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No.504へ返信

all 湖底市の非日常 - アズミ - 2011/08/02(Tue) 23:21:42 [No.483]
湖底市の非日常・2 - アズミ - 2011/08/06(Sat) 01:07:36 [No.490]
日常の裏側・1 - りん - 2011/08/07(Sun) 02:15:48 [No.492]
非日常の使者 - ジョニー - 2013/02/02(Sat) 01:29:19 [No.504]


非日常の使者 (No.492 への返信) - ジョニー

『ようこそ、湖底市へ!』

 そう書かれた看板を見上げて、律は小さく息を吐いた。
 指名手配犯に当たる律にとって、この土地に来るのはあまりいいことではなかった。だが、仕方ない。
 今、この街に律が追う男がいるのだから。


 そもそもの発端となったのは、少なくとも律にとっては銚子にて蛇頭と呼ばれる中国の犯罪組織が活動した事件だった。
 この事件そのものはかつての凶薙退魔十家の六、中臣にとって蛇頭の壊滅という形で決着がついている。
 蛇頭と協力していたぬらりひょんは取り逃がしたようだが、それは今更だ。あの妖怪が早々討たれるはずがないので問題はない。
 まぁ中臣が派手にやり過ぎたは問題ともいえるが、蛇頭をほぼ皆殺しにした所為で政府や免許持ち、特にゲゲゲ同盟が中臣を危険視している。
 律はその件に関わっていないが何とも中臣らしいとは思う。そもそもにおいて三代と中臣は絶対に相容れないのだから、三代たる率が中臣の領地に足を踏み入れることはない。お互いに信仰し仕える御柱の関係上、三代は絶対に中臣に勝つことは出来ないのだから当然であるが。
 危険なテロ集団の中臣壊滅の為に第十機動隊や更には自衛隊投入も検討されているというのだから笑える話だ。そもそも中臣を如何にかしようというのが間違いだ、あいつらは人の下には付かない。人の法で縛れない。あいつらは神の手足であるが故に。


 話は戻るが律にとっての問題は、蛇頭に妖怪絡みの仕事を持ちかけ、更にはどうやって渡りをつけたのかぬらりひょんとの仲介をも務めた中華道士の存在だ。
 その男が、七支の調べによれば今この湖底市にいる。しかも、日本の国会議員と会う為だというのが捨て置けない。
 当然、道士の背後には中国政府の影が見え隠れしている。そんな奴が与党議員と会う、とてもではないが碌なことにはならないだろう。

 退魔免許持ちで賄賂と術によって様々な暗躍の形跡もある。
 正直、怪しんでくれと言わんばかりであるが妖怪法成立からこっち、元々政府関係者に対する呪術対策を主に仕事をしていた者達も大半がその立場を追われた為に政治家や要人の呪術対策がガタガタになっているのが現状だ。国内外で暗躍する者達に対して後手後手に回ってしまっている。
 政府関係を抑えられれば、国家資格である免許持ちの退魔師達にはどうしようもできない。オカルト関係を完全に政府の下に置こうとする現在の方針の弊害ともいえる。

 ともあれ、律はその男を追って此処に来た。
 討つことも、道士を殺すことも視野に入れての行動だ。これが知られれば、また自分の悪名が広がるだろう。

「私の汚名だけで済むなら、安いもの」

 そう、放置する方がより危険なのだから。



 ふと、この湖底市には九十九の人間がいる事を思い出す。
 今となっては退魔十家の人間が顔を合わせる機会は殆どない。
 二の双葉、六の中臣、八の八岐の3家は没落、脱退、断絶、理由はそれぞれだが妖怪法以前に退魔十家からその名が消えている。
 五の五稜と九の九十九は妖怪法成立後、凶薙を抜けて国家資格退魔へと移った。
 四の志守は妖怪法成立前後に、北海道で何かを封印し直しに向かってから足取りが掴めない。再封印そのものは成功したらしいが引き換えに全滅したという情報すらある。
 七の七支は中立状態で、一と十は安否不明で何処にいるのかすらわからない。
 そして三である三代は赤血軍に属している。
 日本退魔師のほぼすべてを傘下に収めていた巨大な凶薙を権威と力で内実はどうあれ一つの組織として纏めていた退魔十家も今はこれだ。

 つくづくSは余計なことをしてくれた。
 今更戻らぬ過去を嘆いても何も変わらない、ならば今出来る事をしよう。


「その為に、もし立ち塞がるなら例え誰であろうとも火葬に処するのみ」


[No.504] 2013/02/02(Sat) 01:29:19

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