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No.475へ返信

all 新生退魔スレ - アズミ - 2011/07/23(Sat) 23:22:19 [No.456]
用語集その1 - アズミ - 2011/07/23(Sat) 23:43:43 [No.457]
とりあえず。 - アズミ - 2011/07/24(Sun) 00:46:56 [No.458]
[削除] - - 2011/07/25(Mon) 01:07:23 [No.459]
管理人さん - りん - 2011/07/25(Mon) 01:43:29 [No.460]
まじょりん - 桐瀬 - 2011/07/25(Mon) 02:16:21 [No.461]
閑古鳥の九十九堂 - ジョニー - 2011/07/25(Mon) 22:51:11 [No.463]
川西家の人々 - ありくい - 2011/07/25(Mon) 23:08:06 [No.464]
八百比丘尼 - アズミ - 2011/07/25(Mon) 23:47:17 [No.465]
内在妖力と妖術のガイドライン - アズミ - 2011/07/26(Tue) 19:28:11 [No.466]
妖怪の退魔 - アズミ - 2011/07/27(Wed) 23:32:36 [No.469]
も一つ退魔師 - アズミ - 2011/07/28(Thu) 23:06:55 [No.475]
八神家の家庭の事情 - もけけ - 2011/07/29(Fri) 01:29:47 [No.478]
山犬憑き - アズミ - 2011/08/02(Tue) 23:51:59 [No.484]
転生者 - りん - 2011/08/06(Sat) 23:23:05 [No.491]
今更ながら - ジョニー - 2013/01/27(Sun) 17:45:37 [No.503]


も一つ退魔師 (No.469 への返信) - アズミ

「いや、手酷くやられたねぇ」

 爆炎によって瓦礫の山と化した病院の一室に、声が響く。
 崩れた壁の破片を押しのけて一つ、また一つと起き上がる影。しかしその一つとして、無事に済んでいる者は居はしない。
 ある者は髪だけで這いずりだし、ある者は生首同然。ある者は千切れた片腕だけがのたくって現れ、比較的マシな者さえ片腕がもげている。やれやれと傾いたベッドに腰を下ろしたその者の隣に、異形の足だけが2つ、ずしんと地を踏めば、目玉が一つ、棚の上からころころと転がった。

「ちょっと、信じらんない!無茶苦茶するわねぇ、今の退魔師って」

「まぁまぁ、こうして生き残ったんだし愚痴は後にしとこうぜ。
 ……あ、引っかかっちった。毛女郎ちゃんちょっと舌引っ張って、舌」

 『髪の毛』がぷりぷりと怒れば、『生首』が宥めすかす。

「しかし凶薙にしちゃ実際乱暴な遣り口だな」

「おまーさんが狙われたんじゃないかのう、バラっさん。
 連中、最近人間のゴタゴタで点取り合戦に焦ってるらしいぞい」

「足ぃー、洗ってくれぇー」

 片腕のもげた男が思案する横で、『足』の一本が座り込むように折れ曲がって床に倒れた。

「まぁ、各々がた無事で結構なことです。一人も死なずに済んだのはまことに僥倖至極」

 若干名……会話が成立していない者がいるものの、命の危険を感じさせるものは一人もいない。
 さもあらん。彼らは妖怪。人と共にあり、されど人にあらざる異形の隣人たち。人の畏怖を負う、闇の住人。

 人の世の裏に息づき幾星霜、文明の輝きにより妖怪の存在はいよいよ世界の表に照らし出されようとしていた。
 何者が望んだわけではない。それが、時代の流れだった。人は猿には戻れず、電燈の輝きを行燈に戻すこともまた出来ない。
 妖怪は抗った。彼らは人がいなければ生きていけないが、近づきすぎれば不必要に傷つけ合ってしまうことを知っていたから。
 人もまた抗った。万物の霊長の座から追い落とされるかもしれなかったから。

 今は戦乱の世だった。
 表の社会から辛うじて隠せてはいるものの、夜の帳の向こうで数多の人と妖怪の血が流れた。


「しかし、酷ぇ目に遭ったな実際。
 ……やっぱり人間の病院になんか、紛れ込むもんじゃないねぇ」

「しょうがなかろ。鞍馬山の療養所はもう満杯なんじゃからな」

 彼らも、またそうだった。退魔師に追われ、傷つき、数少ない心ある人間の友人の好意でこの病院に紛れ、傷を癒していた。
 最も、今またこうして手酷い手傷を負わされたわけであるが。

「そんな躍起にならんでも、好き好んで関わりやしねえってのに……」

 隻腕の男が、頬杖をついて天を見上げる。
 風通しの良くなった天井の真ん中で、満月が煌々と輝いていた。
 随分と長い間生きてきた。随分と長いこと逃げてきた。田舎の闇から追い立てられ、都会の陰に隠れ潜み、そこさえ追われて、今は逃げ惑っている。
 なんと狭量な生き物か。なんと臆病な生き物か。ほとほと愛想も尽きてきた。
 運よく生き延びたものの、仮にこの場の誰かが命を落としたとして、当の本人さえ後悔はすまい。
 いいかげん疲れた。もう、充分に生きた。
 もう、身体の一欠け、影の切れ端一つ残さず消尽してもいいのではないだろうか。
 もう、妖怪など。……この世に、いなくても……。

「ねぇ、ちょっと待って!」

 『髪の毛』が悲鳴じみた声をあげ、隻腕の男の思考は打ち切られた。
 視線を向けると、束ねた髪で焼け焦げた肉の塊を掲げている。

「人間よ、この子!」

「なんですと?」

 色めきだって妖怪たちが立ち上がり、集まって行く。唯一人、隻腕の男だけは視線を向けるだけだった。

「うわぁ、こりゃ……」

 『生首』が半分焦げた目を伏せた。『目玉』が心配そうに、肉塊の周りを転がっている。
 それは、赤子だった。人間の赤子。
 両手足が千切れ、左目が潰れ、口は血に塗れ、全身が焼け焦げていたが……胸が上下している。

 生きている!
 
「この病室に人間が紛れてたとは……」

「酷ぇことしやがる……同じ人間だろうが、クソッタレめ!」

 悪態を吐く『生首』をよそに、『髪の毛』が取り乱した様子で叫ぶ。

「ど、どど、どうするの!?この子、このままじゃ死んじゃうわよ!?」

 だが、周囲の妖怪の反応は煮え切らないものだった。

「どうするって、さぁ……」

「じきに人間が来る。任せるしかあるまいて」

「……どうせ、助からないだろうけどな」 

 諦めた様子の妖怪たちに、隻腕の男もまた頷いて吐き捨てる。
 『髪の毛』だけが、なおも言葉を捲し立てた。

「そんなのって無いじゃない!
 この子、まだ生まれたばっかりなのよ!?
 今まで散々生きてきた私たちと違って、まだこれからなのよ!?無事に生きても100年も生きられない生き物なのよ!?」

 男は呆れたように息を吐いた。
 『髪の毛』とはそれなりに長い仲だったが、まだまだ300年そこそこの年若い妖怪だ。
 どうにも、こう……甘いというか、諦めが足りないというか。厄介な性分だった。こんなではこの世はさぞ生き辛かろうに。

「でもよォ、このザマじゃ助かっても……母親だってきっと死んじまったぜ?」

「……いや、ひとつだけ手があり申す」

「本当、手の目!?」

 それまで押し黙っていた『腕』に、髪の毛が飛びつく。
 余計なことを。隻腕の男は心中、唾を吐いた。

「我々が付き切りで『癒し』をかけ続ければ、命はどうにか取りとめられましょう。
 失くした身体は、ほれ」

 『腕』が一同を示す。
 ばらばらに砕け、しかしどっこい生きてる妖怪変化。図らずも、その部位はこの赤子が喪った全てを埋めうる。

「我々が肩代わりしてやりますれば。我々は暫く元に戻れますまいが、なに、人間の一生など長くて100年。
 そのぐらいどうということはありますまい」

 まったく、滅茶苦茶な提案であった。
 ……だが、一同はそれに乗った。

「面白ぇ!俺はこの自慢の舌をくれてやるぜ!」

 『生首』……垢嘗が頷き、器用に己の舌を引っこ抜いた。

「なら、おいらはこの目しかないよな」

 『目玉』……百目が自ら赤子の潰れた左の眼窩に収まる。

「では拙僧はこの残った左腕を」

 言いだしっぺの『腕』……手の目が赤子の左肩にぴたりと貼り付く。

「ならばワシらは足になろう。ちょうど一本ずつじゃ、なぁ足洗邸」

「足ぃ〜、洗ってくれぇ〜」

 2本の『足』……足洗邸と一本だたらが揃って赤子の腰についた。

「バラっさん、アンタはどうする?」

「フン、酔狂な連中だ」

 隻腕の男は、鼻を鳴らして傍らに落ちていた、己の右腕を投げて寄越した。

「くれてやる。どうせ綱の野郎に落とされた方の手だ、惜しくはない」

「決まりだな」

 右腕が独りでに這いずり、赤子の右肩に食らいつくように一体化する。


 そして。

「ねぇ、ボウヤ。死んじゃ駄目よ!……世の中、生きてりゃ丸儲けなんだから!
 私の大事な、この髪をあげるから。だから、ね……?」

 『髪の毛』……毛女郎が、赤子を護るようにその頭を覆う。



「一緒に――いきましょう……」


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「この命だけは、投げ出すわけにはいかないんだ!」

「家族ならいるさ。みんなが、此処に居る……」

名前:志摩康一
種族:人間
性別:男
年齢:18歳
職業:退魔師
内在妖力:D+
生得能力:
・『七鬼躯体』
喪った五体を妖怪が一体化し、代替している。
それぞれの部位の能力は以下の通り。
頭髪:毛女郎  ……自在に髪の毛を操れる。
舌:赤嘗    ……舐めた対象を詳細に分析できる。
左眼:百目   ……射出し、百個まで分裂可能して飛行する。偵察向き。
左腕:手の目  ……掌についた目には透視を含む千里眼能力がある。
右腕:鬼    ……怪力
左足:足洗邸  ……巨大化する。質量も増大する。
右足:一本だたら……一蹴りで万里を駆ける。

解説:
赤子の時分にオカルトテロに巻き込まれ、母と身体の大半を喪った少年。
しかし居合わせた七体の妖怪が一体化し、身体部位の代替を果たすことで命を繋いだ。
バケモノ同然の彼を親類は忌み嫌い、放逐したが、彼は七体の妖怪と共に元気に生き延びている。
現在はゲゲゲ同盟に属する退魔師。
人間と妖怪の共生というやや夢見がちな理想を追うが、皮肉にも彼の身体が何よりもその理想を体現している。


[No.475] 2011/07/28(Thu) 23:06:55

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