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No.222へ返信

all 特撮ヒーロー本編スレ再録 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:06:56 [No.213]
Epic.1 護星天使、再臨 - 咲凪 - 2011/05/01(Sun) 21:07:56 [No.214]
蠢く闇1 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:10:03 [No.216]
彷徨うもの達 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:11:07 [No.217]
蠢く闇2 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:12:33 [No.218]
蜘蛛と巨大化と初顔合わせ - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:13:58 [No.219]
蜘蛛と巨大化と初顔合わせ - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:14:35 [No.220]
蠢く闇3 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:15:53 [No.221]
彷徨うもの達2 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:16:53 [No.222]
未来を切り開く者0 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:17:49 [No.223]
蜘蛛と巨大化と初顔合わせ - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:23:54 [No.224]
未来を切り開く者1 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:24:37 [No.225]
未来を切り開く者2 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:25:33 [No.226]
崩壊世界1 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:37:12 [No.227]
崩壊世界2 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:38:41 [No.228]
光の巨人1 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:39:28 [No.229]
蛹と闇と草食系 - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:40:14 [No.230]
蛹と闇と草食系 - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:40:47 [No.231]
蛹と闇と草食系 - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:41:16 [No.232]
彷徨うもの達3 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:54:11 [No.233]


彷徨うもの達2 (No.221 への返信) - ありくい

 自分を保護しに来てくれる筈のSPIRITSに何かトラブルがあったらしく、予定時刻を過ぎても病室に来客は無かった。
 ミサキもハルトも見回りに行くといって出て行ったし、尽介も少し前に用事があるといって席を外している。

 残ったのは、何の娯楽も無い病室と、その部屋の中で大人しくしているように言われた自分。
 はっきり言って、空奈は暇だった。

 「SPIRITSっていうのは、ご飯おいしいのかしら……」

 益体も無いことを呟きつつ、窓の外をぼんやりと見つめる。
 覚えている限り最古の記憶は、10年前、砂浜で倒れていた時だ。ずぶ濡れの格好で、当ても無く歩き続けた。初めは人を頼ったし、震災直後で互いが助け合う風潮で皆優しかった。しかし、そこに現れる数多の怪人達がつかの間の安らぎを壊していった。
 何故か彼らは自分を狙い、その過程で自分が頼った人たちを傷つけた。その内に怪人に狙われる少女の噂は広まっていったし、自分のせいで誰かを巻き込みたくなかった為に極力他人との接触は避けるようになった。それからは思い出したくも無い最低以下の日々。餓死しかけたことも1度や2度では無いし、もっと恐ろしいことも味わった。
 それから10年。やっと頼れる人たちに出会えた。やっと心から安心できた。……やっと、嬉しいと思えた。


 「やだ、私なんで泣いちゃってるんだろう……」

 気づけば、ぽたぽたと零れ落ちた涙がシーツを濡らしている。慌てて拭うが、次から次へと溢れて止まらない。
 気づけば顔を両手で覆ってわんわん泣いている。それは、10年間堪えていた涙だった。


 「空奈さん、検診の時間ですよ」

 どのくらいたったか、ノックの音と共に看護師が入ってくる。泣き顔を見せるのがみっともなくて空奈は看護師を目を合わせないように窓の外を向いた。

 「ずぅっと怪人から逃げてきたんですってね。長い間大変だったでしょう」

 看護士は機材の準備をしながら空奈に話しかける。
 照れ隠しに頭をかく空奈。

 「いやー、やっと一安心できそうかなーなんて」

 「――そう。私も一安心だよ」

 一転、冷たく響く看護師の声。不審さを感じて振り返った空奈が見たものは、冷たく怪しげな笑みを浮かべた看護士と――その手に握られた拳銃

 「ひ――!?」

 「おっと、大人しく私と一緒に来てもらおうか。怪我をしたくなければ、な」

 ずい、と一歩ずつ近づく看護士に、空奈は自分の運命を呪って恐怖に目をつぶるしか無かった。

 「……はあっ!」

 「何!?」

 完全に優位を確信した看護士の腕を掴み、銃を叩き落す。空奈が目を開くと、見知ったばかりの青年が立っていた。

 「おのれ、何者だ!」

 「大空さん!」

 大空尽介は看護士の腕を捻り上げたまま、不敵に笑ってみせる。

 「悪い悪い、ちょっと職場の先輩に助っ人頼んでたら遅くなっちゃった。しかし、最近の検診ってのは随分物騒な道具でするんだな」

 油断無くにらみつけると、看護士は怒りに身体を震わせて低い声を漏らす。

 「地球人め……何処までも邪魔をしてくれる。『結合点』を寄越せええええええ!!」

 人間離れした力で尽介の手を振りほどくと、看護士の輪郭がぐにゃりと歪む。やがて現れたのは白黒の幾何学的な縞模様で全身を覆われている怪人。
 吹き飛ばされた衝撃で空奈のベッドの前まで下がる尽介。その手にはいつの間にかゼクターが握られている。

 「俺が何者かって聞いたな。俺は大空を往き尽くを助ける男さ。変身!」

 ――Henshin

 「その姿……三面怪人ダダだったかな。この子の事を『結合点』とか言ったか? どうやら、詳しく話を聞かせてもらわなきゃいけないみたいだ!」

 白黒の怪人・ダダに詰め寄り、もつれ合うアゲハ。その隙に空奈はベッドを転がり出て出口へ駆け出す。病室のドアの所で振り返ると、アゲハがダダを羽交い絞めにして押さえつけているところだった。

 「空奈ちゃん、ハルトさんとミサキさんの所に逃げるんだ! でぃやああああああ!!」

 渾身の力を込め、ダダの身体を持ち上げ、自分ごと窓ガラスを突き破ってその身を躍らせる。

 「大空さん!?」

 「尽介でいいよ!」

 びし、と空奈を指差したまま、アゲハはダダを捕まえたまま3階建ての病室から姿を消した。つかの間の静寂が空奈を包む。がすぐに自分でそれを破る。

 「――もう! 何考えてんのよ格好つけ!」

 護ってくれるなら最後まで責任とりなさいよ。呟いて空奈は病室を後にした。


[No.222] 2011/05/01(Sun) 21:16:53

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