サイバーパンクスレ本編再録その3 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 23:21:51 [No.121] |
└ ハード・ボイルド・ブルース - アル=シャーユィ - 2011/04/30(Sat) 23:22:30 [No.122] |
└ Rock you!2 - コウイチ・シマ - 2011/04/30(Sat) 23:23:18 [No.123] |
└ 一次終息 - 黒須京 - 2011/04/30(Sat) 23:24:16 [No.124] |
└ リターン・トゥ・ナイト - 雉鳴 舞子 - 2011/04/30(Sat) 23:25:07 [No.125] |
└ Return failed 9 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:25:40 [No.126] |
└ 魔術少女の思考 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:26:27 [No.127] |
└ トゥルー・トゥ・レディ - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 23:27:28 [No.128] |
└ いくさば - 三草・ガーデルネア - 2011/04/30(Sat) 23:28:21 [No.129] |
└ Rock you!3 - コウイチ・シマ - 2011/04/30(Sat) 23:29:56 [No.130] |
└ 戦場跡にて - シア&カルデア - 2011/04/30(Sat) 23:30:43 [No.131] |
└ Return failed 10 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:31:12 [No.132] |
└ ダーク・イル・ウィル - アル=シャーユィ - 2011/04/30(Sat) 23:32:19 [No.133] |
└ 血塗れの魔剣中隊 - スレイヤー大尉 - 2011/04/30(Sat) 23:32:59 [No.134] |
└ 魔術少女の決意 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:33:48 [No.135] |
└ 移動 - 三草・ガーデルネア - 2011/04/30(Sat) 23:34:47 [No.136] |
└ 交わる線 - 上山小雪 - 2011/04/30(Sat) 23:35:36 [No.137] |
└ Return failed 11 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:36:09 [No.138] |
└ 魔術少女の交渉 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:36:46 [No.139] |
└ マジック・アンド・エージェント - アル=シャーユィ - 2011/04/30(Sat) 23:37:35 [No.140] |
└ バベル・エンゼル・ボイス - 雉鳴 舞子 - 2011/04/30(Sat) 23:38:31 [No.141] |
元凶とは言わない。 だが、全ての結び目はこの男に繋がっていたのだ。 『これを言うのは何度目かもわからんが、ドク』 「ん?」 『ビズは選べ』 ドクを救った少女二人とロングイヤーを診療所に残らせ、俺はシェルターの作業室で、マイコをドクに診せることにした。 全てを説明してもらうために、だ。 ドクは特に拒むことなく、全ての顛末を話した。 教団……カルト『終焉の位階』の短期的目的は、あらゆる物質を分解し増殖するナノマシン兵器『ベヘモス』による脅迫・あるいは無差別破壊テロの実行。 そして教団の依頼でそのベヘモスを開発したのは、他ならぬ、このドクだったのだ。 「……ってことは、全部あなたが元凶なんじゃない!」 いつものことだし暖簾に腕押しなので俺はやめておいたのだが、案の定、マイコがドクに食って掛かる。 「No、No、待ってくれシンデレラ。 あのイカレ教祖にチェーンソー突きつけられて命令されてみろ、俺みたいなひょろいモヤシに抵抗できるわけないだろ?」 実際脅されたのかは解らないが、一応納得したのかマイコはむうと唸って手を離す。 まぁ、十中八九、技術的好奇心だけで請けたと思うのだが話をこじらせてもなんなので黙っておく。 「で、な。深選。このシンデレラを俺に預けろよ」 マイコはあからさまな動揺こそ見せなかったが、表情を硬くした。 『ベヘモスの中和に使う気か』 「病気だって治さなきゃならんだろ? ナノブレイカーはあのイカレ教祖への切り札にもなる。悪くない取引だぜ?」 教団は、潰さなければなるまい。この街に住む限り奴らの計画は他人事ではないし、既に目はつけられただろう。宗教狂いに四六時中狙われるような状況がいつまでも続いては流石の俺も参る。 奴らと戦うならば、そして企みを阻止せんとするならば、ナノブレイカーは確かに有用だ。 だが、そんなものより重要なモノはある。 『マイコの病気の治療はしてもらおう。余裕のある状況ではないが、そのぐらいの時間は護りきれる』 ガンの一種と言っていたが、この時代、それにドクの腕ならば腫瘍の切除に2時間はかかるまい。 「おうとも。じゃあついでにベヘモスを投与してナノブレイカーに……」 熱を帯びて続けようとするドクに、手を出して制した。 『ドク。ナノブレイカーは取り出せないのか?』 「それは、無理だ。 寄生虫だからな。宿主から切り離されればすぐに死ぬ」 『では、ベヘモスの投与は無しだ』 「な、なんで?」 ドクは眉を跳ね上げた。 『ベヘモスが中和できなければマイコは死ぬ』 「で、でもよ。ベヘモスほどのナノマシンの活動を抑制できりゃ、あのイカレへの効果もだいぶ保証され……」 よく回る舌で朗弁するドクに、俺は飽くまで首を振った。 『必要ない。マイコの命に危険が及ぶ選択は許さん』 断じると、ドクは怪訝そうな顔をした。いや、ドクだけでなく、マイコまで変なモノを見る目で見ている。 ……失敬な。 「ヤケに拘るじゃねえか、620新円の命に」 『620新円の“身柄”だ。 命に値段はつかん。』 命は、生きているという事実は、尊い。 命を的にして生きるから、命を奪い合って生きているからこそそれは絶対のロウだ。 『自分が拾った命に死なれるのは、不本意だ』 そう言うと、ドクはそれ以上反論はしなかった。 「じゃ、どうするんだよナノブレイカーは」 『必要ない』 そして、必要としてはならない。 俺はこの渾沌の時代の武芸者だ。武力に人生の全てを注力し、敵を打ち倒すことを仕事にしている。 『俺はサムライだ。 敵を倒すのに蟲ケラの力なぞ借りない』 ● 「では、協力していただけるということで宜しいのですね?」 ミヤコの問いに、俺は頷いた。 『これは俺のビズでもある。 ロハでいい。お互いに利用しよう、といったところだ』 「よくわかんないけど、一緒に戦うってことでいいんでしょ? よろしく、おじさん」 『……深選だ』 あのクリッター……デンリョウ、と言ったか。あれへの対処は俺だとどうにも金がかかるし、このソーサリーの少女二名との共闘は、正直ありがたい。 「旦那ぁ、あっしは……」 『マイコとここで待っていろ。 もうここに襲撃はない』 攻勢に出る俺たちが負けるまでは、だが。 おずおずと申し出たロングイヤーは救われたような顔を……表情はわからないが……した。が、マイコはそれに構わず一歩前に出た。 「一緒に行くわ」 『マイコ』 「足手まといには……なるかもしれないけど。 私にはナノブレイカーがあるから」 切り札になる、と言いたいらしい。 『必要ないと言った』 「貴方は必要としないでいい。 これは、私が使うから」 マイコは胸に。 ナノブレイカーが巣食う己の身体に手を当て、決然と言った。 「これは、私の武器よ」 [No.126] 2011/04/30(Sat) 23:25:40 |