特撮ヒーロー本編再録スレ2 - 咲凪 - 2011/05/01(Sun) 21:55:25 [No.234] |
└ 選ばれざる者達 - 咲凪 - 2011/05/01(Sun) 21:56:18 [No.235] |
└ 空間切り裂く剣閃と二人1 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:56:54 [No.236] |
└ 空間切り裂く剣閃と二人2 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:57:32 [No.237] |
└ Sの仮面/選ばれざる男 - 咲凪 - 2011/05/01(Sun) 21:58:19 [No.238] |
└ 彷徨うもの達4 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:58:58 [No.239] |
└ 分裂T - アズミ - 2011/05/01(Sun) 22:08:44 [No.240] |
└ 分裂U - アズミ - 2011/05/01(Sun) 22:10:28 [No.241] |
└ 分裂V - アズミ - 2011/05/01(Sun) 22:11:30 [No.242] |
└ 分裂W - アズミ - 2011/05/01(Sun) 22:14:13 [No.243] |
└ Aの逡巡/天使の使命 - 咲凪 - 2011/05/01(Sun) 22:14:57 [No.244] |
└ 震える大地 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 22:16:35 [No.245] |
「……なあ、空奈ちゃんが結合点とやらだってのは分かった。この世界がとんでもなく脆いシロモノだって事も。……けど、それが何で彼女が狙われる理由になるんだ!?」 SPIRITS本部に向かう道すがら、尽介は写楽に問いかける。彼女が世界の境界、結び目だという弁を信じるとして、死んだら世界が崩壊してしまうという恐ろしい存在を、何故敵性勢力達は欲しているのか。仮に世界を終らせるというカードを握ることが出来るとしても、それだけではリスクが高すぎる。 これほどまでに執拗に彼女を狙うということは、そのリスクを補って余りあるメリットがあるのではないか。 「……お願い、知っているなら話してください」 「空奈ちゃん!? 気がついたのか!」 「お前……。分かったよ、話そう」 写楽はしばらくの間言いよどんでいたが、意識を回復させた空奈の強い視線を受け止めると頷いた。 「とは言え俺だって全部知ってる訳じゃない。半分方憶測交じりだが……まず、さっきも言ったようにあんたは『結合点』の一つだ」 本来ならこの世界は、クエイク・ワンで崩壊していたはずだった。それがどういうことか『結合点』と呼ばれる歪みが生まれることにより、辛うじて首の皮一枚で形を保っている。 『結合点』とはその名の通り『別の世界』と直接関わりを持つ存在だ。 「さっきあんたの事を兄妹分と言ったのはまぁ、俺も『結合点』だからだが……。『結合点』にはそれぞれ役割っつーか、世界との『関わり方』みたいなもんがあるらしい」 「『関わり方』……。それで、空奈ちゃんの役割ってのは一体」 写楽はちらりと後ろの空奈を見やると、口を開く。 「……『現出』、とでも言えばいいのかな。恐らく、あんたは他の世界に存在する可能性をこの世界に引き込むことが出来る」 例えばショッカー。この秘密結社が他の世界にも存在している場合、その戦闘員や怪人を生み出す事が出来る。それが人でなくても、何処かの世界に存在さえしていれば、空奈を通じて意のままに生み出す事が出来る。 「誰かがあんたの力を利用すれば、望む全てが手に入るだろうよ。――その力でこの世界すら掴めるなら、奴らが死に物狂いで手に入れたがるのも当然だな」 ぐらり。何度目かも分からぬ、目眩で世界が揺れる感覚。 悪い夢か冗談のようだ。これもまた、何度呟いたか知らぬ思い。 あまりにも現実味がなさ過ぎて。あまりにも規模が違い過ぎて。 「そん…な……」 「なんでだよ……なんで空奈ちゃんがそんな目に遭わなきゃいけないんだ! そんなの理不尽すぎるだろ!」 「それが運命だからだ。……『結合点』として生まれた者の、な」 尽介の叫びに、冷たい響きすら帯びる写楽の声。 生まれる重苦しい沈黙を破ったのは、やはり写楽であった。 「だが、俺は運命って奴が嫌いでね。何もそんなもんにほいほい従ってやる道理はねぇさ。そんな運命、俺が破壊してやる」 「写楽……さん」 「あんたが一人抱え込む必要はないさ。そんなくそ重てえもん、俺が背負ってやる」 「お、俺も! 俺も守るららね!」 話に置いていかれそうだと慌てて声を張り上げる尽介。しかし、頭の中では別のことを考えていた。 空奈の力を使えば、望むものが手に入る。とすれば、その力を狙う者は、一也は一体何を手に入れようとしているのか。 世界制服、ワームによる支配……通常のワームの目的ならばそんなところだろうが、兄に擬態したあのワームの目的はどうにも違う気がした。 そもそも、そういった目的ならば先ほどのように単独で動く必要がないのだ。今までも一也がサナギワームを手駒として使ったことはあっても、組織的に動いたことは無かった。 ならば独自の目的がある筈だが、それは一体―― 「まさか……――っ!」 咄嗟にブレーキ引く。甲高い音を上げながらバイクが横滑りしながら止まると、一瞬遅れて写楽のバイクも停止する。 写楽が何事かと口を開く前に、尽介の緊張した声が往来に響く。 「クロックアップしたワームだ! 一体だけみたいだけど――変身!」 「なんだって!?」 言うが早いか装甲を取り払った仮面ライダーアゲハは、クロックアップし姿を消す。次の瞬間、道のあちこちで火花が散り、看板が吹き飛び、停車した車のドアが凹む。何の前触れも無く起こるそれは、まさしく超高速の世界で戦闘が行われている証だ。 通行人達は突然の異変に戸惑い、悲鳴を上げながら避難を始める。 「うわー!?」 しかし、混乱の中躓いた少年の上に破壊された建物の破片が降り注ぐ。写楽はそれに気づき駆け出すが―― 「……間に合わねえ!」 「――うおおおおお!」 少年の身体を襲う直前、破片が弾け飛ぶ。キックで破片を破壊したと同時にクロックアップを終えたアゲハが姿を現す。 仮面ライダーは少年の手を取り立たせると、少年の頬を流れる涙を拭う。 「……よし、怪我は無いみたいだな。怪人は俺がやっつけてやる。だから泣かないで逃げるんだ。いいな?」 「……うん!」 少年が走り出すのを見届け、アゲハは機敏に振り向く。 振り上げた腕で背後からのワームの一撃を防御すると、カウンターの正拳突きを叩きつける。 奇声を発して仰け反るワーム。その隙にアゲハはベルトのゼクターを操作すると、高く跳躍する。 「――とおっ!」 ――Rider Kick! ふわりと空中で静止したアゲハの肩から透明な翅が生える。 展開したアゲハフェザーの振動を推進力に変えた、急降下のキック! 一条の光の矢と化したアゲハがワームの胸を貫くと、一拍の間をおいてワームが爆発する。 ……他に敵の気配は無い。変身を解除した尽介に、先ほどの少年が駆け寄ってくる。 「お兄ちゃん、ありがとう! お兄ちゃんもヒーローズなの?」 きらきらと光に満ちた瞳で問いかける少年。この真直ぐな心を闇に染めさせる訳にはいかない。 尽介はちらりと写楽を見やると再び少年に目線を戻し、 「ああ……俺はアゲハ。仮面ライダーアゲハだ。なあ少年、もしこれから大変なことがあっても、決して諦めないって約束してくれないか?」 「決して…あきらめない……?」 「ああ。諦めない心が光を生むんだ。ヒーローズはその光を力にして戦うんだ。ま、大先輩の受け売りだけどさ。……さ、一人で帰れるかい?」 頷き、手を振りながら去っていく少年に手を振り返す尽介。やがて少年が完全に姿を消すと写楽達に向き直る。 「……俺ってさ、ZECTとかヒーローズとか、そういった立場みたいなのに甘えてて、流されっぱなしだった。こうやって着いて来たのだって、刀伊達先輩に言われたってのは大きかった……。けど今は違う。色々考えたけど、俺は俺の意思で空奈ちゃんを守りたい」 真直ぐに見据える尽介の顔には、今までには無かった覚悟が表れている。その声は今までのどの言葉より力も強く聞こえた。 「人に背負えねえもん……背負ってやろうじゃねえか!」 挑みかかるようにこちらを睨む尽介に苦笑する写楽。すっと一歩近づくと、片腕を上げる。 「頼りにしてるぜ、後輩」 「いきなり後輩扱いかよ!?」 がし、と二人の仮面ライダーは腕を組み交わす。 その様子を泣き笑いの様な表情で見つめる空奈。 「この10年で、初めての事だけど……私、他人を…貴方達を頼りにしちゃって、いいかなぁ……」 「当然!」 「当然だ」 何を今更と言わんばかりの二人の返事に顔がほころぶ。 そして、世界が闇に包まれた。 [No.245] 2011/05/01(Sun) 22:16:35 |