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No.381へ返信

all コテファテ再録4 - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:33:01 [No.380]
天幕模様Y - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:33:40 [No.381]
透る射界Z - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:34:18 [No.382]
崩壊境界T - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:37:01 [No.383]
神王の息 - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:37:44 [No.384]
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血宴の絆X - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:48:57 [No.397]
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レアルタ・ヌアV - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:53:21 [No.402]
赤色偽剣U - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:53:57 [No.403]


天幕模様Y (No.380 への返信) - ジョニー

「うにゅ……?」

 気づけば、希は不思議な空間にいた。
 上も下のないようでいて、それでいて足場はある。まるで透明なガラス張りの床に立っているような感覚。

「……此処は?」

 きょろきょろと辺りを見回すがただ何もない空間が広がっている。
 何故、こんなところにいるのだろうと考えて、ゲイボルクに貫かれた事を思い出す。

「にゅ、此処…あの世なの?」

「いや、あの世じゃねぇぜ。近いちゃ、近いがな」

 若干青くなった顔で呟くと、その呟きへの返事が聞こえ、勢いよく振り返る。

「………え?」

 そこにいた人物に希は見覚えがあった。
 希が知るただ戦うだけの黒い存在と違い、ニヤニヤとからかう様な笑みを浮かべた青い装束に身を包んだ男は、纏う衣装の色と何よりも感情をよく表した表情の違いはあれど、両腕で支え肩に担ぎ首の後ろに回されたその男を現す嚇い槍に違いはなく、黒化英霊のランサーその人だった。

「サーヴァント、ランサー。召喚に応じ参上した…だったら、よかったんだどけよぉ」

 希の背に合わせてしゃがみ込んだランサーは悪戯めいた笑みを苦笑に変える。
 どうしてか希は彼を警戒する気にはなれなかった。それはランサーがまるで敵対する意思を見せないからか、それとも他になにか理由があるのかは希にも分からない。

「やれやれ、ちゃんとサーヴァントとして呼ばれてれば思う存分戦えたはずなのによ」

「え、えっと……」

「ん、あぁすまねぇな。まぁどっかのインチキ神父に従うよりはずっといいさ。
さて、穣ちゃん。俺の槍を受け取り、俺の力を宿して戦う覚悟はあるか?」

 ポカンと付いていけない希に問うランサー。
 その言葉を理解するのに数秒を要した、そして理解すると同時に疑問が浮かぶ。

「にゅ、それってどういうことなの?」

「んー、簡単に言えばだな。そのカードの本当の使い方をするつもりはあるかってことだ」

 ランサーが希の身に付けたカードケースを、正確にはそこに収まる『ランサー』のクラスカードを指さす。

「本当の、使い方?」

「おぅ、いわばあの気にくわねぇ黒化英霊のような英霊の力だけをその身に宿すってことだ。
まぁこの場合は一時的に俺の力を宿して穣ちゃんは穣ちゃんのまま俺と同じになるってことだ」

「んっと、分かるような分からな言う様な?
でも、黒化英霊と同じならなんでランサーはこうして意思を持って接触できてるの?」

 希のその疑問に、感心したような顔を浮かべる。

「へっ、あと10年後が楽しみな穣ちゃんだな。
俺と穣ちゃんが接触出来たのは、穣ちゃんが俺の槍に心臓を貫かれただろうな、他にも今回のランサーの宝具で蘇生したからってのもあるかもしれねぇが、詳しくはわからん」

「うにゃ、まぁ分からないのは仕方ないの」

 理由は不明でも、今二人がこうして出会っているのは事実なのだから。

「そういうこった。で、そういう詳しい事はよくわからん状態だからか。本来は俺の"力の一旦"を穣ちゃんに"上書き"するだけなんだろうが、それよりもうちょい進んだことが出来そうなんでな」

「進んだ、こと?」

「おぅ、俺の基礎的な戦闘能力だけじゃなく経験や知識なんかの一部も穣ちゃんに与えられそうだな。
存在を上書きする疑似召喚に加えて、ちょっとした憑依召喚も追加ってとこか」

 トンデモないことをさらっと言われた。
 戦闘能力だけが同じだけでは真実英霊には届かない。ルビーを振るって英雄に等しい力を行使できる希にはそれがよくわかる。だが、それに経験や知識などが加われば、力だけの状態と比べればその差は比べ物にならないだろう。

「その所為で俺の力を夢幻召喚(インストール)したら、幾らか俺に引っ張られるだろうけどな。
憑依召喚みたいなもんも含まれるし、送還されればインストール中の経験は俺の座に多分来るだろうから、俺もこの聖杯戦争をちっとばかし楽しめるって寸法よ」

 自分自身が戦える訳ではないが、それでも疑似的に聖杯戦争で戦えるのだから強敵と戦いたいランサーには好条件といえる。

「で、最初の問いに戻るぜ。
俺の力を受け入れるなら、きっと穣ちゃんでもサーヴァント相手に早々負けはしねぇだろうし、こうなった原因のようにアレ相手に無力ってことはないだろ。
ただし、俺の力を振るうってことはそれだけ死に近い場所に身を置くことになるぜ」

 何故ならそれは疑似サーヴァントと言っても過言ではない。今までのように英霊に近いスペックに短時間のみ宝具が使えるという限定的なものではない。
 当然、明確な敵と認識されやすくなるだろうし、危険な魔術師に知られれば命も危うい。

「それでも、あたしは戦うよ。
あたしだって天川当主の娘、普通に過ごす人達を襲う理不尽な力から一般人を護るための理不尽、表と裏の境界線を護る者なの。
それに、きっとお兄ちゃんはクラスカードと血管以外では聖杯戦争にあたしを関わらせるつもりはもうないんだろうけど、でもあたしは戦うの。
だって、家族を護るのは、家族と一緒に戦うのは当然なの!」

「はっ! 言うねぇ、じゃあ契約といくぜ」

 希の宣言に、ランサーがニヤリと獰猛な笑みを浮かべる。
 その言葉に希が頷くと同時に希の足元に魔法陣が描かれる。


「―――告げる!

汝の身は我に、汝の槍は我が手に!

聖杯のよるべに従い、この意この理に従うならば応えよ!

誓いを此処に!

我は常世総ての善と成る者!我は常世総ての悪を敷く者!

汝、三大の言霊を纏う七天!

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手―――!」







「いやー、一度死んだ所為か、それともランサーの宝具の所為か。
希さんの魔術回路、数だけは一流から、質も一流魔術師の魔術回路と同等以上になってますね」

 流れた失われた血を補うアサシンによる処置が終わって、もう心配はない状態になってルビーがそんな事を言った。

「そんなことがありえるのか?」

「普通はないと思いますけど、実際なってますしねー。宝具の副作用かなんかじゃないですか?」

 随分都合のいい副作用ですけどね。
 そんな事を言うルビーに、本当になと頷く。

「で、どうだ?」

「そうですね。今晩は念のため、このまま治癒促進(リジェネーション)を続けますけど、明日にはまったく問題ないと思いますよ」

「そう、か。よかった」

 ほっと一息をつく。
 大丈夫だと分かっていても、やはり心配なものは心配だった。
 この先、勇治は希を最低限の戦い以外に関わらせる気はなくなっていた。
 が、それは朝起きた時、希本人によって否定されるのは今の勇治には知る由もなかった。


[No.381] 2011/05/24(Tue) 22:33:40

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