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「よくお聞き、坊や」 八百比丘尼は声だけは優しく、言い聞かせるように俺に行った。 「命は、限りあるからこそ尊いんだ。終わりのない命なんて、誰も大切にしやしない。 そいつら、命に限りの無いバケモノは、人の命の価値を貶める甘い毒なんだ」 血に濡れた刃が空を切る。倒れた雫に向けられた切っ先に、心臓が跳ねあがるような思いをしながらも、俺は彼女を庇って立ちふさがった。 凶器を向けられる威圧感と、未熟な精神。当時14歳の俺は竦み上がったが、どうにか一つだけ反論することができた。 「姉ちゃんだって……死なないじゃないか」 か細く弱々しい、なけなしの抗議。 だが、八百比丘尼はそれを一笑に伏すことなく、真正面から受け止めた。 「そうさ、私もバケモノだ」 短いけれど、悲痛な言葉だった。 「私も、バケモノだ。 存在自体が人を貶める、罪深いバケモノなんだよ。坊や」 自嘲なんかじゃない。この人は、本当に自分のことをバケモノだと思っている。バケモノである自分を、諦めきっている。 彼女が吐き捨てるように漏らしたその悲しい言葉に、俺は心身を縛る全ての拘束を振り払った。 「――違う!」 恐怖は感じなかった。その代わりに、火傷しそうなほど熱い焦燥が胸を焦がしていた。 「違わないさ」 「違う――違うッ!! 姉ちゃんはバケモノなんかじゃない! 姉ちゃんは――姉ちゃんも雫も、寂しくて自棄になってるだけだ! 寂しくて、悲しいから……自分を受け入れてくれない世界を、自分から拒んでるだけだ!」 捲し立てるように叫んで、比丘尼に近づいた。 切っ先が鼻を掠めるような距離だが、恐怖は微塵も感じない。……わかっていたからだ。『姉ちゃん』が、俺を傷つけるはずがないと。 「姉ちゃんも雫もちゃんと生きてる!俺なんかに、あんなに優しくしてくれたじゃないか!」 刃は、今にも取り落とさんばかりに震えていた。俺は構うことなくその切っ先を掴み、振り払う。 さしたる抵抗もなく、妖怪殺しの刀は渇いた音を立てて海岸に転がった。 「長さとか、形で命の尊さが変わるもんか!」 胸に渦巻くすべてを吐きだすように俺は叫ぶ。浅く裂けた掌から少なくない血が滴り落ちた。 そして、比丘尼は――。 ------------------------------------------------------------ 「変わらない時代なんてない。たぶん、そういうことさ」 「信じてみることにしたんだ。私の来た道以外にも、生き方はあるってね」 名前:八百若桜(やお・わかさ) 種族:人間 性別:女 年齢:少なくとも700歳以上 職業:喫茶店経営 内在妖力:S- 習得妖術: ・『不老不死』 常時発動。 正確には呪い。人魚の肉を食べたことによる。 致死ダメージからも再生し、老衰する年齢に至ると自動的に幼年まで年齢が巻き戻る。 ・他多数 解説: 湖底市で喫茶店を営む女性。 正体は八百比丘尼。 室町時代ごろ、人魚の肉を食べて不老不死になった漁師の娘。 二度縁づくものの、伴侶の死後若返るという奇異な現象ゆえに人に疎まれ出家し、尼僧となって衆生を救う旅に出た。 しかし結局は世を儚み、岩窟に姿を消したと言われている。 実際にはその後、不老不死に群がる人間や、逆に自身をバケモノと蔑む人々に絶望し、自身の運命を歪めた妖怪をこの世から根絶やしにすべく退魔師に身を落としていた。 1986年に安曇・雫と出会い宗旨替え。 現在は湖底市で喫茶店を営みつつも、湖底市を守護すべく退魔師資格を保有している。 88年の国家資格化以来は活動していないため犯罪には問われていないが、過去多数の妖怪を血祭りに上げたことから公安に要注意人物としてマークされている。 [No.465] 2011/07/25(Mon) 23:47:17 |