コテファテ再録1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:10:32 [No.306] |
└ RedT - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:11:06 [No.307] |
└ RedT−2 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:11:44 [No.308] |
└ RedT−3 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:12:23 [No.309] |
└ RedT−4 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:13:03 [No.310] |
└ ―間奏― - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:13:42 [No.311] |
└ フランケンシュタインの怪物T - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:14:11 [No.312] |
└ フランケンシュタインの怪物U - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:18:30 [No.313] |
└ フランケンシュタインの怪物V - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:19:04 [No.314] |
└ 欠損英雄T - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:19:30 [No.315] |
└ RedU−1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:20:01 [No.316] |
└ 欠損英雄U - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:20:35 [No.317] |
└ RedU−2 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:21:36 [No.318] |
└ 欠損英雄V - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:22:09 [No.319] |
└ 仮縫同盟T - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:22:43 [No.320] |
└ RedV−1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:23:18 [No.321] |
└ 仮縫同盟U - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:24:23 [No.322] |
└ 仮縫同盟V - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:25:00 [No.323] |
└ 煉獄の生 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:25:46 [No.324] |
└ 平穏の狭間T−1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:26:43 [No.325] |
沖田 総司――。 幕末にその名を轟かせた新撰組、その一番隊組長をしていた男。 「その槍捌き、大したものですね」 外見にして美貌の優男、だが彼がその名を響かせているのはその剣の腕だ。 マリナも知っている、沖田総司が剣士としてどれ程の名声を得ていたかを知っている、その沖田総司がサーヴァントとして現世に顕現し、目の前に立ち塞がっている――!!。 「狂っている様子も無い、ランサーとお見受けしますが……」 「さてな――案外こう見えて、セイバーかもしれないし、アサシンかもしれないぞ」 「ふふっ」 対峙した赤眼の英霊と、その槍を見て沖田は赤眼がランサーではないかと言った。 それは槍を武器としている時点で当然の発想ではあったし、同時にそれだけで判断するにはやや軽率な事でもあった。 事実、沖田も確信を持っての発言では無い、相手の出方を伺う為のブラフのようなものだ。 そして赤眼の英霊は――本人としては、自分のクラスを理解していなかったのだが……セイバーかアサシンと例えた。 これも当然、沖田を意識しての言葉だ。 沖田総司の悠然とした姿には狂化の影響は全く見られないので、自動的にバーサーカーは彼のクラスの可能性から除外される。 彼がその名を轟かせているのは剣の腕前であり、特別騎乗や魔術に関しての逸話も聞かない、よってアーチャー、ランサー、ライダー、キャスターが除外される。 残るはセイバーかアサシン、どちらかと言えばセイバーの方が可能性としては高く思えたが――赤眼の英霊はあえて、沖田のクラスに該当しそうなクラス名を挙げた。 その事に沖田は邪気も思惑もなく、ただ愉快だったので小さな笑い声を上げると、腰に下げた日本刀に手を掛けた。 赤眼の英霊も油断無く槍を構えた、両者共に、ここで一戦交えるつもりがあった。 より厳密には、赤眼としては準備も何も無い遭遇戦、しかも此方はマスターを連れている状況で初見の相手とやり合うのは得策とは思えなかった、だが、相手がその気ならばやらぬ訳にもいかない。 武器の射程は赤眼に利があったが、やはりランスは騎兵の装備であった、歩兵の持つ装備としては取り回しは余りに不便、そして相手が剣を極めたものであるならば――むしろ、赤眼は不利であった。 「いきます、ランサー」 「受けて立つ!」 赤眼が名乗らなかったので、結局沖田は赤眼をとりあえずの所でランサーと呼ぶ事にした。 沖田が日本刀を抜くと、赤眼……この場においてランサー(?)は射程の利を活かしての迎撃では無く、防御を選らんだ、自分の防御では無い。 「――へぇ」 感心の声を沖田は呟く、彼の刃は止まっていた、正面から鍔競り合うのは日本刀の性質からして避けるべき事だからだ。 ――赤眼のランサーはマスターであるマリナの防御を選んだのだ。 そしてそれは正解だった、彼の槍が電光石火の勢いで踏み込んだ沖田の刃を防がなければ、マリナの首が飛んでいただろう。 だが沖田の感心は赤眼のランサーのその行動に対してのものでは無い、彼も赤眼のその動きは読んでいた。 だが彼が首を狙ったマリナの動きは予想外だった、彼女は自分が狙われる事も察していたし、電光石火の打ち込みに自分が対処できない事も理解し、その一撃を自らのサーヴァントが防ぐ事も、信じていた。 「奔れ!」 「おっと……」 一瞬の攻防の中、マリナは自分が使える攻撃力のある術で最も早い“針”を使った。 金属では無い、彼女の髪の毛を媒介として魔力を通した針だ、それだけでは大した攻撃力を持たない、意識を逸らす為だけのような些細な攻撃に思えたそれを、沖田は赤眼のランサーに対峙して日本刀が有利な間合いを放棄して後退する、そうまでしてその髪の毛の針を避けたのは、彼の危険察知能力がなせる業だった。 マリナの髪の毛の針に破壊力という物は皆無に等しい。 彼女は本来、治癒に特化した魔術回路の持ち主であったので、攻撃手段の会得は困難であった。 だからこその発想、奇策、沖田総司が回避せざるを得ない攻撃であった。 彼女の髪に刺された者は、一瞬にせよ緊張した肉体が弛緩するのだ。 傷を癒し、疲労を癒すという魔力、これをどれほど拡大解釈できるかをマリナは研究した。 肉体は基本的に自然治癒能力を持つ、それをマリナの針は加速する、だが肉体が損傷していないにも関わらず、治癒能力が加速すればどうか?。 緊張している肉体の細胞が新しい細胞にとって代わり、本来は癒される所がそもそもからして傷など無い、だから、ほんの刹那の筋肉の弛緩が生まれる。 そしてその隙は、サーヴァント同士の争いにおいて致命的な隙となる。 沖田総司が避けたのは、その“刹那の隙”であったのだ。 針を避けた沖田を、赤眼のランサーは逃がさない。 間合いは有利、取り回しは不利、踏み込みも向こうに分があると思えたからこそ、沖田が引いた瞬間にこそ赤眼のランサーの付け入る隙があった。 「コオオォォッ!」 「なる――ほど!」 長大に過ぎるランスという武器を持ってして、赤眼のランサーの突きは稲妻のようであった。 だがそれを沖田は避けて見せた、斬り返す!、魔術師の援護より早くこの槍兵を斬り捨てる!、沖田の斬り返しは的確であった、だがその刃もまた届かない。 「……っ!?」 二度目の突きが来た、先程の赤眼のランサーの突きは確かにかわした、それに合わせて迎撃の一太刀をあびせる筈が、それより速い二度目の突き。 武器の取り回しは、明らかに沖田に分があるというのに――である。 赤眼の英霊の力量だけでは説明がつかないその二度目の突きを沖田はそれでもかわして見せたが、反撃は断念せざるを得ない、沖田も赤眼のランサーも、互いに武器を振り直す為に距離を取った。 「今のは――貴方の宝具ですか」 「……」 当の赤眼のランサーとしても、胸の内には軽い困惑があった。 最初の突きがかわされた瞬間、咄嗟に二度目の突きを撃とうとしたのは事実だ、だがあれは自分の技量で放たれたものでは無い。 沖田の言うように、それはまぎれもなく――赤眼の英霊の持つ、宝具の一つによる効果であった。 [No.318] 2011/05/23(Mon) 21:21:36 |