サイバーパンクスレ本編再録その2 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 22:53:52 [No.100] |
└ 魔術少女の憂鬱 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 22:54:28 [No.101] |
└ Return failed 5 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:55:07 [No.102] |
└ 魔術少女は笑わない - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:56:24 [No.104] |
└ その覚悟は・2 - キュアスノー - 2011/04/30(Sat) 22:56:53 [No.105] |
└ ルーレット・ルート・アドベント - サン=バオ/雉鳴 舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:57:38 [No.106] |
└ End Rank - 教祖 - 2011/04/30(Sat) 22:58:24 [No.107] |
└ その覚悟は・終 - キュアスノー - 2011/04/30(Sat) 22:59:18 [No.108] |
└ Return failed 6 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:59:55 [No.109] |
└ 魔術少女の消失 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:10:16 [No.110] |
└ サン・ザ・ウィル - 雉鳴 舞子/サン=バオ - 2011/04/30(Sat) 23:11:00 [No.111] |
└ Return failed 7 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:11:35 [No.112] |
└ 幕間―魔術少女の場合― - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:12:17 [No.113] |
└ フォロー・ザ・サン - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 23:12:52 [No.114] |
└ 魔術少女の休息 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:13:33 [No.115] |
└ Return failed 8 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:14:19 [No.116] |
└ Rock you!1 - コウイチ・シマ - 2011/04/30(Sat) 23:16:47 [No.117] |
└ 依頼 - 三草・ガーデルネア - 2011/04/30(Sat) 23:17:29 [No.118] |
└ 魔術少女の暴走 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:19:32 [No.119] |
└ イントルーダーズ - 黒須恭太郎 - 2011/04/30(Sat) 23:20:51 [No.120] |
最後の榴弾で4機目のドローンが各坐した。 軽くなったブルベアーをその場に放り捨て、手近な路地裏に飛び込む。と同時に、機関砲の12.7mm弾が轟音と共にアスファルトを舐め尽した。 『北に30だ』 「了解」 俺が座標を呟けば、音も無く走った閃光がこちらに狙いを定めていたドローンを撃ちぬく。悪くない腕だ。 『何機潰した?』 「計6機……ですが……」 サンが口ごもる。 『どうした?』 「沈黙したはずの機体が2機、立ち上がりました」 『なに?』 非常階段を蹴り上がり、手近なビルの屋上に回りこむ。 見下ろせば、なるほど先ほど各坐したはずのドローンが火花を散らしたまま立ち上がりつつある。 中枢から炎を噴きながら、だ。 『馬鹿な……』 見覚えのあるモデルだ。よもや足の先端に制御系を移してるなどという奇抜なことは有り得まい。頭を潰してなぜ動ける? 俺の疑問に答が出る前に、ドローンは駆動系の作動音に合わせて身を震わせた。 さながら、獣のように。 『クリッターか!』 「なんですって?」 『ヤツらの使うコマだ、前にブシドー租界のストリートでやりあった』 あの時はガラクタの集合体のようなあからさまな魔法の所産だったが、なるほど物理的に結合さえしていない寄せ集めでも動かせるなら大破したドローンなど、むしろ動かしやすい依り代だろう。 粉々にして焼却すれば一先ず黙るのは実証済みだが、それにはちと手持ちの弾薬が足りない。 『サン、道を拓け』 「Mr?」 スマートリンク起動。レイヴンにアセンブル。 『埒が明かん、頭を殺る』 重力加速度と人工筋肉の躍動が命じるままに、俺の身体が宙を舞った。 ● 生身の歩兵には死神の如く恐れられる戦闘用ドローンだが、サイボーグに取ってみれば幾分か脅威度は減る。 確かにその火力は最高級の軍用義体を紙くずのように引き裂き、砲弾は命中したショックだけで心臓を麻痺させることさえままある。 だが、ヤツらは遅い。 脳みそが無く、精神が無く、魂が無い『兵器』に、『兵士』と同じだけの反応速度を付与することは、さしもの先端技術でもまだ未到達の領域だ。 装甲を蹴り飛ばし、銃弾の雨を潜り抜け、前へ、前へ! 間抜けに見送るカメラアイに行きがけの駄賃とばかりに弾丸を叩き込み、さらに前へ! 『見えた』 視界の中心に現れた点は、サイバーリムに力を込めると同時にあっという間にローブを纏った人影という立体と化す。 「まぁ、迅い」 緊張感のカケラもない間延びした声。 構わず俺は引き金を引いた。 一撃目で頭部の右半分が吹き飛ぶ。 「あら、お兄様。もうお休みの時か」 続けて発射した弾丸は、頭蓋に弾かれて喉を貫き潰した。硬い。人工物か。 マガジン捨て、強装弾に変更。スマートリンク調整。 『死ね』 今度こそ、サイボーグの頭が砕けて散った。 ● 楽観はしていなかったが、コントロールを失ったドローンたちは……否、ドローンかどうかも最早怪しいが……その活動を止めることなく、無差別な破壊活動を始めた。 長居は無用だ。俺は踵を返した。 「どちらへ?」 『後はそっちの仕事だ。ツレを追う』 この暴走ドローンどもを片付ける義理はないし、そもそもやれと言われても不可能だ。 これだけ派手に暴れれば企業警察も押っ取り刀で駆けつけるだろうし、任せても構うまい。そして、その総元締めはコイツら……バベルなのだ。 とはいえ、忠告の一つぐらいは責任を持ってもいいだろう。 『おまわりじゃ無駄死にするだけだ。呼ぶなら企業軍か魔法使いにしておけ』 「Mr.深選」 今度こそ立ち去ろうとする俺を、サンは呼び止めた。 数瞬の逡巡の後、もう一度だけ先刻と同じ質問をする。 「事情は、話してもらえませんか」 少々、予想外だった。答が変わるはずもあるまいに。 『お前らは信用ならん。 いや……逆に聞こう。お前はバベルを信用できるのか?』 サンは押し黙った。 ストリートは過酷だが、企業は冷酷だ。ウェットなヤツが、いや人間が生きるにはより厳しい場所。 だからこそ、一部の例外を除き誰もが企業に傅いて、いつかは限界を感じストリートに身を落とすのだ。 俺も、例外ではなかった。 サンは長い沈黙の後、一つだけ付け加えた。 「あの、お嬢さんを。悪いようにはしないでください」 ……つまるところ、そういうことか。 繰言になる取引も、つまりはマイコが心配するがゆえのこと。 俺はだいぶ呆れて、だが一つだけ応えてやった。 『アイツの命は、俺が620新円かけて拾ってやった命だ』 安くは無い。毎日、ゴミクズのように人が死んでいくこの街では。 『誰かに奪られるのは、俺だって業腹だ』 [No.116] 2011/04/30(Sat) 23:14:19 |