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all コテファテ再録1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:10:32 [No.306]
RedT - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:11:06 [No.307]
RedT−2 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:11:44 [No.308]
RedT−3 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:12:23 [No.309]
RedT−4 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:13:03 [No.310]
―間奏― - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:13:42 [No.311]
フランケンシュタインの怪物T - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:14:11 [No.312]
フランケンシュタインの怪物U - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:18:30 [No.313]
フランケンシュタインの怪物V - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:19:04 [No.314]
欠損英雄T - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:19:30 [No.315]
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欠損英雄U - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:20:35 [No.317]
RedU−2 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:21:36 [No.318]
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仮縫同盟V - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:25:00 [No.323]
煉獄の生 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:25:46 [No.324]
平穏の狭間T−1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:26:43 [No.325]


RedT−2 (No.307 への返信) - 咲凪

 聖杯戦争には条件が在る。

 まず第一に聖杯が存在する事。

 魔術師が7人存在し、

 七体のサーヴァントを召喚する事。

 聖杯戦争には条件が在る。

 湖庭市(こていし)は、本来その条件を満たしていない街だった。

 「問う、君が私のマスターなのか?」

 少女の眼前に立つ男は静かに、だが妙に部屋に通る声で言った。
 印象的な紅い瞳に短く黒い髪、肌の色は東洋人を思わせるが、彼を東洋の人間と断定できるかは判らない。
 何故ならばその身に纏うの銀色の西洋の鎧。
 全身を覆い隠すようなフルプレート型のそれではなく、胸当てと篭手、脛当てといった要所のみ護り動きやすさを重視したもの、
そういった出で立ちの男の体格は英霊と呼ばれるに相応しく、大きいが引き締まったものだ、ただ無闇に巨大な訳ではなく、ひたすらに実戦の為に鍛え上げられた騎士の身体をしている。
 
 「――――」
 「……君?」
 「あ、え、ごめんなさい、ちょっと呆けていたわ」

 少女が呆けるのも無理は無い。
 眼前の英霊の勇壮たる姿も勿論だが、それ以上に彼女を呆けさせるのは魔術師である彼女を遥かに凌ぐ魔力量を男が持っているからだ。
 恐らく、少女が50年から一生修行を続けたとしても辿り着けない場所に、彼は立っているのだ。
 少女は目前に立たれただけで自覚する、自身が召喚したのは人を超えた存在、英霊なのだと。

 (驚いた、こんなに凄いなんて―――)

 想像はしていた、理解もしていた、
 それでもなお、目前に立たれて圧倒されるその存在感に少女は惚れ惚れとした。
 だがこれ以上呆けている訳にもいかず、数日前からひりひりと痛み出し、英霊の召喚により令呪という形で右手の甲に現れた痣のような模様を男の前にかざした。
 令呪とは英霊であるサーヴァントのマスターである証、
 絶大な力を持ち、人間よりも高次元の存在であるサーヴァントを従える為の印である。
 その令呪により、3回のみマスターはサーヴァントに命令を強制する事が出来る。
 だがしかしそれはただの強制装置ではなく、令呪の力によりサーヴァントはその命令に従う時、より大きな力を振るう事が出来るのだ。
 逆に、その命令に逆らおうとすればサーヴァントは大きな負担を背負う事になる。
 そして何よりも重要なのは令呪を使いきり、それを失った時マスターはマスターである資格を失う事である。
 令呪はマスターである証にしてマスターにとっての切り札の一つである、聖杯戦争にとって重要な要素の一つである。

 「……ふむ」

 その紅い瞳で少女の令呪を確認した男は小さく頷いて呟く。
 
 「なるほど、君が私を召喚した事実、間違いは無さそうだ」
 「えぇ、ここに契約は完了した、相違は無いわね?」
 「あぁ――やるべき事は全て判っている、やるべき事はやらねばなるまいよな」

 凛とした強い意志を感じる声で紅い瞳の英霊は言った。
 少女はその姿を頼もしげに見るが、ふとある事に気付いた、それはとてもとても重要な事だ。

 「それで、貴方は何のサーヴァントなの?、見た感じ少なくともバーサーカーでは無さそうだけど」

 サーヴァントには基本七つのクラスが存在する。
 高次元の存在である英霊を現世に召喚するに際し、予め用意されたクラスを拠り代とする事で初めて英霊の召喚は可能になる。
 その七つのクラスとは、

 剣の騎士、セイバー

 槍の騎士、ランサー

 弓の騎士、アーチャー

 騎乗兵、ライダー

 魔術師、キャスター

 狂戦士、バーサーカー

 暗殺者、アサシン

 …以上の七つが必ずサーヴァント達のクラスとして割り振られている。
 あくまでそれらは基本的なクラスであり、時として例外も存在するが、少女は紅い瞳の英霊の鎧姿に、彼がセイバー、あるいはアーチャーやランサーといった騎士の英霊であると思っていた。

 「……私か、私は―――」

 言い含めるように小さく間を取って男は言う。

 「私は――何だろう」

 その言葉にやや遅れて、少女が顔に困惑の色を見せる。
 最初は男が冗談を言ったと思ったのだが…男の表情を見て少女は察する「あぁ、これは本当の話なのだな、と」。
 何か言おうと思ったのだが、全く予想外の展開にそれは言葉にならず、ただ一文字に全ての疑問を込めて少女は言った。

 「――――は?」
 「いや、その……」

 気恥ずかしいような困ったような顔をして男は言葉を続ける。

 「実は判らないんだ、この私自身が一体いかなるクラスなのか―――」
 「な――なんでっ!?」
 「……なんでだろう?」
 「〜〜〜〜〜!!」

 わなわなと拳を握り締めて少女は震える。
 先までの頼もしい印象は何処へやら、紅い瞳の男はというと少女のその様子にバツが悪そうに萎縮してしまっている。

 「………」
 「………」
 「………」
 「……その……」
 「………」
 「……ごめん」

 紅い瞳の男がつい謝る。
 しかしそれが返って少女の逆鱗に触れる。

 「何であやまるのよー!?」

 目尻に涙まで浮かべながら、何故こんな事になったのかと悩む彼女に紅い瞳の男はやれやれと呆れるのとおろおろとうろたえるのが混じった複雑な顔をした。
 だが少女の狼狽ももっともと言えばもっともだ。
 クラスはそのままその英霊の戦い方に繋がる。
 常識外の戦いが繰り広げられる聖杯戦争に参加するというのに、その戦い方すら判らないというのだからこれでは話にならない。

 「…百歩譲って、貴方のクラスは問わないであげる」
 「…ありがとう」
 「じゃあ貴方の真名を教えてよ、それくらい判るでしょ?」

 英霊はすなわち生前は英雄なので、ちゃんと名前がある。
 それが判れば彼の由来も判るし、その由来を元にクラスを推測する事も出来るだろう。
 生前の戦い方を知る事が出来るのも重要なポイントだ。

 ――――が。

 「………」
 「………」
 「………」
 「…ちょっと、何で黙ってるのよ」

 「………ごめん、すまない、悪気は無いんだ」

 「アンタって人はぁぁっ!?」

 少女の剣幕に、自らの名もクラスも忘れてしまったらしい紅い瞳の英霊は……結構本気で怯んだ。


[No.308] 2011/05/23(Mon) 21:11:44

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