コテファテ再録1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:10:32 [No.306] |
└ RedT - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:11:06 [No.307] |
└ RedT−2 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:11:44 [No.308] |
└ RedT−3 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:12:23 [No.309] |
└ RedT−4 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:13:03 [No.310] |
└ ―間奏― - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:13:42 [No.311] |
└ フランケンシュタインの怪物T - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:14:11 [No.312] |
└ フランケンシュタインの怪物U - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:18:30 [No.313] |
└ フランケンシュタインの怪物V - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:19:04 [No.314] |
└ 欠損英雄T - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:19:30 [No.315] |
└ RedU−1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:20:01 [No.316] |
└ 欠損英雄U - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:20:35 [No.317] |
└ RedU−2 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:21:36 [No.318] |
└ 欠損英雄V - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:22:09 [No.319] |
└ 仮縫同盟T - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:22:43 [No.320] |
└ RedV−1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:23:18 [No.321] |
└ 仮縫同盟U - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:24:23 [No.322] |
└ 仮縫同盟V - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:25:00 [No.323] |
└ 煉獄の生 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:25:46 [No.324] |
└ 平穏の狭間T−1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:26:43 [No.325] |
特例、というのは良い事ばかりでは無い。 特別な処置。 特別な配慮。 特別な待遇。 その一つ一つの特例に、一つ一つのズレが生じる。 一つ一つの、“余分”が生じる。 ● あれからマリナとその英霊は教会を後にし、拠点たるマリナの工房へと引き上げる為に夜の街を歩いていた。 英霊は当然霊体化していたが、その視線はマリナの横顔に注がれていた、……特に色っぽい理由では勿論無い、マリナの顔が一言あらわすなら『不満』そのものだったからだ。 もっと判り易い言葉で表すと『イラッ』という表情をマリナはしていた。 「……いい加減、そういう顔はよしたらどうだ、マリナ」 「お生憎様!、私の顔は生まれつきこうなのよ」 紅い瞳の英霊としては、マリナが教会で自分以外のマスターと出会って、言葉のやり取りをして以来不機嫌そうな顔を隠さない事を指して言ったつもりだったし、マリナもそれを理解していたが意地にでもなっているのか、先のように返した。 魔術師として、ここまで内面が量りやすいのは問題だろう、と紅い瞳の英霊は思う。 あのマスターと騎士のサーヴァントは、結局の所待ち伏せをして来なかった。 「マリナ、相手が此方を過小評価しているのは好都合な事だ」 「別にそんな事気にして無いわよ!」 「……ふむ?」 「あの男が私を見るからに過小評価している事は良いの!、あんたがその評価に同意している事は不服だわ」 「私が?、いや、だがなマリナ……」 事実、英霊の眼から見ても、ここまでのマリナの印象は頼りない、というのが正直な所だ。 勿論サーヴァントとしての勤めは果たすし、主の能力はその忠誠において問題にする所では無い。 紅い瞳の英霊はマリナの不満を、若さから来るものだと思った、だからこそ、それを諌めようと思った、が――。 「私たちはパートナーなのよ、まず信頼して、私は私の不足を隠さないわ、貴方が補って」 「む……」 「貴方に不足があるなら、私が必ずそれを補ってあげる、だから、まず私を信頼して」 マリナの言葉には根拠は無かったが気概があった。 紅い瞳の英霊はその気概を汲み取り、マリナの不満を理解した。 言外にその理解を察知したマリナは、ようやく不服の表情を崩すと柔らかく微笑んだ。 「これからの戦いの中で、貴方の中に私を頼る事を手段の一つに入れておいてね、私は貴方の相棒なんだから」 「あぁ――」 元より、聖杯戦争はマスターとサーヴァントの連携無しでは勝ち残れるものでは無いだろう、それを英霊は承知していたし、今更言われるまでも無い事であったが……。 より深く、より大きく、承知していてなお、彼はマリナの言葉に承服した。 「心得た、マスター」 「よろしい」 これからの苦難は激しいものだろう、ましてや自分は初めから自己の喪失という重い枷を与えられている、だがやらぬ訳にはいかない。 やっていこう、このマスターと。 英霊がそう決意してからの動きは早かった。 「止まれ、マリナ!」 「えっ!?」 霊体と化し姿を消していた英霊が現世に顕現する。 歩むマリナを止め、この世に現れたその身を盾にでもするように、マリナを庇うように英霊は右手を広げ、夜の街の街灯の向こうにある暗闇を睨みすえた。 その手には一振り……“槍”が握られていた。 [No.316] 2011/05/23(Mon) 21:20:01 |