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No.399へ返信

all コテファテ再録4 - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:33:01 [No.380]
天幕模様Y - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:33:40 [No.381]
透る射界Z - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:34:18 [No.382]
崩壊境界T - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:37:01 [No.383]
神王の息 - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:37:44 [No.384]
神王の息U - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:38:14 [No.385]
神王の息V - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:41:44 [No.386]
少女偽曲X - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:42:26 [No.387]
血宴の絆T - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:43:03 [No.388]
血宴の絆U - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:43:40 [No.389]
神王の息X - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:44:28 [No.390]
暗く蠢くU - ジョニー - 2011/05/24(Tue) 22:45:10 [No.391]
少女偽曲Y - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:45:49 [No.392]
螺旋血管T - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:46:21 [No.393]
赤色偽剣T - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:47:00 [No.394]
血宴の絆V - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:47:39 [No.395]
血宴の絆W - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:48:13 [No.396]
血宴の絆X - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:48:57 [No.397]
血宴の絆Y - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:49:41 [No.398]
義侠舞曲T - きうい - 2011/05/24(Tue) 22:50:45 [No.399]
レアルタ・ヌアT - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:51:33 [No.400]
レアルタ・ヌアU - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:52:47 [No.401]
レアルタ・ヌアV - アズミ - 2011/05/24(Tue) 22:53:21 [No.402]
赤色偽剣U - 咲凪 - 2011/05/24(Tue) 22:53:57 [No.403]


義侠舞曲T (No.398 への返信) - きうい

 「で、何故お戻りに。」

 すっかり服を着て、マスターと正座で相対するバーサーカー。
 梁山泊の面々はとうに虚空に還し、打倒橋口凛吾の同志たちも、魔力、というか精力をすっかり抜かれて一人残らずシュラフで睡眠中である。

 「戻って欲しくなかったような言い様だな。」
 「伽に水を差されるのは、趣味ではございませんゆえ。」

 バーサーカーがぷいと横を向いてむくれた。
 怒りたいのはこっちの方だとマスター・橋口圭司が口を開く前に、バーサーカーが真剣な目で向き直った。

 「不逞の輩を、招かねばならなくなりましたし。」
 「何?」

 乗り出す橋口を片手で制して、腰に刷いた剣の柄に手をかける。
 ひゅひゅ、と複数の風切り音が聞こえたかと思うと、バーサーカーは己の主を引きずり転がし自分も棚の影へと走りこんだ。

 それまで彼らがいた場所に、四方八方から鋭利な刃物が通り抜けた。

 「バーサーカー!」

 命じられる前に、バーサーカーは剣を抜き放っていた。

 「――――今正に洪に遇(あ)いたり。
  ――――天に三十六、地に七十二、
  ――――恕助掾iこうさつ)の星、輝くべし。

  ――――扉を開けよ、伏魔殿。」
 
 天に掲げた剣が、虚空から三十六、床から七十二の好漢が出現した。
 そう、虚空から「三十六」。
 天魁星たるバーサーカー自身もまた、改めて虚空より現れたのだ。

 「我が主の命を狙うそなたら、よもや一片の理をも語る余地無し。
  義を持って誅殺す!!」

 バーサーカーの声に、百七星が吼えた。

 「マスター、こちらへ!」
 「おう!」

 溢れ出た好漢達に揉まれながら、圭司は三尖刀を拾い、バーサーカーの横に立つ。

 「では、こちらでお待ちくださいませ。」
 「は?」
 「わたくしも参りますゆえ。お傍におられると危険です。」

 そう言ったバーサーカーの目が血走っている。
 顔も憤怒に歪み、刀を握り締めた手が震えて膨れ上がっている。
 いや、手だけではない。腕も脚も胸も、筋肉が隆起して脈打っている。
――狂化。


 「……俺なんぞにそんなに本気にならなくてもいいのに。」

 ああ、悲しいかな、その一言が遂にバーサーカーの理性を蹴破った。

 「オアアアアアアアアアアアア!!!」

 声にならぬ叫びを上げながら、好漢達を飛び越えバーサーカーが集団の先頭へと躍り出た。

 智多星と神機軍師が東西に別れ扇子を振るえば、
 東に銀槍手が弓を乱れ打ち、
 西に跳澗虎と白花蛇が突撃する。

 神火将がつけた松明に仄かに照らされた敵の姿は、黒い衣服に髑髏の仮面。異様に長い右腕。

 サーヴァント・アサシン。真名、ハサン・サッバーハ。

 暗殺集団ハサンに属した殺人者達の、亡霊の集合体。

 「なるほど、黒化英霊が来たか。」

 通達は圭司の元にも届いていた。話に聞いていた『アサシン』、単純な膂力や魔力は他のクラスに譲るものの、気づかれずに殺すということにかけては天下一品。

 しかし、黒化しているということは闘争本能以外の思考能力が殆ど欠落しているということでもあり、それは『アサシン』という搦め手を本懐とする英霊にとっては致命的な欠陥と言えた。

 20に分身したアサシンは統率した動きこそ見せていたものの、好漢の群れに飲み込まれるように倒されて行った。

 自慢の毒付き投げダークが好漢達を屠っても、その屍を乗り越えて更なる好漢が押し寄せる。
 身軽さに任せて逃げを打とうと棚に飛び乗れば、数十の矢、投げ刀、入雲竜の五雷正法が殺到して叩き落とす。

 『単純な膂力や魔力』を比べさせられることになった時点で、最早アサシンに勝てる見込みは無かった。

 一人だけ、ひっそりと気配を殺したまま潜むアサシンが居た。
 バーサーカー『宋江』、否、『梁山泊』の魔力供給源たるマスター・橋口圭司の頭上に、ゆっくりと天井を這い、狙いを定める。

 両足と片手で天井にしっかと張り付き、ニ、三度素振りをする。
 荒れ狂い飛び回る好漢たちの隙間を付き、橋口圭司の脳天にダークを向けた。
 その時。

 「きえええええっ!」

 気合一閃、バーサーカーが飛び掛り、その最後のアサシンを真っ二つにした。
 圭司の三尖刀に払いのけられたアサシンの死体が、エーテルとなって霧散する。

 ずどん、と橋口の横に降り立ったバーサーカーが、そのまま勝ち鬨をあげると、モールには、揺れんばかりの好漢の雄叫びが響き渡った。

――――

 「しっかし、真上の奴よくわかったな。」

 戦いが終わり、再びモールに静寂が訪れた。
 片付けをしながら、圭司は同じく作業中のバーサーカーに疑問を投げる。
 アサシンは、完璧に気配を遮断していたはずだ。

 「愛です。」

 そう言い切るバーサーカーの目に、一点の曇りも無かった。

 実際は、攻撃態勢に移ったことでアサシンの気配遮断への集中が僅かに途切れたのが原因だったのだが、それを察することが出来たのも圭司へ向けられる殺気に始終気を配っていたからだと思えば、なるほど愛の力と言うのもあながち嘘ではない。
 狂化状態であったのなら尚の事。

 「なら浮気すんなよ。」
 「体の浮気と心の浮気は違うと聞きました。」

 圭司の抗議にもしゃあしゃあと言ってのける。

 「浮気と言って下さるのですね。
  嫉妬して下さるのですね。」
 「天魁星宋江はそういうキャラじゃないと思うんだが。」
 「何を今更仰るのですか。
  サーヴァントはマスターの魂に共鳴して呼ばれるのです。
  そして我らは男と女。
  閉じてしまった物語の先にて、花咲く道の一つや二つはあろうというもの。」
 「そういうもんかな。」
 「わたくしの天運から逃れるおつもりですか?」
 「確かにそれは難しいそうだんだな。
  それに、九天玄女に後ろ髪を引かれたら、とんでもない死に方をしそうだ。」
 「分かればよろしい、いざ契らん♪」

 死の果ての更に果て、結末した物語の先で、呼保義宋江は猛烈に青春をしていた。


[No.399] 2011/05/24(Tue) 22:50:45

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