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赤の退魔剣士3 - ありくい - 2011/04/24(Sun) 22:51:24 [No.34]
人形の視座1 - 桐瀬 - 2011/04/24(Sun) 22:51:59 [No.35]


人形の視座1 (No.34 への返信) - 桐瀬

「貴様、どこまで本気だ」

「どこまで?僕はいつだって本気さ」

思考を模した人形と言うのは話し相手としては最悪だと一日草は思う。
最低限喋る機能しか備えていない為、表情から何かを読みとる事も出来ない。
暗くて表情は判り辛いが、ミリアからも苛立ちが伝わってくるようだった。

「何故禁忌人形など作ろうと考えた」

「彼女が望んだからさ。
 僕と『同じ』空気を吸いたい。僕と『同じ』モノを食べたい。
 僕と『同じ』になりたい、と」

「望んだ、だと……?」

「そう。だから僕は、愛する彼女の為に尽くした。欲しいモノを手に入れた」

同じになりたいとはどういう事だろうか。
愛されたいと思うことなら判る。一日草も人形の端くれである以上、一定以上人間から愛されたいと思う気持ちはある。
何かがほしい、という気持ちも判る。ある程度行動に弾力性を持たせるために、自動人形にもほどほどの欲求は備わっている……はずである。

しかし、同じ空気を吸いたい、同じものを食べたい、とは。
それは自動人形としてはひどく不自然な欲求に思える。
基本的に自分達は、今の自分達あるいは環境に出来る以上の事は求めない。
それは自分達の能力を客観的によく把握しているからであり、自分達の立場を認識しているからであり、そして主に無理な要求をして愛想を尽かされない為でもあり……要は箍である。
何かになりたい、と思えばまず自分達で行動して何とかしようとする。
一日草も今回の一件はそもそも自分で何とかしようと思ったわけで、ミリアに話を振ったのはその為に参考意見を伺う程度だったのだが、どうも話の切り出し方がおかしかったようで今に至る。
ともあれ、意図的に設計されたわけではないが、総合的にそういう箍が出来上がっているのであると一日草は認識している。

あるいは昔の自分なら、そんな気持ちも理解できた事もあったのだろうか、などとも少し思ったりもする。

「……質問を変えようか。貴様の人形の居場所はどこだ」

一日草が考え込んでいるうちに、話は進んでいたようだ。
ミリアの苛立ちは最高潮に達しているようにも見えるが、基本的に不機嫌なので本当のところは判らないと思う。

「聞いてどうするつもりかな?」

「それに答える義理はないな」

「ならば僕も同じ答えを返そう」

「……そうか」

それだけ言って、ランプを床に置き空いた手でポケットからメスを取りだす。

「『切断』」

メッセンジャーに近付くと、メスを一振りしてその頭部を斬り落とす。
あまりに警戒心の無さ過ぎる動きに、一日草は器官が冷える思いだったが、突然爆発したりというようなことはなかったようだ。

「ミリアさん、危ないですよ!安全だと思ったら急に――!なんて日常茶飯事……らしいんですから!」

「バカに言われなくても判ってる。こっちだって計算はして動いてるんだ」

「こんな時にまでそんな事言わなく――!」

「静かにしろ。誰か来ても面倒だからさっさと帰るぞ。ランプはお前が持て」

言うが早いが、ミリアはさっさと地下倉庫から出て行こうとしたので、一日草は慌ててランプを拾ってそれを追った。

「でも、まだ殆ど手掛かり見つけてませんよ……?」

「あんなメッセンジャーを残してたんだ。もうここにはそんなに重要なモノは残って無いだろう」

その言葉を聞いて肩を落とした一日草を見て、ミリアは付け足した。

「……だがまあ、人形師が階差機関を残していくのは片手落ちとしか言いようがないな」

「……どういう事ですか?」

「こいつをバラして解析してみたら何かが出てくるかもしれないという事だ。
 手が足りなければ知ってる技師を叩き起こしてでも手伝わせる。
 人形の限界を知りながら『壊した』不肖の研究員に、一発くれてやらんと気が済まんからな」


[No.35] 2011/04/24(Sun) 22:51:59

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