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all コテファテ再録6 - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:37:15 [No.427]
真実T - 咲凪 - 2011/06/02(Thu) 20:38:05 [No.428]
空の境界T - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:39:50 [No.429]
狐の見る夢 - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:40:18 [No.430]
安穏の毒U - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:41:05 [No.431]
空の境界U - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:41:34 [No.432]
安穏の毒V - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:42:07 [No.433]
空の境界V - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:42:44 [No.434]
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安穏の毒X - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:49:28 [No.438]
安穏の毒Y - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:50:09 [No.439]
デッドエンドT - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:50:43 [No.440]
デッドエンドU - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:51:20 [No.441]
安穏の毒Z - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:51:52 [No.442]
デッドエンドV - アズミ - 2011/06/02(Thu) 20:52:22 [No.443]
星界感応T - きうい - 2011/06/02(Thu) 20:53:07 [No.444]
キツネの見た夢T - ジョニー - 2011/06/02(Thu) 20:53:41 [No.445]


星界感応T (No.443 への返信) - きうい


 凜土とキャスターは、命からがらにヤサへの転移を完了した。

 「大丈夫か!」

 近寄る凜土に、キャスターは蹲ったまま手で制した。

 「近づくでない……!」
 「……お前……!」

 キャスターの股間は痛々しいほどに膨れていた。



 「……ふぅ、耐えた。」
 「よかった。」

 10分ほどの苦悶の末、キャスターは上体を起こした。
 敵に与えられた攻撃で漏らすなど、王以前に男として恥である。

 「何があった。」
 「殴られた。気持ち良かった。」
 「頭まだ大丈夫じゃないのか?」
 「あれはサキュバスの類だ。」

 凜土の呆れをよそに、キャスターは予想を語る。

 「玉藻でサキュバス?
  ……ああ、吸精するという『解釈』か。」

 凜土は聖杯戦争をどこか冷ややかな目で見ている。
 伝説にのっとっていながら、伝説通りの姿では現れない英霊たち。
 伝説の信仰によって具現していながら、「一般的に広く信じられている物」とは違った能力を持つサーヴァント達。

 凜土はそのギャップの生じる原因を、『解釈』と呼んでいた。

 目の前にいる「火球や太陽光を操り宇宙人であり、おにぎりが大好きな」アメンホテプ四世も、『誰も想像だにしなかったはずの』アメンホテプ四世なのである。

 歴史学者である凜土は、「現実にそうであるからそうなのだ」という理解を良しとしなかった。
 こと伝説由来の英霊に関しては、「伝承で姿や行いが語り継がれ多くの人間が信じ続けたからこそ生まれた」という特性がある。その『史実』を加味するなら、当然「伝承から生まれながら伝承から剥離する英霊」の姿は、「別の誰かの大胆な『解釈』」が入っていると考えられた。

――――誰か、とは?

1.湖底市を統べるセカンドマスター。

2.聖杯戦争というシステムの作り手。

3.強大な力を持った、伝説を具現化する未知の存在。

4.大胆な解釈などは凜土の勘違いで、「このような姿の英霊こそが最も多くの人に信じられている」だけ。

 凜土の仮説は、3番である。

 根拠はない。これが一番、『夢が見られる』からだ。

 「おっふ!」
 「キャスター?」
 「すまんが、厠と書棚の裏にある本を借りる。」
 「何で知ってるの。」

 キャスターは応えないまま、慣れた手つきで書棚をずらし、大判の薄い本を十冊ほど掴むとユニットバスへと消えて行った。



 「敗北であるが。」
 「うん。」

 ここまでキャスターが出会ったサーヴァントは、バーサーカー、アーチャー、アサシン、ライダー。

 ランサーとセイバーは見たことも無く、バーサーカーは脱落、アーチャーには惨敗、ライダーはマスターに肉薄するも敗北、そしてアサシンは、痛み分け。

 大いに消耗させたアーチャー戦を、凜土は痛み分けとはしなかった。それはキャスターとも見解が一致している。

 『太陽光の魔術が全く通じなかったから』

 これに尽きる。

 キャスターの攻撃力の最たるものは、太陽光、即ち核融合エネルギーの照射である。
 性質上、「周りに被害を与えない」、ひいては「マスターに放射線被害を与えない」のが至難であるため、極めて限定的にしか用いられない。
 それゆえに地球上空で、地表ではなく地平線めがけて照射を行った訳だが、アーチャーはその最大出力を凌ぎ切った。

 それは、この聖杯戦争に置いて、『キャスターでは絶対に勝てない相手』の存在を立証したことに等しい。それは、聖杯戦争の敗北を証明することと寸分変わらない。

 彼らはその時点で『詰んで』いた。
 例え湖底市ごと焼き尽くしたとしても、アーチャーだけは耐えきるだろうとさえ、凜土は推測した。

 だからこその不可侵の提案である。
 勝てないならせめて、死にたくはない。
 だが結局は、天川勇治を敵に回すだけのきっかけを与えるだけに終った。

 「脅威なら排除する」

 なるほど正しい。異論はない。
 排除するだけの実力があるならば。

 「……ふむ。」

 凜土が頭を掻く。

 「どうするマスター。次は。」
 「うん。」

 凜土は考える。

――――不可侵に応じず、脅威としての排除を選んだと言うことは、裏を返せば、アサシン側には『脅しは通じた』ということでもある。天川勇治は、『拠点ごと焼き払われるおそれがある』と信じた。彼が、彼我の戦力を明確に把握していなかったとしても。
 それは決して、悪い情報ではない。

 天川勇治は存外に、理で動く人間でもあった。
 バーサーカー戦を軽く見物した限り、人質を取る戦術に嫌悪を示していたようだから「正義漢」と思っていたが、甘かったらしい。
 
 「つまり、理と利が一致すれば、余地はある。」

 とはいえ、即座に再説得は厳しい。キャスターも見た目以上に疲労しているようだし、また戦闘となると今度は負けかねない。

 「アサシンは保留でいいや。」

 生き残るためにすべきこと。
 キャスターの天地を焼く力と、自分の死者の国を渡る力を最大限に活用するには。

 ライダーとアサシンは、キャスターを共通の敵と見る可能性がある。
 圭司の情報から、ライダー、ランサー、アサシンはそれぞれマスター同士の面識がある。
 「仲良くないのは自分だけ」。

 アーチャーに至っては論外。一度全力で矛を向けあった以上、勝敗無き和解など無理だ。歴史が証明している。

 怖気が走った。

 死ぬのは怖くない。
 殺されそうになることも、海外旅行先で何度もあった。

 だが、殺意が明確に自分に向かっている、と言う状況は、初めてだった。
 そして、逃れることはできない。

――――それでも僕は、歴史が見たいのだ。
――――素晴らしかった物を追憶したいのだ。

 自分の予測が正しければ、「この」アメンホテプ4世は、意味があってここにいる。
 誰かが都合良くカッコよく解釈したアメンホテプ4世。

 ならば何かあるはずだ。
 ただただ舞台を下りるだけでない、何かが、僕に、彼に。

 凜土が猛然とパソコンに向かう。

 「新しいファイル.doc」

 すぐに名前を書き換える。

 「湖底市について.doc」

 既に詰んだ将棋。ならばすべきことは、投了。
 しかし、『できること』はさにあらず。
 元より目的はさに収まらず。

 「将棋盤の裏こそが見たいのだ!」

 凜土がブレインストーミングを開始する。


[No.444] 2011/06/02(Thu) 20:53:07

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