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No.114へ返信

all サイバーパンクスレ本編再録その2 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 22:53:52 [No.100]
魔術少女の憂鬱 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 22:54:28 [No.101]
Return failed 5 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:55:07 [No.102]
魔術少女は笑わない - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:56:24 [No.104]
その覚悟は・2 - キュアスノー - 2011/04/30(Sat) 22:56:53 [No.105]
ルーレット・ルート・アドベント - サン=バオ/雉鳴 舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:57:38 [No.106]
End Rank - 教祖 - 2011/04/30(Sat) 22:58:24 [No.107]
その覚悟は・終 - キュアスノー - 2011/04/30(Sat) 22:59:18 [No.108]
Return failed 6 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:59:55 [No.109]
魔術少女の消失 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:10:16 [No.110]
サン・ザ・ウィル - 雉鳴 舞子/サン=バオ - 2011/04/30(Sat) 23:11:00 [No.111]
Return failed 7 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:11:35 [No.112]
幕間―魔術少女の場合― - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:12:17 [No.113]
フォロー・ザ・サン - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 23:12:52 [No.114]
魔術少女の休息 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:13:33 [No.115]
Return failed 8 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:14:19 [No.116]
Rock you!1 - コウイチ・シマ - 2011/04/30(Sat) 23:16:47 [No.117]
依頼 - 三草・ガーデルネア - 2011/04/30(Sat) 23:17:29 [No.118]
魔術少女の暴走 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:19:32 [No.119]
イントルーダーズ - 黒須恭太郎 - 2011/04/30(Sat) 23:20:51 [No.120]


フォロー・ザ・サン (No.113 への返信) - 咲凪

 深選は二重に驚いていた。
 一つは、この男が想像以上にウェットだった事。
 もう一つはバベルに本当にこんな男が居た事だ。

『何のつもりだ?』
「私達は彼等の情報が欲しい、そう伝えた筈です」

 深選はもう一度問う。

『何の、つもりだ?』

 男は少し、返答を考えた。



 少しだけ時を遡る。

 言われた通り、舞子とロングイヤーは逃げた。
 自分達が戦力として見込めない事はとうに理解していたし、こと戦闘という分野の判断においては舞子も深選を信用していたのだ。
 彼が逃げろという以上、それ以上の選択肢など無い。

「げぇっ!」

 そんな二人の前に、3度、この男は現れた。
 舞子は直前に深選から言われた事を思い出した。
 「バベルを甘く見るな」というフレーズが頭を過ぎる。
 その男は少し前まで見せていたポーカーフェイスも何処に行ったのやら、口を真一文字に結び、苦悩に満ちた表情をしていた。

「や、やっぱりお前、俺の口封じを狙って……!」

 見れば、物々しい銃が男の手には握られている。
 舞子はそのライフル銃の名前なぞ知らないが、この時代においても中々に長大で、取り回しには不十分に思えた。
 だが、それで良い事までは舞子は知らない。

 逃げ道を塞ぐように現れた男に、舞子とロングイヤーの足は止まったが、男は深く目を閉じて二人に歩み寄り、そして“すれ違い”その先へと進んでいった。

「えぁ……?」
「あ、の……」

 表情は苦渋に満ちていた。
 男はあえて、無駄をしてみる事にしたのだ。
 だがそれは、男の心に正直な行いであったし、男はどうしても、この生き方を試して見る必要があったのだ。

「お逃げなさい」

 それだけ言うと、男はそのまま舞子とロングイヤーを背に、足を進めて行く。

 ――――戦場へ。



 長大なライフルは、軍用ドローンに風穴を開けるには十分な威力と射程を持っていたが、難点として速射性に劣っていた。
 威力は実弾に数倍勝る“レイ・ライフル”を傭兵が実戦に利用しない理由はそこにある、射撃地点を割り出され易いという事もあり、基本対人となるスナイパーもこれを利用する者は少ない。

 だが、軍用ドローンを相手にしている場合、この限りでは無い。

 攻撃力に特化したこの狙撃銃は、装甲に重点を置いた兵器を相手にした場合のみ、価値のある武器であった。

『何のつもりだ?』

 深選は男に尋ねた。
 彼は基本的に戦闘タイプでは無い、職務も義体も、だ。
 何の意味も無く、軍用ドローンが暴れる此処に現れる者が居たら、そいつは自殺志願者以外にありえないと深選は思ったが……どうやらそういう類では無いらしい。

「私達は彼等の情報が欲しい、そう伝えた筈です」

 それも一つの事実ではあった。
 そして、彼の義体は戦闘用とは言いがたいが、まるっきり出来ないという訳では無いのだ。
 深選が察しているように、彼の職務は情報の入手だ。
 その職務の都合も手伝って、ことセンサーの類においてのみ、彼の義体は深選のそれを凌駕している。

 だからこうして、遠距離からの援護射撃という形でのみ、戦闘をする事も出来るのだが……。

『何の、つもりだ?』

 だが、深選は納得しなかった。
 会話(当然肉声は届かない、センサーが音声を拾い、再編成している)をしながらも、戦闘の手を止めなかったが、意識は若干男の方に注がれた。

 その間にもレイヴンは休まず火を吐いている。

 男はレイ・ライフルの射程を活かす為に相当離れていたが、それで危険が無いという訳では無いのだ。

 だからこそ深選は解せない。
 男の、この状況を悟り、この場に現れた状況予測能力は確かに賞賛に値するが、何故現れたのだ、そこが不条理でならない。
 男が言うように、情報が目当てならば戦闘に参加する必要など無いのだ。
 援護が全く助からない等とは思わないし、わざわざ存在を明らかにしている以上、後ろから撃たれる事を心配している訳でも無い。
 心底、意味不明だったので尋ねた言葉に、男は少し考えて、ようやく答えた。
 返答の言葉と共に飛んできたレイ・ライフルの光線が、軍用ドローンの一体に風穴を開ける。

「あの娘の発言内容から、この状況は予測される状況に含まれていました」

 レイ・ライフルは銃身が焼け付くのを防ぐ意味でも、連射は効かない。
 本来ならば冷却の時間を置くのがセオリーではあるのだが、もっと単純に射撃間の感覚を短くする方法がある。

 簡単だ、銃身を次々に交換すれば良いのだ(ただし、金が掛かるので、普通やらない)。

 その作業をしながら、男は、サン=バオという、エージェントにしてはウェットに過ぎる男は言葉を続ける。

「私は、二度もMr.ロングイヤーを見捨てたく無い」
『……』

 深選はてっきり、舞子の言葉に感化でもされたのかと思ったが、「なるほど、コイツは“本来こういうのか”」と思い直した。

 “迎合する事は出来ない”し、バベルに対する認識はおいそれと変わるものではなかったが、深選はサンを少しだけ理解した。

『判っていると思うが、お前がどういう状況でも俺はお前を助けない』
「当然です」

 男は、サン=バオは、確かめる必要があったのだ。
 自分という存在と、その存在を証明する為の生き方を、確かめる必要があったのだ。


[No.114] 2011/04/30(Sat) 23:12:52

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