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No.476へ返信

all 湖底市の日常・1 - アズミ - 2011/07/26(Tue) 19:34:17 [No.467]
その頃&その頃 - りん - 2011/07/27(Wed) 01:43:34 [No.468]
人域魔境1 - アズミ - 2011/07/28(Thu) 02:03:38 [No.472]
尋ね人おらず - りん - 2011/07/29(Fri) 01:22:45 [No.476]
文絵、かたるかたる - りん - 2011/08/02(Tue) 01:40:33 [No.480]
珍奇な来訪者1 - アズミ - 2011/08/02(Tue) 01:49:21 [No.482]
魔女と騎士 1 - 桐瀬 - 2011/08/03(Wed) 21:40:19 [No.485]
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人域魔境3 - りん - 2011/08/05(Fri) 01:24:05 [No.489]


尋ね人おらず (No.472 への返信) - りん

「文絵ちゃんに会いたい?」

「ああ。あの二人に、会わせたくってね」

 あの二人とは、もちろんながら今回の『社会見学』の主役、栗林和彦とウンディーネのマリーアのことだ。
 当の二人は咲の持ってきた麦茶を飲みながら、食堂で雫と3人でそうめんが茹で上がるのを待っている。

「何でまた? ここを見に来たのならまだ分かるけどさぁ……」

 ある意味、妖怪の坩堝みたいなアパートなので、妖怪見学をするにはある意味もってこいではあるのは確かだろう。
 ただ、波山や釣瓶落としを始めとして西三荘内部の住居スペースに住んでいない妖怪もそれなりにいるので、ここら一帯の正確な妖怪の人数は把握してないのが実情ではあるが。

「話すと……そんなに長くならないか。端的に言えば、あの二人は結婚したいと言っている」

「今、湖底市で流行の異類婚? ……いや、流行っても困るけどねぇ」

 実際、湖底市の市役所に提出される婚姻届の半分は異類婚なのだから世も末だと穂乃香は思っていたりする。

「ちょうど先達がいるのだから、その話を聞くのもいいかなと思ってね。だからここに来たんだ」

「なるほど。それで文絵ちゃんか………」

 八尾坂文絵は鴉天狗と人間のハーフだ。
 つまり、妖怪と人間という垣根を越えて結ばれたことを意味している。
 乱暴されただとか、そういう後ろ向きな話は聞いていないので安曇としても安心して話を聞きに来たつもりだったのだが……。

「今日は学校の日だったか。物書きをしてると曜日感覚が鈍くなってしょうがないな」

 1992年から学校週5日制と言う制度が出来、毎月第二土曜日は休みとなっている。
 さらに1995年からは第二土曜日に加えて第四土曜日も休みになり、土曜は学校が休みと言う意識が浸透してきている中、今日は運悪くちょうど第三土曜日だ。
 とりあえず、土曜日だからここにいるだろうと言う意識で真っ先に来たのが裏目に出た形になっている。

「まぁ昼までだから、部活動も早々に切り上げて帰ってくると思うわよぉ。
 しょーちゃんお手製のお弁当も持っていってないしねぇ」

 そんなことをいっていたら、

               「ただーいまー」

 と暑さに負けかけてる感じがしないでもない女の子の声と、ガラス戸が開く音と一緒に聞こえてきた。

「帰ってきたみたいね。それじゃ、改めて頼んでみたら?」

 うまくいくといいわね、と言いたげな笑顔を向けられた。何でだろう?


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 あとで穂乃香さんに聞けばいいや、と思っていたらさっきみた当の本人が家の玄関にいた。
 猩々の渡会さんは今日も仕事だからいないだろうし、穂乃香さんとの話の途中だったのかな?

「おかえり八尾坂さん。お邪魔してるよ」

「こんにちはー、安曇さん」

 と、挨拶を返した相手が、物書きとして参考にしたいと思っている小説家の安曇厚志さん。
 探偵小説の中でも、オカルト要素を混ぜた小説を書いている人で、今の所ブレイクしてる……という感じがしない人なんだよね。
 マヨヒガ探偵シリーズも、先月で6巻目を飾ってるのだからそれなりに知名度はあるはずなんだけど……。
 やっぱり、出してるレーベルの問題なのかな?
 ライトノベルの方で出してみたら、内容的には売れそうな感じがするのに………いや、ライトノベルにするにはちょっとアレな気はするけど。

「君に用があったから、待たせてもらったよ」

「私にですか? 分かりましたけど、ちょっと待っててください。着替えてきます」

 返事を聞かずにぱたぱたと逃げるように二階に走る。
 飛行せずに走って帰ったから、制服が汗だくだったし……ブラが透けて見えてなかったことを祈ろう。
 安曇さんの後ろに、笑い顔の穂乃香さんがいた気がするけど見なかったことに………

         ってことは、穂乃香さんには見えてたんだなちくしょう。


 背中の開き気味のタンクトップにショートパンツに着替えて、さっさと下に降りる。
 普段なら扇風機で涼んでから降りるけど、人を待たせてるしね。

「お待たせしました。何の用ですかー?」

 正味5分ぐらいで玄関に戻ると、まだ安曇さんが待っていた。律儀だなぁ。
 穂乃香さんは先に食堂に行っちゃったみたいだけど。
 それで、食堂に向かいつつ用件を聞くと、

「八尾坂さんに会わせたい人がいてね。それでここに来たんだけど……」

「でも私が学校だからいなかったーと……それって、車の後ろに乗せてた二人ですか?
 一人が黒い髪の男性で、もう一人が水色の髪の女の子の」

「あれ? 何で知ってるの?」

「学校の屋上から、千里眼でちょうどここに向かってるのを見てましたー」

「……雫がどこかから見られてる気がするとか呟いてたのはそれか」

 ちょっと遠い目をしてため息を吐く安曇さん。
 雫さんは警戒心が強いから気付いたのかな?
 ……と言うか、大体千里眼の最大距離近かったから、ほぼ1kmぐらい離れてたのに良く分かったなぁ……

「それで、何の話を? 大体、妖怪の話なら私より安曇さんの方がよっぽど詳しいと思うんですけど」

 もしくは雫さん。
 雫さんは昔から生きてる人魚だから当然として、小説の題材にする関係上、安曇さんが妖怪、妖術、妖力の類に詳しくないわけがない。

「君の両親の話を聞きたいんだ。ちょっとあの二人、訳ありでね」

 話を聞くと、つまるところあの二人は異類婚をしたいとそういうことらしい。
 確かに私は鴉天狗と人間のハーフだし、そう言う意味では聞くのには適任なんだろうとは思うけど……。
 いいのかなー、両親の馴れ初めなんてかなり特殊な気がするしそもそも円満でもないし。

「いいですけど、あまり期待はしないでくださいねー。妖怪法施行前の話なんですから」

 まぁいいか。こんなケースもあるよってことにしておこう。


[No.476] 2011/07/29(Fri) 01:22:45

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