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No.395へ返信

all コテファテ再録4 - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:33:01 [No.380]
天幕模様Y - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:33:40 [No.381]
透る射界Z - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:34:18 [No.382]
崩壊境界T - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:37:01 [No.383]
神王の息 - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:37:44 [No.384]
神王の息U - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:38:14 [No.385]
神王の息V - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:41:44 [No.386]
少女偽曲X - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:42:26 [No.387]
血宴の絆T - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:43:03 [No.388]
血宴の絆U - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:43:40 [No.389]
神王の息X - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:44:28 [No.390]
暗く蠢くU - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:45:10 [No.391]
少女偽曲Y - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:45:49 [No.392]
螺旋血管T - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:46:21 [No.393]
赤色偽剣T - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:47:00 [No.394]
血宴の絆V - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:47:39 [No.395]
血宴の絆W - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:48:13 [No.396]
血宴の絆X - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:48:57 [No.397]
血宴の絆Y - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:49:41 [No.398]
義侠舞曲T - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:50:45 [No.399]
レアルタ・ヌアT - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:51:33 [No.400]
レアルタ・ヌアU - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:52:47 [No.401]
レアルタ・ヌアV - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:53:21 [No.402]
赤色偽剣U - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:53:57 [No.403]


血宴の絆V (No.394 への返信) - アズミ

 それは、ほんの先刻死闘を演じた間柄にしては、あまりに穏やかな接触だった。

「――観念した、という様子ではありませんね」

 セイバーは前方、高架の陰から奇襲するでもなく堂々と現れたランサーと康一を見た。
 傷は未だ治癒していない。先刻の打ち込みで剥がれた籠手や鎧はそのままだし、魔力の消耗も補填できたとは思えない。

「無論です」

 だが。

 だが、セイバーは身体の芯に震えを覚えた。

「我が主を害する敵に、向ける背はありません」

 それは武者震いであり、同時に恐怖から来る震えでもあった。
 何かが変わった。
 最早、先刻の死に体のサーヴァントはどこにもいない。昨日の一戦にすら勝るプレッシャーを感じた。

「――怖いな。まるでさっきとは別人だ」

 言いながらも、セイバーの表情はいつもの柔和な笑み。構えた菊一文字はあくまで戦うことを選んだことを示している。
 ランサーもまたそれに応えた。
 異形の刃、その切っ先が眼前のサーヴァントへ向く。

「――セイバー、沖田総司。
 尋常に勝負」

「受けて立ちましょう、ランサー」





Sword, or death
―――――――――――――
with What in your hand...?

Flame dancing,
Earth splitting,
Ocean withering...





 先に仕掛けたのはランサーだった。
 空間さえも裂けよとばかりに振るわれた剛剣を、セイバーはすんでのところでかわす。
 先刻に比べれば力強いが、しかし以前の埒外な膂力は感じられない。セイバーはその全てを紙一重で回避し、あるいは打ち払ってランサーに肉薄する。

「は――ッ!!」

 至近距離から、狙い澄ました一刺し。無明剣と違い一撃必殺とはいかないものの、並のサーヴァントでは往なすことはかなわない必勝の一手。
 だが、ランサーは冷や汗一つ流すことなく、それを引き戻した剣で打ち払った。

「――へぇ」

 消耗は回復していないようだが、ここに来て剣風が変化している。否、成長とすら表現していい。
 余計な力が抜け、剣筋が柔らかくなった。なるほど、この状況ではそれが最善だ。

「――しかし!」

 返す刀で打ち下ろす一撃を身を捻って潜りぬけ、逆袈裟に切り上げる。しかし、これはランサーの喉笛一歩手前で弾かれた。
 ランサーを庇うように張られた、一本の『糸』。

「俺を忘れるなよ、セイバー」

「チッ……!」

 舌打ち一つだけ残して、セイバーは間合いを取った。
 ランサーは深追いせず、再び剣を青眼に構える。その城壁のように安定した立ち姿を攻め落とすのは、酷く難儀に思えた。

「……あなた、本当にランサーですか?」

「何を、今更」

「短期間でいきなり剣風の変わる手合いは、人間には多いですけどね……英霊にはついぞ聞いたことがない」

 サーヴァントはそれ自体完成した幻想ゆえに身体的に成長することは無い。
 人間的にも、そうだ。何せ既に凡夫の何倍にも濃密な人生を生きて、死んでいるのだ。その先に伸びしろを残しているような人間は普通、いない。

「何にせよ――先を考えていては僕の方が仕留められそうですね」

 セイバーが菊一文字を青眼に構える。
 宝具が来る。康一は直感した。既に対応策の割れた無明剣ではない、それ以上の何かだ。


「『動かねば――闇にへだつや 花と水』……」


 背後の空間から、刀が出現した。1本、2本――瞬く間に数十もの数に膨れ上がる。
 いずれもしみ込んだ返り血が滴り落ちそうなほど使いこまれた実用の太刀。
 無明剣の時に観測された現象に酷似しているが、別物だと康一は判断した。あの時に現れたのはあくまでセイバーの持つそれと同じ刃であったが、今回出現したそれらは見た目も質もばらばらで、統一感が無い。

「――それが貴公の夢の残骸か、セイバー」

 ランサーはその正体を見抜いたように言う。セイバーは自嘲気味に笑って答えた。

「――そうです。
 追って、追って、届かなかった背中。共に死のうと決めた朋友。
 ……結局、英霊になってまで僕が叶えられたのは、その刃と共に戦うことだけだった」

 その言葉に、康一は直観的にその刀の群れの正体を察した。
 あの宝具は、彼の属した人斬り集団、新撰組そのものを顕したものなのだろう。
 沖田総司にとって、新撰組は単なる所属組織以上のものだったはずだ。主要なメンバーは家族同然であり、時代に抗って死線を潜った同輩は、その愛刀以上に彼の中で大きなものだったに違いない。――その身が英霊に変じた今、宝具として結実するほどに。

「……幕引きにしましょう、ランサー」」

 中空に浮かぶ無数の刀を背に殺気を漲らせるその姿は、まさしくセイバー。剣の権化。

「ええ、どう転んだとしても。いや――」

 しかし臆すことなくランサーは真っ向から受けて立った。

「――貴公の敗北を以って、この勝負に決着をつけます」


[No.395] 2011/05/24(Tue) 22:47:39

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