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No.409へ返信

all コテファテ再録5 - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:20:26 [No.404]
赤色偽剣V - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:21:17 [No.405]
赤色偽剣W - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:22:52 [No.406]
天幕模様Z - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:23:31 [No.407]
装創儀礼T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:24:03 [No.408]
天橋の口 - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:24:38 [No.409]
天幕模様[ - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:25:25 [No.410]
フランケンシュタインの怪物W - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:26:01 [No.411]
天幕模様\ - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:26:38 [No.412]
風車の丘、従者の夢T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:27:23 [No.413]
莫逆神王 - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:28:25 [No.414]
夢城の主T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:29:05 [No.415]
赤色偽剣X - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:29:43 [No.416]
夢城の主U - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:30:19 [No.417]
夢城の主V - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:31:04 [No.418]
夢城の主W - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:31:43 [No.419]
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赤色偽剣Y - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:32:53 [No.421]
夢城の主Y - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:33:29 [No.422]
夢城の主Z - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:34:04 [No.423]
夢城の主[ - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:34:51 [No.424]
血宴の絆Z - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:35:47 [No.425]
安穏の毒 - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:36:25 [No.426]


天橋の口 (No.408 への返信) - きうい

 「へえ、黒化英霊は全部倒れたのか。」

 協会からの知らせを受け取った小太りの男は、さしたる驚きもなさそうに言った。

 「早いな、黒化英霊とやらの知らせが来たのはほんの二、三日前ではないか?」

 男の傍らに立つ、もう一人の痩せた男が首をかしげる。

 「うん。黒化とは言え、呼び出されたのはどれもこれも相当な格のサーヴァントだったはずなんだけど。
 まああれかな?真名が割れていたらやはり対策が取られてしまうのかな。」
 「以前の戦争で斃された者たち、ということは負け癖がついていた。そういうことだな。」

 二人の男はそれぞれの見解を述べる。

 「よかったよ、余計な魔力を消耗しないで済む。」
 「ああ。
  どうするマスター。もう一度奇襲をかけるか?」
 「うーん……。」

 痩せた男の提案に、小太りの男が顎をさすって暫く考えていたが、やがてのんびりと返事をした。

 「やめておこう。」
 「ほう?」
 「君はキャスターだ。
  力を疑うわけじゃないけど、正面から殴りかかって来られるのは骨だろう?」
 「王たる者のする戦ではないな?」
 「君は燃費も悪いしね。
  暫くは、潜伏させてもらうとしよう。」
 「心得た。さて。」

 痩せた男が背を伸ばし、辺りを見まわす。
 彼らの周囲を、血管の亜人達が取り囲んでいた。
 ある程度の距離を保ち、踏み込むのを逡巡している、と言った風情である。

 「どうするかな。」
 「そうさな、あれの試運転と行こう。」
 「心得た。」

 小太りの男が進み出ると、鞄の中から羊皮紙を取り出して広げ、呪文の詠唱を開始した。

 「――――高く飛ばせよ魂の鳥
  ――――遠く歩めよ魂の影
  ――――居並びよ 狗頭の神の天秤へ
  ――――我はただ祈るのみの者なり
  ――――汝らの清らなる体のみ現世(うつしよ)に残さん」

 褐色の肌をした半裸の人々が羊皮紙の中から現れる。
 半透明で、表情が無い。

 幻の人々が血管の亜人たちそれぞれに集い、幻の寝台に寝かせていく。
 鼻に管を入れ脳を抜き去り、わき腹に入れた切れ込みから臓腑を取りだす。

 幻の古代人たちが、猿面、狗面、人面、鳥面の四種の壺に、それぞれ肺、胃、肝、腸を納める。

 かしゃぁん。

 一斉に壺の蓋が閉じられると、寝台に寝かされた血管の亜人達は見る見る内に干からびて死んだ。


 その成果に、小太りの男――――橋口凜土――――は、満足そうに笑った。

 「おっとっと。」

 よろめいた橋口の体をキャスターが支える。

 「試運転の感想は?」
 「消耗が激しいね。
  やっぱりばちばち戦うのに僕らは向いていない。」
 「その割には、楽しそうな顔だが?」

 キャスターと橋口凜土は、いたずらっぽい笑いを交わした。

 「もう少し待っていてくれよ圭司君。
  約束通り、お土産を渡すから。」

――――

 「黒化英霊全部終りか。」

 郊外の廃モールにて、橋口圭司も協会からの知らせを受け取っていた。

 「よかったですね。
  他のクラスが襲ってきたら、また砦の立て直しに時間がかかるところでした。」
 「他の奴らが頑張ってくれた、ってことなのかな。」

 圭司とバーサーカーの『砦』は、志摩空涯と黒化アサシン以外の敵を未だ招いていない。
 構築途中の砦をこれ幸いと他のマスターが余り攻めてこなかったのは、黒化英霊に構っていたからなのだろう、と圭司は推測した。

 「すると、これから先が本当の戦いなのかな。」
 「然り。」

 圭司が表情を引き締める。

 「志摩空涯は、来ると思うか?」
 「……五分五分かと。」

 マスターの問いにバーサーカーは眉を顰めながら応えた。

 「彼にとっては我らは比較的与しやすい相手でしょう。我らの手の内も知っている。
 しかし、彼は『我々に勝ちたいわけではない』。
 そんな印象を受けました。」

 初対決では腕を斬って退けはしたものの、空涯はサーヴァントを最後まで使わなかった。余力を残して戦っていた。
 敵を偵察に来たというには堂々とし過ぎており、英霊を斃しに来たというには無防備に過ぎていた。

 空涯の姿勢は『斃せたら斃す』、と言うあたりが妥当なように彼らには思えた。

 「聖杯戦争が進めばそれでいい。ってところかな?」
 「ええ。
  そのためにここをもう一度狙ってくるかは……。」
 「五分五分、と言ったところか。」

 砦を構えて待つバーサーカーのスタイルには、明確な長所と短所が存在する。

 長所は、地の利を使えること。
 『梁山泊』が存分に力を出せる空間を演出し、最大のパフォーマンスで相手を迎撃する。

 短所は、機動性が皆無であること。
 積極的に敵に接触しに行けないため、情報が集まらない。もし知らないところで対策を練られていたら、為す術なく斃されることもあり得る。

 バーサーカーと圭司は考えた末、短所を補うのはある程度諦めることに決めた。

 『砦』を構えるのは、バーサーカーにとって間違いなく最良の戦術だ。ならば、なまじの対策では滅ぼされない強力な『砦』を作ることに専念する。

 廃モールの中だけではなく、外側を覆うように陣を描き、結界を作る。地脈の力を引きずり出し、圭司自身も最高のパフォーマンスで戦えるよう準備を整える。
 動線上に魔術的、或いは物理的罠を仕掛ける。

 妖力吸収の陣、捕縛の陣、電撃を通すための水たまり、古典的な落とし穴。

 陣は駐車場を覆うほどにまで広げられた。
 圭司が密かに懸念していた『モール外からの城塞破壊攻撃』にもある程度耐性を付ける。
 魔力の力場がモールをドーム状にすっぽりと覆うように仕向ける。

 ここ数日比較的消耗の少なかった彼らペアは、着々と虎穴を育てていた。


[No.409] 2011/06/02(Thu) 20:24:38

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