コテファテ再録5 - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:20:26 [No.404] |
└ 赤色偽剣V - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:21:17 [No.405] |
└ 赤色偽剣W - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:22:52 [No.406] |
└ 天幕模様Z - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:23:31 [No.407] |
└ 装創儀礼T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:24:03 [No.408] |
└ 天橋の口 - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:24:38 [No.409] |
└ 天幕模様[ - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:25:25 [No.410] |
└ フランケンシュタインの怪物W - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:26:01 [No.411] |
└ 天幕模様\ - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:26:38 [No.412] |
└ 風車の丘、従者の夢T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:27:23 [No.413] |
└ 莫逆神王 - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:28:25 [No.414] |
└ 夢城の主T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:29:05 [No.415] |
└ 赤色偽剣X - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:29:43 [No.416] |
└ 夢城の主U - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:30:19 [No.417] |
└ 夢城の主V - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:31:04 [No.418] |
└ 夢城の主W - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:31:43 [No.419] |
└ 夢城の主X - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:32:16 [No.420] |
└ 赤色偽剣Y - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:32:53 [No.421] |
└ 夢城の主Y - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:33:29 [No.422] |
└ 夢城の主Z - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:34:04 [No.423] |
└ 夢城の主[ - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:34:51 [No.424] |
└ 血宴の絆Z - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:35:47 [No.425] |
└ 安穏の毒 - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:36:25 [No.426] |
● それは騒がしい暗闇だった。 全身がちぎられるように痛み吐き気がし、耳鳴りが止まず頭痛がする。 それでもそこは穏やかだった。病の床に伏せったように、苦しみの中で安らぎがあった。 記憶を呼び起こす。 狐耳のサーヴァントが、血塗れの石を握ったのが最後の映像。息が切れ心臓が止まり胸が痛んで視界が失せた。 幾つもの奇妙な足音を聞いて微かに気を取り直した時、確か血管達に取り囲まれていた。そしてまた、視界が闇に失せる。 ああ、負けたのだっけ。 勝たなければ、いけなかったのに。 俺は、勝って。 聖杯に願わなければいけなかったのに。 俺は、■■■■■に……。 体を蝕んでいた痛みや苦しみはやがて薄らぎ、意識が闇の中に溶けだして行く。 死の予感。 だが、恐怖を感じるにはもう彼の意識は濁り過ぎていた。 血の匂いのする闇の中に、溶けて同じになる。そして唐突に理解する。 これが何か。ここがどこか。 何だ。 そうか。これは■■■■■じゃないか。 なんだ、俺は■■■■■になれたんだ。俺の願いは叶ったじゃないか。 あはははは。 あはははは。 あはははは。 あはははは。 あははははあははははあははははあははははあははははあははははあははははあははははあははははあはははは 無限の中で限りなくゼロに近づいてゆく彼の意識に、一瞬だけ。 白く輝く鳥の、空をゆく姿が浮かんだ。 帰るべき場所に戻るのだな。本当の本当に、狂いきった戦士になって。 この心臓のように、また誰かの胸に種を落として行くのだろう。 あははははあははははあははははあははははあははははあははははあははははあははははあははははあはははは あははははあははははあははははあははははあははははあははははあははははあははははあははははあはははは あは ● 砂漠の夜は冷える。 昼の熱を蓄えるべきものが大地に全く無いからだ。 底冷えのする墳墓の中で、松明一つを頼りに橋口凜土とキャスターが向かい合い座っていた。 互いに一言も交わさぬまま、もう半刻が過ぎている。 金字塔に満ちる魔力に身をゆだね、只管回復を待っている。 モールの中に、橋口圭司の姿は無かった。 自分は攻撃に失敗し、彼は防衛に失敗したのだと理解した。 恨みも悲しみもなく、ただ単純に心細く感じる。もう同盟を組める相手はいない。なけなしの策は破綻し、キャスターの全霊をかけた攻撃も通用しなかった。 令呪も一回切っている。余裕があるとは言えない状態だ。 「マスター。」 キャスターが徐に口を開く。 「アーチャーは、優れた射手であった。」 うつむいたまま、キャスターは言った。 「そう。」 凜土は虚ろな声で応える。 「素晴らしいものだな。英霊とは。」 「そう。」 凜土の返事は飽くまで虚しい。敗北の味は苦く心を犯していて、身を満たす魔力に今は身をゆだねていたかった。 「我も英霊。」 「そう。」 「彼らに並ぶ。」 「そう。」 「だから勝てるよ。」 「……。」 凜土が顔を上げて、キャスターの顔を見た。 勝てなかったではないか、という批難の表情を張りつけて。 「勝てるとも。」 「どうやって。」 「手段は問題ではない。」 キャスターの声にだんだんと覇気が戻ってきた。 「恥ずかしながら、我は彼奴と戦うまで我自身が何であるかを知らなかった。」 「……。」 「我を射たアーチャーは、最初から最後まで彼自身であったよ。」 キャスターが初めて見せる殊勝な言葉に、凜土も耳を傾け始めた。 「我は、故郷に帰りたかった。だが、やはりそれは我の役目ではないのだ。 我はこの青い星で生まれ、この青い星で死んだ。己の欲を果たせぬままに。」 「……。」 「だが、我は王だ。 王たる我が我欲に溺れ、あの船にアーチャーを乗せた時も、淡く望郷の念に駆られた。 ……恥じるべきあり方、負けて当然だ。」 キャスターの声には、自嘲が混ざる。 「帰りたいと泣くのは、童のすること。王の役目に程遠い。 その望みを民の幸せにすりかえるなど、暗君と呼ばれて然るべきだ。」 キャスターの眼が、凜土の目をしっかりと見つめた。 「――マスター。 我はもう、帰りたいなどと願わない。」 例え守るべき民が歴史の彼方に消えていたとしても。 聖杯に願う王国が儚い幻であったとしても。 王であろうとすることを曲げてはいけない。もう曲げたくない。 「――我は今度こそ、民のためにありたいと思う。」 三千年の時を経て、アメンホテプ4世の魂はようやく、己の収まるべき器を見つけたのだ。 [No.426] 2011/06/02(Thu) 20:36:25 |