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No.480へ返信

all 湖底市の日常・1 - アズミ - 2011/07/26(Tue) 19:34:17 [No.467]
その頃&その頃 - りん - 2011/07/27(Wed) 01:43:34 [No.468]
人域魔境1 - アズミ - 2011/07/28(Thu) 02:03:38 [No.472]
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文絵、かたるかたる - りん - 2011/08/02(Tue) 01:40:33 [No.480]
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魔女と騎士 1 - 桐瀬 - 2011/08/03(Wed) 21:40:19 [No.485]
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珍奇な来訪者2 - アズミ - 2011/08/04(Thu) 23:36:58 [No.488]
人域魔境3 - りん - 2011/08/05(Fri) 01:24:05 [No.489]


文絵、かたるかたる (No.476 への返信) - りん

「えー、初めまして。八尾坂文絵です」

「初めまして。僕は栗林和彦です」

「ウンディーネのマリーアです。今日はよろしくお願いします」

 ちょっと二人は不思議な顔をした後、挨拶を返してくれた。
 横を見るとそうめんの器が3つ残っていたので、雫さんと3人で食べていたのだろう。
 私の分は……後でもらえばいいか。でもお腹減ったなぁ。
 他の人はと言うと、、、、みんな聞く体勢ですかそうですか。

「一応、安曇さんからは話は聞いたんだけど……二人は結婚したいんですよね?」

「はいっ! 絶対大丈夫です。僕とマリーアなら!」

 思い込んだら一直線?な栗林さんと、微妙におどおどしているマリーアさんで釣り合いは……取れてるのかなこれ?
 どっちかと言うと、マリーアさんが栗林さんの勢いに乗せられている気はするけど、日本まで来ている時点で好意以上ものがないわけじゃないのは確かなんだろうなぁ。

「……分かりました。とりあえず、私の話ですけど何で私が選ばれたかと言うと……私、妖怪と人間のハーフなんです。
 人間変身も使ってるから、見た目からじゃ分からないと思いますけど」

『えっ!?』

 二人の顔が驚きに満ちるのが見える。
 多分、驚かせるためにわざと言ってなかったんだろう、安曇さんたちも人がいいのやら悪いのやら。

「一応、こういう者ですよ……っと」

 人間変身を解いて、鴉天狗のくちばしや翼が見える状態になる。
 やっぱり、くちばしってのがちょっと嫌だなぁ……色んな妖術が使えるから、こっちの姿は便利だけど。

「えーっと、えっと」「鴉天狗……ですか?」「そう、それだ!」

「ご名答です。お父さんが鴉天狗でお母さんが人間ですけどね、私の場合は」

 再度人間変身を行って、人の姿に戻す。
 別に鴉天狗のままでもいいんだけど、まぁなんとなく?

「と言うことで、私からの話は両親の馴れ初めです。第二次武良会談より昔の話だから、不干渉が前提の時代の話だけどね」

 ごくり、とつば飲む音がした。多分、栗林さんだろうと思う。
 あ、そうだ。とりあえずこれは言っておこう、うん。

「予め言っておくと、私に父親はいませんので」

『えっ!?』

 やっぱり驚かれたか……って、何で後ろの人たちまで驚いてるかな?
 少なくとも、穂乃香さんは知ってるはずなのに……ちゃんと戸籍謄本を見てなかったのかなぁ。

「あくまで戸籍上の父親がいないってだけの話で、遺伝上はいますよ?
 そうじゃないと、ハーフなんて生まれないわけだし」

 あー……と言う感じの表情。そんなに変なこと言ったかな?

「と言う感じに、私の場合は全然円満じゃないです。
 お母さんも一人で私を育ててくれたけどすごく大変そうだったし、シングルマザーなんて今でもあまり良い顔はされないんだから、16年前なんて言わずもがな。
 妖怪との子供がいるなんて世間体にも悪すぎるので、孤軍奮闘状態だったみたいで………。
 お母さんは私を産んだ事はすごく満足みたいだけど……やっぱり、大変なのは大変だと思う」

「………………」

 やっぱりちょっとしんみりしてるなぁ。

「でもね、事あるごとにお父さんとのノロケを連発してくれるので、本当に大変なのかがちょっと疑わしかったりは……するかな、うん」

 ちょっと遠い目をしてたかもしれないけど気にしない。

「と言うことで、私も高校になるまではずっとハーフだってことを隠して生きてきたし、これからもここみたいな出しても大丈夫な場所以外では妖怪としての姿や力なんて使わないで生きていくんじゃないかな、と思う」

 いやまぁ、便利だから多分使うけど。

「そう言う思いを、自分の子供にさせられる覚悟があるのかな?
 一応、その事は考えてあげてほしいなーと」

「確かに……自分たちのことだけを考えてて、子供のことは考えてませんでしたね」

「自分たちのことだけで、いっぱいいっぱいだったから…………」

 ちょっとは子供のことも考えてくれるとうれしいなって思ってたから、この反応は素直にうれしいな。

「そう言えば……さっきから母親の方はでてますけど、父親の方はどうしたのでしょう?」

「うーん……どうしてるのかな? 同僚だって人からは、まだ生きてることは聞いてるんだけど……」

「え、ちょっと待って。もしかして、全然会ってないの?」

 栗林さんが焦ってるなぁ。
 マリーアさんも………うん、困った顔してるや。

「うん、生まれてこの方一度もないですよー。
 写真が何枚かあるから、どんな顔なのかは知ってるし、性格とかはお母さんから聞いてるからなんとなくは」

 でも、よく考えたら人間変身してるお父さんの顔って全然知らないかなってあれ?
 また静かになった……。
 何で、安曇さんがあれ?って感じの表情をしてるんだろう……うーん、期待から逸れてたかな?

「まぁ何でそうなったかは、両親の馴れ初めで説明しますね」

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「聞いた話では、二人が出会ったのは東京都の高尾山。
 ちょうどお母さんが一人で陣馬山の方に出かけた帰りに、足を滑らせて落ちちゃって最初に見つけてくれたのがお父さんだったんだって」

 第二次武良会談よりも前だったから、お父さんも助けるのは多少躊躇したらしい。
 戦前と違って少なくとも妖怪がいると言う認識が確実に広まっていたから、放っておけば死んじゃいそうだったからってことで、隠れ里のお父さんの家まで運んだんだとか。

「一応、お互いに不干渉が原則だから、応急手当だけして人のいる近くまで運ぼうとは思ったらしいけど……実際は一目惚れしちゃって連れて帰りたくなったんだって。怪我の件もあるけど。
 ほんと、何考えてたんだろうと聞いてみたいぐらい」

 それでまぁ、お父さんが隠れ里の人たちを説得して、怪我の面倒をみてくれたんだとか。
 それにしても、一目惚れしたからって連れて帰るお父さんもお父さんだけど、そういう人に惚れちゃうお母さんもお母さんな気がしないでもないのは何でだろう?

「ここまでなら、割と今まででもありそうな話なんだけど……問題はこの後。私がお母さんのお腹にいることが分かってからで……」

 息をつくために、ちょっと話を止める。
 栗林さんとマリーアさんを見ると、さっきのもあってかほんと真剣に聞いててくれてる感じ。

「平たく言えば、お母さん里の人に命を狙われました。
 お父さんが連れて逃げてくれてなかったら、多分死んでたんじゃないかなーと思う」

「殺され……ですか?」

「うん。
 結局は逃げ切れたけど、お父さんとしても元々の職務はあるし隠れ里の人の説得もあるからって、身重のお母さんを麓まで届けた後にとって返して、それっきりなんだって」

「それで、母子家庭になったのですね」

「そう言うことです。
 あと、私の文絵って名前は、お父さんが文博って名前だとかで、お母さんが香奈絵って名前だったから、一文字ずつとって文絵って名前にしたみたい。
 これで、私の話は終わりかな?
 参考になったのかさっぱり分からないけど………」

 いやぁ、ほんと如何なんだろうこれ?


[No.480] 2011/08/02(Tue) 01:40:33

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