スチームパンクスレ再録2 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:42:56 [No.23] |
└ 赤の退魔剣士2 - ありくい - 2011/04/24(Sun) 22:43:25 [No.24] |
└ ジャックが笑う4 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:44:07 [No.25] |
└ ジャックが笑う5 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:44:46 [No.26] |
└ ジャックが笑う6 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:45:31 [No.27] |
└ 博士と人形たち1 - 桐瀬 - 2011/04/24(Sun) 22:46:25 [No.28] |
└ ジャックが笑う7 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:47:15 [No.29] |
└ 狂人と溶鉱炉 - 咲凪 - 2011/04/24(Sun) 22:47:56 [No.30] |
└ 人形夜会2 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:48:52 [No.31] |
└ 清水自動人形工房2 - ジョニー - 2011/04/24(Sun) 22:50:02 [No.32] |
└ クレメンティーナは眠らない4 - アズミ - 2011/04/24(Sun) 22:50:49 [No.33] |
└ 赤の退魔剣士3 - ありくい - 2011/04/24(Sun) 22:51:24 [No.34] |
└ 人形の視座1 - 桐瀬 - 2011/04/24(Sun) 22:51:59 [No.35] |
最初の記憶はゴミ溜めだった。 廃棄区画。 帝都の地下にある中止された地下都市計画の名残であるその場所は、6番街よりもなお死の臭いと気配の強い、すべてから捨てられた者とすべてを捨てた者が集う土地。 物心つく頃には既に俺と綾はそこにいた。理由なんて知らない、捨てられてきたかあるいはそこで生まれたか、どちらにしろ俺達に親はいなかった。 それまで生きられた事、そして生き抜いてこられた事は幸運という他にないだろう。 廃棄区画にいたはぐれ自動人形を俺が弄り、綾がそれを使い俺達は8歳になる頃には廃棄区画から出る事が出来た。 入るのは容易でも出るのは困難極るとされる廃棄区画から10にもならない子供が廃棄区画から外に出たのは、おそらくは俺達が最初だろう。 初めて陽の光を目にしたあの時の事は今でも忘れられない。 外での戸籍を持たない子供に過ぎない俺達は、それでも運よく施設に保護され戸籍を得る事が出来た。 とはいえ施設に関して感謝するつもりは今でもない。廃棄区画程ではないといえ、あそこも最低に類する場所だっただから。 結局、俺達はそこからも飛び出した。 ただ生きるだけなら廃棄区画出身の俺達には十分出来た。 だが、ただ生きるだけでは足りないと貪欲に知識を力を求めた。 それだけの才もあったのだろうが何よりも貪欲さによって、若くして俺は人形師の天才と呼ばれ、綾も人形遣いとして一流と呼べるだけの実力者になった。 そう、何時も俺達は一緒だった。あの場所からずっと共に歩いてきた。お互いに支え合い拠り所にして戦い生き抜いてきた半身だった。 ● ふと、止まっていた手を動かし道具を片付ける。 目の前に鎮座した黒は既に完璧に修理されている。 綾が使っていた3体のうち、完全に壊れていなかった緑をベースに赤と青の部品を組み込み修理した自動人形。それぞれに特化した3体の部品を使っているせいで非常にバランスが悪く、その性能は小さく纏めるしか無かった。戦闘用自動人形としてはギリギリ中堅どころの性能があるかどうかというところだ。 窓の外を見ればすっかり日が昇っている。 実戦使用は初だった白を念入りに整備し、そして黒の修理と結局一睡もしていない。いや、しないようにしていたか。 ジャックのあの手帳の中身を考えたくなくて、作業に没頭していたのだから。 あの手帳の内容は正しいと認める自分がいる。 ならば迷う事はないという自分がいる。 確かにあの内容の、俺の過ちの指摘は最もだろうと納得する自分がいる。 しかし、それで綾が取り戻せるとはまた別だと断じる自分がいる。 手帳の内容を頭から追い出すように頭を振る。徹夜明けの頭痛が頭に響くが、それが今はありがたい。 ともあれ、コーヒーでも淹れるべきかと思ったその時、カランカランと鈴の音を立てて工房のドアが開く。 そちらに振り向けば、意外な来客がそこにいた。 「……久しぶり。というべきかな、二代目さん」 「昔軽く顔を合わせたぐらいだろう。堕ちた天才」 古物商『縁起屋』の主、水仙寺千多が、そこにいた。 [No.32] 2011/04/24(Sun) 22:50:02 |