特撮ヒーロー本編スレ再録 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:06:56 [No.213] |
└ Epic.1 護星天使、再臨 - 咲凪 - 2011/05/01(Sun) 21:07:56 [No.214] |
└ 蠢く闇1 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:10:03 [No.216] |
└ 彷徨うもの達 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:11:07 [No.217] |
└ 蠢く闇2 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:12:33 [No.218] |
└ 蜘蛛と巨大化と初顔合わせ - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:13:58 [No.219] |
└ 蜘蛛と巨大化と初顔合わせ - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:14:35 [No.220] |
└ 蠢く闇3 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:15:53 [No.221] |
└ 彷徨うもの達2 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:16:53 [No.222] |
└ 未来を切り開く者0 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:17:49 [No.223] |
└ 蜘蛛と巨大化と初顔合わせ - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:23:54 [No.224] |
└ 未来を切り開く者1 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:24:37 [No.225] |
└ 未来を切り開く者2 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:25:33 [No.226] |
└ 崩壊世界1 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:37:12 [No.227] |
└ 崩壊世界2 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:38:41 [No.228] |
└ 光の巨人1 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:39:28 [No.229] |
└ 蛹と闇と草食系 - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:40:14 [No.230] |
└ 蛹と闇と草食系 - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:40:47 [No.231] |
└ 蛹と闇と草食系 - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:41:16 [No.232] |
└ 彷徨うもの達3 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:54:11 [No.233] |
ガァン! 薄暗い密室に重苦しい金属音が反響し、最後のターゲットが正確に撃ち抜かれる。銃口から煙を上げる銃をホルスターにしまうとターゲットを撃ち抜いた人物は出口を振り向く。青と黒を基調とした身体、頭部には2本のアンテナと赤い大きな目の強化服。 すると、部屋に照明が灯り女性の声がする。 「お疲れ様、大空君。以上をもって最終テストは終了よ」 カシュ、と音がして後頭部の装甲が収納されると、大空尽介はヘルメットを取り、外気に顔を晒した。 「ふいー、やっと終った」 ● 「貴方のおかげでいいデータが取れたわ。ありがとう」 部屋から出た尽介を迎えたのは、警察の制服に身を包んだ女性であった。 彼女から手渡されたスポーツドリンクを口に含みつつ呟く。 「どういたしまして。G3−Xか……実用化されれば頼もしい限りだな。怪人共に通用すれば」 「引っかかる言い方ね?」 「あいや、澄子さんの力を疑ってるわけじゃ無くってね?」 澄子と呼ばれた女性――警視庁未確認生命体対策班実働部隊G3運用チームの長、小沢澄子は冷ややかに尽介を見やると 「G3−Xは特殊な技能を必要としない、広く使われることを前提としたシステムよ。その為にはどうしてもパワーは犠牲になるの。その分汎用性が高く、十分な数が配備されれば今まで難しかった、敵勢力に対する戦力の組織的な運用が可能になるわ。貴方達が使うような力とは根本が違うの」 怒涛のように言葉を繰り出す小沢に、参りましたとばかりに両手を上げる尽介。 「降参、俺が悪かったです。それじゃあ早く実用化していっぱい配備して、俺らを楽にしてよ。……そういや確かに、アゲハには俺しか変身できないように設定されてるんだよな。兄貴もなんでそんなことしたんだか」 ヒーローズの多くはその力を発揮するために、常人には無い特殊な技能や能力が必要なことも多い。それは尽介の場合も同じだ。 マスクドライダーシステムの中枢・ゼクターは通常、その使い手を自分で選定する。しかし尽介が使うアゲハゼクターはそれ以外にも、尽介以外には使えないようにプログラムされている。 それのせいで半強制的にZECTの一員として働く羽目になっているのだが、それはまた別の話だ。 「まぁ当然、使いやすさを優先しすぎて敵に対抗する力がありませんでした、じゃ話にならないからね。貴方を含む数人のテストケースでバランスを測っていたって訳」 「俺なんかで参考になればいいけどね」 「ZECTのマスクドライダー様が何言ってるの。此処に来る前も一暴れしてきたそうじゃない」 「ん、ああ……まぁね」 尽介は苦々しい顔になり、曖昧に頷く。 それは今から数時間前のことだ。 ● 「GIASの隊員さんか、助かったよ。俺は大空尽介。お察しの通りZECTの一人さ。イリーガルだけどね」 最後の怪人が倒れ、周囲の安全を確認すると尽介はバックルからゼクターを引き抜いた。 変身をとくと、ジャケットからZECTの未分証明証をミサキに見せる。 「俺は護星天使の一人、ゴセイファイヤー。ハルトと呼んでくれ」 ゴセイファイヤー――ハルトも変身を解く。 「大空尽介とハルトか、了解した。しかし、見たところ大量のワーム達に襲われていたようだが、こんなところで一体何があったんだい?」 「いや、俺にも良く分からないんだけどさ……」 学園に向かう途中起きた事を説明する。行き倒れた少女、突如現れた怪人達、ゴセイファイヤーとミサキの助力。 「なるほど、複数の勢力が手を組んだ可能性が……。それが本当だとしたら、戦いは今まで以上に苛酷なものになる」 「でも、なんでワーム達はこの子を狙ったんだろう? 見たところ普通の女の子みたいだけど……」 「さてね。見たところ荷物もないみたいだし、この子が起きたら直接聞くしかなさそうだ。とりあえずミサキさん、この子を学園まで運んでくれるかい?」 了解した。とミサキが少女を背負った時である。 「――やれやれ、どうやら出遅れたようだな」 森の中から人影が現れる。長身の、眼鏡をかけた男だ。 『誰だっ!!』 ミサキとハルトが弾かれたように振り向き身構える。 しかし、不敵な笑みを浮かべる男が見ているのは、二人ではなかった。 「お前がそいつを保護しているとはな……尽介」 男が言い終えるが早いか、尽介が吼える。 「手前……どの面下げて現れやがった!!」 その怒号に答えるかのように、尽介の手中にアゲハゼクターが飛んでくる。しかし、長身の男はおどける様にひらひらと両手を挙げ、降参のポーズを取った。 「落ち着け。今お前達と戦う気は無い。ヒーローズ3人を1人で相手になんぞしたくないからな」 からかうような口調で、男は背を向けて歩き始める。 「ああ、その女は大事にすることだ。世界を滅ぼしたくなかったら、な」 「……どういうことだ!?」 「じきに分かる。もっとも、その時はその娘は俺が貰い受けるがな。それまで精々護ってやることだ」 尽介達を振り返ることも無く、男は森に消えていく。やがてその気配が完全に消えると、重苦しい空気が残った。 「あの野郎、勝手なことを……!」 毒づく尽介に、ハルトが問いかける。 「尽介、今のは一体誰なんだ? 知り合いみたいだけど……」 しばしの沈黙の後、吐き捨てるように尽介は呟く。 「……奴は大空一也。俺の死んだ兄貴さ」 ● 先ほどの出来事を思い返していた尽介の意識を、電話のコール音が引き戻した。自分の携帯端末を見ると、先ほど交換したばかりの新しい番号からの着信である。 「ハルト? 何かあったのか? え、意識が戻った? ああ、分かった。すぐ行く」 通信を切ると、尽介は小沢に頭を下げる。 「澄子さんごめん、ちょっと用事できちゃったんで俺はこれで!」 「まったく、忙しないわね。今後の詳しいことは後日連絡するわ。お疲れ様……って、聞いてないわね」 既に尽介が走り去ったドアを見ながら、やれやれと肩をすくめる。 「記憶喪失!?」 少女を運び入れた医務室の前の廊下に素っ頓狂な声が響く。ハルトから聞かされた説明に、尽介が上げた声だ。 「とは言っても、今回の件が原因な訳ではないようだ。何故なら、彼女の記憶が途絶えているのは10年前かららしい」 「クエイク・ワンの時に記憶を失ったそうだ。それ以来、今回だけじゃなくてずっと怪人達から逃げる生活を送っていたらしいんだ……。自分が誰なのかも、名前すらも思い出せないまま」 「そんな……。そんな状態で、10年も逃げ回ってたってのか? 何でそんな目に遭わなきゃいけないっていうんだ……」 尽介はミサキとハルトの説明に愕然とする。 記憶を失い、怪物達に狙われ10年間の逃亡生活。それがどれだけ過酷なものか、とても想像することは出来なかった。 「SPIRITSに彼女の保護と、身元の調査を頼もう。クエイク・ワン以降戸籍等のデータも怪しいが、何か分かるかもしれない」 慰めるようにミサキが肩を叩く。その言葉に頷くと、医務室の扉を見る。その中には付き添いのアニー隊員と、名前も分からぬ少女がいる。 意識を取り戻した彼女は、一体何を思っているのだろう。 [No.217] 2011/05/01(Sun) 21:11:07 |