スチームパンクスレ再録 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:39:13 [No.5] |
└ File:1 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:40:42 [No.6] |
└ クレメンティーナは眠らない1 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:41:47 [No.7] |
└ クレメンティーナは眠らない2 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:42:47 [No.8] |
└ 帝都迷宮案内1 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:43:30 [No.9] |
└ 帝都迷宮案内2 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:44:55 [No.11] |
└ 博士と助手と人形と1 - 桐瀬 - 2011/04/24(Sun) 12:45:50 [No.12] |
└ 清水自動人形工房 - ジョニー - 2011/04/24(Sun) 12:46:52 [No.13] |
└ ジャックが笑う1 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:47:30 [No.14] |
└ クレメンティーナは眠らない3 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:49:11 [No.15] |
└ ジャックが笑う2 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:49:53 [No.16] |
└ ジャックが笑う3 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:50:26 [No.17] |
└ 博士と助手と人形と2 - 桐瀬 - 2011/04/24(Sun) 12:51:12 [No.18] |
└ 赤の退魔剣士 - ありくい - 2011/04/24(Sun) 12:52:26 [No.19] |
└ ジャック狩り1 - ジョニー - 2011/04/24(Sun) 12:53:07 [No.20] |
└ 人形夜会1 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 12:53:43 [No.21] |
└ ただの趣味だと彼は言った - 咲凪 - 2011/04/24(Sun) 12:54:23 [No.22] |
痛む身体に鞭を打ち、地面に倒れた身体を必死に起こそうとする。 すると、視界に信じられない。信じたくない光景が目に映る。 無残に破壊された自動人形。 彼女の要望に答えて、それぞれ機能を特化させた戦闘用のソレら。 馬力最優先でその力を活かして強力な武器を扱い敵を圧倒してきた「赤」。速度最優先で常に動き回り敵を翻弄してきた「青」。防御最優先で敵の攻撃を悉く受け止めてきた「緑」。 そんな彼女と共に戦いぬいて来た彼らが無残な屍となって転がっている。 「赤」と「青」は胴体がバラバラになっていて一目見ただけで、もう修復は不可能だとわかる。その装甲が幸いしてか四肢が激しく破損してものの「緑」だけは比較的原型を止めている、階差機関が無事ならばあるいは「緑」だけは助かるかもしれない。 そして、意識的に視界に入れないようにしていた彼女に目を向ける。 知己は己の知識を呪った。 清水知己は人形師である。階差機関の知識は深く、人形師の多くがそうであるように魔法使いも兼ねている。それだけに留まらず、そこらの医者に負けない程の医学的知識を持っている。 故に分かる。彼女は、樋口綾はもう助からないと。 自分がどんなに手を尽くしても2〜3日の延命が限界。おそらく名医と呼ばれる者に見せてもそれよりもほんの数日余命を伸ばすのが精一杯だろう。 彼女の傷はそれだけ深い。 一蹴された。 彼女と自分が作り上げた3体の自動人形。彼女達は陸軍の一部隊とさえ互角に戦う事が出来る。それだけの実力があった。 だが、結果はどうか。 自分の制作した自慢の自動人形は大破、彼女は瀕死の重傷。自分とて決して無視はできないダメージを負った。 それをなした奴はもういない。軍に依頼されて自分が作った軍用自動人形、試運転で陸軍の演習場の地形を変えたと一時期非常に軍関係者が騒がしくなった原因、整備の為に戻って来たその自動人形一体を奪って目的は果たしたとばかりに去っていった。 いや、奴のことも奪われた自動人形のことも今はどうでもいい。 無理だと理解しながらも、彼女を救う方法を必死に考える。 彼女のいないこれからなど想像したくもない、ずっと同じ時を共に過ごして、あそこから此処まで這いあがって来たのだ。 このまま諦めるなどあってはならない。 ふと頭にある方法が浮かぶ。 馬鹿な、何を考えているんだ、俺は。と、その考えを振り払う。 だが、それしか方法は―― ありえない。アレは確かに理論上は確立されている。だが、いまだ誰も成功させた者はいない。少なくも自分が知る限りではゼロだ。 自分が治療しても無理だ。名医に駆け込んでも助からない。それならば―― 仮に成功しても、彼女がどうなるかわからない。その工程上、彼女はそこで一度死ぬのだ。俺が綾を殺す?馬鹿な。 彼女の咳き込む音が聞こえる。 症状から肺ではないだろうが、どこか内蔵をやられたのか、血混じりの咳だった。 時間は、あまりない―― 彼女の目がうっすらと開き、こっちをその視界に納めた。 命に別状はない俺の姿に安心したように口元に薄く笑みを浮かべる。 そして、小さく声を紡いだ。 そして、俺は最大の過ちを犯した――― ● パコンと、頭を叩かれて目を覚ます。 見上げれば、もう既に見慣れたサヤの表情が薄いながらも呆れが感じられる顔。 「んぁ……なにか?」 「なにか、ではなく。知己兄さん、店番で居眠りはやめろと何度言えば」 さて何度目だっただろうかと、一瞬考えるが、すぐに数えるだけ無駄だと悟る。 「いいじゃないか、別に客もこないんだし」 「いえ、お客がいま来てます」 「へ?」 言われて入口の方に目を向ければ、そこには確かに人がいた。 珍しいと思ったが、ふと気付く。 40代ほどの如何にも現場叩き上げという雰囲気の都市警察の制服を着た男性は客と言っていいのだろかと首をかしげる。 「あー、いらっしゃい。清水自動人形工房に何か御用で?」 [No.13] 2011/04/24(Sun) 12:46:52 |