが途方にくれた顔をしている。
その視線の先にはギガンテスが無残な姿となっていた。
敵の光球をかわしきれず、キャタピラを直撃したのだ、
修復不可能なのは一目瞭然だった。

ここから救助地点まではまだだいぶ距離がある。
しかも、こいつを撃破したおかげでここに自分達がいることが敵に
知られただろう・・・。

ペイルウイングでもあれば飛んでいけるのだが、1人分しかなく、
しかも壊れている。
ケタとワカは再び絶望の中に取り残されてしまった・・・。

「どうする?確か近くの大型店舗に補給用の『兵器蔵』があるけど。陸戦兵の武器は慣れてないだろうけど、武器も持たずにいるよりはいいだろう?」

「はい、そうしましょう・・・・」
すっかりうつむいてしまったワカがそういう。
だがそれは無理だった。2人に追い討ちをかけるように、山のむこうに敵のUFOの大群が現れた。

「武器は・・・・・使ないんだよね?」
「はい・・・・」

ペイルウイング隊は超小型化した空気中の水素を用いた核融合装置により、空を飛びエネルギー兵器をあやつる。
小型化したために、エネルギー消費に比べ補充がおいつかず、
空を飛び続けることはできないが、理論的には永遠にエネルギーを使うことができる・・・。

だが、その永久機関も飛行ユニットが壊れた際にイカれたらしかった。
ケタは愛用のショットガンと、背中にかついでいるスナイパーライフルを見比べてみたが・・・。

(だめだ・・とても女性には扱えない・・・)
その間にもUFOは迫っている。
ワカは泣きそうな顔をしているが、黙って立っていた。

(・・・どうしたら・・・・)

「!・・・あれだ!あの中に!」

ケタの視線の先にはマンホールが口を開けていた。
下水道を通れば少なくともUFOからは攻撃されないはず!
まずはワカが下水道に降りていった、次はケタが・・・

ドウ!

「キャー!」

だが、UFOの接近が早かった。
UFOのビームはケタに当たらなかったものの、マンホールを破壊していた。
その衝撃でハシゴを降りていたワカは落下し、気絶してしまった。

そしてケタは・・・・・。
UFOが空を覆い尽くす地上に取り残されてしまっていた・・・。


―――――――
一方、空を飛びつつ残された兵を探していたナミ。
「やっぱりもう誰も残ってはいないか・・・」

きょろきょろと首を巡らしながらナミは呟いた。とりあえず陣地を飛び出しては来たものの、当てがある訳でも無く、先ほどからただやみくもに走り回っているだけである。
しかし何となく胸騒ぎがするのだ。長年のカンとでも言うのだろうか。誰かがまだ戦っている、助けを求めて逃げ回っている、そんなような気がしてならない。私にはそのカンを無視することが出来なかった。とそこへ、

<・・・こちら・・ル・・アカネ・・・>
ナミには知る由もないが、先ほどのワカの通信である。

 雑音混じりに通信が入った。ひどく不明瞭で内容は理解できなかったが、これは・・・救難信号!?カンがあたったことに複雑な思いを抱きつつ、私は発信位置を確認するとすぐさま通信を送り返した。しかし、

「・・・だめね。あちらさんの受信機、壊れてるみたい。」
 ち、と舌打ちを漏らす。どうやら敵のまっただ中にいるという訳ではなさそうだが、かなり切迫した状況にはあるのだろう。詳しい情報が得られぬまま向かうのは危険だが、この際仕方あるまい。

「・・・・・・っ!」
 僅かだが確かに音が響く。
 ・・・敵襲!? 

 だがこちらではないようだ。音から察するに離れた場所だ。振り返ると、広がる瓦礫の山の向こうにゆるゆると黒煙が立ちのぼっているのが目に入った。
 ・・・先ほど通信が入ったのと同じ方角だ。ということは・・・。
 ナミは残弾を確かめるとすぐさまその場を飛び出した。


――――――――
その方向にいたのは、もちろんケタである。
(なぜ・・・なぜなんだ・・・?)
ケタはさっきから同じことを考え続けていた。

膨大な数のUFOからビームが発射される・・まるで光の雨のようだ。ケタは無人となったビルの隙間に転がり込むが、
光の雨は大地を砕き、ケタが逃げ込んだビルをもじわじわ砕いてケタを追い詰めていく。

(巨大生物が再出現したのは、前大戦時の生き残りが繁殖したから・・)
ショットガンを空に向けて乱射しながらケタは次のビルの隙間に走る。狙いなどあってないようなものだが、その散弾のいくつかはUFOに命中し、爆発した。

(では、このUFOやさっきの機動兵器はどうなんだ!?)
腰のバックからショットシェルと取り出し、銃に装填していく。
ショットガンの扱いには自身があった、数秒でリロードを終えて再び走り出す。

(敵の母艦は・・マザーUFOは破壊したはずだ・・・!!)
UFOのビームがケタの頭をかすめ、ヘルメットが弾けとんだ。

 
ナミもそちらへ向かっていた。
 轟音がどんどん迫る。一気にブーストをかけて瓦礫の群れを抜けると、目の前を幾条ものレーザーが掠め過ぎていった。UFOか!  やや開けたその場所は元は交差点だったのだろうか、そこには十数機の円盤群が四方八方に飛び回り、熱線の雨が降り注がれていた。
ナミの気配に気がついたのか、円盤群の動きが一瞬止まり、数機がこちらに向かってきた。刹那、一機のUFOが突然火を噴いて爆発する。
誰かいる!?群れの中心では一人の隊員がショットガンを手に戦闘を繰り広げているところだった。瓦礫を遮蔽物にしながら巧みに動き回り、隙を見ては円盤を破壊している。かなり熟練した兵のようだったが、やはり数の多さにかなり苦戦しているようだ。

「大丈夫!?今加勢するわ!」 
ナミは意識を集中させ、背中のウィングに猛烈なブーストをかける。急速なGに身体がきしむが、無理矢理意識の外に閉め出す。      一瞬の内に円盤の群れへ飛び込んだ私は、手の平に収束させたグレネードを周囲にばらまいた。無数のきらめきが中を舞い、強固な円盤の装甲触れるや否やそれは白光を伴いながら炸裂した。
 周辺すべての機体を巻き込み、UFOの包囲網を完全に崩す。

「今よ!援護して!」
 
白煙を噴いてよろめく機体に、私達はありったけのエネルギーと銃弾を叩き込む。爆発するUFOをかわしつつ、レーザーランスとショットガンのコンビネーションは次々に敵を撃ち抜いていった。2人の火力がかなりのものということもあり、UFO群はろくな反撃もできないまま数秒の内に火の海へと沈んだ。

「・・・ふぅ。なんとか片付いたわね・・・。」
ナミは空中から地上へと降り立ち、服を軽く払うと安堵の息を漏らした。背中のウィングがしゅうしゅうと冷却音をあげている。彼女は振り返りながら、先ほどの隊員に声をかけた。

「あなた、いい腕してるわね。助かったわ。怪我は無い?・・・ってあら、あなた・・・。」

「・・・久しぶり、バレーん時はどうも。できればこんな場所で
会いたくはなかったよ。」
彼は苦笑いしながら手にしたショットガンを下ろし、握手を求めてくる。私はそれに応じながら同様に苦笑した。

「ほんとね。えっと、確か竹下さん・・・だったわよね。」

「ケタでいいよ。皆そう呼んでる。そっちはナミさんだったよな。来てくれてほんと助かったよ、ありがとう。戦車が途中でおシャカんなってさ、外に飛び出した途端UFOちゃんたちと御対面だよ。」

ケタ隊員は壊れた戦車を指差しながら肩をすくめる。と、そこで突然何かを思い出したような顔になり、すぐさまこちらへと向き直った。

「そうだ!俺の連れがまだ・・・!」

「え、救難信号を出したのはあなただけじゃなかったの!?その人はいったいどこに・・・。」 
 ナミは慌てて瓦礫だらけの周囲を見回す。墜落した円盤が転がるばかりで、人の気配は感じられなかった。

「地下だ。UFOに襲われた時、俺達は地下へ逃げ込もうとしたんだが俺だけが逃げ遅れてしまってな。彼女はそこのマンホールから地下道に入ったはずだ。無事だといいんだが・・・。」
ケタの言葉にナミはすぐさま反応する。

「私達で助けに行きましょう。友軍は朝には撤退を開始するわ。このまま救助部隊を待ちたいところだけど、それじゃ間に合わないかもしれない。少数の方が動きやすいわ。」
 
 ナミは既にやる気だ。腕に装着されたレーザーランスを確認し、ウィングを背負い直す。

「賛成だ。幸い弾だけは十分にある。大軍相手でも大丈夫だ。・・・あまり考えたくないけどな。」

「ふふ、頼りにしてるわよ。さ、急ぎましょう!」
次第に夜が街並を支配していく中、2人はさらに暗い闇の淵へと飛び込んでいった。

捜索をはじめ数十分。

「あなたの探してた人は救助されたそうよ」
通信をとっていたナミが明るい表情でケタに伝える。
ケタは体の力が抜けたのか座り込み、

「・・・よかった」とだけ、呟いた。骨折り損でもこういう結果なら大歓迎だ。
今日まで多くの仲間の命を失ってきた・・・、
だからこそ少数とはいえ仲間の生存はなによりも嬉しいのである。

「さて・・・これからどうするか・・・」

「本部からは撤退命令がでているわ、早く撤退しましょう」
ナミはまだいるかもしれない仲間を残して撤退する気はなかったが、とりあえずそう答えた。
なにしろケタの消耗が激しかったのだ、この激戦の中では仕方ないことだろう。
仲間の知らせを聞いて張っていた気が抜けたのか、いまにも倒れそうだ。
まずはこの隊員を脱出させないといけない。ナミはそう判断した。

ケタは疲れきった顔で戦闘中のことを思い出す。
溢れ返った巨大生物、再出現したUFO、新型の侵略兵器・・・そして撤退命令。これらがケタの中で1つの考えに至る・・・。

(エイリアンの再来か・・・。)

「ケガでもしてるの?」
ナミが心配そうに声をかける。
ケタが妙な顔をしているので、どこか負傷したのかと思ったらしい。

「いや、なんでもない(^^;」
ケタはやたらひきつっていたが微笑んで答えた。
ナミは不思議そうな顔をしていたが、それ以上特に聞かなかった。


福岡 「B−50−C32」地点
ケタは無事に救助用のヘリに乗り込んでいた。
ナミは仲間の隊と合流するために、途中でわかれていたのだ。

ヘリの中は負傷した隊員であふれかえっている。
見渡してみたが、第三陸戦隊のメンバーもワカとかいう隊員もいない。救助用のヘリはこれを含めて3機程ある・・・
このヘリにはいなくても救助されている可能性はある。

「そうさ・・必ず救助されているはずだ・・通信も入ったじゃないか。」
ケタはそう信じるしかなかった・・・。

ヘリが離陸する・・・。
福岡の街が小さくなっていく、ほとんどのビルは倒壊しまるで地獄だ。不意に体が重くなった・・・異常に眠たい・・・
ケタは腰につけてあるバックに手をそえた。中には出撃前に買った
からし明太子が入っている。

「さよならだ・・福岡・・・」

寂しそうにそう呟くとケタはそのまま深い眠りに入っていった……


―――――――――――――――――――――――――――――
7月2日



目を覚ましたらもう昼……(゚Д゚)夏場だからか、明太子も腐ってるし(TωT)……もう富士山が真横に来ているからここは静岡か……
結局ワカはどうなったか、とても心配だ。戦場ではいちいち気にかけちゃいけないのかも知れんが。
それより重要なことはUFOだ、もしかしてインベーダーがまたきやがったのか?もしそうだとしたら今回はどんな作戦だというのだろう。
わざわざ福岡にマザーシップが来るなんて。
しかも福岡にはマザーがいるせいで俺は東京へ行かなければならない。故郷を離れて東京か……うまくやってけるだろうか。
一度も行ったことないけどち

「うう……」

(気持ち悪……)
ヘリに揺られながら日記を書いていたケタは吐き気を催してしまった。あと数時間、到着するまで耐えられるかどうかわからないほどに……

(降りるまで日記はやめとこう……)
輸送ヘリは、青い空をただひたすら目的地へと飛んでいた。




まとめてみたので読みやすくなってるとは思いますが、ケタや若菜のフルネームを勝手に決めてしまいました。先ほども言いましたがおおらかな対応をお願いします。


[No.11487] 2007/06/27(Wed) 14:24:55
124-144-194-229.rev.home.ne.jp
Re: ショートストーリーまとめてみました (No.11486への返信 / 2階層) - ヘリ兵士

> 序章:前大戦から二年。
> 焼け野原となった街は驚くべき速さで復興をはじめ、人類は、再び秩序と統制を取り戻していた。
> 大戦の傷跡はあまりにも大きかったが、しかし、皮肉にも侵略者がもたらしたテクノロジーが文明復興に寄与することとなったのである。
>
> 壊滅状態となったEDFは再度編成され、高度な権限を持つ組織へと生まれ変わりつつあった。
> さらに特殊部隊ペイルウイングが結成され、戦力強化が図られている。
>
> 人類は2年の平和を謳歌し、文明の復興に努めていた。
> だが・・・地の底深く・・・異変は進行していた。
>
> 2019年緊急事態発生
>
> 英国より緊急連絡。
> ロンドンに巨大生物、多数出現。
> 悪夢がいま、蘇ろうとしていた。
>
>  第一章:ロンドンの災厄
>
>
> ロンドンにて、前触れもなく発生した巨大生物の出現。普通、海の向こうで起こったことなど他人ごと
>
> でしかないが、こればかりはどんなに時代が移り変わろうとこれは他人事でなくなる。ロンドンに出現
>
> するということは、地球上のどこに出現してもおかしくないということである。
>
>  人類も前大戦を受け、装備の強化・人員の大幅な増加、および新たな戦力であるペイルウイングとい
>
> う兵種を生み出し、全大戦にて世界を救った組織であるEDF(Earth Dfence Force
>
> )は格段に強化されていたが、このように前触れもなく出現するということはまったくの想定外の事態
>
> であった。かつて世界を蹂躙した訪問者の再来が意味するのは、避けられぬ悲劇である。
>
>
>
> 2019年・昼ごろの、ロンドン郊外にて
>
> 最も早く異変に気づいたのは仲の良い三人の家族であった。二人は町から少し離れたところで食事の準備をしていた。
> 「おい、あれは何だ?黒い何かが見えるるけど。」と言って妻の肩をたたき「お前目いいだろ。何があるか見てくれよ」
> 父親は遠くに見えた何かに気づいた。
> 「ん?どれどれ・・・・・・嘘でしょ・・・・」
> 母親は表情が一瞬で凍りつき早くも気が動転した様子である。
> 「なんだ?どうしたんだよ。」
> 「母さん、なにかあったの?」
> と、二人が言う二人に母親は乱暴な声で、
> 「逃げるの!!速く!!蟻よ、巨大生物が現れたのよ。早く警察に連絡して!!」
>
> 言われてみれば、あれが巨大生物であることは疑いようもなかった。さっき問いかけた時は黒い点だったが、今は黒い波となっている。
>
> 父親はすぐに携帯を取り出し警察へ連絡した。
>
> 「警察、警察すぐ助けにきてくれ!」
>
> 「落ち着いてください。いったいどこで、何が、どうしたのかを落ち着いて教えてください」 と問いかけると、
>
> 「巨大生物だ! あいつら一匹残らず死んだんじゃなかったのか?こっちに向かってきている。」
>
> 「それは本当に巨大生物で間違いないですか?」
>
> 「当たり前だ見ればわかるだろう!!あんな黒い塊が押し寄せてくるなんてほかにあるのか!!」」
> と、父親は言った。だがテレビ電話にしていないから見れるわけはない。
> それもわからないほどに動転していたのだ。
>
> 「と、とにかく正確な場所と向かっている方向を教えてください。」
>
> 「町の北だ!!どっちに向かっているってこっちに決まっているだろ!!」
>
> あまりに気が動転していて話していても全くわからない。しかし逆探知により位置がわかるため向かっている方向さえわかれば良いことになる。
>
> 「向かっている方向に太陽はありますか?」
>
> 「あるけどそれが何の関係があるんだ!!馬鹿なこと言ってないで早く助けてくれ。
>
> 今は昼時太陽は南にある。巨大生物の出現場所・及び向かっている方向が分かった。オペレーターはそのまま電話応対を続け、その他の者は、警察ではどうしようもない事態をEDFへと報告した。
>
> この報はEDFのほか各テレビ局ラジオ局に知らされた。
>
> ロンドン市内に巨大生物出現の旨を伝える放送が鳴り響き、テレビ・ラジオの番組はすべてがニュースへと変わった。その内容は、
>
> 「現在この地域に巨大生物が多数確認されています。ロンドン近郊に避難勧告が発令されました。市民
> の皆様は、誘導に従って避難を開始してください。避難指定置は**スポーツセンター・**大学・ロ
> ンドン市役所および図書館・国会議事堂・EDFロンドン支部となっています。最寄の避難所に速やかに避難してください。なお、車での避難は御遠慮ください。繰り返します・・・」というものである。
>
> 突然の巨大生物の来襲、状況はまったく訳もわからないといった感じで、市民は蜘蛛の子を散らしたよ
>
> うに家から出て。避難所を目指す。巨大生物を発見した場所は町から離れているとはいえ、巨大生物の足は60
>
> q/hは出ている。車を使わなければ競輪選手でもない限り逃げることはできないしすぐに追いつかれ
>
> る。黒い影が見える≒死を意味していた。
>
>
> 「巨大生物だ!!」
> 「助けて!!」
>
> そういった声がいたるところから聞こえては、断末魔の声すらあげる間もなく消えていく。
>
> 「ロンドン市内はパニック状態です。」
>
> などとEDFのオペレーターの無線が届く。この異常事態の中で正常でいられるほうがどうかしている。
>
> そのパニック状態の民衆をなだめる役割として、スピーカーを積んだ車が、避難を呼びかける放送を続
>
> けていた。
>
>
> 我先にと逃げ惑う民衆の中には、転んでしまい後から来る者たちに踏み潰される者。人の流れからはず
>
> れ違う道に逃げるもの。放送を無視して車で逃げる者など様々だ。まるでサバンナの草食動物が川を渡
>
> るような混乱振りで、巨大生物とは関係のない死者も相当数に上った。
>
>
> そして市民たちが避難をはじめどれぐらい経っただろう?ようやくEDFが現地に到着した。武器と着替
>
> えをすべてヘリに持ち込み、狭いヘリの中で着替えと武器の手入れを行う程急いで向かった十数分の時
>
> 間。待つものに対してはまさに『死ぬほど待った』というイメージである。逃げ遅れた市民を奴等がひたすら襲っていたため、遠くに逃げた者たちは無傷であるが。いつここまで来るかわからないという恐怖には、吐き気すら覚える者もいた。
>
> 現地に着く前に隊員たちは、
> 「いいか、奴らは我々にすでに気づいている。現地に到着したら指示を待たず発見しだい奴等を射殺し
>
> ろ。ヘリから降りるときに安全装置をはずしておけ。」と命令を受けていた。
>
> 到着したEDF隊員の第一声は
>
> 「なんて数なんだ! 一体何処から出てきやがった!?」
> 「突然現れたんだ!! 前ブレも無く、気が付いたら町中が巨大生物だらけだ!!」
>
> と言うもので、やはり状況は飲み込みきれない。ただ判るのは悪い状況と言うことだけである
>
>
> 「日本から助っ人が来てる! 時計台付近は任せよう! 我々は中心部の市民を救出しに行く!」
> ロンドンの隊員が言う助っ人とは、たまたまロンドンに来ていた日本の隊員であり、半ば無理やりに戦闘に参加させられたものである。
>
> 時計台付近、つまり国会議事堂付近は一時的な避難場所に指定されていたが。そこにはもう巨大生物が到着しており敵がお祭り騒ぎを繰り広げていた。建物は丈夫にできているが巨大生物にかかれば、いつまで持つかもわからない。
>
> ロンドン:時計台付近上空にて
>
> 「くそ、ついてねえな。ヘリの操縦の特別講師として来たらこのありさまかよ。」
>
> 福島 吉太郎(ふくしま きたろう)。EDFに入隊する前は、フッキーなどと呼ばれていたが、ヘリコプターの操縦がやたらと上手なことから、ヘリと呼ばれているこの男。独り言の通りヘリの操縦の特別講師としてロンドンに来たら、このような事件が起こった不幸な人間である。
>
> 同じく日本から来た隊員は
> 通訳として付いてきた、   佐原 健一 (さはら けんいち)
> 同じくヘリの講師としてきた、ヒロこと               芝原 勇(しばはら いさむ)
> 最後に、日本で開発された新兵器のプレゼンのために訪れた。     須川 武雄(すがわ たけお)の三人
> ヘリ兵士を入れて四人である。この四人の内ヒロを除いて第51遊撃対のメンバーである。
>
> 「四人でこの数かよ。はん、よっぽど頼りにされているようだな。」
> と、ヒロのボヤキが聞こえる
>
> 輸送ヘリは後続部隊の輸送に使うからといわれ得意のヘリを使えずに放り出されたヘリ。彼は前大戦に参加して生き残った隊員であるため、そこそこ信用出来る戦闘能力を持っている。それでもこれは無茶な大群であるが、ほかのところも似たり寄ったりの状況である。贅沢は言えない。
>
> 隊長であるヘリは「見つけ次第奴らをたたけ。そして殺すことより生きることを考えろ。」
>
> と、半ばありきたりともいえる指示を出す。
>
> 「イエッサー」と仲間が答え、戦場へと降下した。巨大生物との戦いでは敵によって戦い方が違い、一般的に蟻と呼ばれている黒色甲殻虫は散開し包囲することが最適といわれている。ただし、この作戦は人数が多く必要であり四人ではどうしようもない。結局四人はまとまっていくこととなった。
>
>
>
> 「やれやれ、ハーキュリーのプレゼンが実戦形式になるとは夢にも思わなかったな。」
> 須川隊員はぼやく。須川は遠距離攻撃担当なのだ。
>
> ハーキュリーの引き金を引けば黒蟻はあっけなく息絶える。その上意外と速射も聞くために、実践での価値は高い。
>
> ほかの三人も負けてはいなかった。黒蟻と相性のいいペイルウイングならまだしも、いきなりの大群に少ない人員で送り込まれたため、明らかな戦力不足。特にヘリ達は最も敵の多いところへ乗り込んだのだが、どう避けどう攻撃するかを知っている者は強いのだ。
>
> ヘリ達の前には大量の敵。レーダーを見ている隙はない。後ろに敵がいないことを気配だけを頼りに確認して前方の敵をただひたすら倒していた。奴らは自分に一番近い物を攻撃する習性がある。ゆえに不謹慎極まりないが、逃げ惑う市民が生き残っている今が最高のチャンスであり、市民という救うべきものを救えなければ、防衛軍の名折れであるため、速攻で決めなくてはいけない。
>
> 蟻が酸を飛ばしてきたので、車の陰に隠れ、市民がいないのを確認し、手りゅう弾を投げ飛ばす。隠れている間に即座に銃のリロードを終えると、車の窓を貫通させるように撃つ。こうすることの意義は車の屋根が酸をあらかた防いでくれるからである。
>
> 佐原・ヒロの二人も遮蔽物をうまく使い攻撃を防いでは反撃していた。特にヒロは服屋からかっぱらったと思われる鏡を盾にして酸を防ぐというやんちゃぶりである。
>
> 市民があらかた殺され、もしくは避難し終わると、少し離れた位置にいる蟻も目先の獲物を求めてこちらに向かってきた。
>
> 「ちぃ!来やがったか・・・」ヒロは舌打ちをする。
>
> こうなると手数がどうしても足りなくなるため、ヘリは片手でアサルトライフルを撃ちながら、もう片手と口を行使して手りゅう弾を投げるという無茶をする。狙いなど有ったものではないが、何せ「的」がでかいため結構当たるものなのだ。
>
>  しかしそれは集中力を失わせる結果となった。佐原・ヒロはそのまま普通に戦っていて、ちゃんと後ろにも気を配ることができた。
>
> 「ヘリ隊長!!」須川が叫ぶ。集中を失っていたヘリは後ろに音もなく迫っていた蟻に、まともに一撃をくらってしまった。須川はその蟻を急いで倒す。近くにいた佐原はすぐさま中和スプレーをヘリの体に吹きかけ、どこか隠れる場所はないかと探した。佐原は手りゅう弾で穴のあいたマンホールをみると(あそこが良さそうだ。)と思い、ヘリを引きづって下水道に降りて行った。
>
> その間も戦いを続けていたヒロは、逃げ回っているうちに二人が入って行ったマンホールから遠ざかっていた。一瞬「おい待て!!俺も・・・」と言いかけたが、蟻に行く手をふさがれ、もはや下水道に逃げることは出来なくなっていた。
>
> スーツにはアリの内臓を使った、酸にとにかく強いインナー素材を使っていたが、肌の露出した部分やしみ込んだ分はどうにもならない。ヘリは中和スプレーで酸のこれ以上の腐食は抑えたものの、痛みで意識がもうろうとしているようだ。
> ・
> ・
> 「ヘリ隊長」
> !
> トンネルの中で寝ていた
> 「隊長しっかりしてください」
> 佐原・・・?
> そうか、確かロンドンに出現した巨大生物と戦うために出撃して。
> 「佐原、戦況は・・・須川は・・・ヒロはどうした!!」
> 「須川は今、上で戦ってます。動き回っているようなので死んではいないでしょう。だが、ヒロは・・・動いていません。救難信号が出ているわけではないですが、恐らく・・・とりあえず戦況は膠着状態です。」
> 「ここは?」
> 「ロンドンの下水道ですよ、とりあえずここに隠れてるんです」
> 「そうか・・・。」
> ヘリは傍らのアサルトライフルを取ると、梯子に手をかける。
> 全身に激痛が走ってその場に崩れる。
> 慌てて佐原が駆け寄る。
> 「動かないでください、体中に大火傷おってるんですから。」
> 「しかし須川が・・・。」(それにヒロのかたきもとらねばならない。)
> 「須川より自分のことを心配してください、指揮を執る人間がいなくなったら部隊は崩壊ですよ。」
> 「だが・・・」
> 昔、入隊するときに言った、あの言葉がよみがえる。
> 「俺は地球人すべてを守るために戦うって誓ったんだ」
> そう言って激痛に耐えて梯子を登った。
> マンホールの近くには何もいないようである。
> 念のためレーダーを見る。
> !!すでに自分の周りは敵を示すマーカーに囲まれていた。
> 屋根の上に蟻が現れ、こちらに酸をかけてくる。
> 間一髪穴に入ってよける。
> 反撃しようとアサルトライフルを構えた時、背後に蟻の気配を感じた。
> 回避は間に合わない。
> ここまでか。
> すまん、ヒロ。
> その時だった。
> ドン・・・
> 後ろの蟻が崩れる。
> !?
> ドン
> 今度はヘリの斜め右にいた蟻が崩れる。
> ライサンダーF(威力重視のスナイパーライフル)だ。
> 誰かがライサンダーFで狙撃しているんだ。
> このチャンスを逃せるか。
> アサルトライフルを目の前の蟻に向けて撃ちまくる。
> 1匹やった。
> 「隊長、大丈夫ですか?」
> 佐原がマンホールから顔を出した。
> 「!」
> あわてて佐原は顔を引っ込める。
> 蟻の酸が今佐原がいたところにかかった。
> その隙にヘリは物陰に隠れる。
> レーダーを見る。
> 自分の周囲の敵の数は8匹。
> 傷は痛むが、この位の数ならやれそうだ。
> 物陰から出ると、アサルトライフルを撃ちまくった。
> 1匹撃破。
> 敵の酸を蟻の死体に隠れてかわし、酸がやんだあと再度攻撃。
> 2匹目撃破。
> いつの間にか、佐原も体を出していて。ピンを外しタイミングを見計らって手りゅう弾を蹴り飛ばし蟻の足元で爆発させ、2匹を同時に倒していた。
> 近づいてくる敵から距離をとりつつ攻撃。
> 2匹を仕留めるも1匹に横を取られる。
> ドン
> その1匹がライサンダーに貫かれた。
> 最後の一匹は佐原が倒していた。
> レーダーを見る。
> 遠くに敵はいるが、周囲に敵はいない。
> 代わりに味方を示すマーカーが一つ存在していた。
> その方向を向くと、そこにいたのは・・・。
> 「ひさしぶりだな、ヘリ。」
> 「ヒロ・・・、生きてたのか、だが・・、どうやって・・・。」と、言い終わる前にその臭いと、体についた野菜くずに気づいた。ゴミ捨て場に隠れていたのか・・・
> 「それより陣地に戻ってその傷を手当しろよ。」
> 「・・・いやそれは・・だめだ、部下がまだ一人戦ってるんだ。
> 俺が逃げるわけにはいかない。」
> 「お前のやりたいことはわかった、だがそのことは俺に任せろ、お前は陣地にもどれ。」
> と、ヒロ
> 「俺も一緒に・・・。」
> と、ヘリは言ったが、
> 「その怪我で何ができるんです!!、犬死したいんですか?」
> と佐原に注意された。
> 「・・・。」
> 「お前の気持ちはわかる、だが今の自分でも足を引っ張るのはわかるだろ、陣地にもどれ、これは命令だ。」
> ヘリは同僚に命令されたが、あまりに正しいことを言うので腹は立たなかった。
> 「・・・了解、・・・信じるぞ。」
> 「まかしておけ。」
> そうゆうとヒロは敵の群れに向かって走っていった。佐原はヘリを陣地へと運ぶため肩を貸した。
>
> 第51遊撃隊 現在総員4名
> 戦死者なし
>
> ヒロは信頼に答え須川とともに生還した。
>
>
>
>
> 現在巨大生物が確認された都市は、ロンドン・ニューヨーク・東京。該当地域、 および近郊に避難勧告が発令されていた。
>
>
>
> 長くなりました。結構加筆修正していますが、作者の皆さんおおらかにお願いします。全部完成したら、小説投稿サイトに登校しようかと思ってます。




おお、これはすげえ、戻ってみたらこんなものがあるとは…
それはそうと訂正点を何点か指摘しますと
1、ヘリの本名は福沢吉太郎(ふくざわよしたろう)(あんま出てないから間違えてもしょうがない)
勇はいさむでは無く、そのままゆうと読みます(これは間違ってもしょうがない)
2、ヘリはヒロより階級は下です
3、須川の武器はアサルト2丁(ショートストーリー2あたりでケタ伍長にライフル渡すシーン参照)
4、ヘリは訓練学校時代からあだ名はヘリ、しかもヘリの操縦が得意だからではなく、ヘリが好きだからと言う理由で周囲の人間にそう呼ばせている(外伝参照)
5、ヘリはロンドンで再会するまで、ヒロが前大戦で生還した事を知らなかった

こんなとこでしょうかね…
他にもまだ色々本編との相違点はありますが
フェアリーsの作品はフェアリーsの作品で味があって面白いので、別にこのままでいいと思います
ってか指摘した間違いも悪魔で参考意見って事なんで深く考えないで自由にやってください
ではこれからもどうか頑張ってください


[No.11489] 2007/07/05(Thu) 21:45:10
i218-224-141-112.s02.a015.ap.plala.or.jp
Re: ショートストーリーまとめてみました (No.11489への返信 / 3階層) - フェアリー

> 1、ヘリの本名は福沢吉太郎(ふくざわよしたろう)(あんま出てないから間違えてもしょうがない)
すんません直します
> 勇はいさむでは無く、そのままゆうと読みます(これは間違ってもしょうがない)
これも直します
> 2、ヘリはヒロより階級は下です
あ、ホントだ。直しておきます。
> 3、須川の武器はアサルト2丁(ショートストーリー2あたりでケタ伍長にライフル渡すシーン参照)
遠距離担当がいないので、スナイパーとアサルトにしてあまり使わないアサルトライフルをケタに渡すことにしてしまいました。
> 4、ヘリは訓練学校時代からあだ名はヘリ、しかもヘリの操縦が得意だからではなく、ヘリが好きだからと言う理由で周囲の人間にそう呼ばせている(外伝参照)
これは直しておきます。
> 5、ヘリはロンドンで再会するまで、ヒロが前大戦で生還した事を知らなかった
これは、腕が治ってしまうというのが、未来の技術でもちょっと難しいと思ったので・・・
> こんなとこでしょうかね…
> 他にもまだ色々本編との相違点はありますが
> フェアリーsの作品はフェアリーsの作品で味があって面白いので、別にこのままでいいと思います
> ってか指摘した間違いも悪魔で参考意見って事なんで深く考えないで自由にやってください
> ではこれからもどうか頑張ってください


・ほかにも変更点があり、補給のための『兵器蔵』という施設がある。(2話目の最初のほう参照)

・新兵器を極端に減らした。(強力過ぎないものは残してます)

・序盤のほうに参加できなかったため、勝手に出ている。(完全に私のわがままです)

・ありえないと思う展開と、登場人物が一気に増えること(誰が誰だか分らなくなるため)を避けるためいろいろ変えてしまっています。

・EDFのほかにIRTという組織を存在させてます。三枝はそこに入れました。(第三話の最後のほう参照)

最後にはほぼ全員を出そうと思ってます。ご指摘と応援ありがとうございます。


[No.11490] 2007/07/06(Fri) 10:20:08
125-14-191-13.rev.home.ne.jp
第51遊撃隊 (No.11487への返信 / 3階層) - フェアリー

――――――――――――――――――――――――――――
福岡 B−50ーC−32地点 18:00

ヘリ隊長率いる第51遊撃隊が福岡についたとき、彼らの任務は敵生物の殲滅から友軍の撤退支援に変わっていた。
輸送ヘリから降りると、ヘリは撤退ラインを守る3等兵士に話し掛けた。

「第51遊撃隊だ、本部からの命令で増援に来た。戦況は?」

「は、現在市内に展開した部隊には撤退命令を出しました。敵の規
模は黒蟻大多数、敵の数は増えつつあります。」

「わかった、本部から何か命令は受けたか?」

「味方撤退を支援し、増援到着まで時間を稼げ。とのことです。」

「増援の到着時刻は?」

「明日の朝、だそうです。」

「そうか、わかった、ここの、撤退ラインにある戦力は。」

「陸戦兵小隊5戦車小隊2ペイルウイング小隊4です。」

(これなら、朝まで持ちそうだな)

「わかった、戦闘に参加する。」

「ご武運を。」
それだけ聞くと、ヘリは後ろの部下に指示を出す。

「佐原、須川AS−22RR装備、撤退ラインに近づく蟻を攻撃。」

「了解。」

「・・・はっ。」

「フェンナはレーザーランスで佐原と須川が撃ちもらした敵を倒せ。」

「は、はい。」

「許深は俺と下水道に向かう。」

「?」

「あそこには蟻が入ってこれない狭い道があるからそこに逃げた隊員もいるはずだ、そっちの救助を行う。」

「本来の任務から外れますが?」

「命令無視して人の命が助かるんなら始末書くらいなんでもないだろ。」
その言葉を聞いて許深の顔が少し微笑む。

「同感です。」

「んじゃ佐原、隊長代理頼むわ。」
「了解。」
ヘリと佐原は下水道へ潜っていった。
福岡 撤退ライン前方 18:40
佐原達は道路を挟んでビルとビルの間に隠れて敵の進行を防いでいた。
ついさっきどこかの部隊が佐原達の間を通り過ぎていった。
どうやら医療部隊だったらしく、多くの負傷兵を抱えていた。
佐原達にも応急手当を施してくれようとしたが、たいした怪我も無いし、重傷者を差し置いて自分達が手当てを受けるのも気が引けるので断った。

(前大戦の、あの烈火に比べればなんでもない。)

佐原と須川は普段ヘリの陰に隠れてあまり目立たないが、実は二人とも前大戦でEDF本部防衛戦の烈火を自力で生き残った猛者なのである。

敵の第2波が向かってきた。
須川が向かい側のビルの間から射撃体勢を取る。
自分の後ろにいるフェンナもいつ後ろに敵が来てもいいように周囲を警戒し始めた、彼女もまだ2・3度しか実戦を経験していない新兵ながらそれなりの活躍を見せている。

(来た!)
佐原は必死に敵を撃ちぬいた。

同時刻 福岡、下水道
ヘリと許深は順調に下水道を進んでいた。
途中何度か蟻と接触したが、敵の数が少なかったため難なく突破できた。

「おーーーい、誰か生存者はいるかーーーー。いたら返事をしろーーーーーー。」
ヘリは奥のほうに向かって叫んだ。

「おーーーい、助けに来てくれたのかーーーー。早く来てくれーーーー。」

奥から返事が返ってきた。

「大丈夫かーーー今助けに行くぞーーー。」

ヘリと許深は声のしたほうに走っていった。
しばらく行くと狭い通路に足を負傷した軍曹がに壁を背にして横たわっていた。
傍らにショットガンが落ちていて、首から垂れ下がったドックタグには吉富と書いてある。

「大丈夫ですか、軍曹どの、しっかりしてください。」

「ああ、すまない、助かった。足をやられてしまって立てないんだ、
肩を貸してくれないか。」

「どうぞ、軍曹殿。」
許深が吉冨軍曹に肩を貸す。
その時だった。無数の蟻がはるかの向こうの通路から迫ってくるのが見えた。
とてもヘリ達で倒しきれる数ではない。

「許深、軍曹殿を頼む。」

「隊長!死ぬ気ですか!?」

「ちがう、こいつを使うんだ。」
ヘリは肩にかけていたサッカーグレネードDを見せた。
ヘリが何をするのか理解した許深は軍曹を担いで撤退ラインへ走っていった。
ヘリは許深達の姿が見えなくなったのを確認すると、サッカーグレネードを自分の天井に向けて撃った。グレネードは天井に吸い付き、爆発までのカウントを始めた。
それを確任すると、ヘリも許深達の後を追う。
数秒後、グレネードはコンクリートの天井を吹き飛ばした、下水道の上の地面が崩れ落ち、蟻の前に立ちふさがるバリケードとなった。
しかし、そのバリケードは余り長く持ちそうにない。

福岡 B−50−C32 19:00
許深はマンホールを上げて外に出ると、軍曹を衛生兵に預け、力の限りの声で叫んだ。

「地底から敵の大部隊が来るぞー。」
数秒後にヘリもマンホールから出てきて叫ぶ。

「誰でもいい、地底から来る奴を食い止めるのを手伝ってくれーーー、すげー数だ。」
しばらく撤退ラインにいた兵達は突然の出来事に呆然となっていたが、すぐに我に帰り、何人かの兵士がマンホールの中に入っていった。
ヘリと許深は彼(彼女)等の後に続いて再びマンホールの中に入っていった。

福岡をめぐっての攻防戦はより一層激しさを増していった。

数名の兵士が蟻を食い止めようと下水道の一角に防衛線を形成している。

「隊長どこに行かれるのですか?」
許深がヘリに尋ねる。
ヘリは兵士達とは別の方向に向かって進んでいた。

「どこって友軍救出だが、敵の群れを迂回して市内の下水道に向かうんだが、それがどうかしたか?」

「ですが蟻の群れと遭遇する可能性も多いですし。」

「市内にはまだまだ孤立した友軍がいる、見捨てるわけには行かない。」

「無理ですよ、こんどこそ殺されます。」

「誰も見捨てないって決めたんだ。」
そうゆうとヘリは下水道の闇の中に向かって走っていった。
その姿を見て、許深はため息をついた。
しかし、その口元には笑みが浮かんでいた。

「しょうがない人ね。」
許深はそうゆうとヘリの後に続いて闇の中に飛んでいった。


―――――――――――――――――――――――――――

福岡 市街地 20:00
一方佐原たちはというと。すでに敵の第2波を全滅させていた。
ふと空を見ると友軍の航空機が福岡市内に向けて飛んでゆくのが見えた。

「われわれはイズキ特殊攻撃部隊だ。これより援護に入る。」
「援軍!?援軍が来てくれたのか!」
佐原は勝利を確信すると、後ろのフェンナと須川に言った。

「友軍は攻勢に移った、我々も続く、行くぞ、俺に続け!」
3人は市内に向かって走っていった。

「とりあえずフェンナ、戦況の変化を隊長に報告しておけ。」
下水道を進むヘリと許深のもとにフェンナは通信を入れた。


―――――――――――――――――――――――――――

突然なりだした無線機、ヘリは周囲の安全を確認しスイッチを入れた。

<こちら佐原、友軍は攻勢に出ました、どうやら援軍が来たようです。>

「それで、友軍の規模は?」

<特殊部隊のようです。>

「わかった、戦況に変化があり次第・・。」

<隊長、さらに援軍です、どうやら国会が自衛隊の出動を承認したらしく、陸上自衛隊機甲師団が到着しました。>

「そうか、よし、佐原、持っている全ての戦術を駆使して友軍を支援しろ、地上の敵は任せた。」

<了解しました、隊長、ご武運を。>

「お前もな。」
そう言うとヘリは無線機を元に戻し、闇の中に走っていった。
(やつらの心配はもう必要ないな。)

闇の中を進んでいくと床に横たわっている人間を見つけた。

「おい、しっかりしろ。」
ヘリは倒れているペイルウイング兵に呼びかけた。
彼女はよほどの激戦の中にいたのか、アーマーはボロボロで、飛行ユニットも破壊されている。

「・・・・」

「マンホールから落ちて頭を強く打ったんだな、許深。」

「はい」

「彼女を陣地まで担いでくれ。」

「はい」


・・・・・・数分後
二人はそのペイル兵を陣地まで送るため、今来た道を引き返していった。

「うっうう」
許深におぶられていたペイル兵が目を覚ました。

「気がついたのね。」

「ここは?」

「下水道よ、ボロボロになっていたあなたを見つけたから保護したの、所属部隊と名前を教えてくれる。」
許深は事務的に行った。

「『アカネ』です・・。名前は酒井・・・酒井 若菜です」

「ふーん、『アカネ』っていったらこないだ結成されたばかりの部隊じゃないか、良く生き残ったな。」
ヘリはその兵士を誉めた。

「ところで他に生存者はいるかい?」

「あっそうだ、あの人は?もう一人、男性の隊員がいませんでしたか?」

「いや、見つけたのは君だけだが・・・。」

「そんな、じゃあ・・・。」
ヘリは歩を止めた。

「許深。」

「なんでしょう。」

「後、頼むわ。」
そう言うと、ヘリはまた下水道の向こうに走っていった。
許深はヘリの後ろ姿を見送った。
ただ何もせずに見送った。

少し間があって、我に帰った許深は陣地に向かって飛んだ。

(さっきのマンホールはふさがっていた・・・
ここら辺なら近くに出れるか?)
ヘリは下水道から外に出た。

さっきのペイルウイング兵が言っていたもう一人を探すためである。
名前は「竹下」だったかな。

『竹下の特徴』

・眼鏡をかけている
・ソバカスがある
・髪は茶色がかっている
・戦車の中で『腹減っただろう?』と、黒砂糖を進めてくれた。

(黒砂糖?珍しい物を持っているやつだ……)

あたりを見回して数十分、辺りが騒がしくなってきた。
周りはとても捜索などできるような戦況ではなくなっていた。
スコールの空模様のように、空は押し寄せたUFOに埋め尽くされ、陸には多脚歩行戦車ダロガを中心としたインベーダーの陸戦部隊が現れて友軍と激しい交戦状態になっていた。

<こちらEDF本部、全部隊は速やかに福岡を放棄、東京に集合してください。>
(そりゃあんなものくりゃそうなるな。)
いつの間にか現れ、空いっぱいに広がり、夜にさらに暗い影を落としたマザーシップを見ながらつぶやき、無線のスイッチへと手を伸ばした。

「佐原、聞こえるか。」

<隊長、指示を、俺は、俺はどうすれば>
佐原はパニくっている。

「おちつけ、仮設基地に戻って許深と合流、その後友軍に続いて撤退しろ。」

<はあ、しかし、隊長は?>

「俺は後から行く。」
そう言うとヘリは味方が逃げる時間を稼ぐためマザーシップに戦いを挑んだ。
さっきとは打って変わり仲間のことを、心配する。

間違いなく勝ち目はない。「陽動が成功できれば勝ち」という考え方もあるが、それもできるか怪しいほどに。

「俺は諦めない」
ヘリは呟いた。すでにヘリは何百もの敵に包囲されつつあった。

「痛、」ヘリの肩に光弾が当たった。
蟻の酸がヘリの体にかかる。

「おのれ・・・。」
ヘリは力を振り絞り反撃する。サッカーグレネードを撃ち爆散させるも、すずめの涙にしかならない。はるか向こうからこちらに迫るダロガの姿が見える。包囲網は容赦なくヘリを攻撃する。

「まだ・・・、死ねない。」
しかしすでにヘリは逃げる事も出来ないほど傷ついていた。

「くそ、動け、動け俺。」
円盤と蟻は死にぞこないのヘリを無視して友軍の追撃を再開した。
ダロガを使って確実にヘリを殺すつもりである。

「まて、お前らの相手は・・・。」
ヘリはそう叫んだつもりだった。声が出ない。

ダロガが近づいてくる。
(俺は・・・、死ぬんだな。)
最後に信号弾代わりに空に向かってサッカーグレネードを放つと崩れ落ちるようにその場にへたり込んだ。


―――――――――――――――――――――――――――

「この鉄くずめ!!」
銃弾を受けた歩行戦車が炎を上げ、その場に崩れた。
上司の命令を振り切り、一人で倒れた兵を救いに来た、
三枝 光(さえぐさ みつる)は視線を地に戻した。
友軍が撤退する時間を稼ぐためにたった一人で戦い負傷した、
兵士が倒れている。駆け寄って声をかけた。夜空に浮かんだ派手な爆発を見て敵のいるほうへ向かったら、この有様だ。
敵はよほど忙しいのか、とどめも指さずにいってしまった様だが、
とどめを刺しに来たのダロガはこちらに気づき襲ってきたのだ。

(運のいい人だ。致命傷は避けている。)
応急処置として中和スプレーの散布後にリペアースプレーを振りかけた。

「大丈夫か?」
彼の顔を覗き込む。口が動き何かをしゃべったような気がした、
だが背後からの音にかき消され聞き取れなかった。後ろを振り向く。敵は二手に分かれたようだ。そのまま追撃を続ける者と、
突っ込んできた身のほど知らずな兵士を殺すために引き返す者。
三枝は立ち上がり、拳銃に弾を込める。向かってくる敵を睨んだ。
数は・・・だめだ、数え切れない。ただ、一人で戦える数ではない。
震える手で銃を構え引き金を引こうとすると。後ろから声が聞こえる

「蟻の背中に・・・・」
はっきりではないが確かに聞こえた。

「蟻の背中にどうするんだ?」
兵士はすでにしゃがんだ体勢となっていた。

「背中に隠れるんだ。使えるものは何でも使え!!」
と、叱咤激励し満身創痍の兵は蟻の死体へと向かっていった。三枝も急いでついていく。満身創痍の兵はそのままグレネードランチャーらしき武器に弾をこめると、敵をひきつけ、明らかに爆発に巻き込まれるであろう位置に弾丸を射出した。

「いったい何を?」

「いいから伏せろ、死体で爆風をすべて防げるわけじゃないからな。」
至近距離で爆発したそれは、轟音とともに周囲の蟻を吹き飛ばす。自分たちは死体の影で爆風をやり過ごし、至近距離にいて吹き飛んだ蟻の肉片がほかの敵に当たる。
ダメージを与えられるわけではないだろうが、
隙を作るにはもってこいだ。その隙を彼は見逃さず、
銃を撃っていた、三枝は怪我人の気迫に圧倒され、
攻撃に入るのが遅れてしまった。三枝も続いてサイドスローでかんしゃく玉を横に広く投げ、アサルトライフルで追撃する。

彼の奇策は・・・成功だった。


数十分前:救助ヘリ内

許深、サハラ、スガワ、フェンナの4人は隊長不在のまま福岡を去ろうとしていた。
傍らには許深がつれてきた女性隊員が座っている。
誰も口をきかないまま、ヘリが離陸するのを待った。

「隊長、大丈夫でしょうか?」
フェンナが呟いた。

「さあな、あの人はあんな性格だからいつ死んでもおかしくない。」
佐原も口を開いた。

「・・・かっこつけようとするから。」
須川も呟く。

「はあ。」
許深はため息をついた。

「じゃあ、そろそろいくか。」
佐原は立ち上がりながら言った。

「そうだな・・・。」
須川も迷惑そうに立ち上がる。

「あなた達よくあの隊長と一緒で今まで無事だったわね。」
許深も立ち上がる。

「すみません・・・。」
フェンナは泣きそうになりながら言った。
そんなフェンナを佐原が慰める。

「あー大丈夫、君は敵前逃亡にも味方殺害にも問われないから、君は命令どおり動いただけで何の罪もない。」

「違うんです、私は、私も皆さんについていきたいんです、でも・・・、私じゃ皆さんの足を引っ張りそうで・・・。」

「そう、じゃあ、本土に帰ったらあなたに特別訓練を施してあげないとね。」
許深が笑っていった。

「生きて帰ってきてくださいね・・・。」
フェンナがとても悲しげに言った。

「兵士が泣くな・・・。」
須川が厳しく言った。

「あ・・・、はい。」
フェンナは歯を食いしばって悲しみに耐えた。

「じゃ、隊長回収に行きますか。」
佐原が言った。

「ちょっと、もう離陸しますよ、どこ行くんです。」
救助ヘリの乗組員が佐原達に尋ねる。

「どいてくれ。」

「どけって・・・、今市内に戻ったら死にますよ。」

「しなねーよ。」
そういって佐原は救助ヘリを降りた。

「おつとめごくろうさま・・・。」
須川も救助ヘリを降りる。

そして許深が救助ヘリを降りようとした時だった。
「待ってください、」
誰かが許深を呼び止めた。

「俺も連れてってください、誰かがまだあそこにいるんでしょう。」
長髪の青年は許深にそういった。
青年から強い意志を感じた。

「ありがとう、猫の手も借りたかったの。名前はなんていうのかしら?」

「影山 直弥(かげやま なおや)、影って呼んでください。」

「隊長、生きててくださいね。」
許深はそう呟くと、影と共に救助ヘリを降りた。


許深、佐原、須川、そして影の4人は再び福岡市内に戻ってきていた。
しかし、市内は敵に埋め尽くされ、ヘリの姿はどこにも見えない。
レーダーを見る。
生命反応が二つ、おそらくどちらかが隊長だろう。
しかし、そこは敵のほぼど真ん中、とても助けになんか行けそうにない。

「隊長、今行きます。」
佐原がそういって飛び出そうとしたときだった。

「待ってください。猪突猛進ばかりでは豚になっちゃいますよ。」
影が佐原を止めた。
影は肩にかけていた大きなバックからジェノサイド砲を取り出していた。

「な!」

「・・・!」

「これは・・・。」
3人は突然の4大防衛兵器の一つの登場に驚いた。

「いったい、君は何者なの?」
許深が尋ねると影は笑っていった。

「誰でしょう?」
冗談と共に影はジェノサイド砲の引き金を引いた。
光球がゆっくり敵の群れの中に吸い込まれていく。

「何でそんなの持ってるんだよ。階級は?」
須川が尋ねる。
「さあ?支給されてたんですよ、私の隊に。私は一等兵ですから、多分、私の上司の、大佐のために支給されたんじゃないですか?
輸送ヘリから投下されたのを見つけたんですけど、
そのときには私以外全滅でしたけどね。」

次の瞬間、数え切れないほどいた敵が一気に吹きとんだ。
レーダーからその爆発範囲内にいた全ての敵のマーカーが消える。

「・・今よ。」
許深は呆然とする佐原と須川をうながし、敵の群れ、(といってもさっきの攻撃でほとんど倒され、味方のマーカーの近くにいた数匹の蟻を除く進行方向の敵は全滅しているのだが)に向かって突撃した。敵はこちらに気づき2匹を除いてこっちに向かって来ていた。

「おい、誰か来たぞ!!」三枝が叫ぶ。だが何も言わなくとも、あの爆発で嫌でも気づくだろう。
満身創痍の兵士は安心したのかその場に倒れこんだ。
三枝も残りの二匹を倒すと自分も安心して座り込んだ。


ヘリが目を覚ますと、そこはトラックの中だった。
傍らにつかれきって寝ている佐原と須川、そして許深と、見知らぬ隊員がいる。一人は長髪の二十歳ぐらいの人、もう一人は癖っ毛の高校生か大学生かというところか。

「気がつきましたか。」
そばにいた長髪の見知らぬ隊員がヘリに話しかけた。

「ここは?」
ヘリはその隊員に尋ねた。

「ここは今丁度本土と九州を繋ぐ橋の上です。」

「いったい何があったんだ。」

「あなたが倒れたあと、彼らがあなたを助けたんです、そしてそのまま本土に撤収していた自衛隊の車に便乗してるんです。」
ヘリはトラックの荷台から顔を出した。
青年のいうとおり橋の上を走っていて、後ろと前には自衛隊の迷彩された戦車とトラックが数十台走っている。

「それで君は。」
ヘリは顔を中に戻すと青年に尋ねた。

「彼も隊長を助けるのを協力してくれたんです。」
いつの間にか目を覚ました許深が答えた。

「影山です。影って呼んでください。」
青年は笑顔で名のった。

「福沢だ、ヘリと呼んでくれ。」

「はあ、あの、なぜ・・。」
影はなぜ福沢のあだ名がヘリなのか理解できないようである。

「ヘリ好きだから。」
ヘリはあっけらかんと答えた。

「はあ。」
影はなんか変った人だなと思った。

「ん、あ、気がつきましたか。」
さっきまで眠っていた隊員が目を覚ました。

「こちらは?」
癖っ毛の隊員を見て、ヘリが聞く。

「ん?あれ、覚えてないの?蟻の背中に隠れろって俺に言った筈だけど。」

「三枝 光隊員です、私達が到着するまで隊長を守っていたんですよ。」
「そうか、無我夢中だったから・・・まぁ、とにかく三枝隊員、ありがとう、感謝するよ。」

「いえ、当然のことをしたまでです。」

「ところでフェンナはどうした?」

「彼女は救助隊のヘリで本土に戻りました、帰ったらまず探さないといけませんね。」
許深は彼女が自信がなくてこなかったことは言わなかった。


「そういえば三枝さん、あなたの所属部隊は?」許深はたずねる。

「私はIRT(Invader Repulse Team)。つまりインベーダー撃退チームの二等兵ですね。」


「ああ、前大戦でも結構お世話になったし、お世話もそれなりにしたっけなあ。」
とヘリが言う。

「巨大生物が現れたときのみ人員を募集するEDFの下部組織だから、結構立場が低く見られがちなんですよね。私は派遣社員みたいな立場の独立兵なんです。」
「で、EDFに入ってないのは大学に進学したいから?」と影。
「実はEDFの入隊試験、学科の関係で落ちちゃって・・・ね」

「ごめん・・・悪いこと聞いた・・・」

「いや、いいんだよ。頭が悪いのは昔からで。今日はほかのチームも独断で行動することがあるって思って安心したよ。」

「なるほど、同じ穴のむじなですか。」と影。
それには51遊撃隊全員がうなずく。

「でも私たちの信用はどうなるんでしょうか?
今回の件で、地に落ちてしまったような・・・」
と三枝。

「隊長が助かりましたから。それに越したことはないですよ。」
と許深。

「それにしても三枝さん、あなたさっきから一人称が「私」なのか「俺」なのかはっきりしないですね。」

「敬語・・・慣れてないんですよ、私は。やっぱり問題ですよね・・・」


その時運転席から自衛官のきびきびした声が聞こえてきた。

「上等兵殿、緊急事態です、EDF本部に向かって巨大生物が接近しているとの通信が入りました。」
ヘリは答える

「わかった、ありがとう、とりあえず本土についたあと山口にあるEDF第6支部に行くから本土につくまで乗せてってください。」

「そうはいきませんよ。」
自衛官は言った。

「あなたのおかげで我々は逃げる時間が増えたんです、山口支部までお送りします。」
その後自衛隊に送られてヘリ達はEDF第6支部についた。
支部に入っていく彼らを後ろから自衛隊は敬礼で見送った。
こうして第51遊撃隊の福岡での戦いは終わりを告げた。

第51遊撃隊
総員5名
戦死者なし


新キャラクターは大体一話につき二人までに抑えたいと思うので、
イズキ隊員と吉冨隊員は名前だけしか出てきません。
彼らはは出てくるのがあとになりそうです


[No.11491] 2007/07/06(Fri) 11:09:50
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Re: ショートストーリーまとめてみました (No.11490への返信 / 4階層) - 三枝

>> ・EDFのほかにIRTという組織を存在させてます。三枝はそこに入れました。(第三話の最後のほう参照)
私も駄目設定をうまく変えたなぁ、とびっくりしました。

とりあえず、思ったことがいくつか…

・かなりどうでもいいことですが、三枝=さえぐさ、です。
私も最初は「みえ」って読んでいました。

・実は私、本当に癖毛なんですよ。
会ったことないですよね?(笑)

・一人称どうのこうのって部分は、私が言葉遣いを変えたから付いたんでしょうか(笑)


[No.11498] 2007/07/07(Sat) 12:43:51
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作戦会議 (No.11491への返信 / 4階層) - フェアリー

EDF日本支部 会議室

部隊長クラスも召集されているため、100人以上はいるだろう。
ペイルウイング隊の中でも指折りのエリートを集めた部隊のリョウ隊長や元参謀のチオカ中将の姿も見える。IRTの指揮を担当することとなった猛将、小菅少将もいる。
一番ど真ん中で踏ん反り返っているのは若い女性ながら脅威的な昇級を果たした、生きる伝説となっているローズ元帥。
さすがにその威圧感は会議室の中でも抜きん出ている。
そして異常なほどの泣き虫である、沼史大佐はティッシュ片手に泣くスタンバイ完了である。

会議室は重苦しい雰囲気に包まれていた・・・。
データを入力している沼史はすでに泣きが入ってティッシュを携帯している。

「なんということだ・・」

「・・これはそう考えるしか・・・」
みなが口々に絶望のうなり声をあげる。
会議室一面にある大画面には福岡が大きく映し出されていた。

「初めに派遣された第三陸戦部隊、ペイル「アカネ」隊はすでに全滅したようです。いまは各地のEDF部隊が、救出にむかっております。」

「・・・・すぐに撤退させろ・・」
1人の老人が吐き出すように指示をだす。
その声からは無念さが嫌というほど感じられる。
会議室にはごまんと人がいるが、誰も声を出す気力もなかった。

突如世界各地に現れた巨大生物。そして異常に戦力が集中していた福岡・・・。すべてはエイリアンの作戦だったのだ。

「奴ら」は地下で静かに繁殖させていた巨大生物を、世界各地に一斉に出現させ、EDFの戦力はそれに対応するべく、
世界各地に分散される・・。
そして、各国の目立たないような場所に戦力を集中させ、
タイミングをみて一気にEDFの基地へ攻め込む気なのだ・・・。

日本の場合、福岡が「奴ら」の主力の集結地点だった・・・。

集結しだした今ならともかく、分散した戦力ではとても太刀打ちできないだろう。迅速にこちらも戦力を終結させなければ・・・・。

「おそらく奴らのこの作戦は世界各国にほぼ同時に行われるはずだ、他国の協力は期待できない・・・」

会議室の空気はさらに重くなっていた。
次にどんな指示がだされるかみんな察していたのだ。
そして沼史の使ったティッシュはすでに3袋めに達していた。

「民間人のすべてををシェルターに避難させ日本各地の部隊を東京に集結させるんだ・・・。この総力戦に負ける事になれば・・・
どのみち日本は壊滅だ・・・」

老人はいまいましく大画面のモニターをにらみつけた。

「これは巨大生物が繁殖したなんてことじゃなかった・・・
奴らが・・・エイリアンの地球侵略作戦が再開されたんだ!」

遠距離撮影で画像はかなり荒いが、
そこには福岡に終結している数え切れないほどのUFOが映し出されていた。そして、その後ろには一際巨大なUFOの姿があった・・・

「単純に計算すると我々の戦力は福岡に現れた敵主力の4割程度でしょう、まともにぶつかれば全滅は必死です」

1人の男がそう切り出す。
後ろの大画面には日本の戦力と敵の戦力の詳細があるが、その戦力差は一目瞭然だった。

「それはわかってる・・・あんたはどう戦うかを言えばいいんだよ」
ローズ元帥が不機嫌そうに発言する。
チオカも同感だった。元々会議とかが好きではないのだ。

逆らうと普通にムチでも飛んできそうなローズ元帥に指摘された男は額の汗をぬぐいつつ深呼吸してから声を張りあげた。

「敵の大戦力を撃破する方法はただ1つ!
1点突破による敵の頭・・・マザーUFOの撃破のみです!巨大生物はやつらに何らかの方法で操られている。マザーをやればやつらは烏合の衆ですので。」

「そんなことは最初からわかっている。だからどうやってマザーを撃破するのかを言うんだってば、オマエは。」
ローズ元帥が凍りつくような目で射抜いてくる。
ムチどころか、ロウソク、焼きゴテとかもでてきそうだ。
その迫力に横に座っている沼史はさらに小さくなる。

「そ、、その、敵マザーを撃破するために・・・」
男が泣きそうな顔になっていたので、沼史がそっとティッシュを渡す。男は鼻をかみ、再び声を張り上げる。

「・・・部隊を3つにわけるのです!」

・・・なるほどね。チオカ元参謀はなんとなく作戦の容貌が見えてきていた。

「だが・・これは賭けだな・・」
そう呟くと、自分がどの火炎放射器を使うかを考え出した・・・。

「待ってください。」
科学技術部席から一人の老兵が立って意見を述べる。

「なんだ、八雲博士。」
ローズがその博士の名を述べる。

「攻撃を行うのはまだ早すぎる、巨大生物がどこに潜んでいたのかまだわかっていない。あくまで仮説ですが奴らは前大戦時からこの星の地底に潜んで増殖していたのかもしれません。だとすれば地底にはまだ敵の大部隊が眠っているかもしれないんです。」

「何が言いたい。」
ローズが八雲に尋ねる。

「今インベーダーに戦いを挑めば首都は地底から奇襲を受け大きな打撃を受けます。」

「フン・・敵を倒すために手薄になった本部を襲撃されるのは面白くない・・いっそのこと、こんな基地くれてやるか・・・なぁ、チオカ中将」

ローズ元帥が挑発的な視線をチオカ元参謀にむける。
発言が嫌いな彼をからかう半分、チオカなら自分の言いたいことを察してると信頼しているのだ。

みんながローズの言葉にざわめきたつ中、チオカは渋々立ち上がった。

「空城の計・・・本部のいたるところに爆弾をしかけておき、もし、マザー討伐戦時に巨大生物が基地を襲撃してきたら基地ごと吹き飛ばすのでしょう。」

「上出来だ・・守れぬならば捨てればいい・・敵にもそれなりの代償は払ってもらうがな・・」

ローズは満足そうにつぶやく。そして立ち尽くす男に気づき、
バシィッ!・・と、いつのまにか本当に持っていたムチを足元に振るう。裁判官が木槌をたたいて、「静粛に!!」などといっているのを連想させた。

「んじゃ、さっきいってた作戦を伝えろ・・3つにわけるんだったか?」

「ぁ、はぃ。そのとおりです・・」

男はうわずった声で話し出した。その姿に沼史が同情して泣いている。

「まず第1部隊陸戦兵を中心とした部隊を編成し、最前線に立ち2、3部隊を守るのです。巨大生物の群れは彼らが駆逐します。
抜かれてはならない肉の壁です。

そして第2部隊
長距離バズーカ、スナイパーライフル、ミサイル、および支援兵器をメインに武装し主に上空の敵を迎撃します。

最後に切り札の第3部隊
敵陣が崩れるタイミングを見はかり、戦闘ヘリ、ペイルウイング隊による一点突破にて一気にマザーへの接近、撃破となります」

再び会議室がざわめく・・無理もない、なにかが狂えばそこで終わりという非情な作戦だ。ローズも顔をしかめ考え込んでいる。

「いくらかの少数部隊には特別な指示がでるかもしれませんが、
これが我々の用意した奇襲作戦です」
と、そう締めくくり、男はやっと着席した。

ローズは考えていたが・・・
「まぁ、とりあえずはこれでいいか・・我々には攻撃と防御を同時にする戦力などない、だが、この基地を捨てるのもやはり面白くない・・・」

ローズは立ち上がり、会議室を見渡し声を張った。

「この作戦を実行するのは最後の手段だ・・・部隊長、一般兵、研究員、IRT、誰でも構わん、なにか案がでれば私に報告しろ!」

会議室が再び静寂に包まれる。
ローズはやれやれといった面持ちで会議室を出て行った・・・。


しかしその案が出る前に作戦は練り直しを迫られた。

――――――
『緊急事態発生。巨大生物のオスと見られる羽蟻のような新型の巨大生物が巨大な蟻塚を建て上げた。』


[No.11499] 2007/07/11(Wed) 18:20:18
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英雄たちの初対面 (No.11499への返信 / 5階層) - フェアリー

EDF第6支部、第4隊員詰め所 15:45
第51遊撃隊の面々はとりあえず今後の事を話し合うために空いている詰め所を借りてそこでミーティングを行っていた。

「本題に入る前にこの部隊に新しい仲間が入ったので紹介をしておく、彼には支援砲撃と敵の掃討を担当してもらう」
ヘリが影に自己紹介を促す。

「影です、改めてよろしく」
影は明るい声で言った。

福岡での戦いで彼の部隊は多くの被害をうけたため解散し、隊員達は別の部隊に再編成されていた。そして彼は自らの希望により、ヘリの部隊に配属された、という事である。
ちなみに三枝隊員は元々独立兵だったので、すでに次の転戦先に行ってしまった。

「佐原 健一だ、改めてよろしく」
佐原が生真面目に挨拶する。

「須川 武雄・・・・」
それだけ言って須川は黙った。

「副隊長の許深 素華、改めてよろしくね」
許深は微笑んで見せた。

「あとフェンナ スミス隊員がいるが知っての通り一足先に本部に戻っている。さて本題に入ろう、今後の部隊運営についてだが、まず本部に戻って本部を攻撃中の巨大生物殲滅に参戦する、以上、何か質問は?」
そう言ったヘリに影が口を開いた

「ああ、ヘリさん。支援砲撃と敵の掃討の他に、応急手当てを担当させてもらってよいでしょうか?」

「なるほど……いいんじゃないかな。お前ほどの手際のよさなら。
みんなも問題ないな?」
全員がうなずいてOKの意思表示をした。

「ちなみにここの基地の厚意で本部救援部隊に便乗させてくださるそうなので感謝するように、出発は16時ジャスト、集合場所は第3格納庫だ、以上解散。」




―――――――――――――――――――――――――――
その塔は異様なほどに不気味だった。巨大蟻のサイズに見合う巨大蟻塚。インセクトヒルと名づけられたその塔からは羽の生えた巨大蟻が無数に出現していた。


「よし、敵第4陣は全滅した、敵が第5陣を出す前に少しでもインセクトヒルに攻撃だ、重火器をぶっ放してやれ影。」

「任しといてください。」

そういうと影は両手に持ったゴリアス99をかまえ、発射した。
今回はさすがに市街地のためジェノサイド砲は置いてきている。
ヘリもサッカーグレネードDを発射する。
他の部隊の砲撃やミサイルの発射音も響く。
インセクトヒルに爆発が起こり、またほんのわずか傾いた。

ヘリ達第51遊撃隊が福岡から山口に後退した時、東京には巨大生物の巣が出現していた。
東京の本部はこんな巣に戦力を減らされるわけにはいかないと日本中から戦力を呼び、巣の攻撃にあたらせた。
そのおかげで第51遊撃隊は山口の本部救援隊に便乗して本部に戻ることができた。
また内閣も首都東京を敵の手に渡すわけにはいかないと自衛隊を出動させ、インセクトヒルの攻撃を行わせた。
そのかいあって出現から1週間たった今インセクトヒルも徐々に傾いてきている。その一週間の間にフェンナとの合流もできた。今は許深と共に、別行動中だが・・・
だが、まだ崩れるにはほど遠い、こんなことをしているうちにインベーダーは何か恐ろしい計画を進めているはずだ。

不意に羽音が響いた、敵の第5陣が来たのだ。
すごい数だが今回は味方が多いため死者はほかの隊でも少なめである。

「やってられませんね、まったく…」
影がそういってまたゴリアスを発射する。
空を覆う程現れた蟻の一部が吹き飛ぶ。
ヘリもアサルトを連射する。

「須川、佐原、影を守れ。」
佐原が影を守るように立ち、羽蟻にアサルトを連射する。須川は遠くから的確に打ち落としていった。
その隙に影はビルの陰に隠れてゴリアスの弾をこめる。
全員、酸がクリーンヒットすることはないものの、一滴また一滴と食らい、やけどの数は相当数に達していた。


―――――――――――――――――――――――――――

一方、別行動していた許深たちは取り残された市民を助けるべく別行動をとっている。
市民はあらかた助けたが、ショットガンをもった兵士がピンチに陥っていた。

ガキョン・・・

「なっ・・・・・・・」
ケタがショットガンの引き金を引いた時、ショットガンが嫌な音を立てて一部が吹き飛んだ。
当然目前にいる巨大生物にダメージはない。散弾がでてないのだから当然だ。

いくら新素材の超強度の合金でも、大粒の散弾を打ち出し続けて限界がきたのだ。
呆然とするケタに巨大生物の牙?が迫る。
ケタは反射的に腰のハンドガンRを抜き、巨大生物に向け15発全弾ぶち込んだ。
単体ハンドガンとしては凄まじい威力なのだが、それでも巨大生物の相手をするには力不足だった。

「やばっ・・・」
次の瞬間目の前がまばゆく輝き、眼前に迫っていた巨大生物の体が、バラバラに切断された。

「大丈夫ですか!?」
ペイルウイングを装備した女性隊員が駆けつける。
その手にはレーザーチェーンソーとかいうエネルギー近接兵器が握られている。
フェンナは、壊れた武器を見て立ち尽くしてるケタに声をかける。

「銃が壊れたのね・・・いまのうちに早く撤退してください」

「壊れた・・・か」
ケタはショットガンのポンプをスライドさせる。
ガッシャっという音とともに一応弾丸が装填された。
(大丈夫・・・隊長は・・まだ死んではいない。)
と、形見の武器を見てほっとする。

「とりあえず『兵器蔵』まで戻ったほうが良いのでは?」

「そうするよ・・・・・」

―――――――――――
敵の第5陣は全滅していた。重傷者は無しである。
ヘリは無線を取り出し、別行動をとっていた許深とフェンナに、
連絡を入れた。

「こちらヘリ、許深・フェンナ大丈夫か。」

<こちら許深、無事です。>

すぐに返事は返ってきた。

<こちらフェンナM−37ポイントで武器が故障した陸戦隊員を、
『兵器蔵』に送っています>

M−37ポイントは近くだ。

「フェンナ、その人はまだ戦えそうか。」

<聞いてみます>
フェンナは後ろを振り向きケタに話しかける。

「まだ戦闘はできますか?」
その女性隊員・・フェンナの言葉にケタは少し考えたが、

「まぁ、武器さえあれば・・」
と、答えた。

<武器さえあれば大丈夫だと言ってますが>

「わかった、その隊員に須川の予備のアサルトライフルを渡すからM−38ポイントで合流しよう。」

<はい、了解しました>

「ケタさん、私の隊の人に予備のアサルトライフルを貸してもらえるそうです」
フェンナ隊員は無線をしまいながらそう言った。

「アサルト……か。ありがとう助かるよ」

ケタは壊れたショットガンを見ていたが、やがて背中にかつぎ直した。

「行こうか、君の隊に銃を借りに」

「了解しました」

そういえばお互いに名前さえまだ知らなかった。
「俺はケタだけど、君・・・」
「私フェンナとい・・・」
思い出したかのように2人で同じことを言う。
なんとも妙な間があり・・死地に向かうというのに2人して笑ってしまった。

「もしかしてケタってあの福岡でワカって人が探してた人・・?」

「そうか・・君達があの救出部隊だったのか」
偶然の出会いに再び軽く笑いあう。そして、
仲間との合流地点へ走り出した。

(隊長・・手当てはもう少しまっていてください……
今は市民を・・そして仲間のため戦わなけりゃならないんです……
前大戦で隊長が俺達を守ったように……)
ケタは静かに背中のショットガンに語りかけた。

ケタは自分に言い聞かせるように呟いた。
フェンナは首をかしげていたが、ケタが丸腰であることに気づいてエネルギーを最大間でチャージした武器を渡した。

「これ、もしもの時に使ってください」
手渡された武器はサンダーボウだった。ショットガンと似たような感覚で使用できるためケタにはありがたい。

「ありがとう、使わせてもらうよ」
二人はそう言ってヘリ達のいる場所へと走り出した。

――――――――――
「チオカだ・・・この火炎放射器の具合は良好だ。こちらはまかせろ」

「こちらペイルウイングのリョウ!東京上空の羽蟻はあらかた片付けた!我が部隊は補給のため『兵器蔵』へ移動する!」

「ぬ・・沼史だ!涙で前が見えない!一時撤退する!」

仲間の通信がひっきりなしに入ってくる。
さすがに東京に集められたEDF隊員の数は多い。
巣が現れて以来毎日戦闘が続いているが、この程度の巨大生物の数では死傷者も多くはなかった。

だが、隊員の疲労は確実に蓄積されていく・・・
しかし、疲れがたまっているのは隊員だけではなかった。この塔への対応はローズ元帥も頭を悩ませていた。


敵第6陣が出現するまでまだ時間がある。
M−38ポイントではフェンナの到着を待ち、軽食と水分補給の傍らインセクトヒルへの攻撃が行われていた。

「あの建築技術…見習いたいものですね。いったい何でできているのでしょううか?」
影が腹立たしげに言った。

「同感だ、なぜこれだけの攻撃を受けても健在なんだ。」

ヘリも同じ意見をのべる。
確かにインセクトヒルはわずかに傾いてはいるものの、インセクトヒル自体にはなんらダメージは与えられていない。攻撃している火器が歩兵用のランチャーや、ミサイルということもあるが、
いくらなんでも硬すぎる。
しかし場所が市街地ということもあって戦闘機で攻撃するわけにも行かない、それにまだ都民も完全に避難したわけではない。

「隊長。」
フェンナが到着した。
横には伍長の階級章をつけた隊員がいる。
ヘリは敬礼すると、須川に武器を渡せと目でうながす。

「どうぞ・・・。」
須川も敬礼したあと、背中に抱えた予備のAS−22RRをその隊員に渡した。

「ありがとう。」
伍長は礼を言った。

「は、伍長殿、ぶっ壊してもかまわないので存分にお使いください。」
そう言うとヘリは再びインセクトヒルに向き直った。

「でもなるべくなら・・・いやなんでもないです。」

須川がつぶやいた。

「安心してくれ、他人の武器を壊したりしないから。」
ケタは笑って言った。

ヘリ達は道路を挟んで左右のビルの陰に隠れながら羽蟻と戦っていた。
側を飛ぶ羽蟻に向けてヘリとスガワのアサルトが火を噴いた、向かい側のビルの陰からも佐原とケタ伍長が羽蟻を攻撃している。
飛んでいた数匹の羽蟻が撃ち抜かれ、地面に落ちた。
近づいてくる羽蟻は影のゴリアスで吹き飛ばされ、向かい側の敵もフェンナのレーザーチェーンソウで切り刻まれた。

かれこれ1時間この繰り返しだった。一輪車に積んでおいた武器弾薬も、山ほどあったものがなだらかな扇状地になっている。
そろそろ隊員達に疲れが見えてきた。

(あれを崩す方法は何かないのかよ。)

ヘリはそびえたつインセクトヒルにサッカーグレネードを撃ちながら思った。

(あの塔は鉄壁の守りだ。外装をいくら叩いても、ダメージは薄い。だからと言って中に潜り込むなんてできっこないし。ん、潜る。)

ふと、以前暇つぶしに見ていた武器雑誌に載っていたある武器のことを思い出した。

弾丸の代わりにドリルを撃ち出し、そのドリルで壁を貫いていき、ある程度掘り進むと爆発する。

(これだ、あの兵器ならインセクトヒルの外装を打ち抜いて、
なおかつインセクトヒルの中で爆発して、インセクトヒルを破壊することができる。)

「須川、」
ヘリは離れてケタ伍長に渡したアサルトを心配そうに見ている須川に大声で言った。

「なんでしょう・・・。」

「本部に行ってラボにこの兵器があるか聞いてきてくれ。」
ヘリはドリルランチャーと書いた紙を須川に渡した。

「了解・・」
そういうと須川は本部に向かって走っていった。

一方、上空から迫る羽蟻に向けケタは須川隊員から借りているアサルトライフルを撃つ。狙いは羽だ。
体の大部分を硬い甲殻に覆われ、さらに不規則に空を飛ぶ巨大生物にアサルトライフルで致命的なダメージを与える事は難しい。
まずは地上に落とすことが重要なのだ。

その派手さはないが堅実な戦いに、ヘリと須川も少し驚いていた。
正直、古臭い銃を好むだけの妙な隊員だと認識していたのだが、
逆にいえば高火力に頼らない腕があるということでもある。

そしてケタもこの部隊に感心していた。
どうやら武器に頼っているわけではなさそうだ。たしかな腕をもっている。そして何より生き残ることを大事とする、その戦い方がよい隊長である事を教えてくれた。

「緊急事態です!」

通信から悲鳴にも似た叫びが聞こえてくる。
ケタとヘリはヘルメットの通信のボリュームをあげる。

「渋谷地下シェルターの第一シールドが突破されました!
民間人が危険にさらされています!」

地下シェルターとは前大戦後に最優先で建設が進められていた大型地下避難所である。
各都市の地下に建造されたドームのような避難所で、
中心部が居住スペース、その周りが倉庫などのスペース、生活物資などを運搬する車両などが通るスペースがあり、もちろん軍の補給のための『兵器蔵』もある。
各スペースの間には強化合金シールドが張られているが、
その外周が突破されたというらしい。

「ここの近くだな・・」

「あぁ・・だが、インセクトヒル破壊も遅くなると手遅れになる・・」
ケタとヘリは顔を見合わせていたが・・・考えることは同じだった。

「俺は地下シェルターへ向かう・・巣は任せる・・」
どのみちこのアサルトライフルが巨大な巣破壊に役たつとは思えない。そして、ヘリ達の武器の火力では威力がありすぎて地下施設そのものを破壊しかねない・・・。

お互いの実力がわかったからこその別行動だった・・・。
あいつならなんとかするだろう。お互いにそう感じていた。
それでもヘリはちょっと聞きたいことがあった。
「勝手な判断で動いていいのかい?」

「おれの隊は福岡で全滅して、今はフリーなのさ。」
と、ケタが言うと。ヘリは唖然とする。

「なるほど、自由になるって恐ろしいもんなんだな・・・・・
そうだ、弾をもってけよ。そこにあるやつ取ってっていいから」
ケタはマガジンをいくつか受け取り、地下シェルターにむけ、
走り出した。


[No.11500] 2007/07/25(Wed) 21:52:26
125-14-43-179.rev.home.ne.jp
魔塔 (No.11500への返信 / 6階層) - フェアリー

ケタ伍長が去ったあと、突然巨大生物の数が増えてきた。
スガワとケタ伍長を欠いて、戦力が低下した第51遊撃隊は、敵を抑えきれず、次々と敵に弾幕を突破されていた。
このままでは、彼らは巨大生物に包囲されてしまう。

「フェンナ、佐原、後ろの敵を倒して逃げ道を作れ、影、俺と正面から来る敵を抑えろ。」

「は、はい」

「ラジャー」

「はい」

佐原のアサルトと、フェンナのレーザーチェ−ンソウで後ろに回った敵はほぼ倒された。

「フェンナ隊員。」
ふいに佐原がフェンナに声をかけた。

「?」
「あなたはちゃんとした実力と才能をもっている。」
突然そう言われて、フェンナは困惑した。

「そんな、そんな事。」

「あなたは私より多くの敵を撃ち落としている、それにあなたの動きは他のペイルウイングより優れている。」
「・・・・」

「あなたはもっと自信を持ってもいいと私は思います。」

「・・・ありがとうございます。」

「なーに、これが古参兵の仕事ですから。」

彼らはあっという間に退路を確保した。

「許深、今どこだ。」
ヘリがビルの陰からアサルトを撃ちながら聞いた。

「現在R−21地点で自衛隊の撤退を支援してます。」

「わかった、そのまま自衛隊と一緒に撤退しろ、本部で合流だ。」

「了解。」
通信回線を今度は須川のものにあわせる。

「須川、ドリルランチャーはあったか。」

「・・・今探しているそうです。」

「わかった、あれが逆転の鍵になるかもしれないから気合入れて探してもらえ。」

「・・・了解。」
通信を終え、今度は影に話しかける。

「影、そろそろ撤退する、派手に吹き飛ばしてやれ。」
それを聞いて影はニカッと大きく笑う。

「任しといてください!」
影は両手に持ったロケットランチャーを撃ちまくる。
その大部分が羽蟻に着弾して羽蟻を吹き飛ばす。
羽蟻の体液のにおいが一気に濃くなる。

「よっしゃ、あとはわき目も振らず本部まで撤退だ。」

「了解、逃げ足には自信があります。」
佐原が気のいい返事をする。

「そうか、俺より速いのかな?」
と、ヘリが言う。

「生き残らなければ明日はありませんからね。」
影が言う。

「同感だ。」
と、ヘリ。

「ペイルウイングは逃げるのが楽でよかったです。」
と、フェンナ。そう言って四人は本部まで走った。


ヘリ達は本部に戻りドリルミサイルを受け取っていた。

「作戦の概要を説明する。」
ヘリが部下達に向かって言った許深も合流している。
もう日は暮れかけているが、地下でも地上でも激しい戦いが繰り広げられている。

「まず許深とフェンナは前方担当、ドリルランチャー発射ポイントまでの前方の敵の排除を行ってくれ。」

「了解。」

「・・・」
フェンナは黙っている。

「あーフェンナ隊員、無理にとは・・・。」

「やります。」

「!」

「やらせてください。」
フェンナはどうやら自信がついたようだ。

「・・・・」
ヘリは口元に薄笑みを浮かべた、ふと見るとサハラも動揺に薄笑みを浮かべている。

「佐原、須川は右と左を担当、ガンナーの両サイドを固めてくれ、俺は後ろを守る。」

「了解であります。」

「・・・ラジャー。」
二人ともいつもより少しテンションが高かった。

「影はガンナー担当、インセクトヒルぎりぎりまで近づいてドリル発射を担当してくれ。」

「責任重大ですね。遠くから撃てるように改良の余地がありますね。」
影が冗談めかして言った。

「なーに、はずしても誰もわからねーよ、なんたってこの部隊が勝手にやってる作戦なんだ、俺達とラボの人位しかしらねーよ、だから失敗しても罰もなければ失敗したことさえわからないってわけよ。・・・ただしな。」

ここでヘリは真剣な顔になった。

「みんなも聞いてくれ、誰も知らないと言う事はこの作戦が成功しても誰も俺達がやった事だと知らない、だから何の名誉も、栄光もない、もちろん死んでもその他大勢のうちの一人としてカウントされるだろうな、それでもいいなら、この作戦に参加してくれ。」
それを聞いて、なぜか皆笑い始めた。

「ん、俺、何かおかしい事言ったか?」
ヘリがきょとんとしていると、影が口を開いた。

「何をいまさら、俺は福岡で隊長救出に参加した時点で昇進も勲章もあきらめてましたよ、この人は勲章や名誉のために戦ってる人じゃないからそんなものに期待したって無駄だってわかってました。命令違反を平気で犯しますし。」

佐原もつづく。
「隊長、いままで俺達何のために戦ってきたと思うんですか?勲章や名誉、笑わせんでくださいよ、そんなスケールの小さいものいりません。」

須川もぼそっとつぶやく。
「俺達の戦闘目的は明日につながる戦いをする事だ。それは勲章よりずっと価値の高いものだ・・・」

フェンナも言う。
「それに見ている人はちゃんと見ていてくれます。」

許深が締めくくる。
「隊長、第51遊撃隊隊員は全員この作戦に参加します。」

ヘリは一瞬涙腺が緩んだが、泣くのはあれを倒してからだと踏みとどまり、こう言った。

「ありがとよ。」
隊員達はわずかに照れくさい気持ちになった。

「ようし、行くぞ、全員作戦配置。」
隊員達の顔が引き締まる。

「作戦開始、インベーダーに目に物見せてやろうぜ!」
第51遊撃隊の誰も知らない戦いが始まった。

ドリルランチャーが掘り進む距離を設定して、彼らは再び戦場へと戻った。
掘り進むための機構のスペースに容量を取られ、ドリルミサイルの射程はわずか百数メートルであった。試作品であるため仕方ないといえば仕方ないが、影の言うとおりこの兵器には問題が山積みで、改良の余地がある。

彼らはただ必死だった。
必死に目の前の敵をに弾丸をぶち込み。
必死に強酸をかわし。
必死に前進した。

後500m

周囲から友軍の姿が消えた。

後400m

フェンナが強酸をもろにくらった。

「・・・・っつ。」
彼女は叫びたいのをこらえ、叫びの代わりにレーザーチェーンソウで酸をかけた蟻を切り刻んだ。

後300m

敵の数が増え始めた。
左右後ろを放棄して前方の敵の殲滅に全力を注ぐ。

後200m

目の前を羽蟻が覆い尽くす。
ヘリのサッカーグレネードで吹き飛ばし、わずかにできた隙を突いて駆け抜ける。

後100m

「影ええええ、走れえええええええ。」


影の持つランチャーから放たれたドリルがインセクトヒルの外壁を貫いた。
計算が正しければ、ドリルはインセクトヒルの中心で止まり、爆発するはずである。

ドリルミサイルは正式名称が『シールドマシン式潜行ミサイル』
といい、地中をいく場合『時速100メートル』という低速で進む。ゆえに爆発するまでの時間は相当長いものだが、
これまでの闘ってきた、一週間に比べればどうということはない。

射出したのち、着弾も確認せず、すぐさまビル内に退避し、
成り行きに耳をそばだてた。
もっともひどい傷を負ったフェンナに影が応急処置を施している。

「フェンナも顔にかからなくてよかったね。」
許深は同じ女として、フェンナの傷が顔にあたらなくて安心していた。

「よくないですよ、どこに当たっても痛いんです。」
とフェンナ泣きそうな声でつぶやいた。

「それでは包帯を……」

「ちょっと待ってくれ」

須川は腰からスプレー缶を取り出した。

「リペアースプレーも取ってきてもらったんだ。後々も必要になると思うから、大事に使ってくれ。ハイ・・・」

「あ、ありがとうございます。」

「使いすぎは体に毒ですのでこの部分だけですよ」
そういって影はフェンナの腕と横腹のやけどに振りかけた。
この会話が終わると全員、話すことがなくなったように静まり返る。

・・・・

・・・

・・・

・・・

・・!!!!

爆炎がところどころの穴から噴出し、塔も大きくひび割れ崩れ落ちた。羽蟻は大多数が爆発により息絶え、少数の外側にいた奴らがふらふらと飛び回り、遠くにいた隊員に撃ち落とされていった。
そこらじゅうから隊員達の歓声が響き、インセクトヒルが音を立てて崩れていく。ビルの中で羽蟻に包囲されていた、ヘリ達は、
インセクトヒルが崩れる音を聞いて歓喜に沸いた。

「ざまー見ろインベーダー、人類をなめんなよ、はははははは。」
ヘリは大声でそう叫んだ。
影もフェンナもスガワも許深もサハラも皆口々に自分達の成し遂げた戦果に大声を上げて喜んだ。

不意に許深が通信機を取る。

「あれ、やっぱり味方に俺達がやりましたって言うんですか。」
影が尋ねると許深が笑みを浮かべながら言った。

「そんな事言ったって信じてもらえないわよ。」

「じゃあ、なぜ・・・。」
許斐が苦笑いを浮かべながら言った。

「敵に囲まれてるから救援部隊を呼ぶのよ。」

勝利を大いに祝うため、51遊撃隊はビルにあった、
冷蔵庫の中身で、ちょっとした祝杯をあげた。


[No.11501] 2007/08/02(Thu) 12:57:47
125-14-185-128.rev.home.ne.jp
シェルター防衛戦 (No.11501への返信 / 7階層) - フェアリー

―――――――――――――――――――――――――――
時間はケタとフェンナが出会う少し前に戻る。


決まった所属部隊のない三枝はシェルターの警護に当たる部隊へと配属が決まっていた。
今、一緒に見張りをしているのは、
隊長のマナ・ベアルグ小尉

隊長と仲の良い御剣 清 (みつるぎ きよし)伍長の二人だ。

静かなシェルターの通路に三人は座っていた。
見張りの退屈な仕事に飽き飽きしていた頃。

「おい・・・三枝。ちょっとレーダー見てくれないか?」
梶谷が三枝に話しかける。

「何だってんだ御剣?いきなり・・・・」
三枝は腕時計サイズの小型レーダーを覗いて驚愕した。
「なっ!!敵に囲まれてるな……?でも、何もいないぞ?」

「俺も囲まれているのさ、いくら故障を起こしやすい地下用レーダーでも二人同時に壊れるか?マナ隊長は最新式でしたね?
近くにいる奴のおおよその数が分かるっていう」

「カウンターは67を示しているわね・・・あ、増えたね」

「ろく・・・・・・・しかもまだ増えているだって?」

「急いで対策をしないとね・・・・
三枝君、詰め所にいる交代要員に救難要請を出して。
そのうち一人には迎撃兵器の準備を頼むように言ってね。
私は後方へ回って、支援の準備をしているね。
御剣君はオペレーターに、このことを報告してちょうだい。」

三枝隊は無線のスイッチをいれた。

「地下シェルター付近に巨大生物多数。今すぐ救援を!!迎撃兵器の準備も頼む・・・わかったな?」

三枝が救援要請を終え一呼吸入れたそのときだった。

ガラッ!

無機質な音とともに、目の前の天井が崩れ、巨大生物が雪崩れ込んで来た。慌ててマナ達は攻撃を始めたが、相当な数がいるらしい、蟻は倒しても倒しても減るどころか増えていった。

「くそ、やるぞおおお!!」
三枝はリロードを終え蟻に狙いを定めた、まだ味方は来ない。
マナ隊長はMXイクシオンとイズナーの両手もちで応戦している。ペイルウイングの武器は実弾を放つわけではないため、両手持ちでも、その体にかかる負担は見た目ほどつらくない。

しばらくして背後より聞こえた、銃声が一気に蟻を屍に変えた。

「援護する!」
そう言って、十数人の陸戦兵が駆け寄ってきた。
場所が場所なため、アサルトライフルやショットガンといった爆発物以外の装備をしている。有事の際に備え詰め所を入口の近くに作ってあるため到着はとても速かった。

その中の一人は迎撃兵器のひとつ『固定式レイピア』を起動、壁を這っていたアリたちを全滅させた。

『囲まれている』ふと、先ほどの言葉が三枝の頭を過ぎった。
(・・・まさか!)
上を見る、予想通り天井にひびが入っている。

「全員、上だぁ!!」
三枝が叫ぶ。
三枝は以前、満身創痍のヘリ隊員に言われた、『蟻の背中に・・・』という言葉を思い出した。壁にひびを発見した直後に梶谷の手を強引にひっぱり、蟻の死体の下に隠れた。

カラッ!
天井が静かに崩れる。一つや二つじゃない。
奴らは酸の雨を降らし多くの隊員がそれをまともに食らった。
マナ隊長は視野が広く、すぐに危険を察知してとびのいた。

うまく避けた三人と、迎撃兵器を操っていた兵士、運よく当たらなかった者のみ、無事という状況の中、この状況では助けることは
ほぼ不可能と悟ってか、息絶え絶えの兵士も何とか銃を構えて蟻を撃つ。あいた穴よりのぞかせた巨体を丁寧に打ち落とし、第一陣の攻勢が終わる。

負傷した兵はすぐさま救護室へ送られた。

「ありがとう三枝。あんなとっさの判断ができるなんてすごいな」

「以前蟻の死体を利用してうまく戦った人がいてね・・・」
(あ・・・組織が違うとはいえ、また上司にため口をいってしまった)
と相変わらず三枝は敬語に慣れていない。


第二陣が来る前に戦闘の準備を万全にしなければならない。
イリスの命令で、防衛用の門を閉め、陣形を立て直した。

しばらくすると、敵の第二陣が感知された。

「3・・・14・・・・27・・・どんどん反応が増えてる。」
カウンターが130を示したと思うと一匹目が顔をのぞかせた。隊員の少なくなった状況でさっきより大量の数。次々と溢れ出す巨大生物の群れ。徐々に酸をよけることが困難になる。固定式レイピアでたたき落とすも、その付近はむざむざ死にに行くようなものと
分かったのか、蟻たちはそこへは近寄らなくなる。

「やばいな・・・こりゃ。」
と、三枝がつぶやく。

(まずいわね……こうなったら……)
マナは、『起動すれば最後、敵味方見境なしに破壊を振りまく支援兵器』と、いわれている『パンドラ』を起動させる

「みんな、当たったらごめんね。とりあえず今は奴らが怯んでいるうちに殺っちゃって。」

隊員にこそ当たらないものの、防衛門を壊すささやかな助けであることは間違いない。しかし、確かに奴らは怯んでいる。
今はマナの言うとおり、奴らが怯んでいるうちに殺るしかない。

だが、こんどは噛みつき専門の赤色甲殻中、通称「赤蟻」がやってきた。体が大きく生命力の強い赤蟻は、黒蟻の盾となり黒蟻に攻撃のチャンスを与えた。

「くそ、作戦を立てるなんて……これほどまでに賢いのか、
この蟻どもは」
御剣は憎しみをこめて、そう吐き捨てる。
固定式レイピアが再び起動すると油断して近づいていた蟻がわずかにくたばる。

マナ達は第2陣が来る前に待ち構えていた『防衛門』に空けられた、射撃用の穴から敵を打ち続けるが、その門はもはや蟻の酸とパンドラの攻撃により限界に達していた。

(このまま第二の防衛門の向こうにいくべきか?それとも耐えるべきか?)

その際マナは一瞬だけレーダーを覗いてみた。
「84……半分も終わってないってわけね。やばいかな?」
実際は130から数が大きく増えていただけなのだが、不利な状況のせいで心理的に弱気になり、正しい判断ができていなかった。

そんな時に、名物となっている上司の声が聞こえる。


「なんだここは・・・泣きたくなるような匂いだ・・・くそっ・・・
こんな戦闘さっさと終わらせてきれ……

沼史の部下が無駄話をする上司の話を遮り高らかに宣言した。

「救援要請のあった部隊、『シェルター護衛隊・渋谷地区』に、われら『奇襲部隊ブリッツ―S』ただいま援護に入ります」



沼史 明彦(ぬまし あきひこ)大佐とその部下。
性格は壮絶な泣き上戸だが、速攻を得意とするこの奇襲部隊は非常に頼りになる。

(援軍か……ありがたい)
彼らはアサルトライフルで次々と蟻たちを血祭りに上げていく。
大佐だけはスナイパーライフルを使っている。
それでも生命力の強い赤蟻はなかなか死んではくれなかった。
奴らの残りは三十匹ほどいるだろうか?

防衛門の向こうにいて簡単に手を出せないマナ達をあきらめて、
今度こそ残りの誰かを殺そうと考えているようだ。
その『誰か』は沼史の部隊。

三枝は、奴らが後ろを向いたのを見計らい、手りゅう弾をブン投げて、向かっていった三匹をしとめる。
二つ目の迎撃兵器、固定式サンダースナイパーの起動で奴らを足止めしている間に、沼史の隊が十六匹、マナの隊はショットガンで集中攻撃をして、十匹ほどしとめる。マナは至近距離でイズナーを撃ち、2匹を巻き込んで、敵は全滅した。


攻撃が収まり全員がレーダーを見る。
近くに敵はいない。全員が胸をなでおろした。

「ありがとうございます沼史大佐。」
その場にいる迎撃にあたっていた隊員の全員が敬礼した。

「ここにいると気分が悪い・・・私は帰る。」
「すみません、そういうことなんで、私たちも・・・」
沼史の部隊はお礼を言うまもなく帰っていった。

「なんだそりゃ・・・・」
三枝が呆然として言う。
「奇襲部隊……奇帰部隊ともいえるな、あの速さは。
何にせよ死者はゼロ。感謝は尽きないよ」
御剣は額の汗をぬぐって座り込んだ。

「それにしても、沼史大佐は一体何と言おうとしたのでしょうか?」

「『こんな戦闘さっさと終わらせてきれ……』きれ、か……」
三人が考え始めたどうでもいいことは、試行錯誤のマナが結論を出した。

「『きれいな空気を吸おう』じゃない?匂いを気にしていたようだし」

「それだな」
と、二人が答える。
そんな会話を続けながら、いつの間にか過ぎていた交代時間に気づいて、三人は詰め所に戻り、一気にたまった疲れを取り除いた。



――――――――――

沼史が帰ったころケタはやっと地下シェルターの付近にいた。
地下シェルターの周囲には、シェルターを守るための頑丈壁が張り巡らされている。その壁は酸で腐食し、大きな穴が空いている。

「こちらケタ!シェルター内の状況は!?」
ケタが通信機にむかって叫ぶ。

「侵入した巨大生物の数は少数が地下をうろついているくらいですが。先ほどの救援要請はもう解除されました。」

「あら、俺はもうお役御免か?」

「いえ、でも妙なことが起こってますので・・・そちらの調査に行ってもらえると・・・」
オペレーターが困惑している。

「妙なことって?」

「隊員のいない場所で巨大生物の生体反応が途絶えてます・・・あ!また1つ消えました!」

(どういうことだ・・?)
ケタは少し迷ったが、その「異変」の場所を聞き、そこへ向かうこよにした。

地下シェルターはその地区の全民間人を収容することを目的に作られているため、その大きさはかなりのものだ。
ところどころに通路があり網目状になっている。
オペレーターの話によるとさっきのことがあって現在主要な通路以外は封鎖されているはずなのだが。
封鎖された区域で異変が起こっているという。

(とりあえず、もう急ぎの用はないのだな。さてと)
ケタは全身の汗をハンカチで拭い、携帯食として持ってきたドライマンゴーをかじり、水を飲んで、ようやく異変の起きているその場所へ向かう・・・。


通路に1人の男が立っていた。

両手にもっているのはスナイパーライフルだろうか?妙に年季が入っている。しかし、一番目をひいたのは、その男の格好だった。

ボディーアーマーも着てなければ、ヘルメットもかぶっていない。
カジュアルな服装に身を固めているので、銃さえなければそのへんにいる普通の青年にしかみえない。

その男はケタに気付くとニヒルな笑いをみせた。
ケタは自然と身構えた・・・この男の雰囲気はどこか普通じゃない、
そう感じたのだ。

だが、男に敵意はなかった。
「むこうの敵は片付いている・・行くならこの先を右だぜ・・」
そう言いライフルのマガジンを取り替え始めた。
ケタは静かに自分の通信のスイッチを切り・・銃を向けた!
男の後ろに迫っていた巨大生物の頭が無数の銃弾で打ち砕かれる!

「この先の右ってトコからきたのかな?・・・ぬお!!」
男の拳銃の銃口がケタにむいている。しかも、彼の位置は先ほどたっていた場所から数メートルは離れていた。

「借りができたかな・・・でかいくせに静かな奴らめ・・・」
「あんたこそ、いい反射神経だな・・・」

男はしばらく考えていたが、思いもよらないことを口にした。
「あんた・・・携帯電話の番号教えてくれないか??」
目を丸くしているケタにかまわず、男は続ける。
「見てのとおり俺はEDF隊員じゃない・・携帯でもなければあんたに
連絡が取れないだろ?」

やはりこいつは民間人なのか・・・。
ケタは少し迷ったが、自分の名前と携帯の番号を教える。

「OK。竹下慶治さんか・・俺の名は、そうだな「K.M」とでも読んでくれ・・・いつか借りは返すからな・・」
そういうと男は再び不敵に笑いかけ、どこかへ走り去っていった。
(オペレーターになんて言おう?まさか民間人がいたとは言えないし。ヘルメットが壊れた隊員とでも言っておくか。)

しばらくしてケタは相手の番号を聞いてなかったことに、気付いた。


―――――――――――――――――――――――――――

ケタはさっきまで激戦が繰り広げられていたであろう、シェルターに戻り、壊れかけたショットガンを修理に出し。『兵器蔵』に行き、
代わりのショットガンを手にする。
(守護霊の憑いていない物でも壊れてないだけいいだろう。)
と、自分に言い聞かしてそのショットガンを持ち出した。

携帯が鳴っている。なぜか非通知番号だが、相手は一人しかいないだろう。万が一のため、先にアサルトライフルのマガジンを取替え、通話ボタンを押す。

「慶治さんだよな?」
相手はやはりK.Mだった。

「ケタって呼んでくれ。こんなに早く電話かけてくるとは、どうかしたのか?」

「・・・今、物資運搬通路なんだが・・巨大な穴が空いている。
詳しいことはわからないが、どうも地下道へ続いてるんじゃないか?」

その言葉にケタは戦慄した。・・・が、たしかに合点がいく。
強化扉を破って侵入した、にしては巨大生物の数が多いと思っていたのだ。

「この先がもし、インセクトヒルの内部に繋がってるとしたら・・・
逆にチャンスだとは思わないか?」
K.Mの不敵そうな笑いが聞こえてくる。

「お前・・・軍の通信盗聴してるだろ・・」

インセクトヒルの名称や、存在はまだ情報規制されているのだ。

「おっと・・・んじゃ、また今度な」
そう言うと電話を切られてしまった。

やれやれ・・・こっちの通信のスイッチを切っていてよかった。
今の通信を軍に聞かれていたらちょっとやっかいになっていただろう。

だが・・とりあえずその「大穴」そして、インセクトヒルに繋がっている
可能性のことは重要だろう。
ケタは通信機のスイッチを入れた・・

―――――――――――――――――――――――――――

ケタが通信をいれてから約20分後。再び通信が入った。





「……わかりました」

EDFはインセクトヒルの破壊に当たっていた兵隊を一部、明日に穴の中に向かわせるという決定をした。その際、ケタは第7混成部隊というチームに配属が決まった。

「また、仲間を持ったのか・・・俺は・・・・」
自分は前大戦でも仲間を失い今大戦でも失った。
(シ-リウ隊長・・・俺も仲間も守っ・・・・)
持っているショットガンを見つめようとしたが、形見のものではない事を思い出し、手を止めた。

地下にいると実感がわかないが、今はもうすっかり夜だ。ケタはその日、このシェルター泊まることにした。
―――――――――――――――――――――――――――
7月9日  天候:晴れ


なんか……今日はいろいろな人に会った(−−;)疲れた・・・
あの人たちがワカを助けてくれたってんなら本当に感謝だな。
名前を知ってると、それだけで死んでほしくないって言う俺はやっぱ甘いのかな?
K.Mあいつのことは今まで噂にすら聞いたことがなかったけど、
前大戦は参加してなかったのか?それともすれ違いだったのか?
何にせよ、要注意人物には変わりないか

壊れたショットガンを明日、取りに行けるように、離れていても見守っていてください、シーリウ隊長。


[No.11508] 2007/08/12(Sun) 13:25:43
124-144-194-229.rev.home.ne.jp
三枝さんへの返信 (No.11498への返信 / 5階層) - フェアリー

> > とりあえず、思ったことがいくつか…
>
> ・かなりどうでもいいことですが、三枝=さえぐさ、です。
> 私も最初は「みえ」って読んでいました。

直しました、読めなかった……

> ・実は私、本当に癖毛なんですよ。
> 会ったことないですよね?(笑)

ないです。偶然です!!

> ・一人称どうのこうのって部分は、私が言葉遣いを変えたから付いたんでしょうか(笑)
いいえ、私のミスです。ミスしたけど敬語に慣れてないってことにすればいいかなってことです。
そのせいか影がすごく細かいところを見逃さないキャラになりました。


[No.11509] 2007/08/14(Tue) 20:34:47
124-144-194-229.rev.home.ne.jp
巨大生物の巣窟 (No.11508への返信 / 8階層) - フェアリー

―――――――――――――――――――――――――――


夕暮れ時に流れたインセクトヒル破壊のニュースは、隊員たちの士気を高揚させた。それでも明日に大仕事があると考えると手放しで喜ぶ気になれない者も、ちらほらいた。
しかしインセクトヒル破壊により動かせる人員が増えたために、少数でいくことになっていた昨日の段階よりは、いささか気分は軽い。

翌日、EDFの車が来る。車はケタの前でとまり、中には大きな荷物をかかえた隊員が5人ほどいた。
「ケタさんだね?第7混成部隊の車だ」
と、運転手の男が言う。

と、やけにテンションが高い男と、仲のいい男女。
癖っ毛の若い男、そしてもう一人は・・・

「またよろしく!」
女性隊員のうちの1人はワカ隊員だった。
今回は陸戦隊のボディアーマーをきてるので、声をかけられるまで気付かなかったのだ。

「ワカ?また会えるなんて偶然だな。」

「感動の再開もいいけど、まず車の中で自己紹介しない?」
仲のよさそうな男女の女性のほうがそういった。

「いいっすね賛成っス。」
ケタは車に乗り込んだ。走り出すまもなくテンションの高い男が口を開く。
「じゃあまずは俺から自己紹介っス。」

「あ、長くなりそうだから最後にお願いするわ。」
とケタが止める。

「じゃあまずは俺から。俺は竹下 慶治。ケタって呼んでくれ。
階級は伍長で、得意武器はショットガンだ。」

「私は酒井 若菜。ワカって呼んでください。階級は一等兵で、おもにプラズマグレネードとイズナーシリーズを使っています。」

「あれ?出世した?」と、ケタが尋ねる。

「はい、出会った時は二等兵でしたね。」
そういってワカはニコッと笑う。

「つぎ、私でいいかな。俺は三枝 光。階級は二等兵です。
アサルトライフルとスナイパーライフル、あとサブ兵装として、かんしゃく玉をよく使います。」

(ずいぶん癖っ毛な奴だな)

「俺の名前は御剣 清。俺も階級は伍長。スナイパーライフルが得意だけけど、今回は使えそうにないね……」

(クールな二枚目タイプか)

「私はマナ・ベアルグ。マナって呼んでください。わたしはこのごろはMXイクシオンとイズナー電撃銃を主に使うわね、それで、わたしの階級は少尉ね。」

(なんか見たことがあるような?赤髪の短髪がきれいだけど)

「じゃあ次はいよいよ俺ッス。俺の名前は伊地山 悟
(いちやま さとし)ッスよぉ。階級はお二方と同じ伍長、
得意武器は炸裂系の武器とアサルトライフルで、突撃が得意ッス誕生日は2月13日の水がめ座でバレンタ・・・・」

「聞いてない聞いてない。」
と、ケタが遮るがそれでも彼は止まらない。最後にしておいたのは正解だった。

「まあまあ、これからがいいところっス。バレンタインの一日違いでいっつも誕生日プレゼントはチョコになってしまうッス。血液型はA型で、いっつも『B形じゃないの!?』って言われ・・・・・・」

結局、目的地へ付くまでの数分は彼の独壇場だった。


―――――――――――――――――――――――――――
「いやぁ〜こりゃほんとでかい穴ッスねぇ〜」
大穴の前についてもこの男はテンションが高い。

「へっへっへ・・いつでもでてくるッスよぉ・・・」
先頭を歩くのはやはり一番テンションの高い伊地山隊員だ。
ウズウズしているのかしきりにアサルトライフルを握りなおしている。

「私たち大丈夫かしら・・・?」
試験の結果を待っているかのような心配の仕方をしているマナ
隊員が2番目に歩いている。」

「六人でクイーンを倒せれば・・特別報酬も夢じゃないさ。
俺は早く軍曹になりたいね。」
と、余裕からか、違うことを気にしている御剣隊員がセンター。
今回もあの新型スーツを着ている。

「そうそう、私もIRTの下っ端から早く抜け出したいですし。」
と言う三枝は4番目を歩く。

「がんばろうね」
人数が多いからか、福岡とは打って変わって楽しそうなワカ隊員とケタが最後尾で2列となり後ろを警戒しながら進んでいる。

「きつい・・・・・」
最後尾のケタは武器・弾薬および食料や包帯などを乗せたソリを引かされていた。

シェルター警備で活躍したエース(らしい)と、シェルター付近にいた隊員を第七混成部隊として編成されたらしく、幸か不幸かうるさい男にケタはカチあってしまった。ワカに会えたのは自分のうわさを聞きつけて近くまで来たからだとか。

―――――――――――――――――――――――――――
「あと5秒後にマガジン変えるから援護頼むッスよ!」
そう叫び、キッカリ五秒後に弾がなくなり一歩下がる伊地山に替わり、マナとワカが前にでて、巨大生物にむけて光学兵器の掃射を行う。

先に進むたびに巨大生物との遭遇が頻繁になってきている。
どうやらインセクトヒルに繋がっているというK.Mの予感はあたっていたらしい。

「ふう・・・こいつは大量だね・・」
何度目かの巨大生物の駆逐を終え、梶谷が息を吐く。
三枝は先制攻撃のために使う、かんしゃく玉を手に乗せた。
地中の深くを進んでいるためか、先ほどから地上との交信も反応がなく、地上との通信もあまり取れなくなっている。
精神的な疲労は地上戦とは比べ物にならない。

「まぁまぁ、もうちょっとしたらクイーンいますってば!がんばるッスよ!」
もう何度も聞いた伊地山のセリフだが、なんとなくみんなの緊張が和らぐのを感じる。

「じゃ、また巨大生物と出会ったからソリ係は伊地山ね」
巨大生物に会うごとにソリ係を交代ということで、このときは三枝にソリ係が回っていたのだ。次は伊地山の番なのだが……

「ああ急に腹が・・・・」

「調子良くなってきたのよね?」
とマナが言うと、

「そ、そうッスよぉ」
と伊地山は答えた。というか、相手が少尉では、そう答えるしかなかった。

この状況、ムードメーカーとして伊地山の存在はありがたい。
しかし、今回の伊勢山のセリフは現実となった……。

「こりゃ・・凄い・・」
ケタが思わずそうつぶやく。
ケタ達は巨大な地下ドームの入り口にいた。
地下ドームからはさまざまな方向に地下道が伸び、その1つが、シェルターに繋がっていたのだ。

それにしてもでかい地下ドームだ・・野球場くらいの大きさがある。
インセクトヒルの地下...東京の地下にこれほどの巨大な巣穴が作られていたとは・・・。

おそるおそるマナが双眼鏡を取り出し、中を見渡す。
「う・・・」
中にはかなりの数の巨大生物がうごめき、所々に巨大生物の卵らしきものがうみつけられていた。
そして、その奥にはひときわ巨大な巨大生物・・
クイーンがいたのである。
「うえ・・・・羽蟻と交尾してる・・・・」

「うらやましいっすね。俺なんてま童貞だってのに。」

「そ・・・・そうか?」
ケタも童貞であったが、奴らの見た目が見た目なため、伊地山の意見には賛成しかねた。

三枝はソリからかんしゃく玉のビンを三つ取りだしふたを開け、
攻撃の準備完了である。

クイーンを前にしてケタ達は地下ドーム手前で立ち止まっていた。
だが、次の瞬間匂いを嗅ぎつけたのか、クイーンがこちらを振り返った!

「みつかっちまった!撃つんだ!!」
ケタの合図で6人の一斉射撃が始まる!
アサルトライフル3つと電撃銃から発射される弾丸の雨がクイーンの甲殻の一部を破壊し、かんしゃく玉、ビン3杯分の爆発を受け、
苦悶の叫び声があがる。

御剣は今回持ってきた二つ目の武器、サッカーグレネード
通常タイプを放ち腹にたっぷりと爆弾をくっつける。

できればこの先制攻撃で倒したかった・・・が、それは考えが甘すぎた。クイーンはこちらに腹の先を向け、腹部を大きくへこませ・・・、
次の瞬間視界が黄色に染まった!

「く・・・な、なんだこりゃあ!?」
三枝はかんしゃく玉を投げた後、銃を構えなおしたが、敵の攻撃でターゲットを見失いトリガーを離しうろたえる。
全員のヘルメット、ボディーアーマーから白煙があがりはじめている。

「まずい!!さ・・酸の霧だ!!」
ケタはとっさに武器をショットガンに持ち替え、ありったけの中和スプレーをショットガンで打ちぬき中和液をばらまいた。

「みんな伏せて!」
ワカは小型プラズマグレネードを近くの壁に放った。
熱で霧が蒸発すると共に、爆発四散する。
しかし、伏せるのが遅れたマナが爆風をまともにくらい、
そのまま壁にたたき付けられ気絶してしまった。

酸の霧の中和と四散により、酸の霧から開放されたが、みんなのボディアーマーはボロボロに腐食してしまっている。
もし、次に吹きかけられたらとても耐えられないだろう。

「こ・・このまま・・死ねるかッス!」
伊地山がアサルトライフルを乱射しつつ、クイーンに向かって突撃していく。

そんなことをしている間に女王はもう一度攻撃態勢を取っていた

その刹那、女王の尻についた爆弾がつぎつぎ爆発を始めた。
体液がところどころからあふれ出し見ていてかわいそうにもなってくるが、それでも女王は死ななかった。

「おい!クイーンをどうにかしないとまた酸の霧が・・・!!」
御剣が叫ぶ。

「わかってる!」
持ち替えたショットガンを撃ち尽くしたケタは、倒れているマナのイズナーを拾い上げ、女王に向かって発射した。

だが、クイーンは再び、腹をゆっくりとこちらにむけだす!
(・・・もう・・だめだ!!)
ケタが絶望になりかけたそのとき・・・

ケタの背後から凄まじい銃声が響いた!

ケタの後方から放たれた弾丸は一直線にクイーンの腹の酸噴出口を狙っており、まっすぐに噴出口から体内に入り、クイーンの内臓をえぐった。
急所の中の急所を正確に突かれ、凄まじい悲鳴を上げ、
のたうちまわるクイーンの酸噴出口からは大量の体液が流れだしている。しばらくは酸の霧は出せないだろう。

「まぁ・・・ヒーローってなぁ、いいとこで来るもんだ・・な」

「・・・お前か・・」
ケタの後ろでK,Mがスナイパーライフル片手にいつもの不敵な笑みを浮かべていた。

「ううおおおおおッス!」
やっとクイーンに肉薄した伊地山のアサルトライフルがクイーンに浴びせられ、クイーンの甲殻がはじけ、体液が飛び散った。

だが、クイーンはしぶとかった。
突如地下ドームの壁を上りだし、ドームに道を開け地上へ逃げようとしている。
その間にもK・Mを含む六人は必死に道を開けようとする、取り巻きたちを落としていく、イズナーも撃ち尽くしたケタは、MXイクシオンを拾い上げて撃っていた。大音響とともに地下ドームの天井に穴が開き、クイーンがそこから地上へ逃げていった。

天井からは日の光が差し込んでくる。
「うわー高いっすねぇ。俺たちこんなに降りてきていたんスねぇ」

ケタ達にこの地下ドームの天井を上る術はない。
「撤退するぞ!あとは地上部隊に任せるんだ!!」
伊地山は不満げにクイーンがでていった天井を見上げていたが、
やがてこちらへと走ってきた・・・・



―――――――――――――――――――――――――――

クイーンとの戦闘から1時間40分後・・・。
5人は地下道を抜け、無事渋谷地下シェルターへ到着した。

「やっとついた!」
ケタが息も絶え絶えといった感じで歓喜の声を上げる。
疲れるのも無理はない、ケタは気絶したマナ隊員をかついで地下道を走っていたのだ。

「インセクトヒルは潰したし、地下も殲滅した・・これでシェルターも安全だろう」
御剣がそう呟く。

「・・・と、とりあえず車に乗ろう・・重い……」
ケタのヒザがガクガクしている。いくら小柄な女性でも人間1人と装備を担いで動くのは、かなりしんどい。

「・・・重くないもん・・・」
ふくれっつらのマナがそう言ってケタの背中から乱暴に離れる。
・・・どうやら一番嫌なタイミングで目を覚ましたらしい。

「まl、とにかく帰るッスよ!とっとと着替えたいッス!」
みんなのボディアーマーは酸で腐食し、泥で汚れ、ひどい状態だ。
伊地山の言葉に賛成で、みんないそいそと乗ってきた車に乗り込む。
「あれ?もう1人いなかったッスか?」
いつのまにかK,Mがいなくなっていた……

「いたはずだぜ……まさかトイレにでも行きたくなったか?」
御剣は冗談を言うがケタは本当の理由を知っていた。
その理由は簡単。質問されるといろいろ困るからだ。

「まあ、レディーのいる前で道端?にはできないけどね。」
御剣の冗談に乗ってマナも喋る。

「もう、下品なんだから」
ワカの下ネタの許容範囲は狭めのようだ。

そうして、地上近くに戻ったケタは車を呼ぶ。生き残ったのを喜ぶ暇もなく眠りについたのは言うまでもない。と言いたいが、伊地山は「明日一緒に飯を食おう」とかいって・・きてうるさくて……眠……………
―――――――――――――――――――――――――――
7月9日  天候:洞窟

結局、伊地山の話は本部についてみんなが起きた時に持ち込まれた。

内容は「明日の1時にみんなで食事会。」に決定

それにしても伊地山はうるさい、睡眠を妨害しているという自覚はないのだろうか?(_0_)/zzz
ワカのことはとりあえず良かった。また知り合いが増えたから心配はまた増えることになる。うれしいやら、つらいやら。

その後に修理場に寄って。このままじゃ返せないくらいサビている
素川アサルトライフルを修理に出した。それはシーリウ隊長にも一刻も早く会いたいのもあったけど。やっぱこの感触が最高L(^0^)」

―――――――――――――――――――――――――――
話の節目ごとにケタの日記を入れてみました。最初の一話目の最後や、2話・7話めにも入ってます。

更新スピード遅いけど長い目で見てください。


[No.11511] 2007/08/19(Sun) 10:06:05
124-144-194-229.rev.home.ne.jp
巨獣・ソラス (No.11511への返信 / 9階層) - フェアリー

―――――――――――――――――――――――――――
ケタ達が巣へと突入する前
EDF本部作戦室
チオカこと、市岡 隆(いちおか たかし)は苦い顔でモニターを見ていた。日本に向けて進行する「敵」が映し出されていた。

「なるほど、こいつなら東京は一気に火の海にされる、急に敵が勢いを増したと思ったらこんな隠しだまを用意していたのか。
・・・くそ、インベーダーめ。」
チオカは憎しみのこもった声でつぶやいた。

「目標、東京湾に到達。」
オペレーターの声が静かな作戦室に響いた。

「ミサイル発射準備!」
チオカが副官に命令する。

「参謀、ローズ元帥の許可は取られないのですか?」
副官がチオカに尋ねた。
通常、ミサイル攻撃その他については、使用するのにローズの許可がいる。しかしローズは過労がたたってか倒れたようで通信不能だ。

「目覚めるのを待っていたら手遅れになる、責任は私が取る。」

「しかし・・・」

「ではあれが東京に上陸するのをただ待っていて、ローズ元帥が黙っていると思うかね。」
副官が身震いする。

「た、ただちにミサイル攻撃の態勢に入ります。」
そう言って副官は出て行った。

(あんなミサイルではあれは倒せない。)
チオカはそう確信していた。もちろんパトリオットのような巨大なものならば別だが、それを海上で使えば津波が起こり、地上では大きな被害が出る。しかも奴は護衛がきっちり守ってくれるだろう。

(しかし、何もしないわけにはいかない、それに、上陸する前にわずかでもダメージを与えておかなければ。)
チオカはそう考えていた。

チオカはもう一度それを睨みつけた。
背中が少し、海面から見えているだけだが、前大戦を経験したものなら誰もがその敵生物の名を言えるだろう。

「巨獣……ソラス」
チオカは憎しみをこめてその名を口にした。


―――――――――――――――――――――――――――

特殊部隊として名をはせている、イズキこと、浅木 泉木
(あさぎ いずき)率いる隊。今回の地底進撃作戦を遂行していたのだが……

<イズキ隊長、応答願います>
地底に入ってすぐのこと、不意に無線から呼び出しがかかる。

「こちら、イズキです。どうぞ」イズキが答えると

<私だイズキ。お前達は一度、本部基地まで撤退しろ>
先程とは違い、答えたのは年配の男だった。しかし、それはイズキが知っている声・・・

「お、親父!?」イズキは再び驚く。
イズキの父親『優斗(ゆうと)』は軍の司令官の一人だ。
前大戦での功績と人望の厚さ、緻密に練られた作戦によりその地位まで上り詰めた。

「どういう事だよ?撤退って・・・奴らの巣は!?」

<巣の方は多数の隊員が向かっている。お前らなしでもきっと大丈夫だ。>

「でも・・・」
<いいから撤退しろ。ソラスが接近している。今、奴まで加われば日本の部隊は壊滅するぞ!>

優斗が怒鳴るように言う。
その言葉を聞いていたミエキの顔も強張る。

巨獣ソラス。前大戦に出現したインベーダーの生物兵器。
そんな物が今向かっている!?

「・・・分かった・・撤退する。」そう言い、彼は無線を切った。
そして、彼は撤退する前に、近くにいる負傷した兵士達にリペアスプレーαを吹きかけた。
ざっと30人程治した辺りでリペアスプレーαのエネルギーは尽きてしまった。
「取りあえずこれで俺達の役目は終わりだ。行くぞ」
イズキがそう言うと、

「了解!」と相方であるミエキこと三重春 樹雨(みえはる きさめ)
が答えた。

「急ぐぞ、ソラスと敵の巣。両方を相手にしたら壊滅だ・・。」

基地に到着するなり、イズキ達は作戦会議室に招集された。
中には10部隊程の人数が集められ、更に5人の司令官が居る。
もちろん、その中にはイズキの父親『ユウト』も居る。

「これで全員揃ったな・・・これより作戦会議を始める」
司令官の一人が言う。

「まず、作戦の説明の前に君達にはある映像を見て貰いたい。」

―――――――――――――――――――――――――――
映し出された映像は画質が荒かったが、その脅威は伝わった。

「コレは自衛隊がソラスに対して行った攻撃作戦だ。」司令官が言う。
それを聞いた各部隊はざわつく。
恐らく、自衛隊は汚名返上のための攻撃だろうが・・・
護衛機と思われる、大量のダロガ・青い雲を作るほどの数の通常型円盤・キャリアー。これでは彼らの武装で敵う相手ではない。
イズキ達はじ穴があくほどその映像を見る。

自衛隊はほぼ全ての戦力だろう。
ソラスは海上を歩行しており、岸には陸上戦車部隊、海上にはイージス艦などの戦艦部隊、空中は戦闘機で埋め尽くされている。


「これより目標への攻撃を開始する。・・・攻撃開始!」
自衛隊の司令官と思われる人物が声をあげると、攻撃が開始された。
空中と飛ぶ30機程の戦闘機からはミサイルが次々と発射され、戦艦からもミサイルが発射、岸の戦車部隊も砲撃を開始する。
第一波がソラスへ直撃しソラスの姿が爆煙に包み込まれる。

「やったか!?」一人の兵士が声をあげる。
が、煙が晴れるとソラスが姿を現す。

「何だと!ほとんど命中していない!?」

「第二波用意!・・発射!」再度の攻撃命令が下される。
今度は戦闘機から多弾頭ミサイルが放たれ、ソラスを再び攻撃する。しかし、ソラスには届かない。

「だ・・・駄目だ!届かない!」兵士が悲鳴のように言う。
すると、ソラスは前かがみになって口を開く。
それと同時に前方を炎が焼き尽くす。
海上の戦艦・岸の戦車部隊は火をあげながら壊滅し、空中の戦闘機もUFOの攻撃によって次々と落とされる。

「全軍撤退!撤退!う・・・・うわぁぁぁぁぁ・・・ザー・・・」
そこで映像は終わった。

スクリーンが戻ると、司令官の一人『優斗』が口を開く。

「見てもらった通り、ソラスは自衛隊をほぼ壊滅させた。」
まぁ、壊滅させたと言っても中立主義の日本では軍隊の力は少なく、兵器もEDFの武器に比べれば旧兵器も良い所だ。」

「現在もソラスはこの東京へ向かって進行中だ。・・・もし、君達が今の映像を見て恐怖を感じたのならこの作戦へ参加しなくても良い。そんな奴が来たって邪魔になるだけだからな。参加を拒否する者は今すぐこの部屋から出てくれ。」
優斗がそう言うが、誰も動かない。

「・・・ありがとう。君達の健闘を祈る。」
優斗は心から感謝するように言う。


「これより1時間後、基地を出発してもらう。格納庫にある武器は好きな物を使ってくれて構わない。では、全員解散。」
ユウトの横に居た司令官が用件を伝え終わると、それぞれ解散した。

「では、隊長。私達はペイル隊専用格納庫へ行きますね」ミエキが言う。陸戦兵用の格納庫とペイルウィング用の格納庫は別々となっている。

「あぁ、分かった。じゃあ、45分後ここに荷物を持って集合だ。」
イズキが命じる。
ミエキとソトエは走りながら去っていき、イズキとトドキも陸戦兵用の格納庫へ向かう。


―――――――――――――――――――――――――――

一時間と数分後。EDF本部 メディカルセンター

第51遊撃隊のメンバーは全員が負傷してここに運び込まれた。
中にはすでに多くの負傷した兵士がいたが、ここ自体が広いため、問題無く全員休養するスペースがあった。
さすがのヘリや影もドリルランチャー撃った時に体力を消耗してしまい、二人ともぐったりと横になったきり深い眠りに落ちた。
一番体力のあるこの二人がそうなのだから、他の隊員たちもすやすやと眠りについていく。

ふと許深は目を覚ました。
他の隊員たちはまだ深い眠りの中にある。
外はまだ激しい戦いが続いていたが、ここは静かだ。
そういえばソラスがここに接近してきているといってたっけ。
許深は戦況がどうなっているのか知るために無線のスイッチを入れた。

<こちらイズキ隊、ソラス撃退ミッション。出陣します>
・・・カサギのいる隊だ。
無線の向こうの隊が自分の恋人のいる隊だと知った許深は安心して無線を切った。
(あの人のいる隊なら大丈夫、だってあの人は誰よりも訓練していたもの、だから特殊部隊に認められて離れ離れになったけど、
私なんか目じゃない位の戦果上げている。そんなあの人のいる隊がソラスなんかに負けるわけがないわ。)

そう思った後、許深は少しさみしい気持ちになった。

「でもカサギ、私だって人間なの、たまには会ってほしいわ、だって、私は戦士としてだけじゃなく女としても生きたいから」

許深はそういって更衣室で着替えを始める。恋人に会いに行くだけだがおまけの「ソラス」が強烈である、許深は完全防備の準備を整えるべく、武器を取りにロッカーへと向かっていく。

「あれ、副隊長、どこへ行くのでしょうか?」
トイレから出てきた、影がロッカーに向かって歩いていく許深に声をかけた。

「特殊部隊に知り合いがいるの。もうしばらく会ってないから、
たまには会おうと思って」
その時の許深はどこか嬉しげだった。
一目見ればその知り合いがどんな人物なのかわかる。

「もしかして、・・・恋人ですか?」
許深は顔を赤くした。

「え、その・・・そんなんじゃ・・・。」
普段とは違う許深の態度に、影は少し、親しみをおぼえた。

「こんな美人をほったらかしとくなんて、ろくな男じゃないですね。」

「影隊員、あまり私をからかわないで。」
しかし許深は嬉しげだ。

「じゃあ、副隊長、恋人によろしく。」

「・・・もう。」
(命令違反の出撃・・・・バレただけでも謹慎処分でしょうね。)
影とわかれた後、彼女は軽い足取りでに向かった。
そこに悲劇が待つとも知らずに・・・・。

―――――――――――――――――――――――――――

空中に隊形を作りながら進むする飛行物体があった。
イズキ隊のバゼラートが先頭を飛び、後続を各部隊のバゼラートが続く。別にイズキ隊が指揮官ではない。ただ、速度が速いだけだ。

自衛隊も、あの後頑張ったらしく通常機・ダロガは共にゼロ、残るはキャリアー2機とソラスだけだ。

イズキが選んだ武器はハーキュリーとゴリアスSSS、
そして爆殺かんしゃく玉。
ミエキはイクシオンとレイピアだ。
「目標を確認した」イズキが無線で各部隊と本部に伝える。

<了解した。幸運を祈る・・・全機、攻撃開始!>
本部に居る司令官が攻撃命令を伝える。
各機から攻撃が浴びせられ、ソラスがひるむ。

「俺達はソラス攻撃を続行する。輸送機は他のやつ等に任せとけ」
そう言うとミエキが「了解」と返事をする。

部隊は二つに別れ、ソラス討伐と援軍討伐に別れた


「クソッ・・・」イズキは毒づきながら、扉を開ける
イズキはハーキュリーを構えて発射する。だが、いくらハーキュリーでも通常弾ではソラスの硬い皮膚を貫けない。
通用しない事が分かるとイズキは扉を閉めた。

(あの硬い皮膚をどうにかしなくちゃ無理だ・・・バゼラートの機関砲は接近しなければならないし……)
イズキが思いつめた表情で考える。
すると、無線から悲鳴が伝わってくる。

<こ、こちらセンガ攻撃部隊!奴ら新種の巨大生物だ!>

<蜘蛛だ!巨大な蜘蛛だ!!>

<こいつら糸で攻撃してくる。くそ!!離れない・・・しかもこの糸強酸を含んでやがる。>

<おい!落ち着け、取り乱すな!!>

<糸が・・・糸が・・・うわぁぁぁぁ!・・ザー>
無線元は援軍へ向かった部隊からだ。
「新型の巨大生物!?」イズキが絶句する
「蜘蛛・・?い、いやだ」虫嫌いのミエキは絶望する。

<全軍に告ぐ。現在、そちらへ援軍を向かわせられる状況ではない。何とか持ちこたえてくれ>

本部の司令官から伝えられる。

状況の分からないイズキが司令官に反論しようとしたその時だった。
「た、隊長!アレ・・・」乗員が指差す
「え・・?」イズキも呆気に取られてそちらを見る
「アレは・・・自衛隊の残存部隊!?」ミエキが驚くように言う
確かにそれは自衛隊の戦闘機だ。先のソラスとの戦闘で生き残った残存部隊だろう。
3機の戦闘機がこちらへ向かってきていた。
しかし、それらは黒い煙を上げながらいつ落ちるか分からない状態だった。
が、無線で入ってきた言葉にイズキ達は言葉を失くす。

<EDF・・・地球を守る者達よ・・・どうか、今の日本を救ってくれ>

自衛隊の戦闘機からの言葉にイズキは意思の強さを感じ取った。
そして、彼らがこれから行う事を察して顔が強張る。

<宇宙から来た化け物め!我らの命と引き換えに空へ帰れ!>
そう言うと戦闘機は空中で陣形を取りながらソラスの方へ旋回した。
「『命と』って・・・」
イズキは思わず眼をそらした。。

戦闘機は急降下しながら陣形を直線にし、ソラス目掛けて急降下した。

<うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!>無線から叫び声が聞こえてくる
それと同時に3機の戦闘機が突っ込んで・・・爆発した。

しかし、格好いいことをいいながらも、彼らはちゃっかりベイルアウトしている。

<私たちが死ぬかと思ったか?冗談だ。どうせ落ちる機体だ、
豆鉄砲しか積んでない機体など最初からこうすればよかったわ>

「……心配して損したよ」

「だね……まったく」
イズキは助かったことを喜ぶ反面少しあきれていた。
だが、ソラスはまだ立っている。しかも自衛隊がベイルアウトした場所はソラスの真正面だ。どうにかソラスの注意を引かなければ、
結局ベイルアウトをして生き残った意味がなくなってしまう。

ソラスは硬い皮膚は剥がれ落ち、肉が丸見えになっていた。

「ミエキ・・・・・こいつをやつの顔にぶっ掛けてやれ」
イズキはビンに入っていたかんしゃくだまを渡す。

「はいは〜い・・・・」
イズキやそのほかのヘリがソラスの注意を引き、ミエキが横からかんしゃく玉で眼を潰す。弱っている今だからこそこんな姑息な作戦が通じたが、いつものソラスであればこんな手段は通じない。

眼を潰したことでソラスは闇雲に炎を放つだけになった。
「各自、ロケットランチャーやスナイパーライフルで傷口を重点的に攻撃しろ」

「了解」

傷口に向けて次々と弾丸が注ぎ込まれる。
傷口を執拗に攻撃され鮮血が見る見る地面を染めていく。
それでもソラスは、音を頼りに大まかな狙いだけはつけている。

(ならば……大きな音を立てるヘリにしか向かってこないはず)
イズキはそう確信して、無線機を取り出した。

地上で攻撃の機会をうかがってウロウロしているミエキにイズキより通信が入る。

<奴は音だけを頼りに攻撃している。徒歩で敵に忍び寄り、レイピアで転ばせてやれ。>

<ぅん、了解>
ソトエは地面に降り立ち、ソラスの足元に強力なプラズマアークを放った。のた打ち回るようにして倒れ、暴れまわるソラスの背中にある傷口に、射程ギリギリの距離からレイピアの照射を続ける。
やがて力尽きて動かなくなる……

「やりましたよ、隊長」

「まだ終わっちゃいないぞ、自衛隊の三人を救出して、輸送船と蜘蛛をやっちまうぞ」

「OK。そんじゃ自衛隊と一緒に待ってるよ」
 
イズキのヘリはソラスノ死体の近くへゆっくりと向かっていった。


[No.11512] 2007/08/29(Wed) 23:09:16
125-14-185-52.rev.home.ne.jp
Re: 巨獣・ソラス (No.11512への返信 / 10階層) - フェアリー

―――――――――――――――――――――――――――
<二手に分かれてキャリアーとソラスの同時攻撃を行う>


道中でそれを聞いていた許深は考えていた。

(どうしよう、あの人の部隊を助けるべきかそれとも・・・)

悩んだ末に彼女が選んだのは、新型巨大生物と戦う方であった。

(あの人なら困っている人を見捨てはしないし、ソラスに負けるはずもない。)



新型巨大生物の見た目は巨大な蜘蛛だった。
(蜘蛛?なんて気持ち悪い。いや、そんなこと気にしちゃいけない)
奴らの見た目が「蜘蛛」というのは、大多数の人間にとって喜ばしいことではない(見た目がかわいければそれはそれで困るが)。
もちろん彼女にとっても悪報である。

「こちら許深、戦闘に参加します。」
ソラスと戦うことを見越して選んだ、思念誘導兵器ミラージュを、
巧みに操り、見方に接近して攻撃準備をとったものから、
攻撃・撃破している。

その完璧とも言える援護も、敵の膨大な物量で迫られてはどうしようもなく、徐々に味方の数は減っていく。

(やむをえない、接近戦でやるしかない。)
ペイルウイングで飛び回り、跳ね回って移動する敵の軌道を予測してサンダーボウの狙いをあらかじめ向けておき撃ち抜く。ものすごいスピードで放たれる糸は近距離では避ける手段がなく、囲まれれば死を意味する。
逃げては撃ち、撃っては逃げ、エネルギーが少なくなったら、息を潜めて待つ。
それでも目の前に蜘蛛が現れ、正確にこちらを察知して攻撃を加えてくる。敵が糸を放つ前に倒したが、驚きのあまり、心臓があり得ないほどに、激しく脈打っている。

(危なかった。こんな戦法で、どれだけ持つかも判らない。もう味方は少ないし、危険だ・・・)

ふいに無線機がなる。蜘蛛はその音を察知して、こっちにまっすぐに向かってくる。

(やばい・・・こんなときに。)
居場所がばれたと思い、すぐに物陰から飛び出すが、少し離れたところで、攻撃準備を終えていた蜘蛛の糸が2本、腕と胸にくっ付く。強酸を含んだ糸が溶け出して皮膚と一体化して取れなくなる。

(痛……このまま降りたら間違いなく殺される。そのまま飛び続けて引き剥がすしかない。)
頭の血管が切れそうなほどに歯を食いしばり、痛みに耐え、
血のべっとりついた糸が剥がれ落ちるのを確認すると、
叫び声とも取れるような奇声を上げ、攻撃を仕掛けてきた蜘蛛を撃破する。

(この状況じゃあ、いずれやられる・・・隠れなきゃ・・・)

ミラージュで民家の窓を割り、中へと入る。血の匂いで、
いずれはバレるであろうが、20秒も持てばユニットのエネルギーは回復する。そうすれば反撃は可能だ。今度は突然なりださないように、無線のスイッチも切って息を潜める。

だが、奴等は待ってはくれなかった。重みで家がきしむ音からすると三匹はいそうだ。

(飛び出して撃てば残りににやられる・・・・ならば、2匹は姿を出さずに殺るしかない。)
至近距離で糸を食らった家の壁が大きく崩れる。

(奴らに姿を見せずに攻撃するにはこれしかない)
彼女がつかんだ武器はサンダーボウ。

電撃系の武器は何かに当たると跳ね返るものと、
そこから接地面に添って進むものがある。
許深が装備しているものは後者であるが、結局はどちらであっても姿を見せずに攻撃することができる特徴がある。
だが、この狭い場所でそれを行えば自滅する可能性は高い。
許深は一か八かの策に出た。

(このまま死ぬよりはマシ・・・)
閃光は主に蜘蛛を貫いたが、その一部を許深も食らい、全身の筋肉が攣ったように、体がいうことを利かなくなる。

(もう一匹・・・耐えて・・私の体・・・・・)
また迫ってきた蜘蛛に何とかもう一度発射する。今度は幸運にも自分には当たらなかった。蜘蛛が「ボオォン」と、独特の断末魔の声を上げる。

(あと一匹で最後・・出会いがしらに決める・・・)
飛びながら家から出て最後の一匹と目が合った瞬間。相手が構えに入る前に、その体に電撃の洗礼を喰らわした。

(あたりに敵はなし……く、体が痛い……)
許深は痺れを癒すため、さっきとは違う民家に身を潜めた。


―――――――――――――――――――――――――――

しばらくして体の痙攣も収まり、近くには蜘蛛がいないことを確認すると、誘導兵器を構え、さっきと同じように遠くの味方に援護する、
無線機をオンにしてみると、ソラスを倒したいくつかの部隊が援軍に向かっていることがわかった。

(もう大丈夫かしら・・・)
蜘蛛との戦いで肉体的に、誘導兵器の連続使用で精神的に疲れていた許深はほっと息をついた。

彼らを乗せたヘリが到着し、兵隊が降下する。残ったヘリはキャリアーの撃墜に向かい、遠くへ消えていった。

彼らは圧倒的な強さで敵すべてを、瞬く間に殲滅する。
それも許深の援護あってのことだろう。


(やっとカサギに会える・・長かった。)

許深はイズキの隊に駆け寄った。

「イズキさん、それとミエキさん。お久しぶりです。」
そういって許深はお辞儀をした。

「あ。君は許深さんだったかな?あ・・・・・」
許深の聞こうとしたことを察してか、イズキの顔が暗くなる。

「どうしました?私、今日は無理してカサギに会いに来たんですよ。ちょっと死に掛けちゃいましたけど」
許深は死にかけたというのに、恋人に会えると思うと
身も心も疲れが吹っ飛んだ様子でうれしそうに話す。

(やっぱりそうか・・・こんな無茶してきたって言うのに、
かわいそうな子だ。だが、伝えねばならないか・・・・・・)
イズキは頭を深く下げ一言伝えた「済まない……」とだけ。

一瞬、許深は「理解できない」というような表情を浮かべる。

「君の恋人、笠木 純一は、すでに戦死してしまっている。」
追い打ちをかけるようなその言葉に許深はようやく状況を理解する。

「え・・・・カサギが?どうして・・・・・」

『嘘でしょ・・・・・?』という、ありきたりな言葉は出さない。
戦死することが、戦場では当たり前であること。強い物でも例外でないことは、今までの戦いで知っていたからだ。それを都合よく恋人だけは大丈夫という考え方を許深はしない。

『大丈夫だ』と思っていたのは、ただ死んでいないことを信じたかった。むしろ死んでいないことを祈っているのと変わりはなかった。

「巨大生物とダロガに囲まれ時、彼は自らおとりを買って出た。
彼が死んだのは俺の責任だ・・・本当に済まない」

そういってイズキはもう一度深く頭を下げた。イズキは自分の責任と言っているものの、許深はそうではないことは理解していた。
もし、自分が死んだらきっとヘリ隊長も同じことを言うだろう。

「彼は、何と言ってましたか・・・」
悲しみで言葉が詰まっている中で、許深やっとの思いでその言葉を出した。

「ミエキ、『あれ』をこの子に・・・・」

「カサギはこれを君に渡してくれと言って、私たちに『生き残れよ』
といって戦死したんだ」
許深は自分のものとおそろいのペンダントを渡された。


許深はそれをしばらく見つめていると、ヘリが飛び立つ準備を終えたため、ミエキが手を取って輸送ヘリに案内した。

(このペンダントは、中に物を入れられる・・・なにか入っているかな?)
許深はペンダントのふたを開けてみと、中には手紙が入っていた。


『お前にはこの手紙を見せたくなかった。
これを見ているってことは俺はもう死んでいるってことになる。

許深、俺を失っても、どうか生きる希望までは失わないでほしい。
もし見失ってしまったなら難しいかもしれないが、新しく見つけることを願っている。

生きる意味なんて言うのは、きっとどこかに転がっているはずだ。
もし見つけることが出来たなら、俺の分もそれを大事にしてやれ。

                              笠木 純一より』

許深は声を押し殺して泣きながら考えていた。

(私の生きる意味は・・・・そうだ。第51遊撃隊・・・私は彼らを失ったら、今度こそ生きる意味を見失ってしまう。)

許深はさっきの無線のことを思い出し、受信元を確認した。

(第51遊撃隊・・・私の隊だ。もしかしたら・・・危ない目に逢ってるかも知れない)

許深はレーダーで仲間の居場所を探す。どうやら本部の南にいるようだ。

「すみませんイズキさん。私ここで降ります」
許深はそう言ってヘリのドアを開ける。同時にヘリ内に嵐が巻き起こる。

「え・・・ちょっ待て」

ヘリの中に吹き荒れる嵐のせいで、イズキの制止など聞こえず、
彼女は飛び降りた。飛行ユニットから極彩色の軌跡を残し彼女はやがて消えていった。

「彼女・・・大丈夫かね?いろいろ混乱してるようだけど」

「確かに混乱してたみたいだけど。もう吹っ切れるとは、
強い子だぜ・・・・それに美人だし」

(幸せ者だったんだな・・・カサギ。お前とあの子の結婚式、
できることなら見てみたかったよ。)


―――――――――――――――――――――――――――

ビルから救出された、第51遊撃隊は一晩ゆっくり休んだのち、
シェルターに攻撃をかけようとやってきた敵部隊の掃討に当たっていた。
しかし副隊長の姿はそこにはない。


「こちら第91独立兵郡特殊部隊、南方向から本部に接近していた多脚歩行戦車と新型円盤は全滅させた、こちらは特に被害なし、以上」
無線の向こうから勝利を告げる通信が聞こえてきた。

「こちら第51遊撃隊、・・・北側から来た敵は掃討した、以上。」
貸したアサルトライフルのことが不安で不安でしょうがない須川が通信を返した。

「雑魚が、お前らみたいな特殊能力に頼りきったやからにEDFが負けるかよ」
ヘリがはき捨てるように言った。

周囲にはEDF本部を攻撃してきて、さっさと弱点を見つけられ文字通り何もできず倒された鏡面円盤。
唯一フェンナのレーザーチェーンソウとの相性の悪さが気になったが、彼女にはそれも余計なお世話だったようだ。

影のゴリアス99とフェンナの至近距離からのレーザーチェーンソウによって無残な姿になった多脚歩行戦車の残骸が散らばっている。

「それにしても副隊長どうしたんでしょうね、あの真面目な副隊長がこないなんて・・・、具合でも悪いんでしょうか。」
ダロガ2台を倒した女戦士フェンナが心配そうに言った。
彼女はもう戦闘中に仲間のことを考えられるくらいにまで成長している。ヘリは部下の成長を喜びながら、フェンナに答えた。

「まあ彼女にも色々あるんだろう、そっとしといてやれよ」

「ですがコールして来なかったことは敵前逃亡ということに……」

今度は傍らのゴリアスランチャーで鏡面円盤の半数を叩き落した佐原が意見を述べた。

(恋人に何かあったのでしょうか?)
影は朝にあったことが気になってしょうがなかった。

「そう言うなよ、なあに、彼女はまた戻ってくるさ、心配する事はない、それに敵前逃亡ぐらい、俺は1回は見逃そうって考えの心が広い隊長なんだ」

ヘリが冗談を言った時だった。
突如地面が溶け出し、地下から何かが顔を見せた。

「こいつ、女王?ちくしょう、地底に行ったやつらは皆殺しか」
それが顔を見せたという事は巨大生物による地上総攻撃が始まったということである。
が、それの姿はボロボロであった。ひきつれている巨大生物も少数で、しかも電撃兵器でつけられたようなやけどを負っている。

(・・・なるほど。地下の奴らはやってくれたみたいだな。
ならば彼らの努力を無駄にしないようにここで俺達がこいつを倒さないといけないな。)

「霧が来るぞ、隠れろ。」
前大戦でクイーンと戦ったことのある佐原が叫ぶ。
言ったとおり、クイーンは酸の霧を噴出した。
しかしそれはあまりに弱弱しい。
佐原は瓦礫の陰に、影はビルの谷間に隠れ、攻撃をやり過ごし。
遠くで見ていた須川は取り巻きに弾丸を撃ち込んだ。

ヘリは走って攻撃範囲から離脱し、フェンナは飛んで攻撃をかわし、クイーンの体に手に持った武器で攻撃する。
クイーンの体はところどころ甲殻がはげていたため、攻撃はクイーンの体を切り刻む。
しかし、クイーンは力を振り絞り、酸の霧を吹きかけてくる。
「ぐ・・、」
霧をあびたアーマーが煙を上げて溶け始めた。
見るとフェンナも同じように霧に苦しんでいる、しかも彼女のアーマーはヘリのものよりずっと薄い。
佐原も影も霧がじゃまでクイーンを見つけることができないため、
アサルトライフルもゴリアスも使えない。

「!」
閃光が一閃して、クイーンに直撃する。
一瞬、クイーンがひるんだ。霧がやむ。
遠くにいた須川だけが、その閃光を放ったものが許深であることがわかった。

「チャンス!」
一瞬の隙を突いて影のゴリアスと佐原のアサルトライフルがクイーンに向けて発射された。
クイーンはゴリアスの直撃を受け息も絶え絶えとなり
アサルトライフルで傷を深められる。
しかしそれでもまだ霧を吹こうと尾をこちらに向ける。

「・・・いい加減にしろ」
取り巻きは許深がやってくれたので、須川は残った女王をハーキュリーで貫いた。
クイーンは咆哮をあげながらひるみ、その隙に腹と胸のつなぎ目をフェンナが念入りに切り刻むと、やがて動かなくなった。
隊員達は歓声をあげて喜んだ。

隊員達が自分達を救った稲妻の発射主のほうを向く。
許深は少し青ざめた顔をしていて、左腕と胸に火傷を負っていた。

「隊長、遅くなって申し訳ありませんでした。ここに来るまでに敵との交戦がありまして」
正確には『ここに来るまで』ではなく『ここに来る前』なのだが……

「なに、つらいことがあったんだろ、今日のうちに立ち直っただけでもすごいよ。それに、すでに活躍してきたようだし……ね」

許深の傷はとても酷い。すでに誰かが応急処置を施してくれたようだが血が包帯ににじんでいる。それを見ればどこかで戦っていたのは一目瞭然だ。

「よって今回はお咎めなし。」
ヘリが陽気に言った。

「副隊長、あの・・・助けていただいて本当にありがとうございました。」
フェンナは命の恩人である許深に心からの礼を言った。

(ここには私を必要としてくれる人がいる。)
許深は恋人がそうしたように、自分も自分を必要としてくれる人のために戦う事を改めて決意した。

「ありがとう、カサギ。私の生きる意味は、この隊その物よ・・・」
許深はつぶやいた。

許深の胸のペンダント


[No.11515] 2007/09/06(Thu) 22:07:40
125-14-187-98.rev.home.ne.jp
戦士の休息 (No.11515への返信 / 11階層) - フェアリー

クイーンとの戦闘の翌朝・・・と、いうより昼。
ケタは戦闘の疲れからか、昼になろうというのに、いまだ眠っていた。

「ご飯食べにいくよ!」
ワカが耳元で大声をだし、ケタがようやく目を開ける。

(そうだった・・・明日昼食をみんなで食べるって話を地下道でしてたっけ。)
寝ぼけた顔のケタだったが、なんとか準備をすませ食堂へ向かった。

「遅いッスよ!2人が最後ッス!」
伊地山が座っている席から大声で叫び、
御剣・マナの二人は仲良く話している。

「おい・・・もう少しそっちいってくれ、俺が入れねぇ・・」
EDF隊員の制服を来たK.Mがいつのまにか後ろに立っていた。

「昨日のおいしいところもってった奴じゃないか・・やっぱ隊員だったんだな。」

「あら、知り合い?」
マナは気絶していたからK.Mのことは知らない。

「町田 海斗って、名前だ。K.Mって呼んでくれ。
階級は秘密ってことで。」


ケタはK.Mをひっぱり質問した。

「お、お前、どうしてここに!?それにその服は?それとあの名前は?」
驚いたケタが小声で質問するが、K.Mは笑いながら、

「コスプレイヤーのダチに作ってもらったんだ、パっと見じゃわからないだろう?それに、避難所の配給の飯にちょい飽きてな。名前はもちろん偽名だ」
と、なぜか自慢そうに服をひっぱってみせる。
よ〜く見るとたしかに素材が違うのがわかった。

「さー!とりあえず何か頼んでくるッスよ!」
伊地山がまた大声を張り上げ、隣の三枝が耳を押さえる。

ケタは昨日の戦いのことを考えていた。

まず、ワカのあのとっさの行動。中和スプレーをばらまくだけでは不十分だった防御をうまくサポートしてくれたのは称賛に値する。

そして、御剣。最後の最後まで取っておいた武器をクイーンの腹にぶち込んだ。あれがなかったら俺たちは全滅していただろう。

そしてマナ、見せ場がなかったが、御剣の上司だ。弱いわけはなかろう。

伊地山はとにかくうるさい。結構活躍したと思うのだがどうも印象にない。

そして三枝はかんしゃく玉の使い方がうまい。だが、
使い方はありいえないほど激しく、ソリに積んできたビン15個のうち11個も使ったぜいたくな男だ。
普通の人は2〜30粒ほど取り出して投げるが、こいつは瓶ごと投げている。ひと瓶400粒ほど入っているから、燃費が悪い。

寄せ集めのはずが大層な精鋭部隊だった。ケタは一通り考える
と楽しく話をしているみんなの話に加わった。

そして、数分後・・・

「これ・・・俺は無理だと思うぜ・・・」
K.Mがそう呟く。
ケタ達のテーブルには10数人分はあろうかという程の料理が並べられているのだ。もはや致死量といっても過言ではない。
しかし、体重制限のあるペイルウイングの二人のために鳥のささみや海藻サラダ・冷奴・こんにゃく料理を頼むなど、微妙な気遣いがある。

「なに言ってるッス!これくらいなんとかなりますって!」
注文してきた伊地山が自身満々に声を張り上げる。
「ま・・とりあえず食うだけ食ってみるか・・」
ケタが自分の小皿に料理を取ろうとした時、1人の男が食堂に入ってきた。

地下道へもぐる前に会ったヘリ隊員だ。
「ヘリじゃないか・・・飯、一緒にどうよ。食いきれそうにないから。」

「ん・・・あぁ、いいのかぃ?」
ケタが声をかけにヘリも素直に応じ、同じテーブルに腰掛ける。



1時間後。
なんとか料理も減ってきたが、もはや腹は限界だ。
伊地山はそれでも食べ続けていたが、他の人はコーヒーやデザートに切り替えている。ワカやマナはペイルウイングだというのに、
あんなに食べてもいいのだろうか?

「しっかし昨日はしんどかったなぁ……クイーンのとどめ刺してくれてありがとうな」
コーヒーに砂糖を入れつつケタが呟く。ケタはスプーンで掬うのではなく、掻き出すように砂糖を入れる。

「あ、あぁ。あの状況でクイーン撃破できたのが奇跡みたいだよな」
ヘリがその砂糖の量に驚きつつ答える。

もはや窮地にたたされている日本や各国EDFにとって、ソラスの撃破、巣の破壊はビッグニュースだった。
現状でEDFに残されている戦力は少ない・・・
が、それでもインセクトヒルを破壊し、ソラス、そして巣の破壊。
その事実は「隊員の中に凄いやつらがいる」という噂とともに、
EDF隊員の中に大いなる希望を植え付けていった。


「ここ・・座らせてもらってもいいかな?」
不意に1人の女性が声をかけてきた。サラサラの赤髪でかなりの美人だが……

ケタが誰だか思い出せずにいると、
「げ・・・元帥……」御剣がそう呟いた。

「ね、姉さん……」マナがそう囁いた。聞かなかったことにしよう。

そうか。ローズ元帥か!
私服を着て、髪をまとめているせいか、いつもの厳しい雰囲気が全くなく、みな一瞬ローズ元帥だとは気付かなかったのだ。

マナがローズと血縁関係にあることは『ベアルグ』の姓で
気づくべきだった。
K.Mも耳ざとく聞いていた。

「あ、どーぞどーぞ、飯ならまだいっぱいあるッスよ〜
マナのお姉さん」
御剣からは離れた位置にいるせいか、ただ1人状況に気付かない伊地山がローズに呑気に声をかける。
ローズは優しく微笑んで、置いてあるサラダとパンをを少しだけ皿に取った。

「みんなそう緊張するな・・せっかくの食事なんだからな」
ローズはそう言うが、EDFの最高権力者といっても過言ではない人物の前で緊張しないほうがおかしい。
伊地山にとっては「マナの姉」で、マナにとっては姉なのかもしれないが……その様子にローズは少し寂しそうな笑みを見せる。

ローズがふと眼をやると、食堂だというのにショットガンを背負っている男がいる。

(変わったやつだな……ん?なんだろう、あの銃には見覚えが)

ローズは記憶の糸を手繰り始めた。

(あれはたしかSG99・・・だが、量産品とは少し違う・・。)

SG99の試作品を扱う隊員の話をローズは2人程知っていた。
1人は前大戦に名誉の戦死をした女性隊員……そしてもう1人は……

(そうか……あれがシーリウ少尉の後を継いだケタとかいうやつか……妹もなかなか上質な仲間に出会ったようだな)

「さて、今の戦況だが」
ローズは全員を見回して唐突にしゃべりだした。

「インセクトヒルと巣が破壊されて、これでなんとか攻撃に移れる。
誰が破壊したかは、報告がきてないが、ありがたい話だよな」
そういってローズの視線がヘリにむけられる。
ヘリは口に含んでいたコーヒーを吹き出しそうになりながら、何も言わずに飲みほした。

(フェンナが言っていたちゃんと見ている人ってローズ元帥!?)

「あと、もう少しだけ無理な作戦に付き合ってくれ……
この勢いならばもうじき戦いは終わるのだから」
パンを食べ終えたローズは、もう一度ケタ達を見る。

「そうだ、地底に向かった他の者たちもクイーンを撃破した部隊はいくつか存在するが、クイーンと遭遇して全員を生還させられたのはお前らを含め2チームだけだ。お前らには昇進を考えておくよ。」
そういい残し、ローズは食堂からでていった。

(戦いは終わる・・・か・・)
ローズ元帥はそう言ったが、ケタはどうも嫌な予感がしていた。
ソラスとともに現れた蜘蛛、そして世界各地にあらわれたマザー。

(地球にいるマザーを撃破するだけで戦いは終わるのか?
もし・・マザーですら奴らの手駒に過ぎないとしたら・・・?)

「ところでさっきのマナのお姉さんは何者だったんスか?
『昇進の話』とか言っていたからきっとかなり偉い人なんすよね」
考えるケタに伊地山がそう聞いてきた・・・・・。
ケタは何を考えていたのか一気に忘れてしまった。


十数分後、ヘリに続きやってきた影の協力の下すべてを食べ終えた一行は解散していた。


―――――――――――――――――――――――――――

「そうだヘリ。借りていたもの返さなきゃな」

「壊さなかったのか?」

「ちょっと腐食したから…修理に出したよ直ってるはずだけど……
ショットガンはこの通り直っているからそっちも大丈夫だと思うよ」

昨日の時点では酸で腐食していたが、発展した修理技術で一晩で直されていた。修理場で受け取った銃は修理されただけでなく新品同様にきれいになっている。

「昨日はこのまま返したら殴られるかと思うぐらい腐食していたのに、今の修理技術はさすがだな」
ケタは一応細かいところまで目を通す。

「俺もああは言ったが大事に扱ってくれよ、須川が気になってしょうがないようだったぞ。壊したら多分泣いてただろうな」
ヘリは陽気に冗談を言う

「危ないかった〜。マジで後一発女王の酸を喰らったら壊れるところだったから」

「ま、そうなったときも、女王相手だからその銃も満足してくれるさ」

「ただし壊れたら、生き残れませんでしたよね……」

ひとしきり井戸端会議を続け、お互い話す話題もなくなった。
ケタは「あの」言葉を言おうとするがなかなか出てこない

(ああ、またこの雰囲気だ……もし、ただの仕事場ならば
『また会おう』と伝えるだけで、こんな妙な雰囲気にはならないはずなのに、軍隊ってのは難儀なもんだ……)

本当にまた会えるかどうかは、神のみぞ知ること。
確信のない『また会おう』。それを伝えるのはいつだって難しい気分になる。ためらいを振り切ってその言葉を口にする。

「じゃ、二人とも、また……生きて会おうな」
ケタは二人の眼を見て寂しげにそれを伝える。

「ええ、『生きて』ですね。わかってます。生き残らなければ明日はありませんからね」
影は微笑んでそう返した。

「『俺たちは一人も死者を出さないのが誇りだ……』
って言えるぐらい生きてみせるさ。
おう、そうだなケタ。お前の言うとおり、生きてまた会おう」

廊下の分かれ道でケタとヘリは道を違えた。ケタは一度だけ振り返って二人の後ろ姿に手を振った。

(あんないい奴らの死体はもう見たくない……だから無理難題かもしれないけれど、できる限り生きていてくれ)

ケタは前へ向きなおり、自分の部屋へと歩みを進めた。


[No.11519] 2007/10/08(Mon) 23:02:36
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