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all サイバーパンクスレ本編再録第二部 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 00:34:27 [No.188]
Otaky-dokey - アズミ - 2011/05/01(Sun) 00:35:19 [No.189]
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Otaky-dokey4 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:08:27 [No.252]
奇襲、あるいは殴りこみ - 鷹目 - 2011/05/03(Tue) 21:09:20 [No.253]
苦戦 - 遼 - 2011/05/03(Tue) 21:10:03 [No.254]
Phantom Crash1 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:10:44 [No.255]
Shadow mission - ミド=クズハ - 2011/05/03(Tue) 21:14:39 [No.256]
Phantom Crash2 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:15:15 [No.257]
やりたい放題、あるいは喧嘩を売る - 鷹目 - 2011/05/03(Tue) 21:15:59 [No.258]
Phantom Crash3 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:16:44 [No.259]
Shadow - ミド=クズハ - 2011/05/03(Tue) 21:17:18 [No.260]
ティム・アンダーソンの憂鬱1 - DD3 - 2011/05/03(Tue) 21:18:17 [No.261]
ティム・アンダーソンの憂鬱2 - DD3 - 2011/05/03(Tue) 21:19:02 [No.262]
見上げた空は高く青く - カオル・ミヤタカ - 2011/05/03(Tue) 21:19:55 [No.263]


Otaky-dokey3 (No.248 への返信) - アズミ

 委員会の用意した部屋は、まず以って上等と言って差し支えないものだった。……電脳上の存在である私には関係のないことだが。
 カケルも特に感慨を覚えた様子はなく、上着をテーブルの上に放り出すと、さっさとベッドの上に倒れこんでしまった。
 まだ午後の5時だが、AW操縦は結構な重労働だ。このまま眠らせても構うまい。

「……Chu-B」

 部屋のシステムから出ようとした私を、カケルが呼び止めた。

『何か御用、マスター?』

「Jacksはどうなるのかな」

 バトリングプレイヤー同士の交流は、概ね希薄だ。
 ゲームとはいえ不慮の事故で相手を殺してしまうケースも絶無とは言えないし、そもそも彼らはマスターを始めとして人付き合いが苦手な手合いがやたらに多い。
 その中ではJacksは社交的な部類に入っただろう。
 ジョークの好きな軽薄な男で、カケルが(それが例えネット上だけであっても)交流したことのある希少な相手だ。
 どうなったのか。私も、興味が無いではなかったが。

『私には解りかねますわ、マスター』

 少しだけ申し訳なく思いながら、私は正直に答えた。
 バトリングプレイヤーを誘拐してどうするのか。ランカーといえばファイトマネーは莫大だし、身代金を要求する可能性はある。あるいは委員会へ何らかの要求をするか、そもそもバトリングという娯楽自体へのダメージを狙ったものか。
 いずれにせよ、生きて帰ってくる可能性は少ない。
 誘拐とは、そもそういうものだ。

「そっか……」

 カケルもそれを悟っているのだろう。それ以上何も言わなかった。
 それほど交流が深かったわけではない。すぐにログアウトしてしまう電脳の絆。
 けれど、こうして消えてしまえば、人の心に痛みは残る。
 痛みを感じる程度には、カケル=オータはウェットなのだ。

「……もう休むよ。お休み、Chu-B」

 話はこれまで、というようにカケルはごろんと寝返りを打った。

『おやすみなさいませ、マスター』

 せめて眠りが、貴方の痛みを癒しますように。





 翌朝、AM7;00。
 部屋のシステムに入ると、マスターはいつの間に届いたのかお気に入りガイノイドの『ゼロ』とお楽しみを終えたところだった。

 ……少しでもセンチメンタルな気分に浸った自分が愚かしい。

 とりあえず処理が終わるまで、待ってから声をかけよう……と、私が決めたその瞬間。
 部屋のドアが、文字通り蹴破られた。

「へ――?」

 カケルがズボンを上げかけたまま、間抜けな表情で(私のいる端末からは見えないので想像だが)振り向くと、入り口には妙に着膨れした黒服の男が2名。
 ……明らかに委員会の手のものではない!

「標的を確認、確保する」

 男の片方が通信端末に囁き、カケルに迫る。

『マスター!』

 私が声を上げると、男は驚いた様子もなく端末に向けて拳銃を発砲した。

 暗転。





 私は速やかにネットの海を駆け巡り、ガイノイドのサポートセンターを経由して目当ての『身体』にジャックイン。
 警告を発する制御システムを宥めすかし、乗っ取ると『意識』を結線(ワイヤード)した。
 視界をリンクすると、ちょうど黒服2名はカケルを簀巻きにして持ち上げたところ。
 間に合った!

『マスターに触れるな!』

 身体の調子を確かめている暇はない。アクチュエーターをフル稼動させ跳ね起きると、手近な帽子掛けを引っ掴み、黒服の一人を全力で殴りつける。

「が、ガイノイ……っ!?」

 返す刀で黒服の歯をダース単位でへし折り、延髄切りで黙らせた。

「ぐあっ……!?」

 くず折れる男。
 トドメを刺しておきたいところだが、万が一にも委員会の関係者だった場合取り返しがつかないのでやめておいた。
 頭の中でやかましく警告音が響いている。
 荒っぽいプレイ用に頑丈に出来ているはずだが、さすがに殴り合いは専門外だったようだ。腕のモーターが悲鳴をあげている。
 簀巻きになったマスターの拘束を解くと、唖然とした顔でこちらを見ている。

「ぜ、ゼロ……?」

『私ですわ、マスター』

「Chu−B!?」

 そう。
 真に遺憾ながら、今私がリンクしているのは先刻までマスターが腰を振っていた性処理用ガイノイドだった。
 AWと同じ容量で操作できるとはいえ、人型に入るのは初めてだ。なんだかべとべとする股の感触が不快極まる。

『マスター、一先ず移動しましょう。
 これだけ騒いでも担当の役員が来ないなんて、尋常の事態ではありませんわ』

「う、うん、それは、その、いいんだけど……」

 マスターは何故か顔を赤らめて視線を逸らしながら、クローゼットを指差した。

「何か、服きなよ」

『……お心遣い感謝しますわ』

 なんでさっきまで性処理に使っていたガイノイドにそこまで恥らうのか、理解に苦しむ。


[No.249] 2011/05/03(Tue) 21:04:58

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