サイバーパンクスレ本編再録その5 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 23:58:36 [No.164] |
└ 魔術少女の後日談 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 23:59:07 [No.165] |
└ ..and Rock you! - コウイチ・シマ - 2011/04/30(Sat) 23:59:48 [No.166] |
└ 明日よ続け - 上山小雪 - 2011/05/01(Sun) 00:00:35 [No.167] |
└ 探偵 - 三草・ガーデルネア - 2011/05/01(Sun) 00:01:17 [No.168] |
└ アンダー・ザ・ムーンライト#1 - 咲凪 - 2011/05/01(Sun) 00:02:03 [No.169] |
└ アンダー・ザ・ムーンライト#2 - 咲凪 - 2011/05/01(Sun) 00:02:45 [No.170] |
「よし、10分休憩ー」 夕日がグラウンドを赤く染め上げる放課後、私はいつものように部活に励んでいた。 今までとまるで変わらないその生活は、あの事件が、何か遠い夢だったのではないかと錯覚さえさせる。 「お疲れ様です。小雪」 でも、そんな中でも変わることがあれば、前に進むものもある。新しく入部したマネージャーが差し出してくれたタオルを、私は受け取る。 「サンキュー、京。最近暑くなってきたから、汗が出まくりだよ」 遠慮なく顔をうずめたタオルからは、ふんわりと良い匂いがただよい、練習の疲労を癒してくれる。 「ねえねえ知ってる? この前のライブの時さ、終わった後、コウイチさんとイライザさんがご飯食べに行ったんだって。二人っきりで!」 「それは中々興味深い話ですね。丁度大会と重ならなければ私達も行けたのですが」 広いグラウンドでは、男子サッカー部、野球部、ソフトボール部……たくさんの生徒達が汗を流していた。ちょっとだけ自慢させてもらえれば、私達が命を救った生徒達が。 「あの二人ってさー、やっぱ怪しいよね! いつ頃くっつくのかなあ」 「人間同士の色恋沙汰は、私には良くわかりません。けど、きっと上手くいくのでしょう。二人がそう望めば」 京がそういって微笑む。初めて会ったときに比べて、少しずつ表情が豊かになってきている、と思う。私にはそれがとってもうれしい。 「深選のおじさんと舞子さんとかもさー、どうなんだろうね。 年齢の壁なんて力づくで壊しちゃえ!」 「では、小雪とドクはどうなのですか? 随分気に入られていたみたいですけども。」 飲みかけのスポーツドリンクを盛大に噴出す。 「京も言うようになったよね……。あのおっさんなら、今頃他の何かに夢中なんじゃない? 殺しても死にそーにないし。 探偵さんとかも元気かなぁ。私、紙の名刺貰ったの初めてだよ」 「困ったことがあれば特別価格で依頼を受け付ける、とは言ってくれましたけれどね。」 あの、どことなくとぼけた雰囲気のある探偵さんは、今日もこの街のどこかで浮気調査や迷い猫を探しているのだろうか。 風に飛ばされた帽子を掴んで「これが無いと格好がつかん」とか言いながら。 「ま、探偵さんに『次の大会で優勝させて』なんて言ってもしょうがないけどねー」 「全国大会への切符がかかっていますからね。みんなのやる気も十分です。」 京の視線の先には、入念にポジショニングや戦術の打ち合わせをする部員達がいた。その顔はみな、真剣でいてきらきらと輝いている。 京が入部して以来、その正確なデータの生かし方でチームの実力は飛躍的に上昇した。 「今年はマジで上位狙えそうだからね。私も頑張らないと!」 「はい。応援しますよ。」 にっと笑いあう二人。その間にけたたましい叫び声が割り込む。 「セイヴァーズ、大変だっピー!」 「はぐれ電魎が、また暴れだしたっピ! 恭太郎が食い止めてるけど、応援が必要だッピヨ!」 空飛ぶぬいぐるみが2体、めまぐるしく二人の周りを飛び交う。そっとため息。 「やれやれ……ゆっくり練習する暇もないのね……」 「泣き言を言っている暇はありません。早く終わらせて、練習に戻りましょう」 「うんっ!」 普通に学校に行って、普通に部活をして、たまに電魎と戦って、知り合った人たちとの繋がりが広がっていって……。 そうして私達の明日は続いていくのだ。 やってやるぞ! 私は、夕日に向かって京と一緒に走りだした。 [No.167] 2011/05/01(Sun) 00:00:35 |