湖底市の日常・1 - アズミ - 2011/07/26(Tue) 19:34:17 [No.467] |
└ その頃&その頃 - りん - 2011/07/27(Wed) 01:43:34 [No.468] |
└ 人域魔境1 - アズミ - 2011/07/28(Thu) 02:03:38 [No.472] |
└ 尋ね人おらず - りん - 2011/07/29(Fri) 01:22:45 [No.476] |
└ 文絵、かたるかたる - りん - 2011/08/02(Tue) 01:40:33 [No.480] |
└ 珍奇な来訪者1 - アズミ - 2011/08/02(Tue) 01:49:21 [No.482] |
└ 魔女と騎士 1 - 桐瀬 - 2011/08/03(Wed) 21:40:19 [No.485] |
└ 魔女と騎士 2 - りん - 2011/08/04(Thu) 00:09:07 [No.486] |
└ 人域魔境2 - アズミ - 2011/08/04(Thu) 01:59:06 [No.487] |
└ 珍奇な来訪者2 - アズミ - 2011/08/04(Thu) 23:36:58 [No.488] |
└ 人域魔境3 - りん - 2011/08/05(Fri) 01:24:05 [No.489] |
「許嫁とのこれから……ですか」 「然様。彼女との間にこれからを」 タロットをシャッフルしながら尋ねると、騎士は仰々しく頷きながら答えた。 初めて見た時から感じていた事だが、所作がいちいち演技をしているように大仰に思える。その外見も合わせて、まさに物語から出てきたかのような振る舞いである。 「居場所は良いんですか?」 許嫁を探している、と切り出されたからにはどこを探せば良いのかといったような占いを要求されるものかと身構えていたミレニーは些か肩透かしを食らったような気分であった。 「そちらは良い。 占いのようなものに頼らずに探し出して見せてこそ愛の証明と言えましょう」 「はぁ……」 今後を占うのはまた違うのか、とは思ったが言わなかった。 折角の客の機嫌を損ねて台無しにするのも勿体ない。 気持ちを入れ替えて占いに集中し、タロットをめくっていく。 「逆位置の星、塔、死神……それから節制、魔術師、女司祭……んんー……変化が必要とされている時期、ですかね。変わる事を恐れたらよくない事が起きるかもしれません」 「変化?」 「最近型にはまった対応しかしてないとか無いですか?」 と言ってみると、騎士は「ううむ」と唸ったきり黙ってしまった。 機嫌を損ねたか、と思ったがそうではないようで何事かを考えているようである。当初は騎士が口を開くまで待っていようと思っていたミレニーであったが、暫く待っても進展がない上に微妙に気まずくなってきたので自分から聞いてみることにした。微かに好奇心もあった。 「ちなみに、許嫁さんはどんな人なんですか?」 「ん?ああ、湖のような青い瞳に、流れる水のような水色の髪がとても美しい女性です」 「水色の髪……ねぇ……水色?」 水色の髪というのはいくら何でも常人ではあり得ない。染めることは出来るだろうが、それで綺麗に見える人の方が希少である。それを尋ねると、騎士は事もなげに言った。 「ああ、彼女はウンディーネなのです。」 ああやっぱり、と思うと同時に少しばかり騎士に同情する。 ウンディーネとの恋愛など、古今上手く成就したという話を聞いたことがないからである。 その上大抵は男の方が死亡するという幕引きが多い。ミレニーが実際に見知っている何人かでもそうである。人間社会で戯曲にまでなっているのは伊達ではない。 「な、なるほど……それにしても、探しているってどういう事なんですか?許嫁なんですよね?」 「……実は……」 --------------- 騎士が語ったところによるとつまりは当の許嫁は失踪していたらしい。 騎士はとある岬で許嫁のウンディーネと二人で暮らしていたらしいが、所用で数日家を空けて帰ってみるとそこには誰もいない。近隣に住む人に尋ねてみれば悲痛な顔をして海に溺れて死んだと聞かされたものの、ウンディーネが溺れ死ぬはずがない。何らかの事情があって家を離れる必要があったのだと考えるも、待てど暮らせど帰ってくる気配がない。 これは何かあったと考えた騎士は伝手を使って情報を集め、ついにここ湖底市に彼女が訪れていると言う事を突き止めたのだと言う。 「はー……それは大変でしたね」 そこまでして探し出すよりもウンディーネと結ばれる危険性を考えれば忘れた方が良かったのではないかとも思っていたが口には出さずに居た。別に恋愛を邪魔したいわけではないのであるし。 「しかし、ここまで来ればあと一歩。彼女を探し出すだけなのです。」 「アテはあるんですか?」 「ありません。何せ不慣れな街、そこで頼みがあります」 「何……でしょう」 イヤな予感がしつつもとりあえず聞いてみるミレニー。 騎士はわざわざ重々しく「うむ」などと頷きつつ続けた。 「道案内をお願いしたいのです。彼女が行きそうな場所はいくらか心当たりがあるものの、この街にそういったものがあるのかは判らない。」 やっぱり、とミレニーは頭を抱える。 これ以上この珍妙な騎士に関わりたくは無いとも思っていたが、さりとて無碍に断るのも悪い気もしていた。如何せん、当らない自覚のある占いを平気で告げているのは常に引け目なのである。 「何でしたら報酬にも上乗せしましょう」 「あ、いや、いいです。判りました、案内します」 流石にそこまでされたら申し訳ない事この上ない。 懐に手を入れようとした騎士を慌てて押し留める。 「……でも、一つだけ、条件があります」 「何ですか?」 「着替えてください」 [No.485] 2011/08/03(Wed) 21:40:19 |