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all スチームパンクスレ再録2 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:42:56 [No.23]
赤の退魔剣士2 - ありくい - 2011/04/24(Sun) 22:43:25 [No.24]
ジャックが笑う4 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:44:07 [No.25]
ジャックが笑う5 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:44:46 [No.26]
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博士と人形たち1 - 桐瀬 - 2011/04/24(Sun) 22:46:25 [No.28]
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狂人と溶鉱炉 - 咲凪 - 2011/04/24(Sun) 22:47:56 [No.30]
人形夜会2 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:48:52 [No.31]
清水自動人形工房2 - ジョニー - 2011/04/24(Sun) 22:50:02 [No.32]
クレメンティーナは眠らない4 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:50:49 [No.33]
赤の退魔剣士3 - ありくい - 2011/04/24(Sun) 22:51:24 [No.34]
人形の視座1 - 桐瀬 - 2011/04/24(Sun) 22:51:59 [No.35]


赤の退魔剣士2 (No.23 への返信) - ありくい

 4番街目指して歩いていくすがら、大我はカタリナと様々な話をした。初対面の相手に込み入った話をとも思ったが、カタリナはこれから色々と世話になる店の者であったし、人気無い山奥で育ち、今は天涯孤独のわが身のことを話しても誰に災いが及ぶでもないと思い直した。なにより、逆にカタリナが話してくれる話に興味が尽きない。

 「へえ、自動人形ねぇ……。九十九神なら見たことはあるが、それと似たようなもんを人間が作ってるなんてなあ」

 「ふふ、その内に嫌でも会えますよ、きっと」

 自分がその一人だとは、あえて言わない。いつまで気づかないかという悪戯心半分と、このまま人間扱いしてもらうのも心地よいという願望が半分。
 そんなカタリナが、数少ない大我の話題の中で特に興味を示したのは、大我が持っていた日本刀の事であった。

 「ほえ〜、これが翠璃様が手を加えた刀ですか。あ、この鞘蒸気機関が組み込まれてますね。この感じだと、空気周りですか」

 「うわ、見ただけでよく分かるな……正解。元は大昔の銘刀らしいんだけど、クソ親父が水仙寺翠璃さんに頼んで改良してもらったらしい。今じゃクソ親父のほぼ唯一の形見さ」

 過去を懐かしむように鞘に収まった刀を見つめる大我に、カタリナが問う。

 「お父上とは、仲が良かったんですか?」

 途端に大我の表情が曇る。げっそり、という形容がぴったりな風に。

 「仲良かったっつーか……修行でしごかれた記憶しかねえな。食い物は自分で獲れって奴だったし、そこらの木の棒一本で熊を倒せとか、谷底にいきなり突き落とされたこともあったなぁ。あん時は帰るのに二月はかかったっけ」

 「………」

 剣聖と謳われた猛者も子育てに関しては大雑把なようだった。
 でも――と、返答に詰まったカタリナに大我は続ける。

 「確かにとんでもねぇクソ親父だったが――血も繋がってねえこの俺を育ててくれて、生きる術を叩き込んでくれた上にこうやって、自分が居なくなった後の事まで考えてくれやがる。感謝しねぇとな」

 そう言ってはにかむ大我は、妙に、幼く見えた。












 運が悪いと言ったら、将に今夜の彼女の事を指すのであろう。たまたま4番街に寄る必要が生じ、たまたま足を向けたら、たまたま用のある店が少し入り組んだ場所にあったために見つけるまで時間を食い、たまたまそこでの話がこじれ、挙句解放されたのが夜もどっぷりと更けた頃であった。

 結果どうなったのかと言えば、人気の無い路地で怪しげな人影に待ち伏せされ、命を狙われる羽目に陥った。出会い頭に放たれた刃物――それは医術用のメスのような形をしていたが、彼女にそこまで確認する余裕は無かった――が彼女の持っていた鞄によって殺人を免れたのは完全なる偶然で、この日の『たまたま』が彼女に味方したのは、この時ただ一度であろう。

 しかし、『たまたま』がそう何度も続くはずも無く、必死で逃げた甲斐なく彼女は袋小路に追い詰められた。切り裂きジャックの単語を思い出す余裕も無く、目の前にぎらつく白刃の前に涙を浮かべ、壁を背に力なくへたり込む。

 「―――――」

 目の前の怪人が何事か呟くと、特に躊躇も無く手にした刃を我に向かい振り下ろす。こんなものか。こんなもので自分の人生は終るのか。
 悔恨と怨嗟の言葉を心の中に浮かべながら観念して目を閉じる。我が怨念、せめて眼前の仇を討ち取るべしと。


 ガキ……ン!

 しかし、その想いは甲高い金属音にかき消されることとなる。何事かと目を開けると、暴漢が振るった刃と自分との間に、にょっきりと鋼が生えているではないか。
 もちろん、壁から鋼が突き出た訳ではなく、誰かが放った日本刀が壁に突き刺さり、それが凶刃を受け止め自分ん命を救ったのだと、彼女は一瞬遅れて理解する。

 「――ったく、次から次へと……帝都っていうのは伏魔殿の事だったのか?」

 何処からか声がすると思えば、暴漢と彼女の間に人影が割り込む。人影は壁に刺さった日本刀を引き抜くと、暴漢に向けて構える。

 「お前が『切り裂きジャック』とやらかどうかは知らねえが、どっちにせよこの凪宮大我、見過ごす訳にはいかねえ!」


 それは月明かりに照らされた、赤の退魔剣士。


[No.24] 2011/04/24(Sun) 22:43:25

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