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all コテファテ再録6 - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:37:15 [No.427]
真実T - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:38:05 [No.428]
空の境界T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:39:50 [No.429]
狐の見る夢 - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:40:18 [No.430]
安穏の毒U - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:41:05 [No.431]
空の境界U - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:41:34 [No.432]
安穏の毒V - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:42:07 [No.433]
空の境界V - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:42:44 [No.434]
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安穏の毒X - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:49:28 [No.438]
安穏の毒Y - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:50:09 [No.439]
デッドエンドT - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:50:43 [No.440]
デッドエンドU - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:51:20 [No.441]
安穏の毒Z - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:51:52 [No.442]
デッドエンドV - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:52:22 [No.443]
星界感応T - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:53:07 [No.444]
キツネの見た夢T - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:53:41 [No.445]


デッドエンドV (No.442 への返信) - アズミ

 鎧を纏った人体が、中空に融けて消えた。

 その先に浮かぶ――彼女には名状しがたい「何か」を、彼女は忘却した。

 後の伝説には天に昇ったとか、そう記されている。

 そういうものか、と今の今まで、彼女は納得していた。

 馬鹿な。

 何故、忘れていたのだ。
 あれだ。あれこそが聖杯。

 あれこそが、我が愛しの友を奪い去った、怨敵だというのに。


「サー・ガラハッドッ!」

 かつて礼拝堂に響き渡った彼女の嘆きが、今再び彼女の脳裏に寸分の違いなく再生された。

 二度と。

 二度と、奪わせてなるものか。




 雷挺の如く振り下ろされた拳が、丘の一角を岩盤ごと砕いて巻き上げた。

「しまっ――――!?」

 拳の直撃だけは辛うじて避けたランサーだが、捻った身体の着地点がその一瞬で消失していた。
 人外の膂力と生まれたままの戦術で戦う彼女とて、重力の掟には逆らえない。
 体勢を崩したまま傾いだ大地を滑る黒の騎士目掛けて、銀の猛獣が突撃した。

「ランサー!」

 従者の窮地に、康一は「」との格闘を手放した。未知の全能に期待するより、既知の万能を駆使することを本能が選んだ。

 『糸』が疾る。

 攻撃ではない。
 狂化したバーサーカーの動作に巻き込まれれば、その怪力を以って逆に康一の疑似人体が蒲鉾のように寸断されてしまうだろう。

「跳べっ!」

「……承知っ!」

 一声で主の意を汲み、槍兵が跳躍する。その身体はまるで宙に見えない階段でもあるようにステップを踏み、バーサーカーが見上げる高さにまで躍り上がった。
 康一の『糸』が紡いだのは、足場。
 幸いにしてバーサーカーによる地盤の破壊は、平面であるはずの丘の原っぱに『糸』を張り巡らせるための立体を作り上げていた。
 陥没した地面、そそり立った岩盤。砕けた岩を中空に固定すればそれは足場のみならず盾にさえなる。
 差し込む夕日に僅かに煌めく透の舞台。
 理性を喪ったバーサーカーは、その常道ならざる構造物に対して反応が遅れた。況や、理解など望むべくもなかった。

「は――ああああああっ!!」

 ランサーのクラスなれば可能な神域の踏み込みで迫るパルジファルに、しかし宋江は生前ならばあり得ぬ蛮勇を以って真っ向から応じた。

「■■■■■――――!」

 拳。技も何もなく、文字通り「振り」「回される」拳が旋風の如くランサーの鎧を幾度も叩く。
 しかし打撃であれ斬撃であれ刺突であれ、人の行う攻撃はその最高点になければその力積は粗雑に拡散しロクに破壊を為さない。
 口の端を切り、血の混じった唾を吐き捨てながらもランサーは突撃した。
 もっと、安全な勝ち方は恐らく可能だ。だが、命を投げ出して意味を勝ち取る戦いというものは存在する。
 そして、彼女ら伝承の騎士にとって、それは慣れ親しんだ戦いなのだ。

(主――照覧あれ!)

 「」になど手を出させない。
 たとえそれが世界の掟であろうが神の意志であろうが、決して主を傷つけさせはしない。
 たとえそれが――――

(それが、『聖杯』であろうと!)

 主を傷つける者は、全て斬り捨てねばならないのだ!

「はああああああっ!」

 弾け飛ばんばかりに撓った異形の刃が、鞭のようにバーサーカーを強か叩く。紛れもなく斬撃でありながら、それ以上に致命的な衝撃でもってその華奢な身体が宙を舞った。

「■■■■■――――!」

 だが一切の容赦なく追撃がさらにその腹に打ち込まれる。
 反撃を試みれば拳を握った腕ごと胴体を半ばでへし折てさらに巻き上げた。
 ランサーが標的を見上げる。
 彼我の距離、大凡にして5m。踏み込みによる加速ができない中空において、近接攻撃を封じる絶対の結界となる距離。

 これを、待っていた。

「槍よ――聖槍よ!」

 唯一の武器たる聖杯の剣を粉砕し、ランサーが宝具を構成する。

「偽りの栄華を、悲しみの廃墟へ突き落とせ!」

 彼女の宝具の、唯一にした絶対の隙――展開時において接近戦を行えないという最大の弱点を、彼女はこの瞬間、超克したのだ。


『偽り砕く十字の槍――ッ!!』
 (ロンギヌス――ッ!!)


 邪悪なる堕ちた騎士グリングゾルを、その城砦ごと打ち砕いた破邪の呪いが、今度こそその真なる破壊力を以ってバーサーカーに殺到し、その身体を現界から消し去った。





 ちゃぷん。


 そして、『ふりだしに戻る』。


[No.443] 2011/06/02(Thu) 20:52:22

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