コテファテ再録5 - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:20:26 [No.404] |
└ 赤色偽剣V - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:21:17 [No.405] |
└ 赤色偽剣W - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:22:52 [No.406] |
└ 天幕模様Z - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:23:31 [No.407] |
└ 装創儀礼T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:24:03 [No.408] |
└ 天橋の口 - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:24:38 [No.409] |
└ 天幕模様[ - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:25:25 [No.410] |
└ フランケンシュタインの怪物W - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:26:01 [No.411] |
└ 天幕模様\ - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:26:38 [No.412] |
└ 風車の丘、従者の夢T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:27:23 [No.413] |
└ 莫逆神王 - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:28:25 [No.414] |
└ 夢城の主T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:29:05 [No.415] |
└ 赤色偽剣X - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:29:43 [No.416] |
└ 夢城の主U - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:30:19 [No.417] |
└ 夢城の主V - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:31:04 [No.418] |
└ 夢城の主W - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:31:43 [No.419] |
└ 夢城の主X - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:32:16 [No.420] |
└ 赤色偽剣Y - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:32:53 [No.421] |
└ 夢城の主Y - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:33:29 [No.422] |
└ 夢城の主Z - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:34:04 [No.423] |
└ 夢城の主[ - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:34:51 [No.424] |
└ 血宴の絆Z - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:35:47 [No.425] |
└ 安穏の毒 - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:36:25 [No.426] |
柔らかな日差しの中、康一は目を覚ました。 手を握ったまま隣で眠るランサーを起こさぬよう、静かに身を起して全身を確認。人工筋、エーテライト、眼球運動、内臓機能、全て異常無し。 時刻を確認しようと傍に放りだしておいた携帯電話を手に取る。 現在時刻7:30。メール着信3件。一つは魔術協会からの現状確認、一つは姉からのメール……しまった、昨日一昨日と連絡を忘れていた……もう一つは……。 「――…………」 携帯を閉じて、起き上がる。さすがにそれに気づいたか、ランサーも瞼を開いた。 「おはようございます、主」 「あぁ、おはよう……調子はどうだ? ランサー」 ランサーは今まで寝ぐせをしきりに気にしながらソファから起き上がる。彼女の髪は癖がない直毛なのだが、結い上げたことで少し勝手が変わったらしい。 「消耗はほぼ完全に回復しました。……例の問題は、そのままですが」 「そうか――……まぁ、そこはマリナと相談しよう。そんな致命的な問題でもない」 一先ず――……一先ず、飯の用意か。弱った、そういえば一昨日の戦闘のどさくさで買い出しした食料は街中に置いてきてしまったはずだ。マリナたちは買い直してくれただろうか。 そんなことを考えながら部屋を辞して……そこで、見慣れぬ顔にばったりと出くわした。 「――……あ」 驚いた相手の顔を暫し見て、気づく。……そうか、マリナが保護したという加賀家の娘。 「加賀円……だったか?」 「あ、はい。おはようございます」 「あぁ、おはよう」 とりあえず挨拶はしたものの、これといって会話のタネも無い。奇妙な沈黙を保ったまま、三人は揃って洗面所で顔を洗う。 「……あの、志摩、さん」 「康一でいい」 「あ、はい。康一さん」 この聖杯戦争には志摩が二人参加しているし、志摩という名に余りいい印象はない。 そんな康一の内情はいざ知らず、円は他人行儀なのか気おくれしているのか、おずおずと頷いた。 「その――加賀宗造は」 「死んだよ。確実に殺した」 出るとすれば、その話題だけだろうと思っていたので康一は即座に答えた。 ランサーは「殺した」という表現に、ぴくりと反応する。実際に手にかけたのはアサシンだし、彼がその確実性を保障できるはずもない。だが、敢えて殺したと表現したということは……あの魔術師の悪逆ぶりから見て在り得ぬことだとは思うが、円の家族の仇を買って出た、ということだ。 「…………、」 円は、暫く感情の発露に惑ったようだった。 実のところ彼女は宗造を蛇褐の如く嫌っていたし、家族と思ったこともなかったが――その死に際して、『どういう感情を発露していいのか』は、容易に答えの出せない問題だった。 「恨み事以外は言うな」 康一は、敢えて彼女が答えを出す前に釘を刺した。 ぎょっとしたように、円が康一を見返す。理屈としては解るにせよ、彼を恨むという発想だけは思い当らなかったからだ。 「家族を殺されたんだ。感情はどうあれ、どうあれな。感謝も謝罪も、言うのは『危うい』。 螺旋曲がりたくなかったら、恨み事以外は言うな」 「…………はい」 理解はし兼ねたが、しかし納得は出来た。だから、円はそれ以上何も云わぬことで康一への返答とした。 ● 康一の懸念は、マリナが昨日合流する前に再び買い出しに行っていてくれたことで、杞憂に終わった。 「ごはんー」 ……まぁ、それを傘に来て再び朝食の用意を押しつけられたが、どうせこの面子で料理が――もとい、家事が出来るのは康一ぐらいのものだったので、別に問題はない。円も幾らか手伝ってくれた。 「ごはんー」 「行儀悪いから黙って待ってろ!」 箸でお茶碗をちんちん鳴らすマリナとランサーを一喝してベーコンエッグとシーザーサラダの皿を並べる。 康一としては日本食のほうが性に合っているのだが、過半数が西洋出身とあっては譲歩もいたしかたない。 「……あの、いつもこうなんですか?」 円が曰く言い難い複雑な表情で問うてくる。言外に言わんとしてることは解らないでもなかった。 康一とマリナは聖杯戦争の参加者、つまり命を奪い合うはずの仲だ。同盟中とはいえ、こうも和気藹々とできるものなのか。 「こんなもんだよ、存外にな」 康一はそれにただ、肩を竦めて返した。 ● 「……で、今日はどうする?」 ある程度食事が片付いたところで、ライダーが切り出した。 康一、マリナ、ランサー、ライダーいずれも3日目の激戦の消耗からはほぼ脱している。攻めるにせよ守るにせよ、行動指針は定めなければならない。 「私たちは予定通り、円を教会に送っていこうと思うの。加賀の家に小さな子供がいるらしくて、その子たちも拾ってくつもり」 それはマリナが昨日の内に円の話を聞いて決めたことだった。康一にも昨日の内に概要は話してある。 かの家は実質、加賀宗造以外は彼の道具、あるいは手足に等しく、主が消えた今敵性存在は在り得ない。ただ、加賀弓――あの令呪になっていた女と加賀宗造の幼い子が家に置き去りになっているはずで、それを看過するわけにはいかないというのが彼らの結論だった。 康一がそれに同行するかまでは決まっていなかったのだが……。 「とはいえ、魔術師の工房だからな。……やはり、加賀の家までは俺たちもついていこう」 魔術師の工房は即ち外敵を排除し、侵入者を抹殺する要塞である。 主を喪ったとはいえ舐めてかかるわけにはいかないし、そこに至るまでの道程で他のサーヴァントに襲撃される可能性もある。やはり別行動はしないのが賢明だった。 が。 「ただ、加賀の家を無事に出たら俺たちは一度別行動をさせてもらう」 それはこの場で初めて口にしたので、他の全員が康一に視線を送った。 「何か予定があるの?」 康一は、問われて迷った。 馬鹿正直に答えるにはあまりに衝撃的かつ危険な行動だったし、マリナの反対は必至だ。 だが、今後の為に必要な行動であったし……同時に、黙秘はもうこの同盟には必要あるまいとも思った。 メールの文面を呼び出し、携帯電話を一同に見せる。 「……志摩空涯に呼び出しを受けた。会いに行って来る」 [No.425] 2011/06/02(Thu) 20:35:47 |