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No.390へ返信

all コテファテ再録4 - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:33:01 [No.380]
天幕模様Y - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:33:40 [No.381]
透る射界Z - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:34:18 [No.382]
崩壊境界T - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:37:01 [No.383]
神王の息 - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:37:44 [No.384]
神王の息U - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:38:14 [No.385]
神王の息V - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:41:44 [No.386]
少女偽曲X - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:42:26 [No.387]
血宴の絆T - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:43:03 [No.388]
血宴の絆U - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:43:40 [No.389]
神王の息X - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:44:28 [No.390]
暗く蠢くU - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:45:10 [No.391]
少女偽曲Y - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:45:49 [No.392]
螺旋血管T - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:46:21 [No.393]
赤色偽剣T - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:47:00 [No.394]
血宴の絆V - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:47:39 [No.395]
血宴の絆W - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:48:13 [No.396]
血宴の絆X - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:48:57 [No.397]
血宴の絆Y - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:49:41 [No.398]
義侠舞曲T - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:50:45 [No.399]
レアルタ・ヌアT - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:51:33 [No.400]
レアルタ・ヌアU - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:52:47 [No.401]
レアルタ・ヌアV - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:53:21 [No.402]
赤色偽剣U - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:53:57 [No.403]


神王の息X (No.389 への返信) - きうい

 「……。」
 「……。」

 高層マンションの一室。
 男二人が項垂れて食事をしている。

 いつもは

 「海苔サイコー!」

 などと喚くキャスターも、鎮痛な面持ちでコンビニおにぎりをパリパリ言わせている。

 三角巾に吊るされた橋口凛土の右手が、事態の深刻さを物語っていた。

 彼らには、治癒術がない。
 いや、治癒術どころか魔術といえるようなものは橋口凛土にはおよそ無かった。

 今回のライダーとの戦いにおいては、出来うる限りの最善を並べた。
 消耗を待ち、陽動をしかけ、マスターの虚を突きナイフを突き立てるところまで成功した。
 それで敗北したのだから、凡そ為す術が無い。

 キャスターはキャスターで凹んでいる。

 英霊とは言え、人類由来の(今回のライダーに関してはその認識も正しいとは言えないが)存在に、ああも防御されきるとは。
 「目くらまし用に制御していた」というのも言い訳にはならない。

 英霊の魔術防御力を舐めていた。

 消耗したライダーに対してさえダメージ無しなのだから、他のクラスとの戦闘など……。

 つまるところ、彼らは魔術においても戦闘においても素人だったと言わざるを得ない。
 彼らはただただ無為に敗北するために参加したようなものだったのだ。


 「……。」
 「……。魔力が足りん。」

 ポツリと言ったのはキャスターだった。

 地球圏外の生命体を由来とする『キャスター』は、その最盛期には地球の抑止力を発動させるほどの力を持っていた。
 今は西欧の田舎騎士一人粛清できない。
 王様は、大いに大いに不満である。

 「わかってるけどね。」

 魔術回路を体内に持つとは言え、凛土の『本性』は考古学者だ。魔術になど大した興味は無く、そんな暇があれば史跡の一つでも見に行きたい。
 彼が聖杯に望むのも、「人類に関する全ての事実の記憶」。
 考古学を完成させるチャンスが巡って来たのに、考古学が好きすぎるせいで夢を阻まれるのはどうにも納得が行かない。

 「魔力って何だろう。」
 「……。」

 サーヴァントのマスターらしからぬ言葉が橋口の口から出たのを聞いて、キャスターは深い深いため息をついた。

 「我らのピラミッドにでも行くか?」
 「調べてる時間は無いね。」
 「バーサーカーから貰って来るか?」
 「僕の体には合わんだろう、圭司君の仙術は。」
 「注文の多い男だ!」
 「悪かったね!」

 はぁ。

 二人してため息。

 彼らが敗北した七貴マリナには、確かな経験があった。
 自らの血液を刃と化す魔術。それを澱み無く行なえる才能と経験が。つまるところ、魔術の『地力』があった。
 橋口には『死者の書』しかない。

 「時間をかけることはできない。」

 聖杯戦争は既に始まっている。仮令魔術の習得に時間をかけることが可能だったとしても、七貴マリナを初めとする他のマスター達も『同じ時間の分成長する』。彼らモノホンの魔術師に追いつけるかどうかは甚だ疑問だ。

 「老人が若者に勝とうと足掻くな。醜い。」

 キャスターは橋口の悩みを一蹴した。

 「どうしろって言うんだ。」
 「老人は、若者に勝つのではない。
  彼らが生まれたときから
  『既に勝者として君臨していなければならないのだ』。
  今持てる力でその地位を守るために足掻くのが、大人の役目である。」
 「僕には何も無い。」
 「この我を引き当てたではないか。」
 「……。」

 確かに、英霊は数あれど『太陽の力をそのまま引っ張り出せる』存在は数少ない。そこまでいくと、大抵は英霊ではなく神か邪神の類になってしまう。
 そう考えると、『太陽王』アメンホテプ4世は、キャスターとして召喚できる存在の中では、跳びぬけたポテンシャルを持っているといっていい。それは橋口にも分かる。
 キャスターが己の力を最大限まで使うことができれば、焼けぬもの、干からびぬものはこの地上に存在しない。

 となると。

 「やっぱり僕の魔力不足が原因なんじゃないか!」

 キャスターの『宇宙の力の召喚』が行なえないから、あまつさえ『死者の書』でさえ瞬間移動の媒体にしか使えないから。
 橋口に魔術師たるだけの力が無いからこんな事態になっているのだ。
 堂々巡りではないか。

 「だから言ったであろう。
  『ピラミッドにでも行くか?』と。」

 キャスターが己のマスターを見下ろす。

 「……盗掘しろっての?」
 「考古学者はそれが仕事だろがアホンダラ。
  そもそも、我が我の忘れ物をとりに行くことを、『盗む』とは言わん。」
 「いや、君の副葬品はもうとっくに盗られまくってるけど。」
 「エジプト考古学美術館。」
 「犯罪だから。」
 「何を今更。」
 「……英霊って戦闘区域外に出られるんだっけ?」
 「何だったらその間は死者の国で待ってるからお前一人で取りに行けばいい。」

 ふん、とキャスターは胸を張る。

 「結局付け焼刃かぁ。」
 「装飾は王の嗜み。恥じるところなどあるものか。
  それにピラミッドは我ら歴代の王(ファラオ)の墳墓、永遠の座。
  余人はともかく、我のマスターたるお前と、その『死者の書』。
  墓の中で一晩も星が巡れば、お前如きでは手に負えぬほどの魔力が溢れるわ。」
 「圭司君には連絡をしておくか。」

 劃して、作戦名『精神と時の部屋』発動。

 その日、エジプト考古学美術館にて、荒されまくっていた自分の遺体を見て大泣きするファラオの姿が防犯カメラに写っていたとか、いないとか。

−−−−

 「不器用な兄ちゃんだ。」

 橋口圭司はため息をついて携帯電話を畳んだ。

 「キャスターのマスターは何と。」
 「『暫く家を空ける。凄いお土産を持って帰るから楽しみにしといて』だと。」

 廃モールは要塞化が徐々に進んでおり、バッテリーによる明かりも点いていた。
 水道は通っていないが、代わりに給水器を持ち込んでいる。
 食料置き場、寝床も、粗雑なりに確保されている。

 「油断なりませんね。
  何となれば、彼のマスターは、貴方に恨みを持っていてもおかしくない。
  しかも一度この砦を見ています。」
 「それはいい。」
 「いいのですか。」
 「いいんだ。それより服を着ろ。」

 橋口圭司の前には、バーサーカー、扈三娘と孫二娘がそれぞれ一糸纏わぬ姿で立っていた。

 「いや、もう一周して来ようかと。」
 「恥じろ!」
 「魔力の供給が必要ですので。」
 「だったら召喚すんな梁山泊を!」

 彼女らの後ろには、体液まみれでどろどろになっている、打倒橋口凛吾を目指す同志たち死屍累々。

 「暇なときにはこれしかすることが。」
 「馬鹿者がー!」

 圭司の構えた三尖刀が、同志たちに消火栓さながらの強烈なシャワーをお見舞いした。


[No.390] 2011/05/24(Tue) 22:44:28

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