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No.113へ返信

all サイバーパンクスレ本編再録その2 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 22:53:52 [No.100]
魔術少女の憂鬱 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 22:54:28 [No.101]
Return failed 5 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:55:07 [No.102]
魔術少女は笑わない - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:56:24 [No.104]
その覚悟は・2 - キュアスノー - 2011/04/30(Sat) 22:56:53 [No.105]
ルーレット・ルート・アドベント - サン=バオ/雉鳴 舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:57:38 [No.106]
End Rank - 教祖 - 2011/04/30(Sat) 22:58:24 [No.107]
その覚悟は・終 - キュアスノー - 2011/04/30(Sat) 22:59:18 [No.108]
Return failed 6 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:59:55 [No.109]
魔術少女の消失 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:10:16 [No.110]
サン・ザ・ウィル - 雉鳴 舞子/サン=バオ - 2011/04/30(Sat) 23:11:00 [No.111]
Return failed 7 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:11:35 [No.112]
幕間―魔術少女の場合― - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:12:17 [No.113]
フォロー・ザ・サン - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 23:12:52 [No.114]
魔術少女の休息 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:13:33 [No.115]
Return failed 8 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:14:19 [No.116]
Rock you!1 - コウイチ・シマ - 2011/04/30(Sat) 23:16:47 [No.117]
依頼 - 三草・ガーデルネア - 2011/04/30(Sat) 23:17:29 [No.118]
魔術少女の暴走 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:19:32 [No.119]
イントルーダーズ - 黒須恭太郎 - 2011/04/30(Sat) 23:20:51 [No.120]


幕間―魔術少女の場合― (No.112 への返信) - イライザ・F・霧積

 カツ、と一歩踏み出した足音が響く。
 父様の部屋はどうしてこう無機質なのだろう、と思う。
 そこは魔術師の部屋というにはあまりにも機械化されすぎていて。
 父様自身こそ生身であるものの、その生活空間は上海に暮らす一般的な中産階級のそれと何ら変わるところはない。
 これでは『如月』が大きな勢力となれないのも頷ける気もする。構成員の中には、私がトップに立てと唆す者まで出る始末である。
 もっとも、そんな話は右から左である。
 組織のトップなどに興味はないし、私は父様の一番の味方であると自負している。それに、『如月』がかろうじて今の状態を維持できているのはやはり父様の手腕あってこそのものだと思う。その辺を判っていない奴が多すぎる。
 カツ、カツと何歩か歩みを進めて立ち止まる。やっぱりこの部屋は、どうにも肌に合わない。父様がいなければ来ないところだ。
 身に纏わり付く嫌悪感を払いつついつものように椅子に座り、いつものように何やら私にはよくわからないものを操作している父様に声をかける。

「お父様」

「……イライザか」

 返ってくる声もいつもの如く。
 落ち着いた、抑揚の少ない声。何を考えているのか判らない声。けれど確かに、幼いころから聞いた声。 

「先程、功刀行政特区に行ってきましたの」

「……」

「私、地図を忘れてしまって。仕方なくしばらく彷徨していたのですけど」

「……」

「そうしましたら、そこでちょっとした騒動に巻き込まれてしまいまして」

「……」

「電魎なる無機物と少し交戦しましたの。さして強敵ではございませんでしたけれども」

「……電魎」

 父様が反応を返すのは珍しい。大抵は無言に促されて私が喋り……そのまま終わりだ。
 いつから習慣付いたものかは覚えてないが、いつの頃からかそうやって暮らしてきている。
 何もおかしいと思わないし、おかしいと思われたくもない。
 これが私と父様の間での立派なコミュニケーションなのだから。

「ご存知ですか?」

「ああ……知っているよ。近頃教団の連中が何やら関わっているらしい、が……」

「教団?」

「『終焉の位階』……知っているだろう?」

「それは勿論……その教団が何を?」

 私の知る限り、教団は終末論めいた事を言いふらしながら貧民層を味方につけ肥大化してきた勢力である。
 その実態はいわゆるカルト教団兼テロリスト。流石の私もあそこの仕事を手引きした事はないが、組織としては大きな勢力であるため、情報はいくらでも転がっている。

「電魎のここ最近の頻発と、教団には関係があるという事だよ」

「……そのような話は初めて聞きました」

「イライザ。お前はもう少し情報の整理能力を身につけた方が良い。そのままでは多種多様な組織の手引きをし、内部に入り込んで書き留めた情報が全くの無駄だよ」

 父様は、私が今も大事に抱えている日誌に目をやりながらそう言った。
 そうは言っても、情報の整理などした事もないしする気にもならない。漠然と、いろいろな話を集めておけば何かの役に立つかもしれないと思っているだけで、興味があったり必要な情報は覚えているが、それ以外のものは記憶の片隅にあるかないかといったレベルである。

「イライザ」

 考えている事を読まれたか。やや厳しめの口調で名を呼ばれる。
 逆らうつもりもないので、「ごめんなさい」と謝罪すると納得したのか話を元に戻し、続けた。

「ともかく、お前が無差別に集め続けた情報を整理すると、ここ最近の教団の動きは奇妙でもある」

「そうなのですか?」

「今までは無差別に布教活動をしていたかのように見えたが、今は何か明確な目的を持って動いているように見える。」

「明確な目的とは?」

「そこまでは判らないよ。ただ、電魎らしきものが現れた際に付近で教団関係者が動いているというのは……確かなようだね。今回も、何かなかったかい」

 言われてみれば、あのガラクタを相手にしていただけにしては周囲が騒がしかったような気もする。
 よく確かめもしなかったが、教団によるテロでも起きていたのだろうか。

「……まあ教団の目的が何かは判らないけれど、十分に気をつけることだ。お前の身に何かあっては困るからね」

「……はい」

 教団と電魎……さしあたっては私には何の関係もない話だ。
 テロなど日常茶飯事だし、巻き込まれたところで逃げれば良いだけの話である。
 そう結論付けた私は、「失礼します」と頭を下げて、部屋を辞する。
 いつもより長話をしたせいか、息苦しい。こういう時は、何かしら気分転換をするに限る。
 老街にでも行くかな……と考えつつ、私は父様の家であるところの『如月』本部を出た。


[No.113] 2011/04/30(Sat) 23:12:17

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