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No.365へ返信

all コテファテ再録3 - アズミ - 2011/05/24(Tue) 21:56:45 [No.352]
天幕模様U - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 21:57:20 [No.353]
天幕模様V - アズミ - 2011/05/24(Tue) 21:58:00 [No.354]
天幕模様W - アズミ - 2011/05/24(Tue) 21:58:43 [No.355]
悟睡の日T - アズミ - 2011/05/24(Tue) 21:59:21 [No.356]
悟睡の日U - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:00:00 [No.357]
悟睡の日V - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:00:38 [No.358]
民の太陽と - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:01:20 [No.359]
悟睡の日W - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:02:05 [No.360]
悟睡の日X - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:03:08 [No.361]
悟睡の日Y - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:04:00 [No.362]
透る射界T - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:05:00 [No.363]
透る射界U - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:05:39 [No.364]
透る射界V - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:06:16 [No.365]
その他大勢のためだけの - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:07:00 [No.366]
透る射界W - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:07:38 [No.367]
透る射界X - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:11:58 [No.368]
透る射界Y - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:13:42 [No.369]
執終の王T - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:14:30 [No.370]
抵抗と救難 - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:15:10 [No.371]
執終の王U - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:15:51 [No.372]
宿命の帝王 - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:16:32 [No.373]
執終の王V - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:17:10 [No.374]
執終の王W - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:17:53 [No.375]
暫時の会談 - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:18:51 [No.376]
少女偽曲W - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:19:33 [No.377]
天幕模様X - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:20:10 [No.378]
暗く蠢く - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:20:36 [No.379]


透る射界V (No.364 への返信) - 咲凪

 致命傷を受けたライダーは、まさに風前の灯火だった。

 マリナの治癒魔術は精密かつ高度なものであったが、奇跡で付けられた傷を癒す事は出来ない。
 ましてや、奇跡で受けたその傷は――すなわち、アーチャーの宝具を受けたその傷は、治癒の速度を大きく上回る程の致命傷だった。

「――そんな顔をするな」
「ライダー!」

 その絶大な傷を負って、なお英霊の口から出たのはマリナの身を思う言葉だった。

「――なんたる無様、だがあの攻撃、おそらくはアーチャー……」
「良い、良いから!、喋ったら傷が!」
「――あぁ」

 狼狽するマスターに、ライダーは苦笑した。
 まったくマリナの言うとおりで、少し喋っただけで、彼の喉の奥から血の塊が溢れてきた。
 なんという無様――彼女というマスターに恵まれて、自分の手は、またも届かないらしい。
 ライダーの苦笑は自嘲から来るものであったし、怒りから来るものであった、無論それはアーチャーに対してではなく、自分自身に対しての。

 彼は英霊だが、何も救えない英霊だった。

 闘わなければならない、救わなければいけない状況に居た、
 救わなければならない、救おうと思い立ち上がり、そして闘った。
 しかし、その想いの悉くは届かなかったのだ。
 ただ一人の手も拾いあげる事が出来ず、彼は絶望しながら英霊になったのだ。
 聖杯戦争で召還されても、同じ事の繰り返しであったと、彼は自嘲したのだ。
 潔く散るのが華と思いつつも、諦める事は出来なかった。

 最後に見た主の表情が、あんなに不安を抱えた顔では、どうして散る事など出来様か。
 出来はしない、出来るはずが無い、今まで誰一人救えなかった、だからこそ、誰かを助けられる自分を得る為に聖杯戦争に馳せ参じたのだ、ならばどうして――この娘の不安を拭わない、拭えない。
 彼の存在を支えていたのは、あるいはその感情故だったのかもしれない、それは怒りに似ていたが、明確に悲しみの念であった、深い深紅の――悲しみの念だ。

 だがそれも限界、もはや風前の灯火も、消えようとしていた――。

「まだ貴公は散る運命では無い」
「ラン、サー……」

 その黒い鎧の槍兵が居なければ、確実にそうなっていたであろう。
 その手にはいつぞや見た槍が握られていた、あの黒い英霊を討ち滅ぼした槍だ、さすがに瀕死の己にそれを振るうとはライダーも思わなかったので、ランサーの意図が掴みかねた。
 マリナもだ、この場で対城宝具を出した事で抗議の視線を康一に向けた。

「どういうつもり?」
「言った筈だ、傷はこっちで何とかするってな」
「だって……!」

 マリナが見たあの宝具は、対城宝具……武器の筈だ、傷を癒せるはずが――――いや。
 確かにあの時聞いた、あの槍の真名を、ならば、だとすれば――――マリナは康一に向けていた視線を槍兵に戻し、そしてその手の槍の穂先へと差し向けた。
 ライダーの傷へと当てられた槍の穂先は、斬りつける為では無いのは勿論、逆にそれは――慈悲深く、温かい赦しの手のようであった。

「貴公はまだやるべき事がある筈だ、私に見栄を切ったのだから、その意地を通して貰う」

 ランサーの脳裏に、偽りのアーサー王と対峙した時のライダーの言葉が過ぎった。
 やるべき事が判っている筈だ、とそう言っていた、随分偉そうに言われたものだとランサーは思ったが――あえて、その言葉を自分も選んだ。

「やるべき事は判っている筈だ、応えろ、ライダー!」

 路地の小さな一角に、清浄な光が満ちた、暖かい赦しの――――光が。



 アーチャーは弓に新たな矢をつがえる手を止めた。
 結果として不意を討たれずには済んだが――――東から彼に近づいてきた男は、元より不意を打つという戦い方を嫌う性分だ、振り向かれたのはむしろ好都合であった。
 ――――まぁ、あくまで彼の内心においてのみ、だが。

「貴様、なんでそこに居る」
「何故とはよく聞いたものだな、サーヴァントがサーヴァントの前に居るんだ、茶を飲みに来たという事はあるまいよ」
「違いない」

 アーチャーは男が意外と飄々とした言い回しをしたので、愉快そうにくっくと笑った。
 だが彼の内心には滾るものがある、目の前の敵に対する期待か、苛立ちか、それとも疑問か、あるいはその総てか。
 だが一番強いのはやはり疑問であった、何故、あの男がこうして目の前に立っているのか、本当に不思議であったのだ。

「だが、そういう問いじゃないんだ、判るだろ?。 ――――何故立っている、確かに貴様の心の臓、貫いた筈だぞ、ライダー」
「さてな、だが――――そうさな」

 アーチャーに立ち塞がる男、赤い瞳のライダーは槍を構えて、真正面から闘った方が強いこの男に、知ってか知らずか、真正面から立ち向かい――。

「やらなければいけない事は判っていたのでな、やらない訳には行くまい」
「そうかい!」

 アーチャーはライダーがあくまで回復の理由を明かす気が無いと悟ると、改めて臨戦の構えを取った。
 英雄になりきれない英雄と、英雄の中の英雄は、こうして――――対峙した。



Sword, or death

with What in your hand...?

Flame dancing,
Earth splitting,
Ocean withering...


[No.365] 2011/05/24(Tue) 22:06:16

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