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No.344へ返信

all コテファテ再録2 - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:48:27 [No.326]
少女偽曲T - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:49:23 [No.327]
少女偽曲U - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:50:06 [No.328]
運命の名 - きうい - 2011/05/23(Mon) 21:50:49 [No.329]
欠損英雄W - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:51:28 [No.330]
欠損英雄X - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:51:55 [No.331]
平穏の狭間T−2 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:52:42 [No.332]
イレギュラーT - ジョニー - 2011/05/23(Mon) 21:53:11 [No.333]
天命に至る道 - きうい - 2011/05/23(Mon) 21:53:58 [No.334]
イレギュラーU - ジョニー - 2011/05/23(Mon) 21:54:55 [No.335]
宿命への直言 - きうい - 2011/05/23(Mon) 21:55:36 [No.336]
殺神夜会T - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:56:15 [No.337]
星の巡り - きうい - 2011/05/23(Mon) 21:56:58 [No.338]
少女偽曲V - アズミ - 2011/05/23(Mon) 21:57:56 [No.339]
日常の狭間T−3 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 21:59:23 [No.340]
殺神夜会U - アズミ - 2011/05/23(Mon) 22:00:04 [No.341]
イレギュラーV - ジョニー - 2011/05/23(Mon) 22:00:44 [No.342]
殺神夜会V - アズミ - 2011/05/23(Mon) 22:02:11 [No.343]
歪な因果 - きうい - 2011/05/23(Mon) 22:02:50 [No.344]
殺神夜会W - アズミ - 2011/05/23(Mon) 22:03:34 [No.345]
『其』の時 - きうい - 2011/05/23(Mon) 22:04:13 [No.346]
虚構彩る勝利の剣―1 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 22:05:05 [No.347]
虚構彩る勝利の剣―2 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 22:05:39 [No.348]
虚構彩る勝利の剣―3 - 咲凪 - 2011/05/23(Mon) 22:06:10 [No.349]
虚構彩る勝利の剣―4 - アズミ - 2011/05/23(Mon) 22:06:44 [No.350]
天幕模様T - アズミ - 2011/05/23(Mon) 22:07:16 [No.351]


歪な因果 (No.343 への返信) - きうい

 「……想定、内だ。」

 一階の喧騒を耳に入れながら、橋口圭司は、胡桃の実を齧った。


――

 モール一階は地獄の様相を呈していた。
 刃が、鈍器が、拳が。
 火が、風が、水が。

 一人の男を獄卒さながらに襲っていた。

 「ふん。」

 荒れ狂う地獄をしかし、男は悠然と歩く。

 刃には盾を向け、鈍器は薙ぎ払い、拳を迎撃する。
 火には水を当て、風は堰き止め、水は弾く。

 それはすべて、彼を覆う光球が為した事であった。

 襲撃の雨は止まない。
 だが男は。志摩空涯は、文字通り露ほどにも構わず歩む。
 歩みながら、辺りを注意深く観察する。

 ――床の水には粘りがある。何かを溶かしたらしい。
 ――彼らの足元を避けるように水が動いている。設置型の術か、制御者がいるか。
 ――この数、この能力……サーヴァントは十中八九……。

 「砦の主」に思いを馳せつつ、志摩空涯は動かないエスカレーターへと歩を進めた。

 ギャアアアン

 頭上で響いた衝突音に、空涯は宙を見上げた。
 背広姿の大柄な男が、長い棒をこちらに向けている。

 「防ぐか。」
 「貴様が、砦の主か。」

 空涯の頭の上には、光が傘のように開き、大男の攻撃を弾いていた。

 「なるほど。」

 ――水か。

 空涯は一人ごちると、何事もなかったかのように前進する。
 まるで、エスカレーターが稼働しているかのように、空涯は滑らかに黒い階段を上っていく。

 大男の棒から暫くは刃の如き水が放水されたが、やがてそれも止む。空涯が二階に上る頃には、男は棒を水平に構え、接近戦に備えていた。

――――――

 間が悪いな。
 橋口圭司は正直なところ、天命さえ恨んでいた。

 選りにも選って、あの最悪が来なくてもいいじゃないか。

 あの時あの踏切に居たはずの、異形の魔術師。
 それが、整い切らぬ陣に踏み込んで来た。

 神秘(ミステル)を求める魔術師の性質、と言えばそれまでだが、強大な魔術師は『何をしでかすかわからない』。
 常人では思いいたらぬ方法を、常人には届き得ぬ行動力でやってのけてしまう。それが、求道する魔術師だ。

 そのことを、覚悟はしていた。
 覚悟など、身の助けにはならないと、知りつつも。

 エスカレーターを挟み、二人の男が対峙する。

 「『首魁』は、不在か?」

 男の言葉に三方の水の槍で返礼する。
 強固な盾、鋭い剣、回転する鋸がそれぞれを防いだ。

 「さあな。」

 橋口は、背に走る冷たい汗を隠すように強く笑った。
 それを見透かしたのか、空涯も口の端を上げる。

 目は、笑っていない。

 「……。」

 今までの抵抗の無力さが、誘いとも思えない。
 年齢は近いが、この男は、魔術師としては『若輩』だ。

 「では、遠慮なく。」

 空涯が上体を軽く前に曲げた。
 突撃の構え。

 あのバカげた球体で押し込むつもりか!冗談じゃない!
 地に撒いた水をかき集め、橋口は水流の防護壁を張る。

 だがそれより早く。
 空涯の球体から、光る矢が撃ちだされた。

 「あ?」

 橋口にできるのは、間抜けな声を漏らすことのみ。
 鋭い矢じりは未だ薄い水の膜を易々と突き破り――

 ギィン。

 金属音。
 光の矢が軌道を曲げられ天井へ刺さる。
 矢を弾いたのは中華剣。
 それを手に持つは灰色髪の少女。
 エスカレーターからロケットのように現れ、主の命を守った。

 一階から揺れるような雄たけびが聞こえる。

 「君が、『首魁』か。」

 空涯には動じるところもない。
 既に真名のわかっているサーヴァントなど、恐れるに足らず。

 少女もそれを察したのか、主を顔色を一瞬うかがった後、高らかに名乗った。

 「我は天魁星が化身、宋江!
 義に依って貴殿を討つ者である!」

 一階から、雄たけびと共に義侠の濁流がなだれ込んだ。


[No.344] 2011/05/23(Mon) 22:02:50

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