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No.148へ返信

all サイバーパンクスレ本編再録その4 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 23:38:51 [No.142]
Rock you!4 - コウイチ・シマ - 2011/04/30(Sat) 23:39:29 [No.143]
魔術少女の契約 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:40:04 [No.144]
受領 - 三草・ガーデルネア - 2011/04/30(Sat) 23:42:09 [No.145]
Horizon End - アズミ - 2011/04/30(Sat) 23:43:00 [No.146]
ダーク・ホライゾン・エンド - 雉鳴 舞子 - 2011/04/30(Sat) 23:43:37 [No.147]
魔術少女の支度 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:44:29 [No.148]
Rock you!5 - コウイチ・シマ - 2011/04/30(Sat) 23:45:20 [No.149]
下拵え - 三草・ガーデルネア - 2011/04/30(Sat) 23:46:05 [No.150]
Return failed 13 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 23:47:19 [No.151]
その覚悟は・3 - 上山小雪 - 2011/04/30(Sat) 23:48:54 [No.152]
魔術少女の独白 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:49:41 [No.153]
Horizon End2 - 深選/コウイチ - 2011/04/30(Sat) 23:50:23 [No.154]
イントルーダーズ2 - 黒須恭太郎 - 2011/04/30(Sat) 23:50:57 [No.155]
Horizon End3 - アズミ - 2011/04/30(Sat) 23:52:03 [No.156]
魔術少女の決闘 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:52:50 [No.157]
その覚悟は・4 - 上山小雪 - 2011/04/30(Sat) 23:53:19 [No.158]
ジ・スターリー・レフト - ナノブレイカー - 2011/04/30(Sat) 23:53:51 [No.159]
激闘 - 三草・ガーデルネア - 2011/04/30(Sat) 23:54:42 [No.160]
Horizon End3 - アズミ - 2011/04/30(Sat) 23:55:25 [No.161]
その覚悟は・5 - 上山小雪 - 2011/04/30(Sat) 23:57:11 [No.162]
その覚悟と終わり - 上山小雪 - 2011/04/30(Sat) 23:58:02 [No.163]


魔術少女の支度 (No.147 への返信) - イライザ・F・霧積

 コウイチ、探偵とは時間と場所を決めて一旦別れた。
 それぞれがそれぞれの準備があるだろうし、逃げる猶予でもある。
 敵の本拠があるという上海北東部。私でも足を踏み入れた事の無いそこは、普通の神経を持っていれば入ろうとすら思わない。
 過去の大戦争の余波は、かつてバミューダの海底にも存在していた異空間を人為的に地上へと作り出した。
 そう。異空間だ。空気は澱み、生命は絶え、磁場は狂い、計器類は勿論の事、下手な者は魔術一つまともに行使できない自然の摂理から外れた地。
 行きたくないと言ったとて誰も責めはしないだろう。そういう場所だ。

 無論、私にはそんなつもりなどない。
 自身から飛び込んだ事態から逃げ出すほど臆病者でも無責任でも無い。
 しかし、あそこに乗り込むとなるとそれ相応の準備が必要である。だから、私は再び如月の本部に来ていた。

「イライザ様!今までどちらに……」

 本部に入ると同時に、いつものお目付け役が声を掛けてくる。この様子だと大分探したらしい。喫茶店の方はちゃんと処理をしてくれたのだろうか。

「足を用意して」

「は?」

「メルセデスでもワーゲンでもいいから。電脳制御のされてない、駆動系に魔術も使ってない旧世代の車両を一つ。」

「そ、そのようなものを何に……」

「後で私の家に回してくれればいいから。ヨロシク」

 言うだけ言って私はその場を後にする。足の確保は出来た。後は……


〜〜〜

「お父様」

 言いながら無機質な部屋に足を踏み入れる。
 今日は一段と息苦しい。疲労がたまっているせいか。無理もない話だと思う。

「……イライザか」

「『フランチェスカ』は今日を最後に帰ってこないかもしれません。それをお伝えしに」

「……そうか」

 父様はいつものように迎える。それでいい。何があっても変わらない父様であってほしいと思う。

「その場合は、手筈通りに」

「判っているよ」

 『如月の後継者』がいなくなったとなれば少なくとも如月自体にとっては大事である。最悪の場合、組織が分裂する可能性だってあり得る。
 だから、そうならない為にも処置を取らなければならない。
 例えば死亡を隠匿する。組織を改編する。あるいは……『代り』を用意する。
 父様がどういう措置を取るつもりかは判らない。けれど、その為の準備は常にしていただろう。
 だからこそ、私が勝手な行動を取るのも黙認されてきたのだろうし。

「……今日は、それだけです。行って参ります」

「イライザ」

「はい」

 踵を返して部屋を退出しようとした私を父様が呼び止める。珍しい事だ。

「『私の』後継者はお前だけだ。
それは覚えておきなさい」

「……はい」

 父様の言葉を胸に刻んで、私は部屋を出た。


〜〜〜

 家に帰った私は必要なものを揃えた。
 符や杖などの各種術具は勿論の事、ローブも丈夫なものを引っ張りだしてくる。
 かの地に入った事は無いが、文献資料を見る限りだと何の補助もなしに正常に魔術が行使できる環境だとは考えない方がいいだろう。
 私自身で用意できる術具は粗方手元にある。後は自身の腕で何とかするしかない。

「……一応これも持ってくか」

 透明な液体の入った試験管型の容器もローブのポケットにつっこむ。
 大分前に自身で調合した薬品だが、未だ使用した事は無い。
 成分としてはかつては幻覚剤などに使われた麻薬に近いが、要はドーピング剤の一種で飲めば例え消耗した状態からでも安定して高い魔力を発揮できるようになる……はずであるが、使用した素材から考えて副作用や反動が酷い事になりそうなので使ってなかったのだ。
 そもそもが身体を酷使する薬ではあるので使わないに越したことは無いのだが。持っていって損は無いだろう。

「さて……」

 時計を見る。もうそろそろ時間である。
 ローブの前をしっかりと止め、杖を抱えて部屋を出る。

「幕引きのお仕事といきましょうか」


[No.148] 2011/04/30(Sat) 23:44:29

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