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No.128へ返信

all サイバーパンクスレ本編再録その3 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 23:21:51 [No.121]
ハード・ボイルド・ブルース - アル=シャーユィ - 2011/04/30(Sat) 23:22:30 [No.122]
Rock you!2 - コウイチ・シマ - 2011/04/30(Sat) 23:23:18 [No.123]
一次終息 - 黒須京 - 2011/04/30(Sat) 23:24:16 [No.124]
リターン・トゥ・ナイト - 雉鳴 舞子 - 2011/04/30(Sat) 23:25:07 [No.125]
Return failed 9 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:25:40 [No.126]
魔術少女の思考 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:26:27 [No.127]
トゥルー・トゥ・レディ - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 23:27:28 [No.128]
いくさば - 三草・ガーデルネア - 2011/04/30(Sat) 23:28:21 [No.129]
Rock you!3 - コウイチ・シマ - 2011/04/30(Sat) 23:29:56 [No.130]
戦場跡にて - シア&カルデア - 2011/04/30(Sat) 23:30:43 [No.131]
Return failed 10 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:31:12 [No.132]
ダーク・イル・ウィル - アル=シャーユィ - 2011/04/30(Sat) 23:32:19 [No.133]
血塗れの魔剣中隊 - スレイヤー大尉 - 2011/04/30(Sat) 23:32:59 [No.134]
魔術少女の決意 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:33:48 [No.135]
移動 - 三草・ガーデルネア - 2011/04/30(Sat) 23:34:47 [No.136]
交わる線 - 上山小雪 - 2011/04/30(Sat) 23:35:36 [No.137]
Return failed 11 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:36:09 [No.138]
魔術少女の交渉 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:36:46 [No.139]
マジック・アンド・エージェント - アル=シャーユィ - 2011/04/30(Sat) 23:37:35 [No.140]
バベル・エンゼル・ボイス - 雉鳴 舞子 - 2011/04/30(Sat) 23:38:31 [No.141]


トゥルー・トゥ・レディ (No.127 への返信) - 咲凪

「あぁ、行く前に……ちょっと良いか?」

 愛煙している銘柄の煙草に火を付けながら、ドクは深選を呼び止めた。
 彼が手招きをして呼ぶ時は、大抵が秘密の話をする時だ。
 矢継ぎ早の事態の中で、どうせ舞子にも休憩が必要だった所だ、術後間も無い事もあり、彼女の身体の事を思えば、少し間を置く事も必要な選択だった。

『なんだ?』
「いや、ちょっとな、お前に驚かされるとは思わなかったから、少し教えてやろうと思ってな」
『教える?』

 前述の通り、ドクは秘密の話をしようとしていたので、深選は舞子達を別室で休ませていた。
 小雪に京という少女に出会った事は、舞子にとっては僥倖な事だったかもしれない、と深選は思う。
 年頃の近い同性が居る方が舞子の張り詰めた気も幾分和らぐだろうと思う、和らぐ事が全て良いとは思っていないが、張り詰めすぎる事も良くなかったのだ。
 ……閑話休題。

「あぁ……しかしまぁ、あのシンデレラ、アレも幸運な話だ、知ってるだろ、コールドスリープされた人間が目覚める確立は、実は随分低い」
『あぁ、……幸運という点では、マイコは相当のものだろうな』

 実際、大した幸運だと頭の中で深選は続ける。
 舞子にも直接伝えたように、コールドスリープされた人間が目覚めるケースは深選にとっては初めての事だった。
 大抵は装置が機能不全を起こして中身が腐ってしまうか、ギャングに見つり、そのままバラされて売られるかだ。
 そういう意味では舞子は類稀なる幸運の持ち主であったし、一瞬だけ、“天使か何か”が憑いてるのかもしれない、などというジョークが深選の脳裏を過ぎる、が。

「脳がな、駄目になるんだ」
『……何?』
「脳だけじゃない、身体のあちこち駄目になるが、まぁ特に脳が駄目になるんだよ」

 何の事だ、と深選は問わなかった、舞子の事に決まっている。

「当たり前の話だが、脳っていうのはデリケートでな、コールドスリープ装置が万事完全でも、眠っている間に脳が死んじまうって事が……まぁ多いんだよ」

 “どの程度多い”のか、ドクはあえて口にしない。
 そんな事は判りきっている、深選もドクも、冷凍催眠から無事目覚めたというケースは“初めて”なのだ。

『だが、マイコは目覚めている』
「……あぁ」
『何が言いたい』

 ドクはすぅっ煙草を吸い、ふぅ、とため息に混ぜるようにして紫煙を吐いた。

「なぁ深選、生きてるっていうのはどう判断してる?」
『言葉遊びなら止せ』
「そうじゃない、まぁ聞け……例えば、心臓は動いているけど、脳が死んじまった患者は生きている、と言えるのか?」
『そんなものは人によって受け取り方は変わる、個人の意見に意味は無い』
「そうだな……続けるが、脳が……好まない言い方だが、心さえ生きていれば、その患者は生きている、と言えるのか?」

 脳というのは肉体の一部に過ぎない、が、脳というモノがその人物の精神性を定めていると言っても良い。
 ドクはこう言っているのだ、“肉体”と“精神”が伴ってこそ、人間が生きるという事ではないのか?、と。

『言いたい事は判った、だが何故今、そんな話をする?』
「なんだよ、もう判っているだろ」
『……何がだ』
「アレの事だ、聞けば聞くほど不気味な話だよ、コールドスリープから目覚めた直後に自分の足で出歩いた?、それで記憶障害も起こしてなければ、言語障害も起こしてない……深選、あの子に食事は与えているか?」
『固形物は食べられないと思った……水分を少々なら』
「なるほどな、術後の事だがアレは“ご飯が食べたい”と言った、長らく動いてなかった消化器官がもう活性化し始めてやがる、これがどれだけ不自然な事か判るだろう?」

 ドクは研究者だ、闇医者をやっているが、考え方は研究者のそれを持っている。
 だから、何の躊躇も無く言える。

「雉鳴舞子だなんて人間は、最初から……いや、少なくともかつては居たんだろうな、だが今は“居ない”」
『では……』

 あの雉鳴舞子は、何者なのか。
 決まっている、判りきっている、あれが雉鳴舞子という人間で無いのならば、答えは一つしか、無い。

「深選、俺には武芸者の矜持ってのは判らんが……アレを使おうと思ったら迷うな、ベヘモスを作っておいて言うのもどうかと思うが、俺は人間専門の医者なんだ」


[No.128] 2011/04/30(Sat) 23:27:28

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