コテファテ再録6 - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:37:15 [No.427] |
└ 真実T - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:38:05 [No.428] |
└ 空の境界T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:39:50 [No.429] |
└ 狐の見る夢 - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:40:18 [No.430] |
└ 安穏の毒U - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:41:05 [No.431] |
└ 空の境界U - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:41:34 [No.432] |
└ 安穏の毒V - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:42:07 [No.433] |
└ 空の境界V - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:42:44 [No.434] |
└ 安穏の毒W - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:43:19 [No.435] |
└ 幕魔 無聊の理 - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:48:17 [No.436] |
└ 空の境界W - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:48:55 [No.437] |
└ 安穏の毒X - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:49:28 [No.438] |
└ 安穏の毒Y - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:50:09 [No.439] |
└ デッドエンドT - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:50:43 [No.440] |
└ デッドエンドU - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:51:20 [No.441] |
└ 安穏の毒Z - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:51:52 [No.442] |
└ デッドエンドV - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:52:22 [No.443] |
└ 星界感応T - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:53:07 [No.444] |
└ キツネの見た夢T - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:53:41 [No.445] |
ぴしり。 空涯の言葉は、康一の心に走っていた罅を決定的に突き崩した。 心の奥底にある墓穴から、葬られたはずの、否そもそも生まれてさえ来なかったはずの「志摩康一」が、顔を覗かせる。 「お前は――生まれることを許されなかった。生まれてきてはいけないという烙印を押された子だった」 「それをしたのは貴公であろう!」 他人事のように述べる空涯に、ランサーがいきり立つ。 そのまま首を刎ねてしまいそうな剣幕の彼女を、康一は辛うじて手で制した。 構うことなく空涯は続ける。 「生まれる前――原罪さえ無い身に、存在の否定という害を突きつけられた。 『原型被害者』とでも言うのか。……お前は生まれる前にして、根源の渦に触れていたのだな」 「――お前、が……俺を求めていたのは、それが理由か」 ともすれば墓穴から漏れだす死臭に意識を奪われそうになりながら、どうにか絞り出すように声を出す。 空涯は首肯した。 「慮外のことであった。理論上、そういった存在を仮定はしていたが、よもや其処にお前が至っていたとはな」 根源への到達は、多くの場合抑止力の発現を促す。 尤も、現に根源に至り魔法を拓いた者たちがいる以上、全てのケースにおいてではない。それには至った魔術師の性質が大きく関与する。 ただ、確実にこれを免れえる者も、存在し得る。 全ての太源たる根源の渦。それに、より強固に結び付く者。存在そのものを以って原型を為す存在。 つまりは、「志摩康一」のような人間。 「だから、師を殺したのか」 「そうだ」 憎悪を軸にして、自身の感情を呼び覚ます。忘れ得ぬ過失を再生し、師の死に際を食んで萎えた魂を立ち上がらせた。 「お前の、『魔術師』に俺が付き合わなきゃいけない理由はない」 「そうかな?」 死者を墓穴に叩き返し、開いた空虚を無理矢理に埋めた。 「そうさ」 獣のように歯を剥いて、康一は断言した。 空涯の首にかかった『糸』を引き絞る。 「お前はここで死ね、志摩空涯。 やはり、お前は斃れるべき魔術師だ」 「――そういうわけにはいかんな」 応じたのは眼前の空涯の声ではなかった。 虚空で『糸』が一息に寸断される。ランサーが康一の前に飛び出したのと、襲いかかった刃が聖杯の剣に弾かれたのは同時だった。 「――サーヴァントか」 ランサーが油断なく構えた。 眼前には和洋の混在した衣装に身を包む、羽織の男。 初めて見る顔だが、サーヴァントたる彼女の渾身の一撃を受けてなお刃を折ることも腕を萎えさせることもない以上、彼もまたサーヴァントであることは間違いない。 ――……他のマスターからもう奪っていたのか? 焦燥する康一をよそに、異装の男は手にした刀――二尺五寸の極めて一般的な太刀だ――を緩く構えて、空涯に皮肉げに笑んだ。 「勝手に死なれては困るぞ、空涯。今少し、お前には私のマスターをやってもらわねばならん」 空涯はそれには礼を言うでも謝罪するでもなく無表情で首を摩るだけに留まり、ただ彼のクラスを短く呼んだ。 「セイヴァー」 「セイバー……?」 「Saviour。……救済者、という意味だ、ランサー」 「救済者、だと?」 およそ聖杯戦争には似つかわしくないクラス名だった。正規の7騎には当然存在しないし、そもそも英雄とは大方、他者から奪うことで成立する概念である。どれだけ高い知名度と力を誇ろうと、救世主や解脱者が呼ばれないのはそういうことだ。 「名乗らせてもらおう。 我はセイヴァー。今次聖杯戦争のシステムの一部。 『全ての願いを祝福する者』。ゆえに、救済者(セイヴァー)。 真名を天草――」 それは、400年前の肥後国で起きた島原の乱の首謀者。数多のキリシタンの解放と救済を願って戦い、共に炎の中に消えた救世主の再来を自称した男。 「――天草四郎時貞。 以後、見知りおけ。異邦の救い主よ」 [No.434] 2011/06/02(Thu) 20:42:44 |