サイバーパンクスレ本編再録第二部 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 00:34:27 [No.188] |
└ Otaky-dokey - アズミ - 2011/05/01(Sun) 00:35:19 [No.189] |
└ Shadow run - ミド=クズハ - 2011/05/01(Sun) 00:38:53 [No.190] |
└ とあるテロリストの日常 - 夜天光の愉快な仲間達 - 2011/05/01(Sun) 00:39:53 [No.191] |
└ Otaky-dokey2 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:02:36 [No.246] |
└ Shadow gate - ミド=クズハ - 2011/05/03(Tue) 21:03:20 [No.247] |
└ BeastBeat1 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:04:06 [No.248] |
└ Otaky-dokey3 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:04:58 [No.249] |
└ MkU対MkV・ラウンド1 - 咲凪 - 2011/05/03(Tue) 21:05:39 [No.250] |
└ Shadow blade - ミド=クズハ - 2011/05/03(Tue) 21:06:33 [No.251] |
└ Otaky-dokey4 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:08:27 [No.252] |
└ 奇襲、あるいは殴りこみ - 鷹目 - 2011/05/03(Tue) 21:09:20 [No.253] |
└ 苦戦 - 遼 - 2011/05/03(Tue) 21:10:03 [No.254] |
└ Phantom Crash1 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:10:44 [No.255] |
└ Shadow mission - ミド=クズハ - 2011/05/03(Tue) 21:14:39 [No.256] |
└ Phantom Crash2 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:15:15 [No.257] |
└ やりたい放題、あるいは喧嘩を売る - 鷹目 - 2011/05/03(Tue) 21:15:59 [No.258] |
└ Phantom Crash3 - アズミ - 2011/05/03(Tue) 21:16:44 [No.259] |
└ Shadow - ミド=クズハ - 2011/05/03(Tue) 21:17:18 [No.260] |
└ ティム・アンダーソンの憂鬱1 - DD3 - 2011/05/03(Tue) 21:18:17 [No.261] |
└ ティム・アンダーソンの憂鬱2 - DD3 - 2011/05/03(Tue) 21:19:02 [No.262] |
└ 見上げた空は高く青く - カオル・ミヤタカ - 2011/05/03(Tue) 21:19:55 [No.263] |
バトリング会場の玄関に、全身が滑らかな金属で構成された少女(としか言いようのないもの)と、いかにも古風な風体の執事、そして企業の重役らしき男性が立っている。 「バトリングが見たかったのに。これが残念というのね。そうね、そうに違いないわ」 「まったく残念無念また来年でございます」 機械の少女、フィリアは大げさな動作で肩をすくめる。一挙動の度に、ほんの微かに聞こえるモーター音が非人間らしさを一層引き立てている。 お付きの執事、ベルフェクトゥスは完璧な服装、そして微かな微笑を崩さない。 「はー……ようやく終わった。これだから世間知らずのガキの相手は……」 「何か仰いましたか?」 抜け目ないティム・アンダーソンはフィリアの見送りに来ていた。安堵からか些か以上に気は抜けているようだが……。 「いえいえ!なんでもありません!それよりもフィリア様!本日はワザワザ来て頂いたのに申し訳御座いませんでした」 「ベルフェクトゥス、せっかくだから街を見てみたいわ」 一瞬で企業人の態度に戻したのはさすがだが、鋼鉄の令嬢はまるで気にもかけていない。 もちろんそのお付きたるベルフェクトゥスもまるで気にしていない。 「畏まりました。直ちにコースを設定いたします」 「あの、フィリア様?再開の折にはこちらから連絡させていただきますので、ぜひ今後も……」 「いやよ。飽きたわ」 「飽きた、と仰いますと?」 鋼鉄の少女とその執事、口論の様相を呈しているがどちらも顔の表情は動かない。 「あの、ベルフェクトゥス様?早急にご連絡を差し上げますので、どうぞグレズ家と今後とも……」 「言葉通りよ。ベルフェクトゥスの決める、お定まりの観光名所巡りは飽きたの。私は自由に歩きたいの」 微かな微笑を湛えたままの執事の瞳が、ほんの少しだけ弧を深くした事に気がつく者は、今この場にはいない。 「フィリアお嬢様、我儘を仰られては困ります。このベルフェクトゥス、お嬢様の安全を万全に完全に十全に安全にお守りするように旦那様から言い使っておりますので」 「あの、フィリア様?ベルフェクトゥス様……?」 「危険な事なんて何も無いわ」 「フィリアお嬢様。お嬢様はまだまだ知らぬことが多うございます。どうかお聴き分けください」 「あの……」 「いやよ。私はもう子供じゃないんだから、自分で決められるわ。もういいわ、私一人で行くわ」 「お待ちください、お嬢様……」 「いやよ。先に帰ってなさいベルフェクトゥス」 その言葉と同時にフィリアの姿が徐々に背景に溶けて消えていく。ステルス機能、光学迷彩だ。 先ほどまで微かに聞こえていたモーター音も聞こえない。 戦闘用では無いはずの、唯のお嬢様の体に何故そんな機能が搭載されているのかは不明だが、とにかくフィリアはその姿を完全に消した。 「…………やれやれ。お嬢様の我儘にも困ったものですね。ねえ、アンダーソン様」 「は、はぁ……お気の毒に……」 いきなり話を振られたティムはぽかんと相槌を打つしかなかった。 「しかしこのままでは旦那様にお叱りを頂いてしまいます。探すのを手伝ってはいただけませんか?もちろん内密に」 問われてティムはとっさに頭を巡らせる。 グレズ家としての頼みならばともかく、恩を売れないのであれば意味は無い。 むしろフィリアの機嫌を損ねては逆効果だ。さすがにそこまで関わる必要はない。 この間、わずか0.2秒。 「……い、いやそれは」 「おや、よろしいのですか?お困りになるのはアンダーソン様ですが」 「なに?」 執事は一切微笑を崩さずに、口から彼の者ではない言葉を吐きだした。 『はー……ようやく終わった。これだから世間知らずのガキの相手は……はー……ようやく終わった。これだから』 「なっ、ななな……!?」 「組織の役員らしからぬ油断ですねえ、アンダーソン様。天上人たるグレズ家のご令嬢に対して暴言とは……これが知れたらどうなるか」 この時代、記録装置を体内に仕込むのは大して珍しい事でも無い。天上人を浮世離れした存在と油断しすぎていたようだ。 「アンダーソン様、力をお借りできますよね?」 アンダーソンが大慌てで部下に指示を飛ばしたのは言うまでも無かった。 ●●● 「………困ったわ。ここはどこかしら」 1時間後。 フィリアは迷子になっていた。 [No.262] 2011/05/03(Tue) 21:19:02 |